一 条文原文

消防法第14条

政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、危険物施設保安員を定め、総務省令で定めるところにより、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の構造及び設備に係る保安のための業務を行わせなければならない。

消防法第14条の2

政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の火災を予防するため、総務省令で定める事項について予防規程を定め、市町村長等の認可を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする。

② 市町村長等は、予防規程が、第十条第三項の技術上の基準に適合していないときその他火災の予防のために適当でないと認めるときは、前項の認可をしてはならない。

③ 市町村長等は、火災の予防のため必要があるときは、予防規程の変更を命ずることができる。

④ 第一項に規定する製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者及びその従業者は、予防規程を守らなければならない。

⑤ 第十一条の五第四項及び第五項の規定は、第三項の規定による命令について準用する。

消防法第14条の3

政令で定める屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所の所有者、管理者又は占有者は、政令で定める時期ごとに、当該屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるものが第十条第四項の技術上の基準に従つて維持されているかどうかについて、市町村長等が行う保安に関する検査を受けなければならない。

② 政令で定める屋外タンク貯蔵所の所有者、管理者又は占有者は、当該屋外タンク貯蔵所について、不等沈下その他の政令で定める事由が生じた場合には、当該屋外タンク貯蔵所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるものが第十条第四項の技術上の基準に従つて維持されているかどうかについて、市町村長等が行う保安に関する検査を受けなければならない。

③ 第一項(屋外タンク貯蔵所に係る部分に限る。)又は前項の場合には、市町村長等は、これらの規定に規定する屋外タンク貯蔵所に係る構造及び設備に関する事項で政令で定めるものが第十条第四項の技術上の基準に従つて維持されているかどうかの審査を協会に委託することができる。

消防法第14条の3の2

政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない。

消防法第14条の4

同一事業所において政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所を所有し、管理し、又は占有する者で政令で定める数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものは、政令で定めるところにより、当該事業所に自衛消防組織を置かなければならない。

主要な下位法令

危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)

(危険物施設保安員を定めなければならない製造所等の指定) 第三十六条 法第十四条の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、指定数量の倍数が百以上の製造所若しくは一般取扱所又は移送取扱所のうち、総務省令で定めるもの以外のものとする。

(予防規程を定めなければならない製造所等の指定) 第三十七条 法第十四条の二第一項の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、第七条の三各号に掲げる製造所等又は給油取扱所のうち、総務省令で定めるもの以外のものとする。

(保安に関する検査) 第八条の四 法第十四条の三第一項の政令で定める屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所は、特定屋外タンク貯蔵所で、その貯蔵し、若しくは取り扱う液体の危険物の最大数量が一万キロリツトル以上のもの又は前条に規定する移送取扱所とする。 2 法第十四条の三第一項の政令で定める時期は、次の各号に掲げる特定屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所の区分に応じ、当該各号に定める時期とする。ただし、災害その他の総務省令で定める事由により、当該時期に法第十四条の三第一項の保安に関する検査を行うことが適当でないと認められるときは、当該特定屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所の所有者、管理者又は占有者の申請に基づき、市町村長等が別に定める時期とすることができる。 一 特定屋外タンク貯蔵所(次号及び第三号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。) 完成検査……を受けた日又は直近において行われた法第十四条の三第一項若しくは第二項の規定による保安に関する検査……を受けた日の翌日から起算して八年(次のイ又はロに掲げる特定屋外タンク貯蔵所にあつてはそれぞれイ又はロに定める期間とし……)を経過する日前一年目に当たる日から、当該経過する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間 イ 総務省令で定める保安のための措置を講じている特定屋外タンク貯蔵所 当該措置に応じ総務省令で定めるところにより市町村長等が定める十年又は十三年のいずれかの期間 ロ 総務省令で定める特殊の方法を用いて……測定された……液体危険物タンクの底部の板の厚さの一年当たりの腐食による減少量が総務省令で定める基準を満たす特定屋外タンク貯蔵所のうち、総務省令で定める保安のための措置を講じているもの ……市町村長等が定める八年以上十五年以内の期間 二 岩盤タンクに係る特定屋外タンク貯蔵所 ……十年を経過する日前一年目に当たる日から、当該経過する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間 三 特殊液体危険物タンクのうち総務省令で定めるものに係る特定屋外タンク貯蔵所 ……十三年を経過する日前一年目に当たる日から、当該経過する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間 四 移送取扱所 ……一年を経過する日前一月目に当たる日から、当該経過する日の翌日から起算して一月を経過する日までの間 4 法第十四条の三第二項の政令で定める屋外タンク貯蔵所は、特定屋外タンク貯蔵所とする。 5 法第十四条の三第二項の不等沈下その他の政令で定める事由は、液体危険物タンクの直径に対する当該液体危険物タンクの不等沈下の数値の割合が百分の一以上であることその他これに相当するものとして総務省令で定める事由とする。

