一 条文原文

第百二条 普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会とする。

② 定例会は、毎年、条例で定める回数これを招集しなければならない。

③ 臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する。

④ 臨時会に付議すべき事件は、普通地方公共団体の長があらかじめこれを告示しなければならない。

⑤ 前条第五項又は第六項の場合においては、前項の規定にかかわらず、議長が、同条第二項又は第三項の規定による請求において示された会議に付議すべき事件を臨時会に付議すべき事件として、あらかじめ告示しなければならない。

⑥ 臨時会の開会中に緊急を要する事件があるときは、前三項の規定にかかわらず、直ちにこれを会議に付議することができる。

⑦ 普通地方公共団体の議会の会期及びその延長並びにその開閉に関する事項は、議会がこれを定める。

二 趣旨・立法背景

1 会期制という前提

議会は、常時活動している機関ではない。住民から選挙された議員は、招集を受けて議場に集まり、一定の期間だけ議事機関としての権能を行使し、その期間が終われば議員としての身分は残るものの、会議体としての議会は活動能力を失う。この一定の期間を会期といい、会期を単位として議会を運営する仕組みを会期制と呼ぶ。第百二条は、その会期をどのような種類の会議に区分し、誰がどこまで決めるのかを定めた基本規定である。

会期制は、執行機関が年間を通じて事務を処理するのに対し、議事機関は集中的な審議の場を確保すれば足りるという考え方に基づく。もっとも、この前提は近年強く問い直されている。監視機能を果たすには閉会中の空白が長すぎるという批判があり、その受け皿として平成二十四年に第百二条の二の通年会期が創設された。本条を読むときは、会期制が唯一の姿ではなく、条例による選択の対象になっているという現在地を押さえておく必要がある。

国会は、憲法及び国会法により常会・臨時会・特別会の三種を置き、常会の会期を百五十日と法定する。これに対し地方議会は、会期の日数を法律で定めず、回数も条例に委ねる。国と地方で会期制の骨格は共通するが、地方のほうが自主的な設計の余地が大きい。なお、地方公務員法との対比でいえば、同法は職員の勤務条件を条例事項としつつ具体的基準を法律で相当程度指定するのに対し、本条第二項の回数は上限も下限もなく、条例に全面的に委ねられている点で委任の幅が異なる。

2 改正の沿革

昭和二十二年の制定時、定例会は毎年六回以上招集すべきものとされていた。昭和二十五年の改正では、政府原案が定例会・臨時会を通常会・臨時会に改め、通常会の会期を都道府県三十日、市十日を例とすること、臨時会の招集期限を定めることなどを盛り込んだが、国会審議で削除され、定例会の回数も従前どおり据え置かれた。

昭和二十七年の改正により、定例会の開催回数が毎年六回以上から毎年四回に改められた。さらに昭和三十一年の改正で「毎年四回以内において条例で定める回数」となり、四回を上限とする条例委任の形式に転換した。平成十六年の改正は、この上限を撤廃し、現行の「毎年、条例で定める回数」に改めた。回数制限の撤廃は、後年、定例会を年一回と定めて実質的に通年運用を行う手法を可能にした点で、実務上の意味が大きい。

平成十八年の改正では、議長が議会運営委員会の議決を経て長に臨時会の招集を請求できる権限が創設された(第百一条第二項)。ただし、この時点では長が請求に応じない場合の手当てがなく、招集権が長に専属する構造は残った。

平成二十四年の改正は、本条にとって最大の転換点である。第一に、長が第百一条第二項又は第三項の請求に応じないとき、議長が臨時会を招集できることとされた(同条第五項・第六項)。第二に、これに対応して、議長が招集する場合には議長が付議事件を告示する旨の本条第五項が新設された。第三に、定例会・臨時会の区分を設けない通年会期を条例で選択できる第百二条の二が創設された。従前の第五項(緊急事件の即時付議)と第六項(会期の決定)は、それぞれ第六項・第七項に繰り下げられている。

