本稿は、令和8年(2026年)4月1日現在の現行地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「地公法」という。)に基づく。第61条と第62条は、一方が罰則の本体、他方がその共犯形態を定める規定であり、両者を切り離して読むと射程を誤りやすい。そこで2か条をまとめて扱う。


1 条文原文

第61条

第六十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
一 第五十条第一項に規定する権限の行使に関し、第八条第六項の規定により人事委員会若しくは公平委員会から証人として喚問を受け、正当な理由がなくてこれに応ぜず、若しくは虚偽の陳述をした者又は同項の規定により人事委員会若しくは公平委員会から書類若しくはその写の提出を求められ、正当な理由がなくてこれに応ぜず、若しくは虚偽の事項を記載した書類若しくはその写を提出した者
二 第十五条の規定に違反して任用した者
三 第十八条の三(第二十一条の四第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して受験を阻害し、又は情報を提供した者
四 何人たるを問わず、第三十七条第一項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、唆し、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者
五 第四十六条の規定による勤務条件に関する措置の要求の申出を故意に妨げた者

第62条

第六十二条 第六十条第二号又は前条第一号から第三号まで若しくは第五号に掲げる行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし、又はそのほヽうヽ助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する。

第62条の「ほヽうヽ助」は、原文で「ほう」の二字に傍点が付されていることを示す表記である。実質は「幇助」を意味する。


2 罰則章のなかでの位置づけ

地公法第5章「罰則」は、第60条から第65条までで構成される。刑の重さで整理すると次のようになる。

  • 第60条:一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金(平等取扱いの原則違反の差別、守秘義務違反、人事委員会・公平委員会の指示への故意の不服従、退職管理規制に違反した再就職者の働きかけ)
  • 第61条:三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金(本稿の対象)
  • 第62条:第60条第2号および第61条第1号から第3号まで・第5号に掲げる行為の共犯的関与
  • 第63条:三年以下の拘禁刑(刑法に正条があるときは刑法による。退職管理規制に関する不正行為)

第61条は、地公法のなかで最も重い自由刑を定める条項である。第60条が「一年以下」であるのに対して第61条が「三年以下」とされているのは、対象行為が人事行政の根幹である成績主義・中立性・救済制度を直接に破壊する性質をもつと立法者が判断したためである。


3 趣旨・立法背景

第61条の各号は、性質の異なる五つの利益をそれぞれ守っている。ばらばらに並んでいるように見えるが、いずれも「人事行政の公正さを外から支える仕組み」を刑罰で担保するという共通の発想に立つ。

第1号 審査手続の実効性の確保

人事委員会・公平委員会は、不利益処分についての審査請求(第49条の2、第50条第1項)を審理するにあたり、準司法的な機能を果たす。その審理を実質化するため、第8条第6項は証人喚問と書類提出要求の権限を与えている。ところが両委員会には強制執行の手段がない。そこで、正当な理由のない不出頭・虚偽陳述・書類の不提出・虚偽記載書類の提出を刑罰で抑止することとした。裁判所の証人尋問における偽証罪(刑法第169条)に相当する機能をもたせた規定である。

注意すべきは、処罰対象が第50条第1項の権限行使、すなわち不利益処分の審査に関する場面に限られている点である。第46条の勤務条件に関する措置の要求について第47条に基づき審査を行う場面での証人喚問拒否は、第61条第1号の対象外となる。同じ第8条第6項の権限行使でありながら射程が分かれるため、条文を機械的に読むと誤る。

第2号 成績主義の刑事的担保

第15条は「職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない」と定める。地方公務員制度の根本原則である。情実任用・猟官制を排し、公務の中立性と能率を確保するという第1条の目的に直結する。

第15条違反の任用は、行政上は任用行為の効力の問題として処理されることが多い。しかし立法者は、それだけでは抑止力として足りないと考え、任用権限を行使した者自身を処罰する規定を置いた。制度の建付けとしては、任命権者側の行為を正面から犯罪とする点に特色がある。

第3号 試験の公正の確保

第18条の3は「試験機関に属する者その他職員は、受験を阻害し、又は受験に不当な影響を与える目的をもつて特別若しくは秘密の情報を提供してはならない」と定める。採用試験の公正を守る規定である。第21条の4第4項により昇任試験にも準用されるため、昇任試験の問題漏えいや特定候補者への便宜供与も同じ罰則の射程に入る。