(定期に点検をしなければならない製造所等の指定) 第八条の五 法第十四条の三の二の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、第七条の三に規定する製造所等(第八条の三に規定する移送取扱所を除く。)及び次に掲げる製造所等のうち、総務省令で定めるもの以外のものとする。 一 危険物を取り扱うタンクで地下にあるもの(以下この条において「地下タンク」という。)を有する製造所 二 地下タンク貯蔵所 三 移動タンク貯蔵所 四 地下タンクを有する給油取扱所 五 地下タンクを有する一般取扱所

(自衛消防組織を置かなければならない事業所) 第三十八条 法第十四条の四の政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所は、指定施設とする。 2 法第十四条の四の政令で定める数量は、第三十条の三第二項に規定する数量とする。

(自衛消防組織の編成) 第三十八条の二 法第十四条の四の規定による自衛消防組織(以下「自衛消防組織」という。)は、次の表の上欄に掲げる事業所の区分に応じそれぞれ同表の中欄及び下欄に掲げる数以上の人員及び化学消防自動車(指定施設である移送取扱所を有する事業所にあつては、総務省令で定める数以上の人員及び化学消防自動車)をもつて編成しなければならない。ただし、火災その他の災害のための相互応援に関する協定を締結している事業所については、総務省令で定めるところにより編成することをもつて足りるものとする。

事業所の区分(指定施設において取り扱う第四類の危険物の最大数量)人員数化学消防自動車の台数
指定数量の十二万倍未満五人一台
指定数量の十二万倍以上二十四万倍未満十人二台
指定数量の二十四万倍以上四十八万倍未満十五人三台
指定数量の四十八万倍以上二十人四台

関係する罰則等

第四十二条 次のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。 八 第十四条の二第一項の規定に違反して危険物を貯蔵し、若しくは取り扱つた者又は同条第三項の規定による命令に違反した者

第四十四条 次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。 四 第十四条の三第一項若しくは第二項又は第十七条の三の二の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者 五 第十四条の三の二の規定による点検記録を作成せず、虚偽の点検記録を作成し、又は点検記録を保存しなかつた者

第十二条の二 市町村長等は、……次の各号の一に該当するときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、第十一条第一項の許可を取り消し、又は期間を定めてその使用の停止を命ずることができる。 四 第十四条の三第一項又は第二項の規定に違反したとき。 五 第十四条の三の二の規定に違反したとき。

出典:e-Gov法令検索「消防法」(昭和23年法律第186号)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186 、同「危険物の規制に関する政令」(昭和34年政令第306号)https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306

二 趣旨・立法背景

この五つの規定は、危険物施設の自主保安を支える装置である。第13条までが人の資格を扱っていたのに対し、ここでは施設の点検、文書による社内規律、行政による定期的な検査、そして事業所の消火力が並ぶ。許可と完成検査が入口を押さえ、維持義務と命令が逸脱を正すのに対し、この一群は稼働している施設の内部で保安が日々回り続けることを目指している。

出発点は昭和40年法律第65号である。同法は二つの条からなり、第1条が消防法の第14条を「削除」としたうえで、第14条の2として予防規程を、第14条の3として自衛消防組織を加えた。第14条の2の第1項は「政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の火災を予防するため、予防規程を定め、市町村長等の認可を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする」とするもので、現行規定のうち「総務省令で定める事項について」の部分を除けば、そのままの文言である。第14条の3は「同一事業所において政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所を所有し、管理し、又は占有する者で政令で定める数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものは、政令で定めるところにより、当該事業所に自衛消防組織を置かなければならない」とされた。あわせて第42条第1項第6号に「第十四条の二第一項の規定に違反して危険物を貯蔵し、又は取り扱つた者」が加えられ、予防規程の認可を受けないままの貯蔵・取扱いが処罰の対象となった。

同法の第2条は、改めて第14条を全面改正し、「政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、危険物施設保安員を定め、命令で定めるところにより、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の構造及び設備に係る保安のための業務を行なわせなければならない」とした。第14条を一度削除したうえで、同じ法律の別の条で危険物施設保安員の規定を入れるという作りである。附則第1項により、第14条の2・第14条の3の追加と第2条による改正はいずれも昭和40年10月1日から施行された。予防規程、自衛消防組織、危険物施設保安員という三つの自主保安の仕組みが、同じ日に同時に動き出したことになる。

