1 条文原文

第百一条 普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集する。

② 議長は、議会運営委員会の議決を経て、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる。

③ 議員の定数の四分の一以上の者は、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる。

④ 前二項の規定による請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、請求のあつた日から二十日以内に臨時会を招集しなければならない。

⑤ 第二項の規定による請求のあつた日から二十日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第一項の規定にかかわらず、議長は、臨時会を招集することができる。

⑥ 第三項の規定による請求のあつた日から二十日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第一項の規定にかかわらず、議長は、第三項の規定による請求をした者の申出に基づき、当該申出のあつた日から、都道府県及び市にあつては十日以内、町村にあつては六日以内に臨時会を招集しなければならない。

⑦ 招集は、開会の日前、都道府県及び市にあつては七日、町村にあつては三日までにこれを告示しなければならない。ただし、緊急を要する場合は、この限りでない。

⑧ 前項の規定による招集の告示をした後に当該招集に係る開会の日に会議を開くことが災害その他やむを得ない事由により困難であると認めるときは、当該告示をした者は、当該招集に係る開会の日の変更をすることができる。この場合においては、変更後の開会の日及び変更の理由を告示しなければならない。

2 本条の位置づけ

本条は、第六章「議会」第三節「招集及び会期」の冒頭に置かれる。第101条が招集の主体と手続を、第102条が定例会・臨時会の区分と会期を、第102条の2が通年の会期を定める、という三段構成である。

理解の前提として押さえておくべきは、地方議会が会期中にのみ活動能力を有する会議体だという点である。会期中に議決に至らなかった事件は後会に継続しない(法第119条、会期不継続の原則)。したがって招集とは、単なる集合の呼びかけではなく、議会に法的な活動能力を発生させる行為である。招集がないまま議員が議場に集まっても、それは議会ではなく私的な集会にすぎず、そこでなされた決定に議決としての効力は生じない。

第101条が実務上の重みを持つのは、この「活動能力のスイッチ」を誰が握るのかという問題が、二元代表制における長と議会の力関係そのものを規定するからである。

3 趣旨と立法背景

3-1 招集権を長に置いた理由

第1項は、招集権者を長に一元化する。地方公共団体において議会の招集を執行機関の事務と位置づけたのは、招集に伴う告示、議場の準備、議案の調製といった事務が執行機関の組織を用いて行われること、また議会に提出すべき議案の多くが長の提案に係ることを踏まえたものである。

国会と比較すると構造の違いが際立つ。国会の召集は天皇の国事行為であり(憲法第7条第2号)、実質的決定権は内閣にある。地方では、議事機関である議会の招集権を、対等な機関であるはずの長が握る。この非対称が制度上の弱点として意識され続けてきたことが、以下に述べる改正の歴史につながる。

3-2 議会側の対抗手段が段階的に拡充された経緯

昭和22年の制定当初から、議員定数の4分の1以上の者による臨時会招集請求権(現行第3項)と、これに対する長の招集義務(現行第4項)は置かれていた。しかしこれは請求権にとどまり、長が応じなければ議会には打つ手がなかった。

平成18年改正で、議長にも臨時会の招集請求権が付与された(現行第2項)。それまで招集請求は議員個人の集合体としてしか行えず、議会の機関としての意思を示す経路がなかったためである。ただし議長の独断を防ぐため、議会運営委員会の議決を経ることが要件とされた。

平成24年改正で、現行第5項および第6項が追加された。議長または議員の請求から20日以内に長が招集しないとき、議長自身が招集できる(第5項)、あるいは招集しなければならない(第6項)とする規定である。これにより、招集権の長への専属という原則に、初めて例外が刻まれた。従前の第5項(告示期間)は第7項に繰り下げられた。

令和4年改正(令和4年法律第101号)で、現行第8項が追加された。同法は令和4年12月16日に公布され、第8項に関する規定は同日から施行されている(令和4年12月16日総行行第351号「地方自治法の一部を改正する法律の公布及び施行について(通知)」)。

