1. 理論:進化し続けるコンプライアンスの最前線
コンプライアンス、ガバナンス、内部統制、そしてリスクマネジメントの各理論は、この10年で飛躍的な進化を遂げました。平成10年頃に会社法改正案が議論されていた当時と現在では、その様相は大きく異なります。1992年のCOSOレポートが日本社会に浸透し始め、大蔵省(現在の財務省および金融庁)が銀行への行政指導にコンプライアンスの概念を導入した時代からは、まさに隔世の感があります。
COSOフレームワーク自体も進化を続け、ERM(Enterprise Risk Management)に至っては、従来のキューブモデルから2017年版ではDNA類似モデルへと発展しています。また、リスクマネジメントに関する国際規格であるISO31000も、2018年版が最新として適用されています。
このような進化した理論を組織に実装しない企業は、国際競争において後塵を拝することになりかねません。金融庁も2023年度からはコーポレートガバナンスが「実質化」の時代に入ると明言しており、その重要性は増すばかりです。
コーポレートガバナンス・コードは、欧米に追いつき追い越せとばかりに、社外取締役の設置を当たり前とし、多様なステークホルダーとの対話を求めています。特に、いわゆる「物言う株主」との建設的な対話が推奨されており、かつての総会屋時代とは全く逆の方向へと社会は変化しています。
このような社会情勢の変化に触発され、総務省も会社法等の改正後、地方公共団体への内部統制・コンプライアンス・リスクマネジメントの導入を積極的に推進してきました。平成の大合併後の課題として、地方制度調査会や審議会等で東京大学のトップ行政法学者(碓井光明氏、小早川光郎氏など)がリードし、「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」による「内部統制による地方公共団体の組織マネジメント改革~信頼される地方公共団体を目指して~」(平成21年3月)といったレポートが発表されました。特に碓井教授のレポートは総合的で優れたものとして評価され、これを受けて一部の先進的な地方公共団体(例:兵庫県播磨地区)で内部統制の導入が始まりました。
COSO理論を基盤とし、大蔵省の審議会で「日本版COSO」も公表されました。さらに、COSOの中核であるリスクマネジメントに関するISO31000理論が加わることで、地方公共団体における内部統制、その目的であるコンプライアンス、その実質化であるリスクマネジメント、その根底にある公務員倫理という一連の理論体系が確立されました。そこへさらに現代コンプライアンス理論が登場し、いわゆるリスク系理論がより深く掘り下げられたのです。中川総合法務オフィスの代表は、これら最新の理論を母校の大学院で深く研究し、噛み砕いて研修や講演で分かりやすく解説しています。NTTドコモ本社役員研修や都道府県管理職研修、その他の地方公共団体等での研修においても、「新鮮である」という感想が多数寄せられるのは、まさに最前線の理論に基づいているからに他なりません。
2. 実務:規模を問わず求められるコンプライアンス体制
上場企業において、コーポレートガバナンス・コードの対象企業は3,868社(2023年2月1日現在)と、会社全体のわずか0.1%弱に過ぎません。金融商品取引法の対象は上場企業であり、これらの企業には内部統制の規定が適用されます。しかし、株式会社である以上、会社法の適用があり、会社法にはガバナンスの仕組み、内部統制の仕組み、コンプライアンスの遵守、リスクマネジメント等に関する規定が存在します。
このことから、いかなる規模の会社であっても、上記の理論をどのように組織に適用していくかという議論は不可欠と言えるでしょう。実際、最近では、中小企業を含む前向きな企業からのコンプライアンス研修依頼が増加しています。
これは、前述の地方公共団体における法改正の動きとも連動しています。ついに、自治体実務においても地方自治法150条により、二段階制内部統制が導入されました。これは小早川案に基づくもので、47都道府県と20指定都市には義務的に、その他の約1700の地方公共団体には努力義務として、第9章「財務」を優先した内部統制の導入が求められることになりました。
しかし、肝要なのは、このようなコンプライアンスや内部統制の体制、企業リスクマネジメントの実践等によって、ミスや不祥事がどれだけ減少したかという実証的な視点です。
では、実際に不祥事は減っているのでしょうか。
