地方公共団体における保育園・公園等建設・存続をめぐるクレーム等住民トラブルを防ぐ方法

1.地方公共団体における保育園等建設をめぐる住民トラブルを防ぐ方法はあるだろうか。

(1)認可保育所に入れない「待機児童」の数の増加

現在は、認可外保育に入って待機している場合は除外する新定義に2001年からなっているが、それでも厚生労働省は待機児童が2015年は前年より1796人増えて2万3167人になったとしている。

2014年より増加した。

※2019年9月6日、厚生労働省は、認可保育施設に入れない待機児童は、同年4月1日時点で1万6772人になったと発表した。

待機児童対策については、2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」がスタートして、認可保育施設の種類が増えるとともに大阪市などの自治体が独自に補助を出す認可外施設もできて、定員数は約263万人となった。

(2)保育園リスクマネジメント

私も、中川総合法務オフィスに講演依頼があって、増えた施設の管理者や保育士さんなどを対象に子供安全を守る保育園リスクマネジメント講演を先ごろやったところである。

(3)保育士増加策

しかし、働く女性が増加する中で、新制度で子どもを預けられるとの期待が高まって、例えば東京都の世田谷区で1,182人、板橋区で378人、府中市で352人等待機児童がいて、潜在需要はかなり多いとみていいであろう。

そこで、平均賃金より11万円月給の少ない保育士の給与のアップを国が勧告したりして保育士の供給を増やすとともに保育園を建設するなどの対策をとっている。

しかし、私が公務員の教科書「道徳編」で詳論した通りで、ここで建設を巡って住民が反対することが多くなっているのである。

2.保育園等建設と住民トラブル

(1)子供がうるさい

公立保育園や幼稚園の建設をめぐって住民が反対する最大の理由は、建設そのものよりも「子どもがうるさい」と思う住民が増えているからである。

特に高齢者はそう思うようだ。

定年後を静かに過ごせなくなる、太鼓をたたく音や野球ボールの打音なども気に障るようだ。

(2)建設地は住宅街

しかし、建設予定地はほとんどが住宅街の中にしかない。

東京都練馬区で住民が騒音などに対する慰謝料を求めた裁判や神戸市で防音対策などを求めた裁判等が発生している。

(3)目的が善でもやり方が善でないこともある

ここでの問題は、地方公共団体のやり方にも問題がなかろうか。

建設を急ぐあまり、事前に住民に説明をする時間をとっていない、設計段階からの事前説明をきちんとするほかに、

ハード面では住民説明で遊び場所を分散させて声が大きくなるのを防ぐこと、防音壁を設置し、窓を二重ガラスにするなどの防音対策、

ソフト面では地域の住民を積極的に保育園に招いて、子どもたちの成長の過程を見てもらう

などの工夫が必要であろう。

3.地方公共団体におけるコンプライアンスのありかたが問われる

ましてや、地域住民の一部の者との打ち合わせだけや政治家を使ってのごり押しなどは愚の骨頂であろう。

難しいクレーム発生を起こすのは、得てしてこういうステークホルダーを軽視した公務員道徳に反する場合であろう。

自治体コンプライアンスができていないのである。

4.長野市「青木島遊園地」が住民苦情で2023年3月に公園廃止決定

 マスコミ報道によると、保育園などが集中する地域に2004年に公園を作ったが、2021年3月、子どもたちが遊んでいることに対して、開設前から住んでいた住民が騒音の悩みを訴え、長野市の学童保育施設は、公園の利用を中止した。その後に、色々経緯があったが、結局、見出しのように公園は廃止になった。

 この決定については、市長の姿勢について、かなりの批判が起こっている。

 住民全体の意見を聞く機会が公園利用の廃止に至る過程で、手順を踏んでなされず、大騒動になる前にやらなかったのは失態であろう。また、苦情を言った住民との理解を得るやり取りがどこまでできていたのか、不明点も多く、これらを含めて市政に疑問を持つものも多い事を今後は改める必要があろう。

 法律的な問題としては、民法709条の不法行為の受忍限度論になるであろうが、法律問題とする事を嫌ったのか、第三者的なカントの言う法廷モデルが妥当な解決を導いたかもしれない。

 もう少し丁寧な行政の執行を心掛けないと、とても市長への信認は次はないであろう。

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