令和7年および令和8年の改正では、第101条本体に変更は加えられていない。もっとも、令和5年改正(令和5年法律第19号)により地方議会に係る手続のオンライン化が制度化され(法第138条の2)、令和6年1月には地方自治法施行令および施行規則の関係規定が整備された。招集をめぐる書面のやり取りにも影響が及ぶため、後述する。

3-3 平成24年改正の引き金となった阿久根市の事例

平成24年改正の直接の契機は、鹿児島県阿久根市で発生した議会不招集の事態である。全国紙・テレビが連日報じ、地方自治法の教科書的な想定が現実に破られた事例として記憶されている。

竹原信一市長(当時)は平成22年3月の定例会の途中から議会への出席を拒み、以後、議会を招集しないまま専決処分(法第179条)を繰り返した。職員の賞与半減、議員報酬の日当制などが専決処分で決定された。

これに対し議員側は法第101条第3項の招集請求で対抗した。平成22年6月8日、議員16人のうち議長を除く11人が連署し、口蹄疫対策の強化、市職員賞与減額条例の改正、通年議会を想定した定例会条例の改正の3点を付議事件として示して招集を請求した。しかし市長はこれに応じなかった。

伊藤祐一郎鹿児島県知事は、法第245条の6に基づく是正の勧告を2度にわたって行ったが、勧告に法的拘束力はなく、市長は従わなかった。片山善博総務大臣(当時)は平成22年9月21日の記者会見で当該専決処分を違法と述べ、あわせて議会側に招集権を持たせることが解決策の一つであるとして地方自治法改正を検討する意向を示した。

議会が可決した市議会の通年開会条例についても、市長は「専決処分を阻止するため」として期限内に公布せず、施行させなかった。この点も平成24年改正で手当てされ、長は条例の送付を受けた日から20日以内に、再議に付す等の措置を講じる場合を除いて公布を行わなければならないことが明文化されている(法第16条第2項)。

阿久根市の混乱は、平成22年12月5日の市長解職を問う住民投票で決着した。賛成7,543票、反対7,145票でリコールが成立し、市長は即日失職した。翌平成23年1月16日の出直し市長選挙では西平良将氏が当選している(投票率82.39パーセント)。

制度としての教訓は明快である。長が招集しないという事態に対して、当時の地方自治法は勧告と選挙・リコールという政治的解決しか用意していなかった。第5項・第6項は、この空白を法的手段で埋めるために設けられた。

4 各項の逐条解説

4-1 第1項 招集権者

招集権は長に専属する。第5項・第6項の場合を除き、議長も議員も議会を招集できない。長に事故があるとき、または長が欠けたときは、副知事・副市町村長等が職務代理者として招集する(法第152条)。

通年の会期を採用した議会(法第102条の2第1項)では、条例で定める日の到来をもって長がその日に招集したものとみなされる(同条第2項)。この場合、毎回の招集行為は不要となり、本条第1項の実務上の意味は大きく後退する。ただし一般選挙後等に会期が終了した場合には、長は議員の任期が始まる日から30日以内に議会を招集しなければならない(同条第4項)。

なお、定例会・臨時会制を採る議会について、一般選挙後いつまでに議会を招集すべきかを定める規定は本条にない。30日以内という期限は通年会期制に固有のものである。実務では、議長・副議長の選挙や委員会の構成を要するため、任期開始後速やかに臨時会を招集する運用が一般的である。

4-2 第2項 議長による招集請求

要件は二つある。議会運営委員会の議決を経ること、そして会議に付議すべき事件を示すことである。

見落とされやすいのは前者である。議会運営委員会は条例で設置する任意機関であり(法第109条第1項は「置くことができる」と規定する)、これを設置していない議会では第2項による請求ができない。小規模町村では設置していない例があるため、招集請求の経路を検討する際には自団体の委員会条例を先に確認する必要がある。

「会議に付議すべき事件を示して」とは、単に「補正予算について」といった程度ではなく、臨時会で審議すべき事件を特定して示すことを意味する。第102条第3項が「臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する」と定めており、示された事件が臨時会の付議事件の基礎となるためである。