その後の経緯は、前回までに見た二つの改正法が関わる。昭和50年法律第84号(石油コンビナート等災害防止法)の附則は、第14条の3の2として定期点検の規定を新設した。当時の第14条の3はまだ自衛消防組織の規定であったため、定期点検は「第14条の3の2」という枝番号で割り込んだことになる。

昭和51年法律第37号が「第十四条の三を次のように改める」として、第14条の3を保安に関する検査の規定に書き換えた。これによって自衛消防組織は第14条の4へ移り、定期点検の第14条の3の2は、保安検査と自衛消防組織の間に挟まれる位置に残った。条文の並びが第14条の3(保安検査)、第14条の3の2(定期点検)、第14条の4(自衛消防組織)という不規則な形になっているのは、この二段の改正の痕跡である。保安検査の創設が水島製油所の重油流出事故を受けた改正の一部であり、完成検査前検査と危険物保安技術協会の創設と同じ法律によるものであることは、第11条の2および第11条の3の解説で見たとおりである。

第14条の2第1項に「総務省令で定める事項について」という語が入ったのは、予防規程に定めるべき事項を省令で特定する必要が生じたためである。現在、危険物の規制に関する規則第60条の2が、保安業務を管理する者の職務と組織、危険物保安監督者の職務を代行する者、自衛の消防組織、保安教育、巡視・点検・検査、施設の運転及び操作、危険物の取扱作業の基準、補修等の方法、工事中の火気管理、危険要因の把握と対策、給油取扱所に関する各項目、移送取扱所の工事現場の保安監督体制、災害等の非常時の措置、地震・津波時の点検と応急措置、保安に関する記録、位置・構造・設備を示す書類及び図面の整備などを列挙している。大規模地震対策特別措置法の地震防災対策強化地域や南海トラフ地震防災対策推進地域に所在する施設については、震災対策に関する事項が追加される。

三 文理解釈

危険物施設保安員の位置

第14条の義務の対象は、危険物の規制に関する政令第36条により、指定数量の倍数が百以上の製造所若しくは一般取扱所又は移送取扱所のうち、総務省令で定めるもの以外のものである。貯蔵所は含まれない。倍数百という閾値は、危険物保安監督者について政令第31条の2が用いる倍数三十より高い。保安員は、より大きな施設に限って置かれる。

行わせる業務は「構造及び設備に係る保安のための業務」である。危険物保安監督者が「危険物の取扱作業に関して保安の監督」をするのに対し(第13条第1項)、保安員は設備そのものを見る。取扱作業の監督と設備の保安が、人によって分けられている。保安監督者の職務を定める規則は、危険物施設保安員を置く製造所等についてはその者に必要な指示を行い、置かない製造所等については施設の構造及び設備に係る点検、記録、異常時の対応などを保安監督者自身が行うものとしている。保安員は保安監督者の下で動く役であり、保安員を置かない施設ではその職務が保安監督者に戻る関係にある。

資格要件は定められていない。危険物取扱者免状を要しない。選任又は解任の届出義務もない。第13条第2項が保安監督者について届出を義務づけ、第12条の7第2項が危険物保安統括管理者について届出を義務づけているのに対し、保安員については行政に知らせる仕組みが置かれていない。

予防規程の法的性格

第14条の2第1項は予防規程を定めて市町村長等の認可を受けることを義務づける。認可は、規程に法的な効力を与える行為である。第2項は、第10条第3項の技術上の基準に適合していないときその他火災の予防のために適当でないと認めるときは認可をしてはならないと定める。認可の拒否事由が限定列挙に近い形で示されており、適合しているのであれば認可を拒めないという構えである。

第4項は所有者等及びその従業者に遵守義務を課す。認可を受けた予防規程は、事業者が自ら作った文書でありながら、従業者を含めて拘束する。もっとも、この遵守義務の違反には罰則がない。第42条第1項第8号が処罰するのは、第1項に違反して危険物を貯蔵し若しくは取り扱った者、すなわち認可を受けないまま施設を使った者と、第3項の変更命令に違反した者である。認可された規程の内容を守らなかっただけでは、この号には当たらない。