令和四年の改正では、招集の告示後に災害その他やむを得ない事由により開会日に会議を開くことが困難な場合、告示をした者が開会日を変更できることとされた(第百一条第八項)。この改正に伴い、招集の告示をした後に当初の招集日を変更することはできないとしていた従前の行政実例が廃止されている。招集日を動かせるようになったことは、会期の始期を議会が前提とできる範囲を実務的に広げた。

なお、本条それ自体は、令和七年及び令和八年の改正によって条文の変更を受けていない。令和八年の改正では財産区の議会に関する第二百九十五条・第二百九十六条が整理され、財産区の議会又は総会には「前編中町村の議会に関する規定を準用する」旨が維持されているため、本条は財産区の議会にも準用される。また、地方公共団体の組合については第二百九十二条により本条が準用される。

3 阿久根市の事例と平成二十四年改正

平成二十二年、鹿児島県阿久根市において、市長が対立する市議会の六月定例会を招集せず、十九回にわたって専決処分を繰り返した。鹿児島県知事は第二百四十五条の六に基づく是正の勧告を二度行ったが、勧告に法的拘束力がないため状況は改善しなかった。当時の総務大臣は、市長が議会を招集していない以上その状態自体が違法であり、そこで行われた専決処分も要件を欠くとの見解を示し、議会側に招集権を付与することを含む法改正の検討に言及した。副市長選任の専決処分の効力をめぐっては、招集義務を果たさない違法状態の下で行われた処分であるとして、専決処分の要件を満たさないとする分析が学界からも示された。

この事例は、招集権が長に専属し、定例会の招集義務違反に実効的な制裁がないという制度の欠陥を可視化した。平成二十四年の改正で第百一条第五項・第六項と本条第五項が置かれたのは、この経験を直接の契機とする。第二項の「招集しなければならない」という文言が長に対する法的義務であること、その義務を怠った場合に議会側が自ら動ける経路が用意されていることは、この沿革を知って初めて意味が通る。

会期制と専決処分の関係は、現在も実務の急所である。全国町村議会議長会の第七十一回実態調査によれば、令和六年中に町村長が行った第百七十九条の専決処分は五、九八七件に上り、そのうち九四・〇パーセントが「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がない」ことを理由としている。議会が承認しなかったものは十件にとどまる。会期の外側で処理される事務が相当量存在することは、会期制の設計を考えるうえで避けて通れない事実である。もっとも、専決処分の要件は厳格に解されており、千葉県白井市が第三セクター鉄道への補助金支出について行った専決処分をめぐる訴訟では、平成二十五年に千葉地方裁判所及び東京高等裁判所がいずれも専決処分を違法と判断し、市が上告を断念して確定している。招集する時間的余裕がないという要件は、招集しようとしてもできない事情を指すのであって、招集を避けたい事情を指すものではない。

三 用語解説

定例会とは、付議すべき事件の有無にかかわらず、毎年、条例で定める回数招集される会議をいう。付議事件が限定されないため、条例、予算、決算、人事同意、一般質問、意見書、決議など、議会の権限に属するあらゆる案件を取り扱うことができる。

臨時会とは、必要がある場合に、あらかじめ告示された特定の事件を処理するために招集される会議をいう。定例会と異なり、審議できる事件が告示によって画される。

会期とは、議会が法律上の権限を行使することができる期間をいう。土曜日、日曜日、休日も会期に含まれ、会議を開かない休会日も会期の一部である。会期外に開かれた「会議」は、議会の会議としての効力を持たない。

会期不継続の原則とは、ある会期に提出された事件がその会期中に議決に至らなかった場合、当該事件は会期の終了とともに消滅し、次の会期には新たな事件として提出し直す必要があるという原則をいう。地方自治法に明文はなく、標準会議規則を踏まえた各議会の会議規則が定めている。例外として、議会の議決により付議された特定の事件について、委員会が閉会中も継続して審査できる(第百九条第八項)。

