1 条文原文

第百二条の二 普通地方公共団体の議会は、前条の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とすることができる。

② 前項の議会は、第四項の規定により招集しなければならないものとされる場合を除き、前項の条例で定める日の到来をもつて、普通地方公共団体の長が当該日にこれを招集したものとみなす。

③ 第一項の会期中において、議員の任期が満了したとき、議会が解散されたとき又は議員が全てなくなつたときは、同項の規定にかかわらず、その任期満了の日、その解散の日又はその議員が全てなくなつた日をもつて、会期は終了するものとする。

④ 前項の規定により会期が終了した場合には、普通地方公共団体の長は、同項に規定する事由により行われた一般選挙により選出された議員の任期が始まる日から三十日以内に議会を招集しなければならない。この場合においては、その招集の日から同日後の最初の第一項の条例で定める日の前日までを会期とするものとする。

⑤ 第三項の規定は、前項後段に規定する会期について準用する。

⑥ 第一項の議会は、条例で、定期的に会議を開く日(以下「定例日」という。)を定めなければならない。

⑦ 普通地方公共団体の長は、第一項の議会の議長に対し、会議に付議すべき事件を示して定例日以外の日において会議を開くことを請求することができる。この場合において、議長は、当該請求のあつた日から、都道府県及び市にあつては七日以内、町村にあつては三日以内に会議を開かなければならない。

⑧ 第一項の場合における第七十四条第三項、第百二十一条第一項、第二百四十三条の三第二項及び第三項並びに第二百五十二条の三十九第四項の規定の適用については、第七十四条第三項中「二十日以内に議会を招集し、」とあるのは「二十日以内に」と、第百二十一条第一項中「議会の審議」とあるのは「定例日に開かれる会議の審議又は議案の審議」と、第二百四十三条の三第二項及び第三項中「次の議会」とあるのは「次の定例日に開かれる会議」と、第二百五十二条の三十九第四項中「二十日以内に議会を招集し」とあるのは「二十日以内に」とする。

2 趣旨・立法背景

2-1 会期制という前提

地方議会は常設の機関ではあるが、常時活動できる機関ではない。議会が現実に権限を行使できるのは会期中に限られ、これを会期制という。会期中に議決に至らなかった事件は後会に継続しない(法第119条)。閉会中に議会が動けるのは、議決により付議された特定の事件についての委員会審査(法第109条第8項)など限られた場面だけである。

この構造には二つの弱点が組み込まれていた。第一に、招集権は長が独占していた(法第101条第1項)。長が招集しなければ、議会は法的に存在していても活動できない。第二に、閉会中に議決すべき事件が生じれば、長は専決処分(法第179条第1項)で処理できてしまう。会期制は、長の招集権と専決処分権を通じて、二元代表制の均衡を長の側に傾ける装置として働きうる。

国会の会期は憲法第52条から第54条までが常会・臨時会・特別会・参議院の緊急集会を直接定めており、法律で会期制そのものを外すことはできない。これに対し地方議会の会期は憲法上の要請ではなく法律事項にすぎず、だからこそ法律の改正によって通年化の選択肢を開くことができた。国の制度をそのまま地方に持ち込んで考えると誤る典型例である。

2-2 実務が先行した「通年議会」

法改正に先立ち、現場は既存制度の運用で通年化を実現していた。法第102条第2項は定例会の回数を条例に委ねているから、定例会を年1回と定め、その会期を約1年とすれば、実質的に会期が途切れない議会になる。全国で最初にこの方式を採ったのは北海道白老町議会で、平成20年6月からとされる。議会基本条例で会期を1年と定める手法が続き、平成24年4月には長崎県議会が都道府県として最初に通年議会に移行した。

この運用型を、以下では「通年議会」と呼び、法第102条の2に基づく法定の制度を「通年の会期」ないし「通年会期制」と呼んで区別する。両者はよく混同されるが、根拠条文も法律効果も異なる。