もっとも、予防規程に定める事項の多くは、同時に第10条第3項の貯蔵・取扱いの技術上の基準や、他の法令上の義務と重なる。規程違反が同時に基準違反であれば、第11条の5第1項の遵守命令や第43条第1項第1号の罰則が働く。予防規程は、法令上の義務を施設の実態に即して具体化した文書として機能しており、規程そのものの違反に罰則を置く必要が小さいという設計と理解できる。

保安検査の二つの契機

第14条の3は、定期に受ける検査(第1項)と、事由が生じたときに受ける検査(第2項)を分けて定める。第1項の対象は、液体の危険物の最大数量が一万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所と、政令第8条の3に規定する移送取扱所である(政令第8条の4第1項)。特定屋外タンク貯蔵所は千キロリットル以上のものを指すから、保安検査を受けるのはその中でも一万キロリットル以上の大型タンクに限られる。

検査の時期は政令第8条の4第2項が定める。原則は完成検査又は前回の保安検査を受けた日の翌日から起算して八年であるが、総務省令で定める保安のための措置を講じている場合は市町村長等が定める十年又は十三年のいずれかの期間となり(同項第1号イ)、特殊の方法で測定した底部の板の厚さの一年当たりの腐食による減少量が基準を満たし、かつ保安のための措置を講じている場合は、市町村長等が定める八年以上十五年以内の期間となる(同号ロ)。イとロの双方に該当するときは長い期間が採られる。岩盤タンクは十年、総務省令で定める特殊液体危険物タンクは十三年、移送取扱所は一年である。移送取扱所だけが一年であり、タンクと配管で頻度が一桁違う。

期間が延びる条件が、講じた措置と実測された腐食速度の二本立てになっている点に、この制度の特徴がある。年数を一律に定めるのではなく、タンクの実際の劣化の進み方を測って次の検査までの間隔を決める。市町村長等が期間を「定める」とされているのは、測定値に基づく個別の判断が入るためである。

第2項の対象は特定屋外タンク貯蔵所であり、千キロリットル以上のすべてが含まれる(政令第8条の4第4項)。契機となる事由は、液体危険物タンクの直径に対する不等沈下の数値の割合が百分の一以上であることその他これに相当するものとして総務省令で定める事由である(同条第5項)。沈下が一定の割合を超えれば、定期の時期が来ていなくても検査を受けなければならない。

第3項は、屋外タンク貯蔵所についての審査を危険物保安技術協会に委託することを認める。第11条の3が許可審査と完成検査前検査の審査について同じ仕組みを置いているのと対応する。移送取扱所については委託の規定がない。

定期点検の対象と記録

第14条の3の2の対象は政令第8条の5が定める。第7条の3に規定する製造所等、すなわち公安委員会等への通報を要する規模の施設から、政令第8条の3の移送取扱所を除いたものと、地下タンクを有する製造所、地下タンク貯蔵所、移動タンク貯蔵所、地下タンクを有する給油取扱所、地下タンクを有する一般取扱所である。地下にあるタンクを持つ施設が規模を問わず対象に入っているのは、外部から目視できないため点検によらなければ漏れを把握できないことによる。

点検の時期は原則として一年に一回以上であり、告示で定める構造又は設備については告示で定める期間となる。実施者は危険物取扱者又は危険物施設保安員であり、危険物取扱者の立会いを受けた場合には危険物取扱者以外の者も点検を行える。記録に記載するのは、点検をした製造所等の名称、点検の方法及び結果、点検年月日、点検を行った者又は立会った危険物取扱者等の氏名である。

保存期間は点検の種類によって大きく異なる。屋外貯蔵タンクの内部点検の記録は二十六年間、保安のための措置を講じた場合は三十年間とされ、延長が認められた場合はその期間が加算される。地下貯蔵タンク等の漏れの点検は三年間、移動貯蔵タンクの漏れの点検は十年間、それ以外は三年間である。二十六年という期間は、内部点検の周期が十三年であることに対応する。前回と前々回の記録が常に手元に残る設計になっている。

屋外貯蔵タンクの内部点検は、引火点を有する液体の危険物を扱う屋外タンク貯蔵所のうち容量千キロリットル以上一万キロリットル未満のものを対象とし、十三年以内、保安措置を講じて届け出た場合は十五年以内に行う。期間内の点検が困難なときは、届出により二年に限り延長できる。保安検査の対象とならない千キロリットル以上一万キロリットル未満のタンクについては、この内部点検が実質的な定期検査の役割を担っている。

