「地方公共団体の内部統制」工程表

 令和2年度に始まった地方公共団体の内部統制導入であるが、地方自治法等の一部改正が第193回国会で成立して、都道府県と指定都市は施行に向けて準備に大忙しであった。

 この制度においては、まずは、内部統制に関する方針の策定等、つまり、都道府県知事及び指定都市の市長は、内部統制に関する方針を定め、これに基づき必要な体制を整備することが義務的で、その他の市町村長は努力義務であるが、リスクマネジメント内部統制を財務に関することだけでもするという事になっている。やはり、内部統制等のリスクマネジメントをしないとミスや不正の連続は、このサイトで詳しく述べている通り、防止は全く無理である。

特に、総務省の統計的分類によると、市町村(特別区を除く)を団体規模別に分ければ、約人口70万人以上の政令指定都市、人口20万人以上の中核市(多くは30万人以上)、施行時特例市(人口20万人前後)、中都市(人口10万人以上の市)、小都市(人口10万人未満の市)、人口1万人以上の町村及び人口1万人未満の町村となるが、人口が10万人もいる中都市以上は、内部統制システムの導入をやって少なくとも損することはないであろう。

 方針を策定した長は、毎会計年度、内部統制評価報告書を作成し、議会に提出することになっており、監査制度の充実強化に基づく「監査基準」による意見を付ける。また、地方公共団体のコンプライアンス実務に詳しい「監査専門委員」の設置も可能となっているが、令和5年4月現在では、導入はあるが僅少である。

下記に、内部統制の重要項目とスケジュールとこれまでの議論の経緯も掲載する。次の内部統制の図解は、法案段階のもので、内部統制の報告書に「状況」という言葉が入っているが成立した改正法では割愛されている。

1.まず首長は「内部統制の推進に関する方針」を作成すること

(1)内部統制担当部署の決定とプロジェクトチームの編成

(2)地方公共団体のコンプライアンス実務と内部統制の両方に詳しい専門家による勉強会・研修の実施(専門家と契約含む)

(3)上記の内部統制整備スケジュール決定

(4)財務に関することと自治体が決めた個人情報や信用失墜などリスクマネジメントの各部署責任者への専門家による説明会実施

2.内部統制の整備

(1)リスクマネジメントの中心であるリスクアセスメント第1「リスクの洗い出し・特定」

①各部署へのリスク洗い出しアンケートの送付と回収

②回収したリスクアンケートの分類と整理

(2)リスクマネジメントの中心であるリスクアセスメント第2「リスクの評価で優先順位決定」

①各リスクの分析により、「発生頻度」×「影響度」で点数をつける

②点数順位を統計数式計算(偏差値コマンドなど)で修正する

③マトリックス表の作成

④優先順位の決定とリスク分析を基にしたリスク対応の具体策の決定と予算獲得へ向けた工程表作成

(3)内部統制方針の公表に向けた会議

①上記のリスクアセスメントによる具体的なリスク管理の文書化のたたき台作成と検討

②各部署間での優先順位と全庁的な優先順位の部課長等の調整と責任者の裁断

(4)内部統制方針の公表

①プレスリリース・記者会見

②ホームページ等での住民への公表

3.内部統制の運用

(1)内部統制方針によるリスク管理運用の実際的な活動

①業務管理のフローチャート・業務手順書の作成

②リスク管理のチャックシートの作成と運用

(2)リスク管理の実際の運用上の問題から修正活動

①フローチャート修正

②チェックシート修正

(3)定期的なチェック・モニタリングの実施

①内部監査の実施

②専門監査委員による監査の実施

4.内部統制の公表

(1)監査委員監査の実施結果報告

(2)議会への報告

(3)住民への公表

「内部統制法案の内容」………

地方自治法の一部改正に関する事項

一 地方公共団体の財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等

1 都道府県知事及び指定都市の市長は、その担任する事務のうち次に掲げるものの管理及び執行が法令に適合し、かつ、適正に行われることを確保するための方針を定め、及びこれに基づき必要な体制を整備しなければならないものとすること。(第百五十条第一項関係)

