1 第3章の冒頭に置かれた3か条

第3章「地方公共団体の機関」は第6条から第30条までの25か条で構成される。その冒頭に、市町村が消防の責任を負うこと(第6条)、その消防を市町村長が管理すること(第7条)、費用を当該市町村が負担すること(第8条)の3か条が並ぶ。第9条以下の消防本部・消防署・消防団に関する規定は、この3か条が定めた枠組みを組織面から具体化したものにあたる。

3か条の並び順には意味がある。誰が責任を負うかを定め、その責任を誰が行使するかを定め、その財源を誰が出すかを定める。責任の帰属先と管理権者と費用負担者が同一の団体に一致していることが、国が市町村消防を指揮しない制度(第36条)の裏付けとなっている。第2章で消防庁の任務と所掌事務を読んだ際に第36条を対置したのと同様、第6条から第8条までを読む際には、国の関与が助言・勧告・指導(第37条)と非常事態における措置要求(第43条、第44条)に限定されていることを念頭に置く必要がある。

2 第6条(市町村の消防に関する責任)

条文

(市町村の消防に関する責任)

第6条 市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有する。

趣旨・立法背景

戦前の消防は警察機構の一部であった。市制町村制下の消防組は市町村に置かれながら警察署長の指揮監督を受け、昭和14年の警防団令による警防団は防空業務と一体で警察の統制下に置かれた。消防に関する事務は内務大臣から地方長官、警察部長へと連なる指揮系統の末端に位置していた。

昭和22年12月23日に公布された本法は、この構造を転換した。連合国軍総司令部の指導のもと、警察の分権化と並行して消防を警察から切り離し、市町村を責任主体とする制度が採用された。施行日である昭和23年3月7日は消防記念日とされ、自治体消防の発足を記念する行事が現在も行われている。

制定時の第6条は「市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果すべき責任を有する」であり、内容は現行規定と同一である。第6条から第8条までの3か条は、その後の消防制度の大規模な改正を経ても実質的な改変を受けていない。市町村消防の原則が、本法の基本設計として維持されてきたことの表れである。

文理解釈

「当該市町村の区域における」という限定は、責任の地理的範囲を画する。区域外での活動を禁じる趣旨ではなく、他の市町村の区域における消防について当然に責任を負うものではないことを示す。区域を越える活動は、相互応援の努力義務と協定(第39条)、応援出動した職員が応援を受けた市町村長の指揮下に入る規律(第47条)、緊急消防援助隊の枠組み(第44条以下)によって処理される。消防団についても、消防長又は消防署長の命令があるときは区域外で行動できる旨が第18条第3項に定められている。

「消防」の内容は第1条が定める任務の範囲によって画される。火災からの生命・身体・財産の保護、水火災又は地震等の災害の防除と被害の軽減、災害等による傷病者の搬送がこれにあたる。平成21年法律第34号によって第1条に搬送任務が加えられたことは、第6条の責任の対象が救急業務を含むことを条文上明確にした。

「十分に果たすべき責任」は、達成すべき水準を示す規範である。何をどの程度整備すれば「十分」といえるかを条文自体は語らず、消防庁が定める基準がその内容を補う。個々の住民に対して特定の消防活動を請求する権利を与える規定ではなく、市町村という法人が組織として負う体制整備上の責任を定めたものと解される。個別の火災や救急事案における作為義務の有無は、消防法各条の権限規定と、現場における具体的状況に即して判断される。

責任の主体は市町村であり、市町村長ではない。管理権者を定める第7条と主体が書き分けられている点に注意を要する。

用語解説

常備消防機関とは、市町村に設置された消防本部及び消防署を指し、専任の職員が勤務する。これに対し消防団は非常備の消防機関であり、消防団員は他に本業を持つ非常勤特別職の地方公務員として活動する。第9条は消防本部、消防署、消防団の全部又は一部を設けなければならないと定めており、消防団のみを置く非常備町村も法律上は許容される。

消防力の整備指針(平成12年消防庁告示第1号)は、消防組織法第4条第2項第14号に基づき、市町村が消防に関する事務を確実に遂行し、当該市町村の区域における消防の責任を十分に果たすために必要な施設及び人員を定めるものである。同指針第1条が本条の文言をそのまま引き取っていることから、両者は目標水準の設定と責任規定の関係に立つ。昭和36年に「消防力の基準」として定められ、平成12年に現在の名称となり、平成17年、平成26年、平成31年に改正されている。消防水利の基準(昭和39年消防庁告示第7号)も同様の位置付けにある。いずれも告示であって、達成しないこと自体に制裁が科される性質のものではないが、整備水準の乖離は議会や住民に対する説明の対象となる。