2-3 立法事実としての阿久根市

制度化の直接の引き金は、鹿児島県阿久根市で平成22年に起きた事態である。竹原信一市長は6月定例会を招集せず、職員の賞与半減や副市長の選任を含む専決処分を繰り返した。鹿児島県知事は法第245条の6に基づく是正の勧告を2度行ったが、勧告に法的拘束力はなく従われなかった。同年9月21日、片山善博総務大臣は記者会見で一連の専決処分を違法と述べ、あわせて議会側に招集権を持たせることが解決策の一つであるとの考えを示した。8月下旬に約半年ぶりに開かれた市議会は専決処分の大半を不承認としたが、市長は専決処分が議会の議決に優先すると主張した。同市ではその後、市長解職と議会解散の住民投票が相次いで成立している。

議会が招集されなければ何もできないという会期制の弱点が、これほど分かりやすく露呈した例はない。総務省の地方行財政検討会議(平成22年1月総務大臣決定)における議論を経て、「地方自治法抜本改正についての考え方」(平成23年1月26日)が示され、平成24年法律第72号による改正に結実した。

2-4 平成24年改正のパッケージ

平成24年9月5日に公布・同日施行された改正は、会期と招集の場面を一括して手当てした。本条の新設のほか、議長が議会運営委員会の議決を経て臨時会の招集を請求できること(法第101条第2項)、請求から20日以内に長が招集しないときは議長が臨時会を招集できること(同条第5項・第6項)、専決処分の要件を「議会を招集する暇がないと認めるとき」から「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」に改めたこと(法第179条第1項)、長等が出席できない正当な理由を議長に届け出たときは議場出席義務を解除すること(法第121条第1項ただし書)が、同じ改正に含まれている。本条だけを切り離して読むと、改正の意図を取り落とす。

総務省の改正イメージ資料は、通年会期制の狙いを、多様な層の幅広い住民が議員として活動できるようにする観点から、予見可能性のある形で定期的に会議を開く議会運営を条例で選択できるようにすることと説明している。想定された運用例として、毎月第2水曜日の18時から20時までといった夜間開催が挙げられ、予算・決算は2月から3月および10月から11月に定例日を集中的に置くか委員会付託で処理するという設計が示されている。会期の長期化それ自体ではなく、勤労者が議員を務められる議会カレンダーの再設計が本来の主眼であった点は、試験でも実務でも押さえておきたい。

2-5 その後の改正状況

本条は平成24年の創設以降、実質的な改正を受けていない。周辺では、令和4年法律第101号が災害その他やむを得ない事由による招集日の変更を認めたが(法第101条第8項)、通年会期制の団体では毎年の招集行為自体が存在しないため、この規定が働くのは第4項による改選後の招集の場面に限られる。令和5年法律第19号は議員の職務の明確化(法第89条第3項)と議会等に対する通知等のオンライン化(法第138条の2)を導入した。令和8年(2026年)の改正としては、第16次地方分権一括法(令和8年法律第27号)が財産区の議会・総会の設置手続等を、防災庁設置法の施行に伴う整備法(令和8年法律第62号)が関係規定を改めているが、いずれも本条には及んでいない。

3 用語解説

会期とは、議会が活動能力を有する期間をいう。開会日から閉会日までであり、この期間外に本会議を開いても法的な効力は生じない。

会期不継続の原則とは、会期中に議決に至らなかった事件は後会に継続しないという原則で、法第119条に明文がある。通年会期制では会期が1年間続くため、その1年の中では審議が自然に継続する。ただし会期が終われば同じ原則が働くから、年度をまたぐ継続審査には従前どおり法第109条第8項の議決が要る。

一事不再議とは、同一会期中に議決した事件を再び提出できないという原則で、法律上の明文はなく標準会議規則に置かれている。会期が1年になると、この原則が1年間効き続けることになるため、通年会期制への移行に際しては会議規則の「同一会期中」という文言を「同一審議期間中」等に改めるかどうかが実務論点になる。新潟県上越市議会が導入検討の際にこの点を明示的に整理しているのは、参考になる先例である。