第4号 争議行為の助長行為の処罰

第37条第1項前段は、職員による同盟罷業・怠業その他の争議行為を禁止する。第61条第4号は、争議行為そのものではなく、その遂行を共謀し、唆し、あおり、またはこれらを企てた者を処罰する。争議行為に参加しただけの職員は刑事罰の対象とならず、懲戒処分と給与の減額で対応される。この構造は、労働基本権の制約を必要最小限にとどめるという立法上の配慮に由来する。

「何人たるを問わず」とあるため、職員以外の者、たとえば職員団体の外部役員、上部団体の役員、支援者も処罰対象となる。地公法のなかで身分を問わずに適用される数少ない規定である。

第5号 措置要求権の保護

第46条の勤務条件に関する措置の要求は、労働基本権が制約されている地方公務員にとっての代償措置の中核をなす。上司が申出を握りつぶしたり、書面の提出を妨げたりすれば、代償措置そのものが機能しなくなる。第5号はこの申出の自由を刑罰で守る。争議権制約の合憲性が代償措置の存在によって支えられている以上、この規定は憲法上の要請と結びついている。

第62条の趣旨

第62条は、刑法総則の共犯規定では足りない部分を補う。補われているのは二点である。

第一に、「命じ」および「故意にこれを容認し」という行為類型を独立に処罰する。刑法上、単なる黙認は原則として不作為による幇助の成否が問題となるにとどまり、成立範囲は限定的である。第62条は、上司が部下の違反行為を認識しながら放置した場合を正面から犯罪としている。組織的な不正が上下関係のもとで生じやすいという実態を踏まえた規定である。

第二に、幇助について「それぞれ各本条の刑に処する」と定め、刑法第63条の従犯減軽を適用しない。幇助者も正犯と同じ法定刑の枠内で処断される。


4 改正の経緯

第61条・第62条は、制定以来おおむね形を保ってきたが、近年に三つの節目がある。

(1) 平成26年法律第34号による罰金額の引上げと引用条文の整理

平成26年5月14日公布、平成28年4月1日施行の「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律」により、第61条の罰金の上限が10万円から100万円へ引き上げられた。あわせて柱書の「左の各号の一に該当する者」が「次の各号のいずれかに該当する者」に改められ、第3号の引用が「第19条第1項後段」から「第18条の3(第21条の4第4項において準用する場合を含む。)」に改められた。人事評価制度の導入にあわせて任用関係の条文が再編されたことに伴う整理である。

なお、第60条の罰金上限も同時に3万円から50万円に引き上げられている。制定当時の貨幣価値のまま長く据え置かれていた金額が、この改正で現代の水準に合わせられた。

(2) 令和3年法律第75号によるILO第105号条約対応

第4号の争議行為の助長行為に懲役刑が定められていたことは、強制労働の廃止に関する条約(ILO第105号条約)が禁じる「同盟罷業に参加したことに対する制裁としての強制労働」に抵触するおそれがあると指摘されてきた。日本はILO原加盟国でありながら、この中核的労働基準を長く批准できずにいた。

令和3年6月16日公布の「強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結のための関係法律の整備に関する法律」(議員立法)は、地公法について第61条第4号を「削除」とし、第62条の次に第62条の2を新設して、同じ行為を「三年以下の禁錮又は百万円以下の罰金」で処罰する形に組み替えた。刑務作業が義務づけられる懲役刑を外すことで条約適合性を確保する手法である。国家公務員法第110条第1項第17号についても同様の措置がとられた。

この整備法の成立を受けて、日本は令和4年7月19日に条約を批准し、令和5年7月19日に発効した。

(3) 令和4年法律第67号・第68号による拘禁刑への一本化

令和4年6月17日公布の「刑法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第67号)は、懲役と禁錮を廃止し、拘禁刑に一本化した。施行は令和7年6月1日である。拘禁刑では作業が刑の内容として当然に義務づけられるわけではなく、改善更生を図るために必要な作業または指導を行うことができるという建て方に改められた。

