条文原文
第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
② 民事訴訟に関する法令の規定中証人の尋問に関する規定(過料、罰金、拘留又は勾引に関する規定を除く。)は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。
③ 第一項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき又は証言を拒んだときは、六箇月以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
④ 議会は、選挙人その他の関係人が公務員たる地位において知り得た事実については、その者から職務上の秘密に属するものである旨の申立てを受けたときは、当該官公署の承認がなければ、当該事実に関する証言又は記録の提出を請求することができない。この場合において当該官公署が承認を拒むときは、その理由を疎明しなければならない。
⑤ 議会が前項の規定による疎明を理由がないと認めるときは、当該官公署に対し、当該証言又は記録の提出が公の利益を害する旨の声明を要求することができる。
⑥ 当該官公署が前項の規定による要求を受けた日から二十日以内に声明をしないときは、選挙人その他の関係人は、証言又は記録の提出をしなければならない。
⑦ 第二項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを三箇月以上五年以下の拘禁刑に処する。
⑧ 前項の罪を犯した者が議会において調査が終了した旨の議決がある前に自白したときは、その刑を減軽し又は免除することができる。
⑨ 議会は、選挙人その他の関係人が、第三項又は第七項の罪を犯したものと認めるときは、告発しなければならない。ただし、虚偽の陳述をした選挙人その他の関係人が、議会の調査が終了した旨の議決がある前に自白したときは、告発しないことができる。
⑩ 議会が第一項の規定による調査を行うため当該普通地方公共団体の区域内の団体等に対し照会をし又は記録の送付を求めたときは、当該団体等は、その求めに応じなければならない。
⑪ 議会は、第一項の規定による調査を行う場合においては、あらかじめ、予算の定額の範囲内において、当該調査のため要する経費の額を定めて置かなければならない。その額を超えて経費の支出を必要とするときは、更に議決を経なければならない。
⑫ 議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。
⑬ 議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためその他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員を派遣することができる。
⑭ 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。
⑮ 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の状況を書面又は電磁的記録をもつて議長に報告するものとする。
⑯ 議長は、第十四項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。
⑰ 政府は、都道府県の議会に官報及び政府の刊行物を、市町村の議会に官報及び市町村に特に関係があると認める政府の刊行物を送付しなければならない。
⑱ 都道府県は、当該都道府県の区域内の市町村の議会及び他の都道府県の議会に、公報及び適当と認める刊行物を送付しなければならない。
⑲ 議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。
⑳ 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる。
趣旨・立法背景
第100条は、いわゆる「百条調査権」を定めた規定であり、地方議会に認められた権限の中でも最も強力なものの一つである。第1項から第13項までが調査権本体、第14項から第16項までが政務活動費、第17項から第20項までが官報・公報の送付と図書室に関する規定という三つのまとまりで構成されている。
我が国の地方自治制度は、首長と議員をそれぞれ住民の直接選挙により選ぶ二元的代表制を採る。議会は執行機関から独立した立場でその権限を行使し、長と相互に牽制し合うことで地方公共団体の政治・行政の適正な運営を図る。議会が持つ議決権を実効あるものにするためには、執行機関の事務処理の実態を把握する手段が要る。第98条の検閲・検査権だけでは書類や計算書の確認にとどまり、外部の関係人を対象とする証人尋問のような踏み込んだ調査はできない。そこで第100条は、選挙人その他の関係人を出頭させ、証言や記録の提出を求める権限を議会に与え、正当な理由のない拒否や虚偽陳述には刑事罰まで科す仕組みとした。国会が持つ国政調査権(日本国憲法第62条)に対比される制度であり、地方議会の「伝家の宝刀」とも呼ばれている。