一事不再議の原則とは、同一会期中に一度議決した事件について、同一会期中に再び審議しないという原則をいう。これも会議規則等に基づく運用上の原則である。

告示とは、行政機関が一定の事項を広く一般に知らせる形式的行為をいい、公告式条例の定めるところにより掲示場への掲示等の方法で行われる。本条第四項・第五項の告示は、臨時会で審議される事件の範囲を確定する法的効果を持つ。

付議とは、案件を議会の審議に付することをいう。臨時会では、あらかじめ告示された事件でなければ付議できないのが原則である。

開会・閉会とは、会期の始期と終期を宣告する議長の行為をいう。開議・散会は個々の会議日の始めと終わりを指し、開会・閉会とは次元が異なる。新人職員がまず取り違えるのはこの点である。

休会とは、会期中に会議を開かない日をいう。議会の議決又は会議規則の定めによって決まり、休会日も会期に含まれる。

延長とは、いったん議決した会期を、会期中に議決によって延ばすことをいう。会期満了後に延長を議決することはできない。

通年会期とは、第百二条の二により、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とする制度をいう。定例会・臨時会の区分がなくなり、条例で定例日を定める。本条第二項の回数を年一回と定めて長期の会期を運用で設定する手法(実務上「通年議会」と呼ばれる)とは、法的根拠が異なる。

四 各項の解説

1 第一項――議会の種類

普通地方公共団体の議会は、定例会と臨時会の二種のみである。この二つ以外の名称を付した会議を法定の議会として開くことはできない。全員協議会、議員協議会、各派代表者会議といった会議体は、第百条第十二項の協議又は調整を行うための場として会議規則に位置付けられている場合であっても、本条の定例会・臨時会には当たらず、議決を行うことはできない。

ただし、第百二条の二の通年会期を条例で選択した議会には、本条第一項の区分は適用されない。全国市議会議長会の令和七年の調査では、八百十五市のうち通年会期制を採用しているのは五十九市(七・二パーセント)であり、その内訳は第百二条の二による通年会期が十五市、第百二条第二項に基づき定例会を年一回と定める運用が四十四市である。町村では、九百二十六町村のうち第百二条の二による通年の会期制が三十一町村、第百二条第二項の運用による通年議会が四十町村となっている。制度創設から十年以上を経てなお少数にとどまっており、法定の通年会期より条例で定例会を年一回とする手法のほうが多く選ばれている点は、実務感覚としても押さえておきたい。

2 第二項――定例会の回数

「毎年」は暦年を指す。回数は条例で定めるが、上限も下限もない。平成十六年改正前は年四回が上限であったため、それより多い回数を定めることは現在は可能である。一方、回数を定める条例を制定しないことは許されない。回数を定めた以上、長にはその回数だけ定例会を招集する法的義務が生じる。

条例の名称は団体によって異なり、「議会定例会の回数に関する条例」を単独で置く例、議会関係の条例に一箇条として置く例がある。開催時期については、条例で月を特定する例と、条例では回数のみを定めて三月・六月・九月・十二月とする慣行に委ねる例の双方がある。特定しない場合、招集の時期は長の判断に委ねられるが、当初予算を議決する年度末の定例会と決算を認定する秋の定例会は事実上動かせない。

実態を見ると、通年会期制を採用していない七百五十六市のうち、条例で年四回と定めている市が七百五十二市(九九・五パーセント)を占め、二回とするのが神戸市と明石市、三回とするのが大阪市である。町村でも、通年会期制を採らない八百五十五町村のすべてが定例会を年四回開催している。年四回はほぼ全国共通の姿といってよい。

もっとも、条例で年一回と定めれば会期は自ずと長期化し、実質的に通年運用に近づく。前述の四十四市がこの手法を採っており、根室市、金沢市、青梅市、文京区、墨田区、荒川区、相模原市、京都市、大津市など、規模も地域も一様ではない。第百二条の二によるか第百二条第二項によるかは、招集行為の要否、会期終了事由の法定、定例日の設置義務などで法的な違いが生じるため、条例改正を検討する際は両者を明確に区別して整理する必要がある。