これに伴う「刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律」(令和4年法律第68号)により、地公法の罰則も拘禁刑に置き換えられた。懲役と禁錮の区別が消滅したため、条約対応のために切り分けられていた争議行為の助長行為の罰則を別条に置く必要がなくなり、現行法では第61条第4号に戻されている。整備法で採用された「唆し」という漢字表記がそのまま引き継がれており、第1号から第3号まで・第5号が「そそのかし」を用いる第62条と表記が揺れているのは、この経緯によるものである。

条約適合性については、拘禁刑の受刑者が作業を行う自発的な意思をもたない場合に意思に反する作業が強制されないことを法務省の通達で確保する運用がとられている。

(4) 現行法の確認について

第61条第4号は、令和3年から令和7年6月1日までの間、条文上は「削除」とされ第62条の2に置かれていた。この時期に作成された解説書やウェブサイトには旧構成のまま更新されていないものが少なくない。実務で条文を引用する際は、e-Gov法令検索で施行日を令和8年4月1日に指定して確認されたい。


5 用語解説

拘禁刑

令和7年6月1日に懲役と禁錮を統合して創設された自由刑。刑事施設に拘置し、改善更生を図るため必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことができる(刑法第12条)。有期は1月以上20年以下。第61条の「三年以下の拘禁刑」とは、その範囲内で裁判所が刑期を定めることを意味する。

共謀

二人以上の者が、特定の争議行為を実行することについて意思を通じ合うこと。実行行為への直接の関与は要しない。

そそのかし(唆し)

まだ争議行為を実行する決意をもたない者に対し、その決意を新たに生じさせるに足りる働きかけをすること。相手が現実に決意したかどうかを問わないとするのが判例の立場である。

あおり

すでに決意している者、あるいは決意しつつある者に対し、その決意を助長させるような勢いのある刺激を与えること。文書の頒布、集会での演説、指令の伝達がこれに当たりうる。

企て

共謀・そそのかし・あおりの遂行を計画準備する行為であって、争議行為発生の危険性が具体的に生じたと認めうる状態に達したものをいう。単なる内心の計画では足りない。

命じ(第62条)

職務上の指揮命令として違反行為を行わせること。命令を受けた側が実行しなくても、命じた行為自体が処罰対象となる。

故意にこれを容認し(第62条)

違反行為が行われることを認識しながら、これを阻止せず容認すること。過失による見落としは含まない。認識があったことの立証が争点となる。

何人たるを問わず(第61条第4号)

職員であるかどうか、当該地方公共団体と関係があるかどうかを問わないという意味。第61条の他の号が任命権者や試験機関関係者を念頭に置くのに対し、第4号だけは主体に限定がない。

正当な理由(第61条第1号)

証人喚問や書類提出要求に応じないことが是認される事由。病気、災害、職務上の秘密に関わる場合が典型である。単に不都合であるという理由では認められない。


6 判例・裁判例

第61条をめぐる判例の蓄積は、圧倒的に第4号に集中している。労働基本権の制約が憲法第28条に適合するかという問題が、最高裁大法廷の判断を繰り返し求めてきたためである。

(1) 都教組事件(最大判昭和44年4月2日 刑集23巻5号305頁)

東京都教職員組合が勤務評定に反対して一斉休暇闘争を行い、組合役員が第61条第4号違反で起訴された事案。最高裁は、条文を文字どおり解釈すると違憲の疑いがあることを認めたうえで、法律は可能なかぎり憲法の精神に即して合理的に解釈すべきであるとして、合憲限定解釈を採用した。具体的には、処罰対象となる争議行為を違法性の強いものに限り、かつ、あおり行為についても争議行為に通常随伴する行為は可罰性を欠くとした。二重のしぼり論と呼ばれる。同日の全司法仙台事件判決(最大判昭和44年4月2日 刑集23巻5号685頁)も国家公務員法について同様の枠組みを示した。

(2) 全農林警職法事件(最大判昭和48年4月25日 刑集27巻4号547頁)

国家公務員法第110条第1項第17号について、最高裁は判例を変更した。不明確な限定解釈は犯罪構成要件の保障的機能を失わせ、明確性を要請する憲法第31条に違反する疑いすらあるとして、二重のしぼり論を否定し、公務員の争議行為の一律禁止と刑罰による規制を合憲とした。代償措置としての人事院勧告制度の存在が合憲性を支える柱とされた。

(3) 岩教組学テ事件(最大判昭和51年5月21日 刑集30巻5号1178頁)