なお、鉱山保安法第19条第1項の保安規程を定めている製造所等と、火薬類取締法第28条第1項の危害予防規程を定めている製造所等は、定期点検の対象から除かれる。他の法令に同種の自主保安の仕組みがある場合に二重の義務を課さないという整理である。

自衛消防組織の設置と編成

第14条の4の対象は、政令第38条第1項により指定施設、同条第2項により第30条の3第2項に規定する数量以上となる。この二つは、第12条の7の危険物保安統括管理者について政令第30条の3第1項・第2項が定めるものと同一である。すなわち、危険物保安統括管理者を定めなければならない事業所と、自衛消防組織を置かなければならない事業所の要件は、政令の文面上は完全に一致する。第四類の危険物を取り扱う製造所、移送取扱所又は一般取扱所のうち総務省令で定めるもの以外のものを持ち、そこで取り扱う第四類の危険物が指定数量の三千倍以上という条件である。人を置く義務と組織を置く義務が、同じ閾値で同時に発生する。

編成は政令第38条の2が人員と化学消防自動車の数で定める。取り扱う第四類の危険物の最大数量が指定数量の十二万倍未満であれば五人と一台、十二万倍以上二十四万倍未満で十人と二台、二十四万倍以上四十八万倍未満で十五人と三台、四十八万倍以上で二十人と四台である。指定施設である移送取扱所を有する事業所については総務省令で定める数となる。ただし書により、火災その他の災害のための相互応援に関する協定を締結している事業所については、総務省令で定めるところにより編成することをもって足りる。

化学消防自動車は総務省令で定める消火能力及び設備を有するものでなければならず、消火活動に必要な消火薬剤及び器具を備えておかなければならない(同条第2項・第3項)。消防法が民間の事業所に消防自動車の保有を義務づける場面はここだけである。

四 用語解説

危険物施設保安員 政令で定める製造所等について、構造及び設備に係る保安のための業務を行う者をいう(第14条)。資格要件はなく、選任又は解任の届出も要しない。危険物保安監督者の指示を受けて職務を行う。

予防規程 製造所等の火災を予防するため、所有者、管理者又は占有者が総務省令で定める事項について定め、市町村長等の認可を受ける規程をいう(第14条の2第1項)。所有者等及びその従業者に遵守義務がある。

保安に関する検査 一定規模以上の屋外タンク貯蔵所又は移送取扱所について、構造及び設備に関する事項が技術上の基準に従って維持されているかどうかについて市町村長等が行う検査をいう(第14条の3)。保安検査と略される。

内部点検 引火点を有する液体の危険物を貯蔵し又は取り扱う屋外タンク貯蔵所のうち、容量千キロリットル以上一万キロリットル未満のものについて、タンクの内部を開放して行う点検をいう。定期点検の一類型であり、十三年又は十五年以内の周期で行う。

自衛消防組織 指定施設を持つ一定規模以上の事業所に置かれる、人員と化学消防自動車をもって編成する組織をいう(第14条の4)。石油コンビナート等災害防止法第16条の自衛防災組織とは別の制度である。

五 改正の経緯と内容

改正法令主な内容
昭和40年法律第65号第1条第14条を削除し、第14条の2(予防規程の認可、三項構成)及び第14条の3(事業所の自衛消防組織)を創設。第42条第1項第6号に予防規程の認可を受けない貯蔵・取扱いの罰則を追加
昭和40年法律第65号第2条第14条を改め、危険物施設保安員の規定を創設。附則により第14条の2・第14条の3の追加とあわせて昭和40年10月1日から施行
昭和50年法律第84号(石油コンビナート等災害防止法)附則第14条の3の2(定期点検及び点検記録の作成・保存)を新設。あわせて第12条の2に第14条の3の2違反を許可取消し・使用停止の事由として追加
昭和51年法律第37号第14条の3を全面改正して保安に関する検査の規定とし、自衛消防組織を第14条の4に繰下げ。第12条の2の引用を「第十四条の三」から「第十四条の三第一項又は第二項」に改正
平成14年法律第30号第14条の2第5項として第11条の5第4項及び第5項(公示と標識)を準用する規定を追加
令和4年法律第68号刑法等の一部を改正する法律の施行に伴い、第42条等の「懲役」を「拘禁刑」に改正