ア財務に関する事務その他総務省令で定める事務

イアに掲げるもののほか、その管理及び執行が法令に適合し、かつ、適正に行われることを特に確保する必要がある事務として当該都道府県知事又は指定都市の市長が認めるもの

2 市町村長(指定都市の市長を除く。イ及び4において同じ。)は、その担任する事務のうち次に掲げるものの管理及び執行が法令に適合し、かつ、適正に行われることを確保するための方針を定め、及びこれに基づき必要な体制を整備するよう努めなければならないものとすること。(第百五十条第二項関係)

ア1のアに掲げる事務

イアに掲げるもののほか、その管理及び執行が法令に適合し、かつ、適正に行われることを特に確保する必要がある事務として当該市町村長が認めるもの

3 都道府県知事又は市町村長は、1若しくは2の方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないものとすること。(第百五十条第三項関係)

4 都道府県知事、指定都市の市長及び2の方針を定めた市町村長(5において「都道府県知事等」という。)は、毎会計年度少なくとも一回以上、1又は2の方針及びこれに基づき整備した体制について評価した報告書を作成しなければならないものとすること。(第百五十条第四項関係)

5 都道府県知事等は、4の報告書を監査委員の審査に付し、その意見を付けて議会に提出し、かつ、公表しなければならないものとすること。(第百五十条第五項、第六項及び第八項関係)

二 監査制度の充実強化

1 監査基準に従った監査等の実施等

ア監査委員は、監査基準(法令の規定により監査委員が行うこととされている監査、検査、審査その他の行為(以下「監査等」という。)の適切かつ有効な実施を図るための基準をいう。以下同じ。)に従い、監査等をしなければならないものとすること。(第百九十八条の三第一項関係)

イ監査基準は、監査委員が定めるものとすること。(第百九十八条の四第一項関係)

ウ監査委員は、監査基準を定めたときは、直ちに、これを普通地方公共団体の議会、長、委員会及び委員に通知するとともに、これを公表しなければならないものとすること。(第百九十八条の四第三項関係)

エ総務大臣は、普通地方公共団体に対し、監査基準の策定又は変更について、指針を示すとともに、必要な助言を行うものとすること。(第百九十八条の四第五項関係)

2 監査委員の権限の強化等

ア監査委員は、監査の結果に関する報告のうち、普通地方公共団体の議会、長又は関係のある委員会若しくは委員において特に措置を講ずる必要があると認める事項については、その者に対し、理由を付して、必要な措置を講ずべきことを勧告することができるものとすること。この場合において、監査委員は、当該勧告の内容を公表しなければならないものとすること。(第百九十九条第十一項関係)

イ監査委員からアによる勧告を受けた普通地方公共団体の議会、長又は関係のある委員会若しくは委員は、当該勧告に基づき必要な措置を講ずるとともに、当該措置の内容を監査委員に通知しなければならないものとすること。この場合において、監査委員は、当該措置の内容を公表しなければならないものとすること。(第百九十九条第十五項関係)

ウ監査委員は、監査の結果に関する報告の決定について、各監査委員の意見が一致しないことにより、合議により決定することができない事項がある場合には、その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある委員会又は委員に提出するとともに、これらを公表しなければならないものとすること。(第七十五条第五項及び第百九十九条第十三項関係)

3 監査体制の見直し

ア条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができるものとすること。(第百九十六条第一項関係)

イ監査委員に常設又は臨時の監査専門委員を置くことができるものとし、監査専門委員は、専門の学識経験を有する者の中から、代表監査委員が、代表監査委員以外の監査委員の意見を聴いて、これを選任するものとすること。(第二百条の二第一項及び第二項関係)

ウ監査専門委員は、監査委員の委託を受け、その権限に属する事務に関し必要な事項を調査するものとすること。(第二百条の二第三項関係)

4 条例により包括外部監査を実施する地方公共団体の実施頻度の緩和
政令で定める市以外の市又は町村で、契約に基づく監査を受けることを条例により定めたものの長は、条例で定める会計年度において、当該会計年度に係る包括外部監査契約を、速やかに、一の者と締結しなければならないものとすること。この場合においては、あらかじめ監査委員の意見を聴くとともに、議会の議決を経なければならないものとすること。(第二百五十二条の三十六第二項関係)

※内部統制の流れと実施項目一覧表

※内部統制「整備」スケジュール

※内部統制の「運用」は、令和2年度から本格実施

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