黒川検事長の国家公務員倫理法違反と国家公務員法違反及び刑法違反(公務員のコンプライアンス違反行為)

1.文春オンラインでの「検事長の賭けマージャン報道」

⇒ 黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」 HPアドレス⇒https://bunshun.jp/articles/-/37926

(1)賭けマージャンは、賭博罪になり、常習であれば刑は重い。

刑法 

第一八五条(賭博)
賭と博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭かけたにとどまるときは、この限りでない。

第一八六条(常習賭博及び賭博場開張等図利) 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。

【「常習とばく罪」で刑事告発される】東京高検の黒川検事長が新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言中に産経新聞記者や朝日新聞社員と賭けマージャンをしていたことで、岐阜県の弁護士らが令和2年5月25日、常習賭博の疑いで黒川氏と記者ら計4人に対する告発状を東京地検に郵送した。なお、黒川氏はすでに22日に辞職しているが、懲戒処分でなく監督上の処分である訓告であったことも関係して約7千万円と言われる退職金が支払われる予定だ。告発内容は、黒川氏ら4人は常習として5月1日と13日、産経記者の自宅で、マージャンをして金銭を賭けていて、1回で現金のやりとりは数千円から2万円程度で、4人は3年前から月に数回、同様の賭けマージャンをしていたとする。

 

(2)常習として賭けマージャンを行っていれば、国家公務員法違反である。

国家公務員法 第九九条(信用失墜行為の禁止) 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

もちろん、国家公務員は、職務遂行に有無にかかわらず、法を執行する全体の奉仕者たる立場から当然に法令を遵守すべきであるから、次の法条にも違反する。

第九六条(服務の根本基準) すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
②前項に規定する根本基準の実施に関し必要な事項は、この法律又は国家公務員倫理法に定めるものを除いては、人事院規則でこれを定める。

第九七条(服務の宣誓) 職員は、政令の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。

(宣誓書 私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。)

第九八条(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

(3)接待を受けていた等とすれば、国家公務員倫理法・同規程違反

【国家公務員倫理法】

(職員が遵守すべき職務に係る倫理原則)
第三条 職員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
2 職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。
3 職員は、法律により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。

【国家公務員倫理規程】

(禁止行為)
第三条 職員は、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与(せん別、祝儀、香典又は供花その他これらに類するものとしてされるものを含む。)を受けること。⇒金品受け取りで該当か
二 利害関係者から金銭の貸付け(業として行われる金銭の貸付けにあっては、無利子のもの又は利子の利率が著しく低いものに限る。)を受けること。
三 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で物品又は不動産の貸付けを受けること。
四 利害関係者から又は利害関係者の負担により、無償で役務の提供を受けること。⇒帰りのタクシー代負担していないので該当か
五 利害関係者から未公開株式(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されておらず、かつ、同法第六十七条の十一第一項の店頭売買有価証券登録原簿に登録されていない株式をいう。)を譲り受けること。
六 利害関係者から供応接待を受けること。⇒マスコミ関係者宅での接待で該当か
七 利害関係者と共に遊技又はゴルフをすること。
八 利害関係者と共に旅行(公務のための旅行を除く。)をすること。
九 利害関係者をして、第三者に対し前各号に掲げる行為をさせること。

利害関係者以外の者等との間における禁止行為)⇒マスコミ関係者は、取材を受ける立場であれば或いは内規があれば、利害関係者であるが、そうでなくても下記の規定がある。
第五条 職員は、利害関係者に該当しない事業者等であっても、その者から供応接待を繰り返し受ける等社会通念上相当と認められる程度を超えて供応接待又は財産上の利益の供与を受けてはならない。
2 職員は、自己が行った物品若しくは不動産の購入若しくは借受け又は役務の受領の対価を、その者が利害関係者であるかどうかにかかわらず、それらの行為が行われた場に居合わせなかった事業者等にその者の負担として支払わせてはならない。
これらは倫理審査会で審査され、懲戒処分手続きに入る。
(懲戒処分の勧告)第二十九条 審査会は、前条の調査の結果、任命権者において懲戒処分を行うことが適当であると思料するときは、任命権者に対し、懲戒処分を行うべき旨の勧告をすることができる。 2 任命権者は、前項の勧告に係る措置について、審査会に対し、報告しなければならない。
(審査会による懲戒) 第三十条 審査会は、第二十八条の調査を経て、必要があると認めるときは、当該調査の対象となっている職員を懲戒手続に付することができる。
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※「利害関係者とは何か」については、本サイトの論考を参照。
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■コンプライアンス研修講師の紹介

https://compliance21.com/company/compliance-lecturer-introduction/

 