地方公務員法は職員の身分取扱いを定める法律であり、議会の調査権そのものを規定するものではないため、この条文に直接対応する規定は存在しない。ただし、職員が証人として出頭を求められた場合の職務専念義務の扱いや、職員が知り得た秘密の取扱いなど、実務上は地方公務員法上の服務規律との調整が問題になる場面がある。
第14項から第16項の政務活動費は、平成24年改正で従来の政務調査費を拡充する形で導入された。会派や議員の調査研究活動を金銭面で支える一方、使途の不透明さが繰り返し問題視されてきた経緯があり、第16項で議長に透明性確保の努力義務を課している。また、平成24年改正では、出頭・証言・記録提出の請求を「調査を行うため特に必要があると認めるとき」に限定する文言も追加された。関係人に不当な負担を強いることのないよう、要件を明確化する趣旨によるものである。
第3項及び第7項の罰則は、令和7年6月の刑法等改正に伴う拘禁刑の創設を受けて、従来の「禁錮」から「拘禁刑」に改められたものであり、現行条文はこの拘禁刑を前提とする。懲役と禁錮を一本化した拘禁刑の趣旨は、受刑者の特性に応じた作業や指導を柔軟に行い、再犯防止と社会復帰を図る点にある。
用語解説
選挙人その他の関係人 「選挙人」とは実質的に選挙権を有している者を指す。「関係人」は調査対象に関係を有する全ての者を指し、当該団体の住民である必要はなく、その者の証言が調査上有意義であると認められれば足りるとされる。
記録の提出 書面に限らず、電磁的記録も含まれる。第2項の読替え規定により、民事訴訟法上の電子提出の仕組みを議会の証言請求に取り込んでいる。
政令で定めるもの(自治事務のうち労働委員会・収用委員会の権限に属する事務) 労働委員会のあっせん・調停・仲裁など労働争議関係の事務、収用委員会の裁決関係の事務を指し、これらは調査対象から除外される。第三者機関としての独立性を確保する趣旨である。
議会の調査の対象とすることが適当でないもの(法定受託事務) 国の安全を害するおそれがある事項や個人の秘密を害する事項に関する事務の該当部分を指す。国の安全保障や個人情報保護の観点から、調査権にも一定の限界がある。
拘禁刑 懲役と禁錮を一本化した自由刑であり、令和7年6月1日施行の刑法等改正により導入された。第3項・第7項の罰則規定は、この拘禁刑を前提とする現行の表現である。
政務活動費 議員の調査研究その他の活動に資するため、条例に基づき会派又は議員に交付される経費である。交付対象・額・使途の範囲は各団体の条例で定める。
会議規則 議会がその会議の運営に関し自ら定める規則であり、地方自治法第120条に基づき制定される。第12項の協議・調整の場(全員協議会等)や第13項の議員派遣は、この会議規則に手続の詳細を委ねている。
百条委員会 第100条に基づく調査を行うため議会が議決により設置する特別委員会である。設置根拠は地方自治法第110条であり、百条調査権そのものは議会に属する権限だが、実務上はほとんどの場合、範囲を限定したうえで特別委員会に委任される。議員個人や常任委員会には百条調査権は認められていない。
施行令の関連規定
地方自治法施行令は、第100条の調査対象から除外される事務の範囲を具体的に定めている。
施行令第121条の4(第98条の検査権に関する規定)を前提として、施行令第121条の5は次のとおり定める。
第1項は、施行令第121条の4第1項の規定(労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務のうち、労働組合法上の労働争議のあっせん・調停・仲裁その他労働委員会の権限に属する事務、土地収用法上の収用に関する裁決その他収用委員会の権限に属する事務)を第100条第1項の調査権について準用する。
第2項は、施行令第121条の4第2項の規定(開示により国の安全を害するおそれがある事項に関する事務の該当部分、個人の秘密を害することとなる事項に関する事務の該当部分、土地収用法上の収用に関する裁決その他収用委員会の権限に属する事務)を、「検査」を「調査」と読み替えたうえで第100条第1項の調査権について準用する。
実務では、第100条だけを読んでも調査対象から除外される具体的な事務の範囲は分からない。必ず施行令第121条の5、さらにその準用元である第121条の4まで遡って確認する必要がある。百条委員会を設置する際に調査事項を議決する場面では、この施行令の除外規定に抵触しないかを事前に精査することが欠かせない。
なお、地方自治法施行規則には第100条に直接対応する様式規定はない。政務活動費の収入・支出報告書の様式は、施行規則ではなく各団体の条例・規則に委ねられている点に注意が要る。
全国的な設置状況(統計データ)
百条委員会の設置件数について、総務省は毎年「法第100条の規定による議会の調査に関する調」を実施し、その結果を『地方自治月報』で公表している。国立国会図書館の調査資料は、この総務省調査を基に平成18年度から平成27年度までの10年間の推移を次のとおり整理している。