4-3 第3項 議員定数の4分の1以上の者による招集請求

基準は議員の定数であって、欠員を控除した現在数ではない。定数16人であれば4人、定数18人であれば5人が必要となる(4.5人以上を満たすには5人を要する)。議長も議員であるから、この4分の1には算入される。

請求は文書によることを要するとするのが実務の扱いである。請求書には請求年月日、付議すべき事件、請求者の署名を記載する。第4項の20日は「請求のあった日」から起算されるため、議会事務局または長部局は請求書の到達日を明確に記録しておく必要がある。

4-4 第4項 20日以内の招集義務

第2項・第3項の請求があったとき、長は請求の日から20日以内に臨時会を招集しなければならない。これは羈束的な義務であり、長に招集するか否かの裁量はない。

期間計算について地方自治法に一般規定はなく、民法の期間計算の規定(民法第138条以下)による。初日不算入が原則であるから、請求日の翌日から起算する。

実務上の要点は、「20日以内に招集」が20日以内に告示を行えば足りるという意味ではない点である。招集は開会の日をもって効力を生じるものと解されており、第7項が「開会の日前……告示しなければならない」と規定して招集と告示を別個の行為として扱っていることもこの理解を裏づける。したがって、20日以内に開会日を設定しなければならず、市であればその7日前までに告示を済ませる必要がある。請求受理から告示までの実質的な猶予は13日程度しかない、と逆算して考えるべきである。

請求に示された事件は臨時会に付議すべき事件として長が告示する(法第102条第4項)。長が請求事件以外の事件を併せて付議することは妨げられない。

4-5 第5項・第6項 議長による招集

20日を経過しても長が招集しないときの手当てである。両者の書き分けに注意を要する。

第5項(議長の請求に長が応じない場合)は「招集することができる」であり、議長の裁量に委ねられる。自ら請求した以上、なお招集の要否を判断する余地を残すのが自然だからである。

第6項(議員の請求に長が応じない場合)は「招集しなければならない」であり、議長に義務が生じる。ただし発動には請求をした議員からの申出が必要であり、申出のあった日から都道府県および市にあっては10日以内、町村にあっては6日以内という期限が課される。第5項に期限の定めがないのと対照的である。

議長が招集する場合、臨時会に付議すべき事件は、請求において示された事件を議長があらかじめ告示する(法第102条第5項)。第7項の招集告示も議長が行い、第8項の開会日変更権限も「当該告示をした者」すなわち議長に帰属する。

議長が招集した臨時会であっても、長その他の執行機関の長は、議長から説明のため出席を求められたときは議場に出席しなければならない(法第121条第1項)。長が招集を怠ったからといって審議から離脱できるわけではない。

なお、平成23年に総務省が示した改正案の概要には、一般選挙後等で議長がいない場合に都道府県の議会にあっては総務大臣、市町村の議会にあっては都道府県知事が招集する仕組みが盛り込まれていたが、現行法にこれに対応する規定は置かれていない。議長不在の局面は制度上の空白として残っている。

4-6 第7項 招集の告示期間

都道府県および市は開会の日前7日、町村は3日までに告示しなければならない。市において9月1日を開会の日とする場合、8月25日までに告示を行う運用が一般的である。日数の数え方は各団体の例規と長年の慣行に依存する部分があるため、自団体の直近の告示例を確認したうえで逆算するのが安全である。

告示は議員に対する個別通知ではなく、住民一般に対する公示である。地方自治法には告示の方法に関する一般規定がなく、各団体の公告式条例に基づき掲示場への掲示等により行われる。議員への通知は会議規則等に基づく事実上の措置であって、告示の効力とは別問題である。

ただし書の「緊急を要する場合」については、令和2年4月10日付け総務省自治行政局行政課事務連絡が解釈を示している。新型コロナウイルス感染症関連の議案を付議するため招集期日を短縮してよいかとの問いに対し、緊急を要するかどうかは客観的に認定されなければならないが、招集する者が認定して差し支えないと回答している。判断権は招集権者にあるが、恣意的な運用は許されないという整理である。