(※公務員不祥事の事例と処分などについて詳しく述べた唯一の「公務員コンプライアンス」の本は当職の著書⇒公務員倫理の本

2.検事の職業倫理

 1で述べたものが具体的倫理として、検事には課せられている。また公益通報者保護法の適用も検事組織にはあるのは、大阪地検特捜部での証拠偽造事件事件からも明らかである。
 検察コンプライアンスの徹底的な見直しが検事組織全体に不可欠な時代になってきている。
 当職のクライアントが「質が落ちている」と一言。ロッキード事件の頃のような「巨悪を眠らせない」信頼は今の検察にないな、と。
(本サイトの検察コンプライアンス参照 ⇒【特捜検事の逮捕と検察組織のコンプライアンス違反】https://compliance21.com/prosecutor-arrest/ )

3.過去の検察不祥事

(1)2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件では、女性検事の内部告発で事件が発覚して、主任検事に加え、改ざんを隠蔽したとされる同部部長らが逮捕され、懲戒免職に。事件当時同地検検事正だった福岡高検検事長ら5人が懲戒処分となったほか、検事総長と次長検事の最高検トップ2人が引責辞任する事態に発展した。
 なお、この時の実行犯はネットでメディア活動している。黒川検事長も再就職先はすぐに見つかるであろう。弁護士開業すれば客も付くであろう。
(2)東京地検特捜部でも、陸山会事件の捜査でうその報告書を作成したとして、検事が減給処分となった。この問題では、上司だった名古屋高検検事長が厳重注意の処分を受けた。この事件処理も今回の黒川検事長と同じで極めて甘いとの指摘がある。
(3)大阪高検では02年、公安部長が捜査情報を漏らす見返りに高級クラブで暴力団関係者から接待を受けたとする収賄容疑などで逮捕された。監督責任を問われ、検事総長と大阪高検検事長に懲戒処分が出された。この事件処理は検察の残念さが噴出した世論の反発も大きかった。今回の黒川検事長と同じで世論を知らん顔して極めて甘かった。
(4)1999年には、東京高検検事長が月刊誌に女性関係を報道され、厳重注意処分を受けて辞任した。今回と同じ役職である。権力につくと何でもできる全能感の錯覚が心理学的に発生する。
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4.黒川検事長への行政処分(任命権者の処分は懲戒処分が相当)

森雅子法務大臣の懲戒処分が相当との意見はなかった.

「訓告」は行政処分ではない。これを争うこともできない。人事上の対応であって、人事評価にマイナスになるものに過ぎない。検事総長が行った。いわゆるミスと同レベルである。

しかし、これは間違っている。なぜなら、「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)最終改正: 令和2年4月1日職審―131 では、

3 公務外非行関係

(9) 賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。

となっているのだ。検事長は身分が次の通りである。

検察庁法 第一五条[検察官の等級] 検事総長、次長検事及び各検事長は一級とし、その任免は、内閣が行い、天皇が、これを認証する。

また、国家公務員法等にもあるように、上を除いて、法務大臣が検察官の任免権・懲戒権を持つが、

第七条[検事総長・次長検事]
検事総長は、最高検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、すべての検察庁の職員を指揮監督する。

となっているので、検察の独立性からも、事実上は、検事総長が懲戒処分などの決定すべきであろう。カントが言うように、倫理は自律性を本質とするからである。

検事長の任命権者は内閣であるから、免職等処分も内閣である。何も処分がなされていないから、つまり法律上の「懲戒処分」はまだ可能である。国家公務員法では、懲戒免職も可能であって、注意書きが検察庁法にもある。なお、退職金は実務上は地方公務員も含めて処分と切り離してそれ独自の観点からなされるように近時はなった。誤解のないように。

第二五条[身分の保障]
検察官は、前三条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。

 

以上の処分の正当な在り方について、内閣はどう考えているのであろうか。国民の不公平感は強いだろう。他の公務員への処分との公平はどうであろうか。

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