「ブラック企業」の問題は深刻化しており、従業員の権利侵害や企業倫理に反する行為が常態化しています。本記事では、厚生労働省の取り組み、特に「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」による指導強化、そして労働基準関係法令違反企業の公表措置について解説します。違法な長時間労働や賃金不払残業、ハラスメントが横行する企業への対策と、健全な企業運営のためのコンプライアンスの重要性を深掘りします。中川総合法務オフィスの専門家が、貴社のコンプライアンス体制強化を支援し、労働環境の改善と企業価値向上に貢献します。

1.ブラック企業の定義と社会問題化

「ブラック企業」という言葉は社会に広く浸透していますが、厚生労働省において明確な定義は定められていません。しかし、一般的な特徴としては以下の点が挙げられます。

(1) ブラック企業の特徴

  • 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す: 過労死ラインとされる月80時間を超える時間外労働が常態化しているケースや、達成困難なノルマが設定され、従業員に過度なプレッシャーを与える実態があります。
  • 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い: サービス残業の強制、不当な賃金減額、いじめや嫌がらせといったハラスメント行為が蔓延し、労働基準法をはじめとする法令遵守の意識が著しく低い企業に見られます。
  • このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う: 新入社員の早期離職を前提とした採用、不当な理由による退職勧奨など、従業員を使い捨てにするような選別が行われることがあります。

このような企業に就職してしまった場合、個人で会社に改善を求めることは非常に困難です。そのため、問題点に応じて、外部の関係機関や労働組合に相談することが有効な手段とされています。

(2) 社会問題化している企業事例多数(平成29年電通事件等)

過去には、労働者の生命身体の安全体制構築義務違反として、企業が損害賠償責任を負う判決が下された事例も存在します。例えば、「大衆割烹店大庄株式会社事件」(大阪高裁 平23.5.25判決)では、会社が36協定で定められた時間を超える長時間労働を許容し、新入社員が過労により死亡した事案において、経営者にコンプライアンス態勢やリスク管理体制の構築義務を怠った任務懈怠があったと認定されました。これは、企業が従業員の健康と安全を守る責任を負うことを明確にした重要な判例です。

2.ブラック企業に対するコンプライアンス徹底の指導

厚生労働省は、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への重点監督を通じて、ブラック企業への指導を強化しています。

(1) 厚生労働省の調査(平成25年9月)

厚生労働省が実施した過重労働重点監督の結果では、調査対象となった5,111事業場のうち、82.0%にあたる4,189事業場で何らかの労働基準関係法令違反が確認されました。具体的な違反内容としては、違法な時間外労働(43.8%)、賃金不払残業(23.9%)、過重労働による健康障害防止措置の不実施または不十分な措置(1.4%、21.9%)、労働時間の把握方法の不適正(23.6%)などが挙げられます。また、1ヶ月の時間外・休日労働時間が80時間を超える事業場が24.1%、うち100時間を超える事業場が14.3%にものぼる実態が明らかになりました。

〔違反・問題等の主な事例〕

  • 長時間労働により精神障害を発症した労災請求があったにもかかわらず、その後も月80時間を超える時間外労働が認められた事例。
  • 社員の7割を管理監督者として扱い、割増賃金を支払っていなかった事例。
  • 営業成績により基本給を減額していた事例。
  • 月100時間を超える時間外労働が行われていたにもかかわらず、健康確保措置が講じられていなかった事例。
  • 労働時間が適正に把握できておらず、算入すべき手当を算入せずに割増賃金の単価を低く設定していた事例。
  • 賃金が約1年にわたり長期間支払われていなかったにもかかわらず、是正されなかった事例。

厚生労働省は、これらの法違反を是正しない事業場に対しては、送検も視野に入れて対応し、送検した場合には企業名等を公表する方針を示しています。

3.厚生労働省の対策:過重労働撲滅特別対策班(かとく)

厚生労働省は、過重労働や賃金不払いなど労働環境が劣悪な「ブラック企業」への対策を強化するため、2015年4月1日に東京と大阪の労働局内に、専門に取り締まる特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)を設置しました。

「かとく」は、ITに精通したベテランの労働基準監督官で構成され、特に悪質な長時間労働を行う企業を重点的に監督指導しています。違法な長時間労働が疑われるすべての事業場を対象とし、是正勧告を繰り返しても改善が見られない企業に対しては、立入調査や捜査権限を行使し、悪質な場合は検察庁へ送検し、刑事罰の対象となることもあります。近年では、大手製造業者や自動車販売業の企業が、36協定を超える違法な時間外労働を行わせたとして「かとく」により送検される事例も報じられています。

4.ブラック企業の企業名公表措置

厚生労働省では、労働基準関係法令違反に係る公表事案として、労働基準関係法令に違反した企業の名称を公表しています。これは、企業のコンプライアンス意識を高め、同様の違反の再発防止を促すことを目的としています。最新の情報は、厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。

京都のブラック企業名公表

労働基準関係法令違反に係る公表事案

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