3 第三項――臨時会の要件

臨時会は、「必要がある場合」に「その事件に限り」招集される。必要性の判断は、第一次的には招集権者である長の判断に委ねられる。もっとも、第百一条第四項により、議長からの請求(同条第二項)又は議員定数の四分の一以上の者からの請求(同条第三項)があったときは、長は請求の日から二十日以内に臨時会を招集しなければならず、この場合の必要性判断の余地はない。

「その事件に限り」という限定は、臨時会が特定の目的のために開かれる会議であることを示す。定例会が付議事件を限定しないのと対照的であり、この差が第四項の告示義務の根拠となる。

臨時会の実施状況は、団体規模によって差がある。令和七年中、市長が招集した臨時会を開催した市は六百市(七九・四パーセント)で、平均開催回数は一・八回、平均会期日数は二・三日、平均本会議日数は二・〇日である。町村では、臨時会の年間平均開催回数が二・八回で、平均会期日数二・八日、平均本会議日数二・八日と、ほぼ一日で一つの会期を終える運用が定着している。臨時会の会期は極めて短いという実務感覚は、議案の事前調整に要する日程を逆算するうえで欠かせない。

なお、令和六年中に臨時会を一度も開かなかった町村は九十町村ある。臨時会の頻度は、専決処分の運用と表裏の関係にあることに留意したい。

4 第四項――付議事件の告示

臨時会に付議すべき事件は、長があらかじめ告示しなければならない。告示は、審議の対象を住民及び議員に対して事前に明らかにし、あわせて臨時会の権能の外縁を画する行為である。

実務上は、第百一条第七項の招集の告示(都道府県及び市は開会日の七日前まで、町村は三日前まで)と同時に、一つの告示文書で行うのが通例である。ただし、両者は法的には別個の告示である。第百一条第七項ただし書は、緊急を要する場合に招集の告示の期間を短縮することを認めるが、本条第四項には同様の例外がなく、付議事件の告示そのものを省略することはできない。招集告示の期間を短縮する場合であっても、付議事件は開会前に告示しておく必要がある。

告示されていない事件を臨時会に付議した場合、その議決は本条第三項及び第四項に反する瑕疵を帯びる。実務では、告示後に追加の議案が生じたときは、追加告示を行うか、開会後であれば第六項によって処理するのが基本である。議案の差替えや訂正が生じやすい補正予算の臨時会では、告示した事件名の書きぶりを過度に細かくしないという実務上の工夫も行われるが、事件を特定しない包括的な告示は第三項の趣旨に反するため、限度がある。

5 第五項――議長が招集する場合の特則

平成二十四年の改正で新設された規定である。第百一条第五項(議長の請求に長が応じない場合に議長が招集できる場合)又は第六項(議員の請求に長が応じない場合に議長が招集しなければならない場合)に該当するときは、告示の主体が長ではなく議長となる。

このとき議長が告示すべき事件は、「同条第二項又は第三項の規定による請求において示された会議に付議すべき事件」である。すなわち、請求の際に示された事件をそのまま告示するのであって、議長に事件を取捨選択する権限はない。議長は請求内容に拘束される。招集権が例外的に議長に移っても、付議事件を決める主導権は請求者にあるという構造である。

この規定が発動する場面は、実際には極めて稀である。令和七年中、市において議長が招集した臨時会は一件もなかった。他方、議長の請求により長が招集した臨時会は五十七市(七・五パーセント)、議員の請求により長が招集した臨時会は十九市(二・五パーセント)で開催されている。町村では、令和六年中に第百一条第二項に基づく議長請求の臨時会が二十四町村で三十二回、同条第三項に基づく議員請求の臨時会が十四町村で二十回開催された。請求の段階で長が応じており、議長招集にまで至らないのが通常の姿である。制度が使われないこと自体が、抑止として機能しているとも評価できる。