| 年度 | 都道府県:委員会設置数 | 都道府県:告発のあった調査数 | 市区町村:委員会設置数 | 市区町村:告発のあった調査数 | 市区:設置数 | 町村:設置数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成18 | 1 | 0 | 27 | 6 | 16 | 11 |
| 平成19 | 0 | ー | 22 | 3 | 7 | 15 |
| 平成20 | 1 | 1 | 16 | 4 | 9 | 7 |
| 平成21 | 0 | ー | 19 | 4 | 9 | 10 |
| 平成22 | 0 | ー | 14 | 4 | 7 | 7 |
| 平成23 | 1 | 1 | 14 | 3 | 9 | 5 |
| 平成24 | 2 | 1 | 17 | 3 | 8 | 9 |
| 平成25 | 0 | ー | 12 | 0 | 8 | 4 |
| 平成26 | 1 | 0 | 14 | 2 | 11 | 3 |
| 平成27 | 0 | ー | 6 | 0 | 2 | 4 |
| 計 | 6 | 3 | 161 | 29 | 86 | 75 |
(出典:総務省「法第100条の規定による議会の調査に関する調」『地方自治月報』54号から58号を基に国立国会図書館が作成した表。委員会設置日を基準に計上。)
この10年間で都道府県における設置数は6件にとどまる一方、市区町村では161件に上り、うち告発に至った調査は市区町村で約18%であるのに対し、都道府県では半数が告発に至っている。都道府県レベルでの発動は極めて稀である一方、いったん発動されれば深刻な事案に発展しやすい傾向がうかがえる。
なお、平成19年度から平成27年度の間に行われた調査は、その全てが議会から特別委員会に付託されたうえで実施されている。議会本体が調査権を直接行使する例は実務上ほとんど見られない。
体制面の課題として、市議会における議会事務局職員数は平均7.9人であるのに対し、百条委員会の設置件数の約半数を占める町村議会では、議会事務局職員が専任・兼任を含めても平均約2.6人にとどまるという指摘がある。少人数の議会事務局が、通常の議会運営に加えて証人の出頭調整や記録の請求手続、会議録の作成といった百条委員会特有の事務を担うことは、実務上かなりの負担になると見られている。
実例で見る百条委員会
岐阜県瑞穂市議会(平成26年、市道認定問題)
市長の親族が代表を務める会社が所有する私道の市道編入申出を市が一旦却下したのち、市長の指示で編入基準の見直しが行われ、一転して市道に編入された事案である。便宜供与の疑いを受け、瑞穂市議会は平成26年3月、市道認定に関する調査特別委員会を設置し、第100条第1項・第5項・第10項と第98条第1項の権限を委任した。委員会は5会派10人で構成され、同年3月から12月にかけて8回の委員会と18回の非公開準備会を開催し、証人1人(市長)の出頭、参考人11人の出席、19件の記録提出を求めた。同年12月の調査報告書は市長の親族会社への便宜供与を認定したが、これに対し市議2人が異議を唱える少数意見報告書を提出し、市側も別途、便宜供与とは考えられないとする独自の報告書を発表するなど、評価の分かれる結果となった。
千葉県市川市議会(平成26年から平成28年、政務活動費問題)
市議会の複数会派に政務活動費の不正使用があるとの住民監査請求が棄却されたことを受け、市議会は平成26年12月、対象会派の異なる2つの百条委員会を設置した。もっとも、この2委員会は調査期限切れと市議の任期満了により結論を出せないまま消滅している。平成27年6月、選挙後の新たな市議により調査対象を議員個人に絞った百条委員会が改めて設置され、8会派15人の委員が第100条第1項及び第98条第1項の権限を委任された。政務活動費で購入した大量の切手が実際にアンケート郵送に使われたかが争点となり、平成27年6月から平成28年8月にかけて19回の委員会が開催され、証人4人(出頭3人)、参考人2人、記録提出17件、議会事務局への資料要求8件が行われた。平成28年9月の調査報告書はアンケート実施の有無を断定できなかったとしたが、この過程で虚偽の収支報告を行っていたことが判明した市議に対する辞職勧告決議が全会一致で可決された。再発防止策として、市川市議会政務活動費の交付に関する条例が全部改正され、切手や料額印面付きはがきの購入への充当を認めない旨が運用手引に明記された。
東京都議会(平成29年、豊洲市場移転問題)
築地市場の豊洲移転をめぐり、盛土の未実施や地下水からの環境基準超過ベンゼン検出が判明したことを受け、平成29年2月、都議会は全会一致で百条委員会を設置した。6会派23人の委員が調査にあたり、同年2月から6月にかけて15回の委員会、5日間にわたる24人の証人喚問、425件の記録提出請求という大規模な調査となった。調査の過程で委員長が偽証認定をめぐり辞任する事態も生じ、最終的に証人2人に対する虚偽陳述の告発が本会議で可決された。都道府県議会で告発まで至った事例は平成24年以来であり、都道府県レベルでの発動が稀であることを示す事例となっている。