みなし招集とは、第2項が定める仕組みで、条例で定めた日が到来すれば、長が現実に招集行為をしなくても、その日に長が招集したものとみなされる効果をいう。

定例日とは、第6項が定める「定期的に会議を開く日」であり、条例で定めることが義務づけられている。定例日には招集も告示も要らず、当然に会議が開かれる。

読替規定とは、第8項が置く技術的規定で、他の条文が「議会を招集し」「次の議会」といった会期制を前提とする文言を用いている場合に、通年会期制の下で意味が通るよう文言を置き換えるものである。

4 各項の逐条解説

4-1 第1項 通年の会期の選択

「前条の規定にかかわらず」とあるとおり、本条は法第102条の定例会・臨時会という枠組みそのものを外す。通年会期制を採る議会には、定例会も臨時会も存在しない。したがって臨時会の付議事件の告示(法第102条第4項)も、会期の議決(同条第7項)も適用されない。会期の終期は「翌年の当該日の前日」と法定されており、議会の議決で会期を延長したり短縮したりすることはできない。この点は、会期を議会が自ら決める法第102条第7項の世界とまったく異なる。

条例で定めるべきは会期の始期となる日である。年度単位とするか暦年単位とするかは団体の選択で、栃木県議会は「栃木県議会の会期に関する条例」により平成25年4月1日から4月1日を始期としている。柏崎市議会は平成25年5月1日から5月1日を始期とし、会期は毎年5月1日から翌年4月30日までである。北海道森町・日高町は平成25年1月1日、福島県小野町は平成26年1月1日、北海道洞爺湖町は平成26年5月1日、岩手県葛巻町は葛巻町議会総合条例により平成26年1月20日から施行している。改選期をどこに置くかによって始期の選び方が変わるため、任期満了日との関係を条例立案段階で必ず検算しておく必要がある。

4-2 第2項 みなし招集

第2項は、条例で定めた日の到来という事実だけで招集の効果を発生させる。長の招集告示(法第101条第7項)も不要である。結果として長が現実に招集しなければならないのは第4項の場合、すなわち任期満了・解散・議員が全てなくなったことによる一般選挙の後に限られる。議員の任期は4年であるから、長の招集行為は原則として4年に1度で足りることになる。

阿久根市で起きたような招集拒否が構造的に成立しなくなるのは、この項の効果である。長の意思にかかわらず会期が始まり、議長の判断で会議を開けるからである。

4-3 第3項 会期の中途終了

会期の途中で議員の任期が満了したとき、議会が解散されたとき、議員が全てなくなったときは、その日をもって会期が終了する。議員が存在しない、あるいは総入替えとなる状態で会期だけが継続するのは背理だからである。「議員が全てなくなつたとき」は、辞職・失職・死亡等により在任議員が皆無となる場合を指す。

会期が終了する以上、会期不継続の原則が働き、審議中の事件は消滅する。解散請求が成立した団体では、継続審査中の重要案件が一斉に落ちるという実務上の帰結が生じる。

4-4 第4項 改選後の招集と端数会期

第3項により会期が終了した場合、長は、その事由により行われた一般選挙で選出された議員の任期が始まる日から30日以内に議会を招集しなければならない。ここは「できる」ではなく義務である。そして、この招集の日から、その後最初に到来する第1項の条例で定める日の前日までが会期となる。1年に満たない端数の会期が生じるわけである。

具体例で確認する。会期の始期を5月1日と定めている市で、令和8年3月に議会が解散されたとする。解散の日に会期は終了する(第3項)。一般選挙で選出された議員の任期開始日から30日以内に市長が招集し、仮に4月10日に招集したとすれば、会期は4月10日から4月30日までとなる。5月1日からは第2項のみなし招集により通常の1年間の会期が始まる。

4-5 第5項 端数会期への準用

第4項後段の端数会期についても、第3項が準用される。端数会期の途中でさらに解散等があれば、その日に会期は終了し、あらためて第4項が働く。想定しにくい事態ではあるが、不信任議決と解散の応酬が続いた場合には現実味を帯びる。

4-6 第6項 定例日を定める義務

通年会期制を採る議会は、条例で定例日を定めなければならない。任意ではなく義務であり、定例日を定めない条例は本項に反する。会期が1年になった以上、いつ会議が開かれるか分からない状態を放置すれば、住民にとっても執行機関にとっても予見可能性が失われるからである。