6 第六項――緊急事件の即時付議

臨時会の開会中に緊急を要する事件があるときは、第三項から第五項までの規定にかかわらず、直ちに会議に付議することができる。告示を経ないで審議に入れる例外規定である。

適用対象は「臨時会の開会中」に限られる。定例会は付議事件が限定されていないため、この規定を働かせる必要がない。この点は昇任試験でも問われやすい。

「緊急を要する」かどうかの判断は、会期中の議事に関する事項であるから、議長の議事整理権(第百四条)の下、議会が日程の追加を議決することで確定する。長が緊急と考えても、議会が日程に追加しなければ付議されない。逆に、議員提出議案であっても、緊急性が認められれば本項により付議できる。実務では、災害発生時の補正予算、国の制度変更に伴う条例改正、議員の辞職許可、会期中に生じた事案に関する意見書や決議などがこの規定によって処理される。

7 第七項――会期の決定と議会の自律権

会期、その延長、開閉に関する事項は、議会が定める。招集は長が行い(第百一条第一項)、会期は議会が決めるという役割分担が、本項によって明確にされている。議会の自律権を具体化した規定であり、長の同意や承認は不要である。

会期は、あらかじめ条例等で一律に定めておくものではなく、原則として議会がその都度決定する。決定の時期について法律に定めはなく、標準会議規則を踏まえた各議会の会議規則が「会期は、毎会期の初めに議会の議決で定める」旨を規定するのが通例である。実務では、議長が議会運営委員会に諮って案を整え、開会当日の日程第一で会期の決定を議決する。会期が二日以上にわたる場合は「本日から何月何日までの何日間」と諮るのが一般的である。

会期の始期は、招集の告示によって指定された開会の日に拘束される。議会の側でこれを前倒し又は後倒しすることはできない。ただし、令和四年改正により、災害その他やむを得ない事由により開会日に会議を開くことが困難なときは、告示をした者が開会日を変更できることとなった(第百一条第八項)。令和六年中にこの規定を用いて招集日を変更した町村は、定例会で四町村四回、臨時会で一町一回にとどまる。

会期の延長は、会期中に議決しなければならない。会期が満了した後に延長を議決することはできず、必要であれば改めて臨時会を招集することになる。

招集された日に定足数(第百十三条)を欠くなどして会議が開けず、会期の決定に至らないまま議会が成立しないことがある。実務ではこれを流会という。令和七年中には、田川市の第二回定例会が流会となり、同市の定例会の実際の開催回数は年三回となった。条例で定めた回数を招集する義務は長にあるが、招集された議会が現に開かれるかどうかは議会側の問題であり、両者は区別して理解する必要がある。

会期日数の実態も押さえておきたい。町村では、定例会の一議会あたりの平均会期日数が四一・九日、本会議日数が一三・四日、休会日数が二八・五日であり、定例会と臨時会を合わせた年間の平均会期日数は四三・六日、本会議日数は一六・二日である。会期の三分の二が休会日であるという構造は、委員会審査と議員の調査活動が会期の実質を担っていることを示している。市においても、定例会を年四回開催する市の年間の会期日数はおおむね九十日から百十日程度、本会議日数は二十日台から二十八日程度の範囲に収まっている。

会期の運用を住民に開くための工夫も広がりつつある。令和七年中の休日議会は六市六件(山形県上山市の九月七日の一般質問は傍聴者八十人、石川県輪島市の三月三十日の臨時会では復興まちづくり基金条例の制定などを審議)、夜間議会は二市二件(北海道夕張市の六月十三日、大阪府大東市の九月二十二日、いずれも一般質問)であった。町村では休日議会が十五町村、夜間議会が七町村で実施されている。開会日と会議日を決めるのは議会自身であるという第七項の帰結が、こうした運用の法的な足場になっている。

