この度、令和7年の通常国会での成立が見込まれる「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」の要綱について、労働政策審議会(厚生労働省)が妥当と答申しました。本稿では、企業が対応すべき重要な改正点について、中川総合法務オフィス代表が、コンプライアンスの専門家の視点から解説いたします。

1.治療と仕事の両立支援の強化(努力義務)

今回の改正では、疾病や病気を抱える労働者が治療を継続しながらも就業できるよう、事業主に対して必要な配慮を行うことが努力義務として定められました。これは、労働力不足が深刻化する現代において、多様な働き方を支援し、労働者の離職を防ぐ上で非常に重要な視点です。企業は、個々の労働者の状況に応じた柔軟な働き方や業務内容の見直しなどを検討する必要があります。

2.カスタマーハラスメント対策の義務化

近年増加している顧客からのハラスメント、いわゆる「カスハラ」に対する対策が、今回の改正で事業主の義務となります。従業員が安心して業務に取り組める環境を整備することは、企業の安全配慮義務の一環です。具体的には、カスハラに対する相談窓口の設置、対応マニュアルの作成、従業員への研修などが求められると考えられます。東京都の条例でも同様の動きが見られる中、企業は早急な対策を講じる必要があります。

3.求職者に対するハラスメント防止

採用活動における求職者へのハラスメント防止も、今回の改正で明確化されます。採用選考は、企業と求職者間の力関係において、企業側が優位な立場にあることが少なくありません。過去には、就職活動中の学生が不適切な扱いを受ける事例も散見されました。今回の法改正は、このようなハラスメントを未然に防ぎ、公正な採用活動を促進することを目的としています。企業は、採用担当者への研修や選考プロセスの見直しを通じて、ハラスメント防止に努める必要があります。

4.女性活躍推進法の改正:男女間賃金格差等の公表義務拡大

女性活躍推進法も改正され、男女間の賃金格差に関する情報公表の義務が、従業員数301人以上の企業に加え、101人以上の企業にも拡大されます。また、女性管理職の割合についても、同様に101人以上の企業に対して情報公表が義務付けられます。これは、企業におけるジェンダー平等の推進を促し、女性がより活躍できる社会の実現を目指すものです。企業は、現状の課題を分析し、具体的な改善策を講じることが求められます。

5.法改正の背景と企業への影響

これらの労働関係法の改正は、日本の労働市場が直面する様々な課題、例えば労働人口の減少や働き方の多様化、ハラスメント問題の深刻化などを背景に進められています。企業は、これらの法改正の内容を正確に理解し、適切な対策を講じることで、労働者の権利保護と働きやすい環境づくりに貢献するとともに、企業自身の持続的な成長にも繋げることが重要です。

中川総合法務オフィスでは、これらの法改正に関するご相談や、企業における具体的な対策の導入支援を行っております。コンプライアンス体制の強化に向けて、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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