定め方は団体の裁量に委ねられている。毎月第2水曜日といった月次型、3月・6月・9月・12月の特定期間を定める従来の定例会に近い型、両者を組み合わせる型が実際に用いられている。柏崎市議会は2月・6月・9月・12月に定期的に会議を開き、これを「定例会議」と呼び、それ以外に必要に応じて開く会議を「随時会議」と呼んでいる。栃木県議会の令和3年の定例日は、6月・9月・10月・11月・12月・2月・3月に合計21日が設定されており、実際の議事日程に即して細かく指定する方式が採られている。

定例日は、後述する第8項による法第121条第1項の読替の基準にもなる。定例日をどう設計するかは、長や委員会の代表者の議場出席義務の範囲を実質的に決めることを意味する。

4-7 第7項 長の会議開催請求権

長は、議長に対し、付議すべき事件を示して、定例日以外の日に会議を開くよう請求できる。請求を受けた議長は、都道府県および市にあっては7日以内、町村にあっては3日以内に会議を開かなければならない。「開くことができる」ではなく「開かなければならない」であるから、議長に裁量はない。

比較すべきは法第101条第4項である。通常の定例会・臨時会制の下では、議長や議員定数の4分の1以上の者からの請求に対し、長は20日以内に臨時会を招集すればよい。通年会期制では7日以内(町村3日以内)で会議が開かれる。長にとって、議案審議の機動性はむしろ高まるのである。通年会期制を長の権限縮小とだけ捉えるのは正確ではない。

4-8 第8項 読替規定

四つの読替が置かれている。いずれも、他の条文が「議会を招集し」「次の議会」という会期制前提の表現を用いていることに対応するものである。

法第74条第3項は、条例の制定改廃の直接請求について、長が請求を受理した日から20日以内に議会を招集して意見を付して付議すべきものとしている。通年会期制では招集が不要なので、「二十日以内に議会を招集し、」を「二十日以内に」と読み替え、20日以内に付議すれば足りることになる。

法第121条第1項は、長や委員会の代表者等が議長から出席を求められたときの議場出席義務を定める。「議会の審議」を「定例日に開かれる会議の審議又は議案の審議」と読み替えることで、出席義務が生じる場面を定例日の会議と議案審議の場面に限定した。会期が1年間続くことを理由に執行機関の幹部を1年中議場に拘束する事態を避ける趣旨である。あわせて、法第121条第2項は、法第102条の2第1項の議会の議長は出席を求めるに当たり執行機関の事務に支障を及ぼさないよう配慮しなければならないと定めており、通年会期制の議会を名指しした唯一の規定となっている。

法第243条の3第2項・第3項は、第三セクター等の経営状況を説明する書類および信託に係る事務処理状況を説明する書類を「次の議会」に提出すべきものとしている。これを「次の定例日に開かれる会議」と読み替える。

法第252条の39第4項は、事務監査請求に係る個別外部監査の請求があった場合に、長が通知の日から20日以内に議会を招集して付議すべきものとしている。ここも招集部分が落ちる。

読替が置かれていない条文にも注意が要る。法第179条第3項は専決処分について「次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない」と定めており、もともと「会議」を基準としているから読替は不要である。法第180条第2項の委任専決の報告も同様である。条文が「議会」と書いているか「会議」と書いているかで、読替の要否が分かれると理解しておくとよい。

5 施行令・施行規則との関係

5-1 直接の委任規定は存在しない

まず率直に述べておくと、地方自治法施行令には本条を直接受ける規定が置かれていない。会期および招集に関する事項について、法が政令に委任していないからである。施行令の条文を通読しても、通年会期制の読替や手続を定めた条項は見当たらない。この点を曖昧にしたまま「施行令で定められている」と書く解説は誤りである。