例えば、トヨタ自動車のグループ会社である日野自動車、豊田自動織機、ダイハツ工業などでは、立て続けに不祥事が発覚しています。これは、組織全体が構造主義的に言えば、また不祥事が発生しやすい構造になっており、不正を発生させない構造に転換できていない可能性を示唆しています。 かつて東京新聞に掲載された中川総合法務オフィスのコメント(令和4年10月2日朝刊参照)の通り、形だけのコンプライアンスに陥っているからに他なりません。法令遵守、リスク管理、そして職業倫理の「3拍子」が揃った強固で風通しの良い構造を構築しなければ、トヨタのような「一流企業」であろうとなかろうと、不祥事は繰り返されるでしょう。
3. 人生経験:人が組織を動かすからこそ
組織は、AIなどのツールがいかに進歩しようとも、最終的には「人」が動かすことに変わりはありません。人と人との関係性は「倫理」に基づいています。どのような秩序で組織を築き上げていくかは、どのような人間関係を構築していくかということと同義です。ピラミッド型組織であろうとフラットな組織であろうと関係ありません。上司と部下、支配と被支配、協働、連携、対立など、多様な人間関係が存在します。これらの人生経験こそが、コンプライアンスのように人間に深く関わる場面においては極めて重要となります。指導する側にそうした経験があるかどうかが、組織の未来を決定的に左右するのです。中川総合法務オフィスの公式ページで代表の経歴をぜひご参照ください。
考える実践的研修:事例を豊富に取り入れた中川総合法務オフィスのコンプライアンス研修
コンプライアンスが現代社会における組織体の基本であることは、いかに新しい理論が登場しようとも変わることはないでしょう。企業の組織的運営において、いかなる場合もルールを優先して守り、何が正しいかを考えて行動することが求められます。さらに、法令遵守や企業倫理を守るだけでなく、企業活動が持続可能(サステナブル)であるか、社会にいかなる影響を与えるかを深く考察し行動することが重要です。コンダクト・リスク管理まで含めた包括的なコンプライアンス体制が構築されているか、また不祥事やミス発生時に、職業倫理の基礎にある「インテグリティ」に基づき行動できるか、あるいは隠蔽しようとしないか。これまでの様々な企業不祥事を他山の石として学び、再発防止に活かすことが最重要課題です。
コンプライアンス研修の内容項目(講義と最新トピックを取り入れた事例演習)
中川総合法務オフィスが提供する研修では、以下の内容を中心に、講義と最新トピックを取り入れた実践的な事例演習を組み合わせることで、参加者の深い理解と行動変容を促します。
- コンプライアンスの勘どころ: コンプライアンス態勢の構築と現場への確実な浸透策。
- 不祥事の事例と発生時の対応: 危機発生時の情報ファイル作成、マスコミ対応、記者会見の進め方、そしてその後の対応。
- パワーハラスメントとセクハラの最新動向: 相次ぐ法改正と判例変更の新潮流、および実務上の留意点。
- 反社会的勢力への対応: 事前の排除策、取引や交渉中の排除方法、賠償請求や訴訟リスクへの対処。
- 平成および令和に発生した企業不祥事の類型別把握: 品質管理違反、インサイダー取引、個人情報漏えいなど、具体的な事例から学ぶ再発防止策。
- コンプライアンス違反防止の新しい潮流: 現代心理学の知見、AIの活用、SDGsやESGリスクへの対応、内部通報体制の義務化など、最新の動向と対策。
- チェックリストの作成練習: 研修内容を踏まえ、職場と自身の状況に応じた実践的なチェックリストを作成する演習。
中川総合法務オフィスへのお問い合わせ
中川総合法務オフィス代表の中川恒信は、組織風土の改善に心理的安全性と相談型リーダーシップを浸透させ、ハラスメントやクレーム対応におけるアンガーマネジメントの導入を推進しています。これまでに850回を超えるコンプライアンス等の研修を担当し、数々の不祥事組織におけるコンプライアンス態勢再構築の経験を持つ専門家です。現在も内部通報の外部窓口を担当しており、マスコミからは不祥事企業の再発防止に関する意見をしばしば求められています。
貴社のコンプライアンス課題解決に向けて、中川総合法務オフィスが培ってきた豊富な経験と実績をぜひご活用ください。
コンプライアンス研修やコンサルティングのご依頼に関する費用は、1回30万円(税別)となっております。お問い合わせは、お電話(075-955-0307)または以下のサイトの相談フォームからお気軽にどうぞ。