地方銀行のコーポレート・ガバナンス(企業統治)コード作成へ【金融庁8論点】

1.スルガ銀行の暴走

スルガ銀行株式会社は、静岡県沼津市に本店を置き静岡県・神奈川県を主たる営業エリアとする日本の地方銀行である。

そのスルガ銀行で、以下の5つの不祥事が連続して発生した(明るみに出た)。

(1)女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」融資問題

スルガ銀行は、1980年代に個人や中小企業を相手としたリテール融資に力を入れるようになり、不動産向けローンでは、他行が及び腰となるような投資用物件への融資、大手行では最短でも2週間かかる審査を5営業日で終わらせる迅速な審査等から、当時の金融庁長官から賞賛されるほどであった。

そこで、事業展開として、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を中心にシェアハウスを展開していたスマートデイズへの多額の融資を行っていたが、入居率が低迷しその会社が民事再生法の適用を申請した。

スマートデイズは、セミナー等を通じて集めた、シェアハウスオーナーに関心を持つ会社員らにメーンバンクであるスルガ銀行での融資を勧め、提出させた通帳の写しの預金残高が少なかった場合には、写しを改竄するなどの手口で、貯蓄や所得を水増しした上で、投資家にスルガ銀行の横浜市内の支店を通じて、融資を受けさせていた。

金融庁は、2018年3月16日、スルガ銀行に対して報告徴求命令を出し、実態の解明、報告を命じ、同行役員がシェアハウス融資の過程で、不正行為に関与していた可能性があるとして、同行への緊急立ち入り調査も行った。

2018年5月15日、スルガ銀行により中村直人弁護士を委員長とする第三者委員会が設置され、「かぼちゃの馬車」関連に限らず、役員が不正融資に関与していた事例が多数あり、常態化していた実態が明らかとなり、岡野光喜会長兼CEO、米山明広社長ら3人の代表取締役を含む役員5名が退任した。なお、上司に首をつかまれて壁に押し当てられたり、営業目標が達成できない際に2時間以上立たされ同僚の前で給与額を言われたりするパワーハラスメント、上司の「お前の家族皆殺しにしてやる」「ビルから飛び降りろ」など恫喝もあった。

(2)顧客の定期預金を流用

2018年8月、本店営業部の男性行員が2015年に顧客の定期預金約1.6億円を無断で解約し、自分の担当先への融資金に流用していたことが発覚し、懲戒解雇処分となった。

(3)マンション投資を巡る訴訟

大阪市内の不動産会社からマンションを計2億2,900万円で購入した岡山県在住の男性が、スルガ銀行から融資を受ける際、業者から家賃収入で十分に返済可能であると説明され、月約100万円を返済する内容の契約を締結したが、実際の収入は返済額を下回っていたとして不動産会社とスルガ銀行を相手取り、計約2億2,700万円の支払いを求めて大阪地方裁判所に訴訟を提起した。

(4)創業家への融資

スルガ銀行は創業家の関連会社に対し、使途不明金を含む融資を行なっており、その金額は数百億円に上ることが一連の不祥事を受けた調査の過程で判明した。

(5)デート商法詐欺まがい行為

2019年2月13日、スルガ銀行行員がデート商法詐欺まがいの行為に関与し、個人向けの無担保ローンを融資していた疑いが判明した。

2018年10月5日に金融庁は不動産投資向けの新規融資を6カ月間禁じる一部業務停止命令を出した。資料改竄などの不正融資以外にも反社会的勢力への融資といった問題があることを理由にあげている。一部業務停止命令は2013年にみずほ銀行に出されて以来(みずほ銀行暴力団融資事件)である。スルガ銀行は、行政指導を受けて金融庁に業務改善計画を提出した。「創業家本位の企業風土を抜本的に改めることが改革の前提条件」と明記した上で、社内ガバナンスの再構築、投資用不動産で不適切な融資を行った一部債務者への対応などを盛り込まれた。

このようなスルガ銀行の不正融資は、氷山の一角に過ぎないのであろうか。質の悪い融資、アパートローン、ノンバンク業務などで焦げ付きが起き、全国にある106の地方銀行の多くは連続した赤字に苦しんでいる。融資案件不足や長期にわたる低金利で収益が細り存在意義が問われ、金融庁のコーポレート・ガバナンスの新しいコードが作成されようとしている。

2.地方銀行版「コーポレートガバナンス・コード」

(1)地銀の経営改革へ8つの論点 金融庁が公表(社外取起用やコスト削減等)2020年2月

①経営理念

ステークホルダーとの関係や企業価値の最大化などどう考えるか

②地域社会との関係

③頭取の役割

将来的な生き残り策は。任期中にどう課題を解決するか。

⇒一部の頭取が銀行の課題を認識しながらも、再編やコスト削減といった抜本的な経営改革に手を着けようとしないので、経営者の役割として「課題を先送りすることなく自らの任期中にどう対応するのか」と明記し、現役の頭取に決断を迫る。

④取締役会が頭取らを選解任するための取り組み

かんぽ生命保険の不適切販売など金融機関の不祥事が相次ぐなか、ガバナンスの強化も重視する。社外取締役を迎える地銀は増えたものの十分な監視機能を果たしていないとみて、社外取の役割を明確にするよう求める。トップとして不適格とみなしたときに、社外取締役が主導して指名委員会で解任を提案することもできるような運用の仕組みも点検する。

⑤経営戦略の策定

超低金利下の運用難で、資産運用の高度化も論点である。過去に購入した高利回りの国債は大量償還が3~4年後に迫る。足元では国債の金利が落ち込んで、単純な再投資では利回りを維持できない。外部の専門組織の助言が必要でないか。

⑥経営戦略の実践

デジタル化に合わせた業務合理化策では、顧客のニーズの変化に合わせて従来の店舗中心のサービスの在り方を見直す。金融庁は「店舗合理化といったコスト削減策は踏み込みが甘い」と見るが、過疎地や離島の店舗は顧客に不可欠とする見方もあり、地域の実情に合った対策を検討する。

⑦業務の合理化·他機関との連携

革新的技術の進展など考慮し店舗はどうあるべきか、有価証券運用での外部専門家の活用やシステム統合などの検討状況

⑧人材育成

(2)地方銀行の事業を持続可能にするための工夫

地域経済の低迷で収益力の先細りが避けられない地銀が多く、将来の存続可能性を高める道筋を探る。

例えば、証券会社と地方銀行の連携が広がっている。野村ホールディングスは野村証券が徳島県を地盤とする阿波銀行と包括提携すると発表した。昨年提携した山陰合同銀行に続き、個人向けの証券事業を統合する。法人向け業務に特化する。

また、SBIホールディングスが島根銀行や福島銀行、筑邦銀行に相次いで出資を決めた。SBIがグループで持つフィンテックや運用サービスを提供して、収益力を上げる。

東海東京フィナンシャル・ホールディングスは横浜銀行など地銀を中心に7つの証券会社を共同出資で設立している。

広島銀行は、インターネット証券大手の楽天証券、SBI証券の両社と金融商品の仲介で提携した。ネット証券と提携することで株式や債券、投信など金融商品の品ぞろえを増やすと同時に、若年層にもサービスを届けやすくする。

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