もっとも、通年会期制を採用した団体の財務・議事実務は、施行令および施行規則の複数の規定と現実に噛み合う。実務で参照すべきものを以下に挙げる。

5-2 繰越計算書の議会報告

施行令第145条第1項は継続費の逓次繰越しを認め、同条第2項は、長は翌年度の5月31日までに継続費繰越計算書を調製し、「次の会議」においてこれを議会に報告しなければならないと定める。施行令第146条第2項も、繰越明許費に係る繰越計算書について同様に「次の会議」における報告を求めている。施行令第150条第3項は、事故繰越しについて第146条を準用する。

ここで重要なのは、これらの政令が「次の議会」ではなく「次の会議」と規定している点である。法第243条の3第2項・第3項が「次の議会」と書いていたために本条第8項の読替を必要としたのとは対照的に、施行令第145条・第146条は文言上そのまま通年会期制に適合する。読替を経ずに機能するため、通年会期制の団体では、5月31日の調製期限後に最初に開かれる会議が報告の場となる。定例日を5月から6月に置いていない団体では、報告のタイミングを議会運営委員会であらかじめ確認しておかないと、報告が数か月遅れる事態が生じうる。

各計算書の様式は施行規則に定められている。継続費繰越計算書および継続費精算報告書は施行規則第15条の3、繰越明許費繰越計算書は同第15条の4、事故繰越し繰越計算書は同第15条の5の別記様式による。施行令第145条第3項・第146条第3項が、これらの様式を総務省令で定める様式を基準としなければならないとしていることの受け皿である。

5-3 直接請求の付議に伴う手続

本条第8項により法第74条第3項の招集部分は落ちるが、直接請求に伴う手続そのものは変わらない。施行令第98条の2は、議会が法第74条第4項の規定により条例制定改廃請求代表者に意見を述べる機会を与えるときは、代表者に日時・場所その他必要な事項を通知するとともに、これらの事項を告示し、かつ公衆の見やすいその他の方法により公表しなければならないと定めている。通年会期制では招集告示(法第101条第7項)が行われないため、住民から見て会議の開催が事前に分かる公示は、定例日を定めた条例と、この施行令第98条の2による告示等に依存することになる。直接請求案件の付議に当たっては、この告示を落とさないことが実務上の要点である。

なお、条例制定改廃請求書等の様式は施行規則第9条の別記様式、事務監査請求書等は同第10条によるものとされている。本条第8項が読み替える法第252条の39第4項に関しては、事務の監査の請求に係る個別外部監査請求書の様式が施行規則第17条の9に定められている。

5-4 請願等のオンライン化

法第138条の2第1項は、議会等に対して行われる通知のうち文書等により行うことが規定されているものについて、総務省令で定める電子情報処理組織を使用する方法により行うことを認めている。この電子情報処理組織の内容、入力の方法および電子署名の要否は施行規則第12条の2の3から第12条の2の9までに定められている。

法第124条は請願書の提出を文書によることとしているから、請願はこの仕組みによりオンラインで提出できる。通年会期制では会期が途切れないため、請願の受理と委員会付託を年間を通じて随時行える。閉会中の請願を次の定例会まで塩漬けにするという運用が構造的に消えるのは、通年会期制の隠れた利点である。オンライン提出を受ける場合は、施行規則第12条の2の4第2項ただし書に基づき、議会が定める方法により提出者を確認する措置を講じておく必要がある。

6 判例・裁判例

6-1 本条を正面から扱った判例は乏しい

本条の解釈が直接争われた最高裁判例は、現時点では見当たらない。通年会期制の採用が45団体にとどまることを考えれば当然でもある。第7項の会議開催請求に議長が応じない場合の争訟方法についても、確立した裁判例はない。この点は率直に空白として認識しておくべきである。以下では、本条の理解に直結する裁判例を取り上げる。

6-2 東京地判令和6年2月22日(小金井市立保育園廃止条例専決処分事件)

小金井市では、市立保育園2園を段階的に廃止する条例改正案が市議会で継続審査となっていたところ、市長(当時)が令和4年に専決処分でこれを制定した。議会は事後の報告に対し承認しなかった。市長交代後、廃止条例を廃止する条例案も否決され、混乱が続いた。廃園を理由に入園を認められなかった児童の母親が提訴した事件で、東京地裁(岡田幸人裁判長)は令和6年2月22日、専決処分を違法と判断した。

