(1)コンプライアンスの意味

コンプライアンス (Compliance) とは、語源的には「(要求・命令などに)従うこと、応じること」で、これまでは主に「企業等の組織活動における法令遵守」を意味していた。(服薬コンプライアンス、物体の伸縮性・可塑性は別概念)。その意味内容が今日でもコンプライアンスの中核である事は変わりない。

企業でいえば、企業統治(コーポレートガバナンス)が上位概念であり、ビジネスコンプライアンスともいっていいであろう。

CSR(企業の社会的責任)、企業倫理(ビジネスエシックス)も同位概念に近い。

(2)法の規定

法を見ると,株式会社においては、商法(会社法)上,取締役ないし執行役の義務(法定責任)として現行会社法では規定されている。

つまり,取締役の善管注意義務(330条)ないし忠実義務(355条)の発現がコンプライアンスであり,監査役等も同様の義務を負っている(330条)。

企業も社会の構成員の一人として商法(会社法)だけでなく民法・刑法・労働法といった各種一般法、その他各種業法をすべて遵守し、従業員一同にもそれを徹底させなければならないとされ(348条3項4号、362条4項6号)、特に大会社については、内部統制システム構築義務が課されている(348条4項、362条5項)。

コンプライアンス違反をした企業は、損害賠償訴訟(取締役の責任については株主代表訴訟)などによる法的責任や、信用失墜により売上低下等の社会的責任を負わなければならない非常に高いリスクを背負っている。

(3)コンプライアンスの意味の変遷と社会からの信頼

コンプライアンスが組織の中で盛んに言われるようになったのは、企業や官公庁での不祥事の多発と密接に関連していよう。そこでは、法令順守違反や社会倫理からの逸脱があり、そのような規範・ルールをもまるのは何よりも社会の信頼を得るためなので、結局コンプライアンスとは法令遵守、社会倫理等の規範を遵守して社会的要請に応える事と解されるようになってきた。

つまり、企業等の組織が社会で継続的に存在してくためには、利潤の追求だけでなく、食品メーカーであれば「安全な食品を供給してほしい」、放送局であれば「歪曲されていない、良質な番組を流して欲しい」など、社会からの潜在的な要請があり、各種法令にも、立法事実として法の制定に至るまでには社会からの要請があるからこそ法令等が制定されるのである。

しかしながら、法令は常に最新の社会の実情を反映できているわけでなく、司法もまた万能ではない。故に、単に法令のみの遵守に終始することなく、今現在に社会から求められる期待や信頼、つまり社会からの要請に応えることこそがコンプライアンスの本旨であろう。

これは、利害関係者であるステークホルダーの信頼に応えることであるといってもいい。その組織が社会から信頼を得るためには、何よりも身近な存在である企業の消費者や官公庁の住民といった密接な利害関係者こそはその組織の社会そのものと言っていいだろうからである。

(4)コンプライアンスの2つの要素…職業倫理とリスク管理(リスクマネジメント・危機管理)

コンプライアンス違反を不祥事と言うが、不祥事にはわざとやる場合(故意)と不注意による場合(過失)がある。

そのいずれにおいても、不祥事防止のためには「職業倫理」と「リスク管理」が不可欠で、私の著書である『公務員の教科書「道徳編」』(ぎょうせい)で詳しく書いたように、行為は主観と客観の複合体であり、主観的には倫理が、客観的にはリスク管理が不可欠であろう。

なお、「リスク管理」という用語を「リスクマネジメント」や「危機管理」と同義で使うことをお断りしておく。

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