全国中学校一斉学力調査の実施を阻止しようとした岩手県教職員組合の事案。最高裁は、第61条第4号について都教組事件判決を明示的に変更した。判旨は、公務員の争議行為が制約されるのは業務の正常な運営を阻害する集団的かつ組織的な労務不提供として反公共性をもつからであり、共謀・そそのかし・あおりはその争議行為を成り立たせる原動力であって、全体としての争議行為のなかで中核的地位を占めると述べた。したがって、争議行為を違法性の強弱で区別したり、通常随伴する行為を適用外とする解釈は是認できないとした。

同日、旭川学テ事件判決(最大判昭和51年5月21日)も言い渡されており、こちらは教育内容の決定権能を扱っている。両者は事件名が似ているため混同されやすい。

(4) 全逓名古屋中郵事件(最大判昭和52年5月4日)

現業公務員についても同じ考え方が及ぶことを示し、全逓東京中郵事件判決を変更した。これにより、公務員一般について争議行為の禁止と助長行為の処罰が合憲であるという判例法理が確立した。

(5) 日教組・都教組74春闘事件(最一小判平成元年12月18日)

昭和49年春闘における日教組中央執行委員長と都教組執行委員長の刑事責任が問われた事案。最高裁は、臨時大会での同盟罷業実施の決定、傘下組合への指示文書の発出、実施体制確立の指示といった行為を第61条第4号の「あおりの企て」に当たるとし、指令の伝達、教育新聞の頒布、行動要請の発出を「あおり」に当たるとした。そのうえで、あおることを企てたうえで現に当該同盟罷業の遂行をあおった行為は、犯罪の性質、同号の規定形式、法定刑に照らし、包括して同号の一罪を構成すると判示した。

判決には角田禮次郎裁判官・佐藤哲郎裁判官の補足意見が付されている。本件行為当時は都教組事件判決がまだ明示的に変更されておらず、判例変更の途上にあったという事情は量刑上軽視できないとして、原判決の懲役刑(執行猶予付き)は重きに失するとの見解が示された。もっとも、破棄しなければ著しく正義に反する場合には当たらないとして、上告は棄却されている。

(6) 代償措置の機能に関する判断

人事院勧告の実施が凍結された事案について、最高裁は代償措置が機能していないとはいえないと判断している(最判平成12年3月17日)。国家公務員法に関する事案であるが、地方公務員についても、人事委員会勧告制度と措置要求制度が代償措置として機能しているかどうかを問う場面で参照される。

(7) 第2号に関連する実例

第61条第2号の適用例は公表されていない。もっとも、第15条違反が現実に問題となった事例はある。平成20年に発覚した大分県教員採用選考試験をめぐる汚職では、県教育委員会幹部が答案の得点を改ざんし、本来合格しない受験者を合格させていた。刑事責任は収賄罪・贈賄罪で問われ、関係者全員の有罪が確定している。

その後、不正に合格したとして採用を取り消された者が処分の取消しを求めた二つの訴訟では、結論が分かれた。得点の改ざんが受験者本人の関与なく県教育委員会側で行われたと認定された事案で処分を違法とした判断(福岡高判平成28年9月)と、同じく本人の関与はないとしつつ不公平さは看過できないとして処分を適法とした判断(福岡高判平成29年6月)が並存し、いずれも最高裁第一小法廷の決定(平成30年6月28日付)により確定した。成績主義違反が刑事・懲戒・任用の効力という複数の局面に波及することを示す教材である。

(8) 第62条に関する判例

第62条を単独で適用した公刊裁判例は見当たらない。共犯的関与が問題となる場面では、贈収賄罪や虚偽公文書作成罪といった刑法上の犯罪、あるいは第61条各号の正犯として構成されることが多いためと考えられる。


7 国家公務員法との比較

項目地公法国公法
三年以下の拘禁刑を定める規定第61条第109条・第110条
争議行為の助長行為第61条第4号第110条第1項第17号
共犯的関与の特別規定第62条第111条
罰金の上限百万円百万円
証人喚問に応じない行為人事委員会・公平委員会の権限行使(第8条第6項)人事院の調査権(第17条)

構造はほぼ並行している。国公法第111条も「企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし、又はそのほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する」という同一の文言を用いており、争議行為の助長行為を対象から外している点も共通する。助長行為の罰則自体が共謀・そそのかし・あおり・企てを正面から処罰しているため、さらに共犯規定を重ねる必要がないという整理である。