五 判例・裁判例

本条を正面から解釈した最高裁判例は多くない。会期の決定や議事運営は議会の内部事項に属し、司法審査になじまないとされてきた領域だからである。もっとも、周辺の判例法理は本条の理解に直結する。

第一に、機関相互間の紛争と法律上の争訟の関係である。議員が長を被告として議会を招集すべき旨の判決を求めた事案について、普通地方公共団体の機関相互間の争いは、法律に特別の定めがない限り、法律上の争訟として裁判所に訴えを提起することは許されないとして、訴えを不適法とした最高裁判例がある。招集義務違反に対して議会が採り得る手段は、長らく司法ではなく政治過程に限られていた。第百一条第五項・第六項が創設されるまで、阿久根市のような事態に対抗する法的手段が乏しかった背景には、この判例法理がある。

第二に、議会の自律権と司法審査の範囲である。最高裁大法廷は昭和三十五年十月十九日判決において、議員の出席停止のような権利行使の一時的制限にとどまる懲罰は議会の自治的措置に委ねられるとして司法審査を否定していたが、最高裁大法廷令和二年十一月二十五日判決(岩沼市議会議員出席停止事件)はこれを変更し、出席停止の懲罰の適否は常に司法審査の対象となると判示した。会期中の議員の中核的活動が奪われることを重視した判断であり、会期を単位に議員活動が構成されているという本条の前提を、司法の側から確認した意味を持つ。全国都道府県議会議長会に対する令和二年の審決においても、出席停止の懲罰は議会の自律的な判断に委ねるべきものではあるが、第二百五十五条の四の審決の申請の対象となるとされている。

第三に、専決処分の適法性に関する裁判例である。前述の白井市の事案では、第三セクター鉄道への補助金支出について市長が行った専決処分が、平成二十五年に千葉地方裁判所及び東京高等裁判所でいずれも違法と判断され、確定した。「議会を招集する時間的余裕がない」という第百七十九条第一項の要件は、会期制の例外を画するものであるから厳格に解される。会期の設計と専決処分の適否は、実務上ひとつながりの問題である。

第四に、議会の議決に対する司法審査一般については、最高裁平成二十四年四月二十日判決及び同月二十三日判決が、和解に関する議決について、地方自治法の趣旨等に照らして不合理であり裁量権の範囲を逸脱し又は濫用に当たると認められるときは議決が違法となる旨を示している。会期中に成立した議決であっても、その内容が司法審査を免れるわけではない。

告示を欠く事件を臨時会で議決した場合の効力について、直接判断した最高裁判例は見当たらない。学説上は、第三項及び第四項が臨時会の権能を画する強行規定である以上、告示を欠く議決は無効と解するのが一般であるが、判例による確立した準則があるわけではない点は、正確に認識しておく必要がある。

六 施行令・施行規則との関係

地方自治法施行令の第三章「議会」は、第百二十一条の二から第百二十一条の五までのわずか四箇条で構成されており、本条を受けた委任規定は置かれていない。定例会・臨時会の区分、定例会の回数、告示、会期の決定は、法律と条例及び会議規則のレベルで完結する。この点は、本条を読む際に明確にしておくべき事実である。

もっとも、臨時会の付議事件を決める段階で施行令の確認が必要になる場面は多い。第百二十一条の二の二は、第九十六条第一項第五号の契約及び同項第八号の財産の取得又は処分について、議会の議決を要する種類と金額の基準を別表第三及び別表第四で定めている。臨時会に契約議案や財産議案を付議するかどうかは、この政令基準に該当するかどうかで決まるため、告示の前に必ず参照しなければならない。同様に、第百二十一条の三は、第九十六条第二項により条例で議決事件を追加することが適当でないものとして、国民保護法及び災害救助法施行令に基づく事務に係る事件を掲げている。災害対応の臨時会を設計する際に関係する規定である。

