条文

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。

七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。

趣旨・立法背景

第2条は、著作権法において繰り返し使用される基本概念の意義をあらかじめ確定し、解釈上の疑義を生じさせないことを目的とする定義規定である。著作権法は権利の発生・帰属・侵害の有無を条文上の用語の当てはめによって判断する構造をとるため、第2条の定義は実務上のあらゆる場面の出発点となる。

旧著作権法(明治32年法律第39号)には「著作物」自体の定義規定が存在せず、第1条において保護対象を列挙するにとどまっていた。現行著作権法(昭和45年法律第48号)は、それまでの判例の蓄積を踏まえて「著作物」の定義を明文化し、個別列挙ではなく一般的な要件によって保護対象を画定する立法形式を採用した点に大きな意義がある。

実演・実演家・レコード・レコード製作者・商業用レコードの定義は、著作隣接権制度の創設に伴って設けられたものである。実演家やレコード製作者は著作物そのものを創作する者ではないが、実演やレコードの製作という、創作行為に準じた文化的所産の提供に関与する者として、著作者とは別の権利体系のもとで保護される。第2条はこの隣接権制度の対象を画定する役割を担う。

用語解説

一号 著作物

著作物として保護されるためには、次の四要件をすべて満たす必要がある。

第一に「思想又は感情」を表現したものであることを要する。単なる事実やデータの伝達は思想又は感情の表現ではないため、著作物に該当しない。第二に「創作的に」表現されたものであることを要する。創作性とは、表現者の何らかの個性が表れていれば足りるとされ、高度の芸術性や独創性までは要求されない。他人の作品を忠実に模写したものや、誰が表現しても同じになるようなありふれた表現は創作性を欠く。第三に「表現したもの」であることを要する。アイデアや構想そのものは著作物ではなく、具体的な表現として外部に表されたものでなければならない。この考え方は思想・表現二分論と呼ばれる。第四に「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることを要するが、厳密な分野の特定までは求められず、広く文化的所産に当たれば足りるとされている。

二号 著作者

著作者とは著作物を創作する者をいう。創作行為を現実に行った者を指すのであって、企画立案や資金提供のみを行った者、あるいは創作の指示を出したにとどまる者は、原則として著作者に該当しない。なお、職務上作成する著作物について一定の要件のもとで使用者を著作者とする職務著作の規定(第15条)は、本号の定義に対する特則として位置づけられる。

三号・四号 実演・実演家

実演とは、著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、その他の方法で演ずる行為を指す。括弧書きにより、著作物を演じない場合であっても芸能的な性質を有する行為(手品、奇術、曲芸、ものまね、腹話術など)も実演に含まれる。一方で、もっぱらスポーツとしての競技演技は、実演として扱われないと解されている。

実演家には、現実に演じる俳優・舞踊家・演奏家・歌手のほか、実演を指揮し又は演出する者も含まれる。オーケストラの指揮者や演劇の演出家がこれに当たる。実演家の権利には、財産権としての著作隣接権のほか、実演家人格権(氏名表示権・同一性保持権)が認められている。

五号・六号 レコード・レコード製作者

レコードとは、蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したものをいう。映像とともに再生することを専ら目的とするもの(映画のサウンドトラックなど)は除外され、もっぱら音の固定物としての性質を有するものに限定される。

レコード製作者とは、レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。量産の前段階で原盤を作成した者を指し、量産された複製物そのものを製作する者を指すわけではない。レコード製作者の権利には、実演家と異なり人格権は認められていない。

七号 商業用レコード

商業用レコードとは、市販の目的をもって製作されるレコードの複製物をいう。原盤であるレコードと、市場で販売される複製物としての商業用レコードとは概念上区別される。二次使用料の支払義務(第95条)や貸与権の制限(第95条の3)など、著作隣接権の各規定はこの商業用レコードの概念を基準に適用範囲を定めている。

改正法の内容・最新の動向

応用美術・量産品の著作物性に関する最高裁の初判断

著作物性の判断、とりわけ量産される実用品(応用美術)の著作物性については、長らく下級審の判断が分かれていた。この点について、最高裁判所第二小法廷は令和8年4月24日、子ども用椅子(トリップ・トラップ)の著作物性が争われた事件で初めての判断を示した。

最高裁は、量産される実用品の形状等が思想又は感情を創作的に表現したものといえる場合に直ちに美術の範囲に属する著作物に当たるとの解釈は相当でないとした上で、実用品については、必要な機能に由来する制約とは別に、思想又は感情の創作的な表現を把握できる場合に著作物として保護されるとの基準を示した。具体的には、機能に由来する構成と分離できる部分がある場合はその部分について、観念的に全体として分離して把握できる場合は全体について、創作的表現の有無を判断するという枠組みが示されている。本件では、子ども用椅子の形状は子どもが座るための機能に基づくものであり、思想又は感情の表現とはいえないとして、著作物性が否定された。

本判決は、量産実用品の保護を巡る著作権法と意匠法の役割分担についても言及しており、意匠法が登録・審査・存続期間の限定という制度設計のもとで実用品の形状美を保護する一方、著作権法は無方式・長期の保護を与える制度であるため、両法の趣旨の違いを踏まえた限定的な解釈が必要であるとの考え方を前提にしている。企業がプロダクトデザインの保護を検討する際は、著作権法による保護を当然の前提とせず、意匠登録など他の知的財産制度との組み合わせを検討する必要がある。

生成AIと「著作物」「著作者」概念への影響

生成AIの普及に伴い、AIが生成した表現物が一号の「著作物」に該当するか、また誰が二号の「著作者」となるかが実務上の課題となっている。AI生成物が著作物として認められるかどうかは、利用者の創作的意図と創作的寄与の両面から判断される必要があるとされ、プロンプトの具体性や、生成過程での試行・修正の深度が創作的寄与の判断要素として考慮されると考えられている。

令和7年11月には、生成AIで作成された画像データを無断利用したとして著作権法違反の容疑で書類送検された事例が報じられた。この事案では、制作者が2万回以上のプロンプト修正を行った経緯が創作的寄与として捜査機関に評価され、AI生成物であっても著作物として保護され得ることを前提に手続が進められた点が注目される。企業がAI生成物を業務利用する場合は、プロンプト履行や修正過程の記録を残すなど、創作的寄与を立証できる体制を整えておくことが望ましい。

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