4-7 第8項 災害等の場合の開会の日の変更

令和4年改正で新設された規定である。招集の告示をした後に、災害その他やむを得ない事由により当該開会の日に会議を開くことが困難であると認めるときは、告示をした者が開会の日を変更できる。変更後は、変更後の開会の日と変更の理由を告示しなければならない。

改正前の取扱いは正反対であった。昭和26年9月10日付け名古屋市議会事務局長宛て行政課長回答は、「長が議会招集の告示をした後は、その招集期日は、原則として変更できず、例外的に、客観的に必要やむを得ないと認められる理由がある場合に限り、変更することができると解してよいか」との問いに対し、「長が招集期日を変更することはできない」と回答していた。この行政実例は、令和4年12月16日総行行第355号「地方自治法の一部改正に伴う地方議会制度の運用について(通知)」により廃止された。

改正前は、告示後に災害が発生した場合、いったん開会したうえで直ちに休会とするといった技巧的な処理を強いられていた。第8項はこの迂回を不要にした。

「災害その他やむを得ない事由」には、地震・風水害のほか、感染症のまん延など会議の開催自体を困難にする事情が広く含まれると解される。理由の告示が義務づけられているのは、開会日の変更が住民の傍聴機会や議会の審議日程に影響するため、判断過程を可視化させる趣旨である。

なお、変更後の開会の日について改めて第7項の告示期間(市であれば7日)を確保する必要があるかについて、総務省の通知は明示していない。第8項は独自の告示義務を課す規定であって第7項の告示とは性質を異にすると読むのが素直であるが、災害の性質上、可及的速やかに変更告示を行い、議員および住民への周知期間を実質的に確保する運用が望ましい。

5 用語解説

招集  議会に対し、一定の日時・場所に集会して活動を開始すべきことを命じる行為。これにより議会は活動能力を取得する。会議を実際に開始する「開会」、その日の会議を開始する「開議」とは区別される。

告示  一定の事項を住民一般に公示する行為。招集は告示によって行われる。地方自治法上、告示の方法についての一般規定はなく、各団体の公告式条例による。

会期  議会が活動能力を有する期間。招集された日から起算する(標準市議会会議規則第5条第2項)。会期およびその延長、開閉に関する事項は議会が定める(法第102条第7項)。

会期不継続の原則  会期中に議決に至らなかった事件は後会に継続しないという原則(法第119条)。閉会中の継続審査(法第109条第8項)はその例外である。

定例会  付議すべき事件の有無を問わず、毎年、条例で定める回数招集される会議(法第102条第2項)。

臨時会  必要がある場合において、その事件に限り招集される会議(法第102条第3項)。あらかじめ告示された付議事件以外は審議できないのが原則であり、例外として開会中に緊急を要する事件が生じたときは直ちに付議できる(同条第6項)。

議会運営委員会  議会の運営、会議規則・委員会条例、議長の諮問に関する事項を所管する委員会(法第109条第3項)。条例で設置する。

議員定数  条例で定める議員の数(法第90条、第91条)。欠員があっても定数は変わらない。

専決処分  議会が議決すべき事件を長が代わって処分すること。招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき等に限られる(法第179条第1項)。

技術的な助言  各大臣または都道府県知事等が地方公共団体に対して行う助言(法第245条の4第1項)。総務省の通知類の多くはこれに当たり、法的拘束力はない。

是正の勧告  都道府県の執行機関が市町村の自治事務の処理について行う勧告(法第245条の6)。これも法的拘束力を伴わない。

6 判例・裁判例

6-1 機関相互間の争いと法律上の争訟

最判昭和28年5月28日(議会招集請求事件)は、地方公共団体の長を被告として議会を招集すべき旨の判決を求める議員の訴えを不適法とした。理由として、普通地方公共団体の機関相互間の争いについては、法律に特別の規定のない限り、法律上の争訟として裁判所への訴訟提起は許されないと解するのが相当であると判示している。

