条文原文

著作権法第2条1項

七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。

九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。

九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。

九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。

九の五 送信可能化 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の記録媒体に情報を記録し、若しくは当該装置に情報を入力すること、又はそのような状態にある装置を電気通信回線に接続することにより、自動公衆送信し得るようにすることをいう。

九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信をいう。

九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信のうち、放送・有線放送が行われた日から原則1週間以内に、内容を変更せず、複製防止措置を講じて行われるもの(権利者の利益を不当に害するおそれがあるものや視聴困難なものとして文化庁長官が定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。

九の八 放送同時配信等事業者 放送事業者又は有線放送事業者から番組供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。

(条文の正確な全文は、e-Govの法令検索及び文化庁ウェブサイトを参照されたい。)

趣旨・立法背景

公衆送信の概念は、無線・有線を問わず公衆に向けた送信を一括して捉えるために設けられた上位概念である。放送と有線放送はその下位類型のうち、同一内容を同時に受信させることを目的とする送信であり、テレビ・ラジオ放送がこれに当たる。

自動公衆送信は、インターネットによる配信のように、利用者からのアクセスに応じて個別に送信が行われるものを公衆送信の枠内に取り込むために設けられた概念である。放送・有線放送のような同時受信型の送信とは性質が異なるため、九号の四で明確に区別されている。

送信可能化は、自動公衆送信が現実に行われる前の準備段階、すなわちサーバーへのアップロードや配信装置への接続行為そのものを規制対象とする点に意義がある。著作権法がインターネット配信の実態に対応するため、現実の送信行為を待たずに権利侵害を構成し得るようにした規定であり、著作隣接権においては送信可能化権として独立に定められている(同法92条の2、96条の2、99条の2、100条の4等)。

放送同時配信等(九号の七・九号の八)は、令和3年法律第52号による改正で新設された概念である。テレビ番組のインターネット同時配信(いわゆるTVer型サービスや同時配信・追っかけ配信・見逃し配信)について、放送と同様に円滑な権利処理を可能にすることを目的として、放送番組のインターネット配信のうち一定の要件を満たすものを「放送同時配信等」として定義し、権利制限規定の拡充や許諾推定規定の創設の対象とした。背景には、文化審議会著作権分科会がまとめた「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書」(令和3年2月)があり、視聴者の利便性向上とコンテンツ産業の振興という政策目的が明示されている。

用語解説

公衆送信のうち、公衆によって同一内容が同時に受信されることを目的とするものが放送・有線放送であり、それ以外で公衆からの求めに応じて自動的に行われるものが自動公衆送信である。動画配信サービスやウェブサイトでのストリーミング配信は、利用者ごとにアクセス時点が異なるため自動公衆送信に分類される。

特定入力型自動公衆送信は、放送を受信して同時にインターネット配信に流し込む形態(いわゆるIPサイマル方式の一種)を指し、放送同時配信等の定義からは除外されている。これは放送と実質的に同一の性質を持つ送信を放送関係の権利処理ルールに委ねるための整理である。

放送同時配信等に該当するためには、放送等の日から原則1週間以内であること、内容を変更しないこと、文部科学省令所定の複製防止・抑止措置が講じられていることなど、九号の七イからハの各要件を満たす必要がある。これらの要件をすべて満たさない配信(恒常的なオンデマンド配信や内容を編集した配信等)は、放送同時配信等には当たらず、通常の自動公衆送信として権利処理を行う必要がある。

改正法の内容・最新の動向

令和3年改正により、放送同時配信等について、(1)権利制限規定の拡充、(2)許諾推定規定の創設、(3)レコード・レコード実演の利用円滑化、(4)映像実演の利用円滑化、(5)協議不調時の裁定制度の拡充が行われ、令和4年1月1日に施行された。許諾推定規定(新63条、103条)により、放送番組での著作物利用の許諾を得れば、別段の意思表示がない限り同時配信等の許諾も含むと推定されることになり、放送事業者が個別に許諾を取り直す実務上の負担が軽減されている。

裁判例では、自動公衆送信・送信可能化の解釈を確定させた最高裁判所平成23年1月18日判決(まねきTV事件、民集65巻1号121頁)が重要である。同判決は、利用者が個別に所有する受信機器であっても、事業者がこれを一括管理し継続的に放送波を入力している場合には、その機器が1対1の送信機能しか持たないときでも自動公衆送信装置に当たり、情報を入力する事業者が送信の主体となると判示した。テレビ番組をインターネット経由で個人向けに転送するサービスの著作権法上の位置づけを定めた判例として、現在もクラウド型録画サービスや配信代行サービスの適法性を検討する際の基準となっている。

また、知的財産高等裁判所平成22年9月8日判決(TVブレイク事件)は、動画共有サイトの運営事業者が侵害コンテンツの存在を認識しながら放置し、これにより経済的利益を得ていた場合には、運営事業者自身が送信可能化・公衆送信の主体となり得ると判断した。プラットフォーム事業者の責任範囲を画する裁判例として、現在のCGMサービスやユーザー投稿型サービスの運営にも引き続き参照価値がある。

企業の実務対応としては、社内向け動画配信や顧客向けオンデマンド配信サービスを構築する際、自動公衆送信に該当することを前提に著作物の利用許諾範囲を確認すること、放送番組を二次利用したインターネット配信を行う場合には放送同時配信等の要件(1週間以内・内容不変更・複製防止措置)を満たすか否かを個別に検証することが必要である。要件を満たさない場合は、通常の自動公衆送信としての許諾取得が必要になる点に留意されたい。


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