六 法的性格と解釈上の論点

担保の強さが三段に分かれていること

五つの規定は、いずれも事業者に義務を課す。しかし義務の違反に対する法の対応は一様ではなく、三つの段階に分かれる。

最も強いのは第14条の3の保安検査と第14条の3の2の定期点検である。これらに違反したときは、第12条の2第1項第4号及び第5号により、市町村長等が許可を取り消し、又は期間を定めて使用の停止を命ずることができる。許可の取消しまで至る事由であり、前々回に見たとおり、第12条の2第1項に残された事由は施設そのものの適法性に関わるものに限られている。検査と点検が、施設が基準に適合していることを確認する手続として、許可の基礎に属するものと位置づけられていることになる。あわせて、検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は第44条第4号、点検記録を作成せず、虚偽の記録を作成し、又は保存しなかった者は第44条第5号により、三十万円以下の罰金又は拘留に処される。

次が第14条の2の予防規程である。認可を受けないまま危険物を貯蔵し又は取り扱った者と、第3項の変更命令に違反した者は、第42条第1項第8号により六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処される。第45条第3号が第42条第1項から第7号及び第10号を除いて掲げているため、この第8号は両罰規定の対象であり、法人にも各本条の罰金刑が科される。もっとも、第12条の2の各号に第14条の2は挙げられていないため、許可の取消しや使用停止の事由にはならない。刑事罰はあるが行政処分はないという配分である。

最も弱いのが第14条の危険物施設保安員と第14条の4の自衛消防組織である。いずれについても罰則がなく、第12条の2の取消し・使用停止の事由にも挙げられていない。第13条の24の解任命令も、危険物保安統括管理者と危険物保安監督者だけを対象としており、保安員は含まれない。保安員を定めないこと、自衛消防組織を置かないことに対して、消防法が用意している制裁は見当たらない。

この配分を並べると、確認の手続には行政処分、文書による規律には刑事罰、人と組織の配置には制裁なしという対応になる。保安員と自衛消防組織については、第16条の5第1項の立入検査と資料提出命令を通じて実態を把握し、行政指導によって是正を求めるほかない。危険物保安監督者の未選任が第42条第1項第6号で処罰され、第12条の2第2項第3号の使用停止事由にもなるのと比べると、同じ人の配置の義務でありながら扱いが大きく違う。保安員が資格を要しない役であり、届出の義務もないことと併せて考えると、法はこの役の確保を事業者の自主性に委ねていると言える。

同一の閾値に対する二つの義務

政令第38条が自衛消防組織の対象を指定施設とし、数量を第30条の3第2項の数量と定めていることにより、第12条の7の危険物保安統括管理者と第14条の4の自衛消防組織は、政令の文面上は同じ事業所に同時に義務づけられる。統括管理者という人を置き、自衛消防組織という実働の組織を置く。事業所単位の保安を、指揮する者と動く組織の両面から求める構成である。

もっとも、消防庁の令和5年度危険物規制事務統計表が示す数は一致しない。令和6年3月31日現在で、危険物保安統括管理者を要する事業所は214か所、自衛消防組織を要する事業所は97か所である。いずれも「要する事業所数」として集計されたものであり、設置済みの数ではない。政令の要件が同一であるにもかかわらず報告された数が二倍以上違う理由は、政令の条文からは導けない。双方の「総務省令で定めるもの以外のもの」という除外や、相互応援に関する協定を締結している事業所についての編成の特例など、省令の定めと集計の仕方に求めるほかない。計画を立てる事業所の側では、統括管理者の選任を要すると判断したときに自衛消防組織の要否も併せて所轄の消防機関に確認しておく必要がある。

同じ統計によれば、危険物施設が設けられている事業所は全国で17万1,563か所、予防規程の作成を要する事業所は3万9,624か所、危険物施設保安員を要する事業所は1,653か所である。予防規程が全体の四分の一弱に及ぶのに対し、保安員は約一パーセント、自衛消防組織は0.06パーセント程度にとどまる。自主保安の仕組みは、文書による規律が広く及び、人と設備の配置が規模に応じて絞られる形で組み立てられている。

検査の間隔を実測で決める仕組み

政令第8条の4第2項第1号ロは、底部の板の厚さの一年当たりの腐食による減少量を総務省令で定める特殊の方法によって測定し、その値と前回の保安検査における板の厚さに基づいて、市町村長等が八年以上十五年以内の期間を定めるものとしている。年数を法令が一律に書くのではなく、個々のタンクの劣化速度から次の検査までの間隔を算定する方式である。