この判決は現在も生きている。長が招集しない場合に、議員が裁判所を通じて招集を強制する道は原則として閉ざされている。第101条第5項・第6項が議会内部の自力救済として設計されたのは、この司法的救済の不在を前提としているためである。実務上も、招集をめぐる紛争は訴訟ではなく、都道府県知事等による是正の勧告、住民によるリコール、選挙という政治的経路で処理されてきた。

6-2 部分社会論の見直しとの関係

最大判令和2年11月25日(岩沼市議会議員出席停止事件)は、議員に対する出席停止の懲罰の適否は常に司法審査の対象となるとし、昭和35年10月19日大法廷判決を変更した。地方議会の自律性を理由に司法審査を広く排除する従来の考え方は、この判決により大きく修正された。

もっとも、令和2年判決が問題としたのは議員個人の権利義務に対する処分であり、機関相互間の権限争議とは局面が異なる。招集をめぐる長と議会の対立に司法審査が及ぶかについて、令和2年判決から直ちに結論は導けない。この点を正面から扱った最高裁判例は、現時点では見当たらない。招集手続の瑕疵が議決の効力に及ぼす影響についても、最高裁が判断を示した例は乏しいのが実情である。

6-3 国レベルとの対比

最判令和5年9月12日(憲法53条違憲国家賠償等請求事件、民集77巻6号1515頁)は、憲法第53条後段の規定により臨時会の召集を要求した国会議員が、内閣による召集決定の遅滞を理由として国家賠償請求をすることはできないと判示した(反対意見がある)。事案は、平成29年6月22日に衆参両院の総議員の4分の1以上の議員が召集を要求したのに対し、内閣が召集を決定したのが同年9月22日、実際の召集が9月28日であり、召集当日に衆議院が解散されたというものである。

4分の1以上の要求という要件は地方自治法第101条第3項と共通する。しかし憲法第53条には期限の定めがなく、要求が放置された場合の代替的な召集主体も存在しない。これに対し地方自治法は、20日という明示の期限(第4項)と、期限徒過時に議長が招集する仕組み(第5項・第6項)を備えている。少数派の会議招集要求権という同じ発想から出発しながら、地方制度のほうが手続的な担保において先行しているというのが、両者を並べたときの構図である。昇任試験の論文で二元代表制と議院内閣制の差異を論じる際、有効な素材となる。

7 施行令・施行規則との関係

7-1 第101条に対する政令・省令の委任はない

地方自治法施行令にも施行規則にも、第101条を直接受けた規定は置かれていない。招集告示の様式も定められていない。したがって告示の書式は、各団体の公告式条例と例規集の様式によることになる。第101条は法律だけで完結する条文である、というのが正確な理解である。

もっとも、招集義務が問題となる場面は第101条に限られず、そこでは施行令が具体的な手続を定めている。実務では以下の連動を押さえておく必要がある。

7-2 直接請求に伴う招集義務と施行令

条例の制定改廃の直接請求があったとき、長は請求を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を付けてこれを議会に付議しなければならない(法第74条第3項)。この20日は第101条第4項とは別個の招集義務であり、条文上も「二十日以内に議会を招集し」と明記されている。

施行令はこれに続く手続を定める。長は議会の審議の結果を条例制定又は改廃請求代表者に通知するとともに、これを告示し、かつ、公衆の見やすいその他の方法により公表しなければならない(施行令第98条第2項)。また議会は、法第74条第4項により請求代表者に意見を述べる機会を与えるときは、その日時、場所その他必要な事項を請求代表者に通知するとともに、これらの事項を告示し、公衆の見やすいその他の方法により公表しなければならない(施行令第98条の2第1項)。請求代表者が複数であるときは、意見陳述の機会を与える者の数を議会が定める(同条第2項)。

直接請求を受けて招集する臨時会では、招集告示(法第101条第7項)とは別に、この意見陳述に関する告示が必要になる。告示が二本立てになる点は、実務でとりわけ間違えやすい。