相違点として押さえておきたいのは、国公法では人事院の調査権が第17条に基づく広い権限として設計されており、証人喚問拒否のほか検査の拒否・妨害・忌避も処罰対象に含まれている点である。地公法にはこれに対応する検査権限の規定がない。人事委員会・公平委員会の調査権限が人事院より限定的であることの反映であり、この差は昇任試験の比較問題で問われることがある。

国家公務員倫理法には、第61条各号に対応する罰則はない。同法の罰則(第46条)は贈与等報告書の虚偽記載に関するものであり、任用の公正や争議行為とは領域を異にする。この分野で国家公務員倫理法を参照する実益はない。


8 実務上の留意点

(1) 審査請求の審理に呼ばれたときの対応

不利益処分の審査請求で証人として喚問を受けた職員が、処分者側への配慮から出頭をためらう場面がある。第61条第1号は、この不出頭に刑事罰を予定している。所属長が出頭を妨げれば、第62条の「命じ」または「故意にこれを容認し」に該当しうる。人事委員会・公平委員会からの喚問があった場合、組織としてこれに応じる体制を整えておく必要がある。

(2) 昇任試験の情報管理

第18条の3が第21条の4第4項により昇任試験に準用される点は見落とされやすい。試験問題の作成・印刷・保管に関わる職員、採点に関わる職員は、いずれも「試験機関に属する者」として第61条第3号の主体となりうる。過去問の傾向を特定の受験者にだけ伝える行為も、「受験に不当な影響を与える目的」が認定されれば処罰対象となる。試験事務従事者への事前研修で、この条文を具体的に示しておくことが有効である。

(3) 管理職の「黙認」が犯罪になりうること

第62条の実務上の意義は、この一点に尽きるといってよい。部下が守秘義務に違反して情報を漏らしていることを知りながら放置した課長は、第60条第2号の罪について第62条により同条の刑で処断されうる。組織的な不正の連鎖を断つために、認識した時点で止める義務が刑事責任の形で裏打ちされている。内部通報を受けた管理職が握りつぶす行為も、対象となる違反行為の種類によっては同様の評価を受ける。

(4) 争議行為への実務対応

現在、第61条第4号による起訴はほとんど行われていない。昭和60年代以降、公表された適用例は途絶えている。実務上の対応は、争議行為に参加した職員への懲戒処分と、勤務しなかった時間分の給与減額が中心となる。もっとも、条文が生きている以上、争議行為の企画・指令・呼びかけに関与する立場の者には刑事責任の可能性が残る。職員団体との交渉実務に携わる職員は、この線引きを理解しておく必要がある。

(5) 欠格条項との連動

第61条・第62条の罪で刑に処せられた場合、人事委員会・公平委員会の委員の職にあった者は第16条第3号により職員となる欠格事由に該当し、第9条の2第3項により委員となることもできない。罰金刑であっても同様である。刑の重さだけでなく、資格制限が連動する点に注意を要する。


9 昇任試験対策メモ

  • 第60条は一年以下、第61条は三年以下、第63条は三年以下(罰金なし)。法定刑の区別は頻出である。
  • 第62条の対象は、第60条第2号と第61条第1号から第3号まで・第5号。第61条第4号が外れていること、その理由が同号自体の構造にあることを説明できるようにしておく。
  • 第61条第1号は第50条第1項の権限行使に限られる。第46条の措置要求の審査は含まれない。
  • 第61条第4号だけが「何人たるを問わず」であり、職員以外にも適用される。
  • 判例の流れは、都教組事件(限定解釈)から全農林警職法事件(国公法について変更)を経て岩教組学テ事件(地公法について変更)へ、という順で押さえる。地公法第61条第4号に直接の判例変更を行ったのは岩教組学テ事件である。
  • 懲役から拘禁刑への移行は令和7年6月1日。改正時期を問う出題に備えたい。

10 参考資料

  • 衆議院「強制労働の廃止に関する条約(第百五号)の締結のための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第75号)本文
  • 衆議院「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律」(平成26年法律第34号)本文
  • 国際労働機関(ILO)駐日事務所「1957年の強制労働廃止条約(第105号)」

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