この方式は、保安の水準を落とさずに検査の負担を減らすことを狙ったものと理解できる。腐食の進み方が遅いタンクについて八年ごとの開放検査を求めることは、検査のための休止と費用を強いる一方で、得られる安全上の利益は小さい。他方、測定の方法と保安のための措置が省令に委ねられているため、延長を受けられるかどうかは省令と告示の内容によって決まる。延長を前提に設備投資の計画を立てる場合、根拠となる省令の要件を満たし続けることが条件になる。

同じ考え方は、容量千キロリットル以上一万キロリットル未満のタンクの内部点検にも及んでいる。原則十三年、保安のための措置を講じて届け出た場合は十五年、期間内の実施が困難なときは届出により二年の延長という三段の仕組みが置かれている。市町村長等の判断を要する保安検査の延長と、届出で足りる内部点検の延長が、規模によって使い分けられている。

予防規程の認可と変更命令

第14条の2第2項は認可の拒否事由を定めるが、第3項は認可後の変更命令を「火災の予防のため必要があるとき」という要件で認める。認可の段階では技術上の基準への適合と火災の予防上の適当性が問われ、認可後は火災の予防上の必要性が問われる。認可の時点で適当と判断された規程であっても、その後の事情の変化によって変更を命じられることがある。

変更命令には第42条第1項第8号の罰則があり、第14条の2第5項の準用により公示と標識の対象にもなる。認可を受けた予防規程をめぐって、行政が内容に踏み込める経路がここにある。事業者が自ら作る文書であるという性格と、行政が内容を決められる仕組みが同居している。

七 裁判例

この五つの規定を直接の対象とする公表された裁判例は見当たらない。もっとも、予防規程と定期点検は、事故が起きたときの責任の所在を判断する場面で間接的に意味を持つ。

第14条の2第4項が所有者等及びその従業者に予防規程の遵守義務を課していることから、認可された予防規程は、その事業所において誰が何をすべきかを定めた文書として機能する。事故が業務上過失致死傷として問われる場面で、注意義務の内容を特定する手がかりになり得る。前回に見た株式会社日本触媒姫路製造所の爆発火災について、神戸地方裁判所が平成30年7月19日に従業員三名に業務上過失致死傷により執行猶予付きの禁錮刑を言い渡したと報じられている。消防庁が平成24年10月1日付け消防危第220号・消防特第195号「化学プラントにおける事故防止等の徹底について」により、自己反応等により温度・圧力が上がるおそれのある化学物質について安全な制御条件を再確認して従業者に周知すること、異常判断の指標を再確認して適切な運転管理を行うことなどを求めたのは、運転条件の管理という予防規程の内容に直接関わる事項であった。

定期点検についても同じ関係がある。第44条第5号が点検記録の不作成、虚偽作成、不保存を処罰しているため、記録そのものが独立した義務の対象である。点検を行ったかどうかは記録によって立証される。記録が存在しない場合、点検が行われたことを事後に示す手段が乏しくなる。屋外貯蔵タンクの内部点検記録の保存期間が二十六年又は三十年という長期に設定されているのは、タンクの供用期間にわたって劣化の経過を追えるようにするためであり、同時に、過去の点検の内容が後の事故の原因究明や責任判断の資料になることを前提としている。

保安検査については、市町村長等が行う行政行為であるため、検査の結果に不服がある場合の争訟が理論的には考えられる。検査は処分ではなく事実行為に当たると解されるため、検査の結果それ自体を争う経路は乏しい。基準に従って維持されていないと判断された場合、第12条第2項の基準適合命令や第12条の2第1項第4号の処分に進むことになり、争訟はその段階で成立する。

八 実務上の留意点

予防規程の作成と改訂

予防規程は、完成検査済証の交付を受けた後、施設の使用を開始するまでの間に作成して認可を受ける。認可を受けないまま使用を開始すれば第42条第1項第8号の罰則の対象となる。設置工事の工程表を組む段階で、完成検査の後に認可の期間を見込んでおく必要がある。

定めなければならない事項は危険物の規制に関する規則第60条の2が列挙するが、施設の種類と所在地によって追加される事項がある。給油取扱所については注入作業中の立会・監視、緊急時表示、無人時の保安措置、顧客に自ら給油させる給油取扱所における顧客の監視が、移送取扱所については工事現場の保安監督体制と配管周辺での他工事の保安が、それぞれ対象となる。大規模地震対策特別措置法の地震防災対策強化地域や南海トラフ地震防災対策推進地域に所在する施設では、震災対策に関する事項が加わる。消防庁は予防規程作成上の留意事項を通知しており、規則の列挙にとどまらず施設の実態に応じた内容を求めている。