判決は、市議会が条例について十分に審査し議決に向けて審議を重ねていたことを指摘し、議会が機能を発揮しなくなっていたとするのは相当でなく、法第179条第1項の要件を満たさないことは明らかであるとした。建物の老朽化等の事情を考慮しても緊急性が客観的に高かったとはいえず、議決を得ることが社会通念上不可能な場合ではないとしている。そのうえで、違法な専決処分に基づく条例改正は無効であり、入園不許可処分を取り消し、市に慰謝料10万円の支払いを命じた。専決処分の違法を理由に条例改正の効力まで否定した点で、異例の判断として報じられた。

この判決は通年会期制と直接の関係はないが、示唆は大きい。議会が現に審議できる状態にあるときは、法第179条第1項の緊急性要件は満たされない。通年会期制の下では会期が常に継続しており、しかも第7項により長は7日以内(町村3日以内)に会議を開かせる請求権を持つ。「議会を招集する時間的余裕がないことが明らかである」と評価できる場面は、事実上ほぼ消滅する。文京区議会が、通年議会の導入以降は法第179条第1項に基づく長の専決処分を行っていないと公表しているのは、この構造の裏づけである。裏返せば、通年会期制の団体で専決処分を行えば、その適法性は小金井市判決の物差しで厳しく検証されることになる。

6-3 最大判令和2年11月25日(岩沼市議会出席停止事件)

最高裁大法廷は、市議会議員に対する23日間の出席停止の懲罰決議とこれに伴う議員報酬減額の適否について、出席停止の懲罰は常に司法審査の対象となると判示し、除名以外は司法審査が及ばないとしていた最大判昭和35年10月19日(米内沢町議会事件)を変更した。議会の自律性を尊重しつつも、住民の直接選挙で選ばれた議員の地位に照らし、出席停止が議員としての中核的な活動を妨げる点を重視した判断である。

通年会期制との関係では、出席停止の日数設計が問題になる。会期が1年間続くため、「会期の残り期間」を単位に処分を設計すると著しく長期化しうる。司法審査が及ぶことが確定した以上、処分日数の比例性は慎重に検討しなければならない。

6-4 阿久根市の一連の事態

阿久根市の招集拒否と専決処分の連鎖は判決の形では決着していないが、都道府県知事による是正の勧告(法第245条の6)が法的拘束力を持たないこと、専決処分が不承認とされてもその効力自体は失われないことという制度の限界を可視化した。本条および法第101条第5項・第6項は、この限界に対する立法的応答である。昇任試験で通年会期制の趣旨を論じる際は、条文の効果を並べるだけでなく、この立法事実に触れると答案の説得力が増す。

7 全国の運用実態

7-1 導入団体数

総務省が公表する「地方議会の運営の実態」(令和6年から令和7年時点の各種調査を集計したもの)によれば、法第102条の2による通年会期制を採用しているのは、都道府県1団体、市区14団体、町村30団体の計45団体である。市区の内訳は人口5万人未満が6団体、5万人以上10万人未満が5団体、10万人以上20万人未満が1団体、20万人以上30万人未満が2団体で、30万人以上の市および指定都市には採用例がない。

これに対し、法第102条第2項により定例会を年1回として運用する通年議会は、都道府県2団体、市区44団体、町村39団体の計85団体にのぼる。法定制度よりも運用型のほうが倍近く多いという逆転現象が、この分野の特徴である。議会カレンダーを根本から作り直す必要がなく、従来の定例会のリズムを維持したまま移行できることが、運用型が選ばれる理由と考えられる。

団体名は総務省「地方自治月報第61号」(令和5年4月1日現在)で確認できる。当時の通年会期制採用団体は1県14市29町村の44団体で、県は栃木県、市は久慈市、福島市、常総市、坂東市、秦野市、厚木市、柏崎市、鳥羽市、守山市、四條畷市、丹波篠山市、浜田市、小松島市、三好市である。運用型の通年議会には三重県、滋賀県、京都市、相模原市、金沢市、文京区、墨田区、荒川区、青梅市、あきる野市などが名を連ねている。