事務の監査請求に係る個別外部監査の請求についても、長は通知があった日から20日以内に議会を招集して付議しなければならない(法第252条の39第4項)。

通年の会期を採用した議会では、これらの「二十日以内に議会を招集し」との文言が「二十日以内に」と読み替えられる(法第102条の2第8項)。招集行為が観念されないためである。

7-3 招集を要しない場合との対比

施行令第137条第1項は、選挙管理委員会が成立しないとき、委員会を招集する暇がないと認めるとき等に、委員長が委員会の議決すべき事件を処分できると定める。長の専決処分(法第179条第1項)が平成24年改正で「議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」と要件を厳格化されたのに対し、施行令第137条は「招集する暇がないと認めるとき」という旧来の文言を残している。招集義務と専決処分の関係を論じる際、両者の文言差は指摘に値する。

7-4 施行規則とオンライン化

施行規則には招集に関する様式の定めはないが、令和6年1月施行の改正により、地方議会に係る手続のオンライン化に関する規定が整備された(施行規則第12条の2の3から第12条の2の9まで)。これらは法第138条の2を受けたもので、議会等に対して行われる通知および議会等が行う通知を、電子情報処理組織を使用する方法により行えるようにするものである。

注意すべきは適用範囲である。法第138条の2が対象とするのは「議会等」すなわち議会または議長に対して行われる通知と、議会等が行う通知である。第101条第2項・第3項の招集請求は長に対して行うものであるから、この枠組みの外にある。オンライン化が進んでも、招集請求書の提出方法は各団体の運用に委ねられている。

8 データで見る招集の実態

全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果」により、招集の実態を数字で確認する。母数は全国815市である。

区分令和5年中令和6年中
通年会期制を採用している市56市58市
定例会を年4回開催した市756市754市
市長招集の臨時会を開催した市619市(81.9%)533市(70.7%)
議長請求による臨時会を開催した市56市(7.4%)40市(5.3%)
議員請求による臨時会を開催した市35市(4.6%)20市(2.7%)
議長招集の臨時会を開催した市1市(0.1%)2市(0.3%)
開会の日の変更(法第101条第8項)の事例1市1件7市7件

※割合は、定例会を年4回開催した市を基準としたもの。

読み取るべき点は三つある。

第一に、臨時会の圧倒的多数は長の判断による招集である。令和6年中でも市長招集の臨時会は533市で行われ、平均開催回数は1.7回であった。

第二に、議長または議員の請求による臨時会は合わせて年60市程度にとどまる。請求という手段自体、日常的に用いられるものではない。

第三に、そして最も注目すべきは、第5項・第6項に基づく議長招集の臨時会が令和5年中に1市、令和6年中に2市しか記録されていないことである。平成24年改正から10年以上を経てなお、年間で数えるほどしか発動されていない。この規定は、頻繁に使われるための道具ではなく、長が招集義務を果たさないという事態そのものを抑止するための担保として機能していると評価できる。抑止が効いている限り発動されない、という性格の規定である。

9 開会日変更(第8項)の実例

令和4年12月の施行以来、実際に第8項が用いられた事例が調査に現れている。

令和5年中は1市1件であった。沖縄県豊見城市が臨時会について招集日を変更しており、その理由は、台風襲来により招集することで被災する可能性があること、および市役所が閉庁となることが見込まれていたことから執行部の対応が困難であったため、とされている。会議を開くこと自体の物理的困難だけでなく、執行機関側の対応能力の低下も「やむを得ない事由」の考慮要素とされた点が示唆的である。

令和6年中は7市7件に増加した。茨城県取手市、佐賀県小城市、長崎県諫早市、大分県杵築市、宮崎県延岡市、宮崎県日向市、宮崎県西都市であり、いずれも定例会について、理由は災害とされている。7市のうち6市が九州地方に所在しており、同年夏の台風・地震に係る事情がうかがえる。

改正前であれば、これらの団体は告示した開会日に形式的に開会したうえで直ちに休会とするか、あるいは招集自体を撤回できるかという解釈上の難問に直面していたはずである。第8項は、災害対応と議会運営を両立させるための実務的な受け皿として、既に定着し始めている。