変更するときも認可を要する。組織改編や設備の変更に伴って規程の内容が実態と合わなくなった場合、改訂して認可を受けるまでの間、認可を受けた規程がそのまま遵守義務の対象として残る。実態と規程が食い違った状態は、立入検査で指摘を受ける典型である。

保安検査の時期の管理と延長の準備

保安検査を受ける時期は、完成検査又は前回の保安検査を受けた日の翌日から起算した年数で決まる。検査を受けるべき期間は、その年数を経過する日の前一年目に当たる日から、経過する日の翌日から起算して一年を経過する日までの間である。前後に一年の幅があるため、タンクの運用計画と合わせて受検の時期を選べる。移送取扱所については前一月目から一月という狭い幅であり、調整の余地が小さい。

八年の原則を超える期間を得るには、総務省令で定める保安のための措置を講じていること、又は底部の板の厚さの腐食による減少量が基準を満たすことが条件となる。いずれも省令と告示の要件を満たしているかどうかの判断であり、市町村長等が期間を定める。延長を見込んだ運転計画を立てる場合、測定の方法と保安措置の要件を事前に確認し、申請に必要な資料を整えておくことになる。

災害その他の総務省令で定める事由により定められた時期に検査を行うことが適当でないときは、申請に基づいて市町村長等が別に定める時期とすることができる(政令第8条の4第2項ただし書)。設備の事情による延期ではなく、災害等の外的な事由に限られる点に注意を要する。

不等沈下が生じた場合

液体危険物タンクの直径に対する不等沈下の数値の割合が百分の一以上となれば、定期の時期が来ていなくても第14条の3第2項の検査を受けなければならない。沈下の測定は、タンクの維持管理として日常的に行われる事項である。基準に達したことを把握した時点で、速やかに市町村長等に連絡して検査の段取りに入ることになる。この検査を受けないことは第12条の2第1項第4号の事由であり、許可の取消しにまで及び得る。

定期点検の記録管理

点検記録の保存期間が点検の種類ごとに異なるため、一律の文書保存規程では管理できない。屋外貯蔵タンクの内部点検は二十六年間、保安のための措置を講じた場合は三十年間、地下貯蔵タンク等の漏れの点検は三年間、移動貯蔵タンクの漏れの点検は十年間、それ以外は三年間である。期間の延長が認められた場合はその期間が加算される。二十六年を超える保存は、担当者の在任期間を何度も跨ぐ。記録の様式と保管場所を社内規程で定め、予防規程の保安に関する記録の項目に位置づけておくことが現実的な対応になる。

点検の実施者は危険物取扱者又は危険物施設保安員である。危険物取扱者の立会いがあれば他の者も点検できるため、作業そのものを外部に委託する場合も、立会いの体制を整えておく必要がある。漏れの点検などについては、告示で定める方法に関する知識及び技能を有する者によることが求められる類型がある。

鉱山保安法の保安規程又は火薬類取締法の危害予防規程を定めている製造所等は、定期点検の対象から除かれる。複数の法令の適用を受ける事業所では、どの法令の自主保安の仕組みに乗っているかを整理しておくことで、重複した点検を避けられる。

自衛消防組織の編成と協定

編成に必要な人員と化学消防自動車の数は、取り扱う第四類の危険物の最大数量で決まる。増設や増産によって区分が上がれば、人員と車両を増やさなければならない。設備投資の計画段階で、区分の境界を越えるかどうかを確認しておく必要がある。

相互応援に関する協定を締結している事業所については、総務省令で定めるところにより編成することをもって足りる。隣接する事業所との協定によって、自前で保有する車両の数を抑えられる余地がある。特別防災区域内の特定事業所であれば、石油コンビナート等災害防止法第16条の自衛防災組織と第19条の共同防災組織の枠組みも併存するため、消防法上の自衛消防組織との関係を整理したうえで要員と資機材の配置を決めることになる。

保安員の扱い

危険物施設保安員には罰則も届出義務もない。しかし指定数量の倍数が百以上の製造所、一般取扱所又は移送取扱所については選任義務があり、保安員を置かない場合はその職務が危険物保安監督者に戻る。倍数が百を超える施設で保安員を置かないという選択をすれば、保安監督者一人に設備の点検と取扱作業の監督が集まる。制裁がないことは義務がないことを意味しないため、選任の有無は保安体制の設計として判断すべき事項である。立入検査では、保安員の選任と業務の実施状況が、予防規程に定めた保安業務の組織と照らして確認されることになる。

参考文献・資料

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