7-2 会期日数との対比

同じ総務省資料によれば、通年会期等を採用している団体を除いた年間平均会期日数は、町村44.9日、都道府県113.3日、指定都市111.6日、その他の市区は人口規模に応じて86.2日から110.5日である。定例会の平均開催数はいずれの区分でも年4.0回前後、臨時会は町村で年3.0回、都道府県で年0.8回となっている。

町村の44.9日という数値は、年間320日余りが閉会中であることを意味する。この期間、議会は法第109条第8項による委員会審査を除いて活動能力を持たない。通年会期制の議論は、抽象的な議会改革論ではなく、この320日をどう扱うかという具体的な問題である。

7-3 導入団体の運用例

栃木県議会は、法改正により年をまたぐ会期設定が可能になったことを理由として、平成25年4月から年度を単位とする通年会期に移行した。都道府県で唯一の法第102条の2型である。

柏崎市議会は平成25年5月1日から通年会期制を採り、改選後や解散後の初回のみ市長が招集し、以後は毎年5月1日に自動的に会期が始まる仕組みを住民向けに説明している。2月・6月・9月・12月の「定例会議」と、必要に応じて開く「随時会議」という呼称を用い、従来の定例会のリズムを保ちながら会期を通年化した設計である。

運用型では文京区議会が平成26年5月から会期をほぼ1年とする通年議会を実施し、5月の招集議会で翌年4月までを会期とする定例会を開始したうえ、6月・9月・11月・2月に議長が定例議会を開いている。定例議会期間外の5月・7月・8月・1月・4月にも、理事者報告のための常任委員会を必要に応じて開催している。導入以降、法第179条第1項に基づく専決処分を行っていない点は前述のとおりである。

7-4 廃止例と見送り例

導入例だけを並べると制度像を見誤る。長崎県議会は平成24年4月に都道府県として最初に通年議会を導入したが、約2年で廃止した。廃止を主張する側の理由は、議会に拘束される時間が増えると議員の地域活動の時間が制約されるというものであった。松島完議員が「全国初、通年議会の廃止へ」と題する寄稿でこの顛末を公表し、議会改革の後退として論争になった。

さいたま市は議会運営委員会に諮問した結果、課題が多いとして導入しないことを決定した。横浜市は議会基本条例の制定に関する調査特別委員会で協議した結果、岡山市も議会運営委員会での検討の結果、いずれも導入を見送っている。大都市議会に採用例がないことは、統計上の傾向とも一致している。

通年会期制は、議員報酬・議員定数・議会事務局体制・議員の兼業状況といった条件と一体で機能する制度である。会期を延ばせば審議が充実するという単純な図式では動かない。導入検討の際は、定例日の設計、会議規則の一事不再議・発言取消し規定の見直し、委員会条例の委員任期の定め方、執行機関の出席負担といった論点を一つずつ潰す必要がある。

8 昇任試験の視点

出題されやすい論点を整理しておく。第一に、通年会期制は義務ではなく条例による選択制であり、法第102条の定例会・臨時会制との二者択一である点。第二に、第2項のみなし招集により長の招集行為は原則として改選後の4年に1度のみとなる点。第三に、定例日の設定は第6項により条例事項かつ義務である点。第四に、第7項の会議開催請求に対する議長の対応期限が都道府県および市7日以内、町村3日以内であり、法第101条第4項の20日と対比される点。第五に、第8項の読替対象が法第74条第3項、第121条第1項、第243条の3第2項・第3項、第252条の39第4項の四つに限られる点。第六に、通年会期制と専決処分(法第179条第1項)の関係である。

論文式では、二元代表制における議会の活動能力という観点から、会期制の弊害と本条の応答を書き起こし、阿久根市の事例と小金井市判決を具体例として配置し、導入45団体・運用型85団体という実態と長崎県議会の廃止例を踏まえた評価で締めると、構成が安定する。

9 参考資料


◆自治体研修850回超の行政書士が、係長・課長昇任試験の論文を1本から添削します。 https://compliance21.com/promotion-examination-lg/

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