10 実務のポイント

招集の事務は、日程を一日間違えれば議会そのものの適法性が問われる性質を持つ。以下の点を確認したい。

請求書の到達日を記録する。第4項の20日、第6項の10日・6日はいずれも受理日または申出日から起算される。収受印の日付が起算点の証拠となる。

開会日から逆算する。市であれば開会日の7日前が告示期限である。請求受理から20日以内に開会する必要があるため、実質的な準備期間は13日程度しかない。補正予算の調製が間に合うかを最初に確認する。

議会運営委員会の議決録を残す。第2項の請求は議会運営委員会の議決が要件であり、議決を欠いた請求は第2項の請求としての効力を持たない。この場合、第4項の招集義務も第5項の議長招集権も発生しない。

付議事件の告示を忘れない。臨時会では、招集告示(第101条第7項)とは別に、付議すべき事件の告示(法第102条第4項、議長招集の場合は同条第5項)が必要である。二本の告示を一枚の告示文で行う団体が多いが、法的根拠は別である。

会議規則との接続を確認する。標準市議会会議規則では、議員は招集の当日開議定刻前に議事堂に参集し、その旨を議長に通告しなければならず(第1条)、公務、疾病、育児、看護、介護、配偶者の出産補助その他のやむを得ない事由のため出席できないときは当日の開議時刻までに議長に届け出るものとされている(第2条)。会期は招集された日から起算する(第5条第2項)。定足数を欠く場合の出席催告の方法についても定めがある(第13条、法第113条)。

告示後の変更は理由まで告示する。第8項は変更後の開会の日だけでなく変更の理由の告示も義務づけている。理由の記載が欠ける告示は、規定の要求を満たさない。

11 地方公務員法との関係

招集に関する事務は、長が招集する場合は長部局(総務課等)が、議長が招集する場合は議会事務局が担う。議会事務局の職員は議長が任免し(法第138条第5項)、その任用、給与、服務、分限および懲戒その他身分取扱いに関しては地方公務員法の定めるところによる。議長招集という局面では、事務局職員は長部局の指揮監督を受けずに告示の起案から公示までを処理することになるため、平時から公告式条例上の掲示手続を事務局単独で完結できるよう確認しておくことが望ましい。この点は、長と議会が対立している状況でこそ意味を持つ準備である。

12 関連条文

法第16条第2項(条例の公布義務と20日の期限) 法第74条第3項・第4項(直接請求に伴う招集義務と意見陳述) 法第102条(定例会・臨時会、会期、付議事件の告示) 法第102条の2(通年の会期、定例日) 法第109条第1項・第3項(議会運営委員会) 法第113条(定足数、出席催告) 法第119条(会期不継続の原則) 法第121条第1項(長等の出席義務) 法第152条(長の職務代理) 法第178条(不信任議決と解散) 法第179条第1項(専決処分) 法第245条の4第1項(技術的な助言)、法第245条の6(是正の勧告) 施行令第98条第2項、第98条の2(直接請求に係る告示・公表) 施行令第137条(選挙管理委員会の専決処分) 施行規則第12条の2の3から第12条の2の9まで(議会関係手続のオンライン化)

13 昇任試験の視点

第101条は、条文の数字を問う択一だけでなく、論文でも問われうる条文である。出題されやすい切り口を挙げる。

二元代表制における招集権の所在を論じさせる問題では、長への専属という原則、議会側の請求権、平成24年改正による例外の順に構造を示し、阿久根市の事例と最判昭和28年5月28日を引いて司法的救済が働かないことを述べ、第5項・第6項が制度内在的な担保として設計された経緯を結論に据えるとまとまりがよい。

災害対応と議会運営を論じさせる問題では、第8項の新設、廃止された昭和26年の行政実例、令和2年4月10日事務連絡による第7項ただし書の解釈という三点を押さえたうえで、自団体のBCPと議会日程の関係に言及すると具体性が出る。

数字の暗記事項は、20日、10日、6日、7日、3日、4分の1である。誰の請求に対して誰が何日以内に何をするのかを、主語と一緒に覚えることが肝要である。


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