山形県鶴岡市議会(令和4年から令和6年、選挙運動費用及びパワハラ疑惑)
鶴岡市長の選挙運動費用収支報告書の不記載・訂正問題と、市長による職員へのパワハラ疑惑という二つの事項を対象に、令和4年1月の臨時会で調査特別委員会が設置された。第100条第1項及び第10項、第98条第1項の権限が委任され、令和6年3月まで2年以上にわたり調査が続いた。この間、市職員労働組合が実施したアンケートでは、正職員975人中271人が回答し、19人が市長からパワハラが疑われる行為を受けたと回答、見聞きしたとの回答も70人に上った。元職員の証人喚問も行われるなど、長期かつ大規模な調査となった。同種の調査は、通常の年度単位の想定を超えて長期化する場合があることを示す例である。
兵庫県議会(令和6年から令和7年、知事のパワーハラスメント疑惑)
兵庫県の斎藤元彦知事に対する内部告発文書をめぐり、県の告発対応や知事の言動が問題となった事案である。令和6年6月、県議会は百条委員会の設置を決議した。都道府県議会において知事本人が調査対象となるのは極めて異例であり、兵庫県議会では51年ぶりの設置となった。9か月間の調査を経て、令和7年3月4日に公表された調査報告書は、告発を受けた県の対応について公益通報者保護法に違反している可能性が高いと指摘し、知事の言動についても「パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なものだった」と認定した。一方で調査の中立性を疑問視する声もあり、課題を残しての終結となった。
その他の事例
千葉県八千代市議会では、市長による公文書改ざん疑惑を受けて百条委員会が設置され、調査報告書において再発防止策の提言が行われている。また、神奈川県真鶴町では、町長のパワハラ疑惑を受けて議会が百条委員会を設置する事例が令和8年にも生じており、町村レベルでも継続的に発動され続けている制度であることが分かる。
判例・裁判例
最高裁判決 平成21年7月7日(函館市政務調査費返還請求事件) 函館市議会の政務調査費の交付に関する条例をめぐり、会派に対する支出の適否が争われた事案である。会派の代表者が所属議員の申請に係る調査研究活動を会派のためのものとして委ねたと認められる場合の会計処理の考え方が示され、政務活動費(当時の政務調査費)の使途の適正性を判断する際の枠組みとして参照される。
送達方法に関する裁判例 議会が第1項に基づき関係人の出頭及び証言を求める書面を発する際、民事訴訟法上の送達に関する規定は準用されず、相当な方法によって送達すれば足りるとされた裁判例がある。同居の親族への交付による送達が適法とされた事例もあり、百条委員会が出頭要求書を送付する際の実務上の目安となっている。
調査権の限界に関する学説・実務解釈 百条調査権は、地方議会の諸権限を効果的に行使させるために付与された補助的機能であると解されており、目的を逸脱する調査は許されない。政争や個人の秘密を暴露するために用いることは調査目的の妥当性を欠くとされる。執行機関の人事権に属する事項(特別昇給した職員の氏名や理由等)への証言請求は、通常は執行機関の人事権への介入になるとされる。個人の政治信条や思想、信仰についての調査も認められないと解されている。憲法第38条第1項が保障する黙秘権についても、刑事手続以外の場面である百条調査権に基づく調査においても、原則として適用されるべきと解されている。
実務上の留意点
地方公務員が百条委員会に関与する場面としては、証人として出頭を求められる場合と、委員会の事務局として運営を支える場合の二つが多い。証人として出頭する場合、第4項により職務上の秘密に属する事項については申立てにより証言・記録提出を拒める仕組みがあるが、官公署が承認を拒む場合は理由の疎明が必要であり、疎明を欠くと第5項以下の手続に進む。単に「秘密だから答えない」では足りない点を理解しておく必要がある。
政務活動費については、第15項の収支報告と第16項の透明性確保が実務上のチェックポイントになる。市川市の事例のように、切手の大量購入といった一見些細な支出が百条委員会設置の引き金になった例もあり、各団体の条例で定める報告様式や領収書の添付基準、運用手引の内容を日頃から確認しておくことが欠かせない。
百条委員会は罰則による強制力を伴う分、濫用のリスクも指摘されている。実務解説では、検査権(第98条)や委員会の所管事務調査権(第109条)による調査を先に尽くしたうえで、それでも解明できない場合に初めて百条調査権を発動するという段階的な運用が本来のあり方だとされる。過去の非違を追及すること自体が目的ではなく、原因を把握し再発防止につなげる未来志向の運用こそが百条調査権の本来の目的だとする指摘も、市川市や八千代市の事例における再発防止策の講じ方と重なるものである。
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