第百二十一条の二は、第九十二条の二の請負に係る政令で定める額を三百万円と定める。議員の資格の得喪は会期中の議事に直接影響するため、実務上は本条とあわせて確認される。第百二十一条の四及び第百二十一条の五は、第九十八条の検査及び第百条の調査の対象から除外される事務を定めており、臨時会で調査に関する議決を行う場合の前提となる。

地方自治法施行規則については、招集の告示や会期に関する様式は置かれていない。同規則は、議会の解散の投票や解職の投票に用いる投票用紙等の様式(第一条の二以下)を中心に構成されている。告示の様式や掲示の方法は、各団体の公告式条例及びこれに基づく規則によることになる。書式集としての施行規則を探しても、招集告示の様式は見つからないという点は、実務担当者があらかじめ知っておくべき事柄である。

他方、会期中の事務処理に関わる規定として、第十二条の二の二は、第百二十三条第三項により会議録を電磁的記録で作成する場合の総務省令で定める措置を電子署名と定めている。また、令和六年の改正で整備された第十二条の二の三から第十二条の二の九までは、第百三十八条の二の規定により電子情報処理組織を使用する方法で議会に対し又は議会から通知を行う場合の要件を定めており、第十二条の二の八は、第九十九条の意見書を国会にオンラインで提出する場合に衆議院事務局又は参議院事務局が指定する方法で議会を確認する措置を講ずべきことを定める。会期中に議決した意見書をどう送付するかという実務は、この規則の水準まで下りて確認する必要がある。もっとも、令和六年中にオンラインで意見書を提出した町村は十六町村にとどまり、制度の活用はこれからである。

七 実務上の要点

第一に、招集は長、会期は議会という役割分担を正確に押さえること。第百一条第一項と本条第七項の対比は、昇任試験の頻出論点である。議会は自ら集まることはできないが、集まった後の期間は自ら決める。

第二に、定例会と臨時会の最大の違いは付議事件の限定の有無にあること。臨時会の付議事件は告示を要し(第四項)、告示のない事件は原則として審議できない。ただし開会中の緊急事件は例外である(第六項)。この例外は臨時会にのみ適用され、定例会には適用がない。

第三に、議長が招集する例外的場面では、告示の主体も議長に移る(第五項)。このとき議長は請求で示された事件を告示するのであって、内容を選別できない。

第四に、定例会の回数を定める条例に上限はない。平成十六年改正で四回以内という制限が撤廃されたことを、沿革とともに答えられるようにしておきたい。年一回と定めて実質的な通年運用を行う手法と、第百二条の二による通年会期とは、法的根拠も効果も異なる。

第五に、会期の延長は会期中に議決しなければならない。会期満了後の延長議決は法的効果を持たない。事務局としては、議事が長引く見込みが立った時点で、会期末日の前に延長の議決を諮る段取りを組む必要がある。

第六に、会期の設計は専決処分の運用と裏表であること。「議会を招集する時間的余裕がない」という要件は厳格に解されており、会期の外側で処理される事務が多い団体ほど、この要件を満たすかどうかの検証が求められる。町村の専決処分の九四・〇パーセントがこの理由によっているという事実は、論文試験で会期制の課題を論じる際の具体的な足場になる。

八 まとめに代えて――条文の読み方

本条は七項からなるが、構造は単純である。第一項が種類を決め、第二項と第三項がそれぞれの招集要件を定め、第四項と第五項が臨時会の告示の主体を、第六項がその例外を定める。そして第七項が、会期の決定権を議会に留保する。招集に関する規律は長を名宛人とし、会期に関する規律は議会を名宛人とするという視点で読むと、条文の並びが腑に落ちる。

会期制は、議会が何もしない期間を作る制度ではなく、議会が集中して働く期間を確定する制度である。閉会中の空白をどう埋めるかは、第百九条第八項の閉会中の継続審査、第百条第十二項の協議又は調整を行うための場、そして第百二条の二の通年会期という三つの道具で設計される。本条は、その設計の出発点に置かれた条文である。


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