改正の内容と沿革

実質改正はない。平成18年法律第64号(消防組織法の一部を改正する法律)が、章名「第三章 自治体の機関」を「第三章 地方公共団体の機関」に改め、第6条に見出し「(市町村の消防に関する責任)」を付し、「果すべき」を「果たすべき」に改めた。同法は消防の広域化に関する第4章を新設した法律であり、あわせて条文の口語整理と見出しの一括付与を行った。第7条及び第8条についても、同法により見出しが付されたにとどまる。

特別区の存する区域については第26条が特例を置き、特別区が連合して第6条に規定する責任を有する。この構造は制定時の第16条から引き継がれている。

現況

令和7年4月1日現在、全国に720消防本部、1,716消防署が設置され、消防職員数は16万9,730人、うち消防吏員は16万8,230人である。常備化市町村は1,690市町村、非常備町村は7都県の29町村であり、その21町村は島しょ部にある。消防団は2,169団、消防団員数は73万2,223人で、前年より1万4,458人減少している。

消防本部のうち288本部は一部事務組合又は広域連合により設置されており、その構成市町村1,114市町村は常備化市町村の65.9%にあたる。事務委託をしている市町村は144市町村で8.5%を占める。単独で消防本部を置く市町村の方が少数であるという実態は、第6条の責任が共同処理の仕組みを通じて果たされていることを意味する。

一部事務組合又は広域連合を設けた場合、消防事務の処理権限は組合に移り、組合の管理者又は広域連合長が消防を管理する。事務委託の場合は、受託した地方公共団体が消防事務を処理し、委託した市町村が自ら管理執行したのと同様の効果が生じる。いずれの方式でも、どの方式を選ぶか、規約や協議をどう定めるかの判断は構成市町村又は委託市町村に残る。第31条以下の広域化に関する規定は、この選択を消防の体制の整備及び確立という観点から方向付けるものである。

3 第7条(市町村の消防の管理)

条文

(市町村の消防の管理)

第7条 市町村の消防は、条例に従い、市町村長がこれを管理する。

趣旨・立法背景

第6条が定めた責任を、誰が日常的に行使するかを定める。制定時、警察については都道府県公安委員会という合議制の管理機関が置かれ、政治的中立性の確保が図られた。消防はこの方式を採らず、執行機関である市町村長が直接管理する構成とした。消防が犯罪捜査や公共の安全維持ではなく、災害からの住民の保護を任務とする以上、権力行使の中立性より即応性と行政の一体性が優先されたものと解される。

第42条第2項が、災害に際して消防が警察を応援する場合の運営管理は警察が留保し、警察が消防を応援する場合の災害区域内の指揮は消防が行うと定めるのも、両者の管理系統が別であることを前提としている。

文理解釈

「管理」は、消防機関の設置と運営、人事、財務を包括する権限を指す。市町村長は消防長を任命し(第15条第1項)、消防署の組織について消防長の定めを承認し(第10条第2項)、消防長以外の消防職員の任命を承認する(第15条第1項)。予算の調製と執行、消防用施設の取得と管理も市町村長の権限に属する。

もっとも、現場活動の指揮監督は消防長及び消防署長の職務として法定されている。消防長は消防本部の事務を統括し消防職員を指揮監督し(第12条第2項)、消防署長は消防長の指揮監督を受けて所属職員を指揮監督する(第13条第2項)。消防法上の権限の多くも、消防長又は消防署長に固有のものとして配分されている。第7条の管理権は、これらの職を通じて行使される組織管理上の権限であり、市町村長が個々の消火活動を直接指揮することを想定した規定ではない。

「条例に従い」は、管理権の行使が議会の議決を経た規範に服することを示す。消防本部及び消防署の設置、位置、名称並びに消防署の管轄区域(第10条第1項)、消防職員の定員(第11条第2項)、消防長及び消防署長の資格(第15条第2項)、消防団の設置、名称及び区域(第18条第1項)、消防団員の定員(第19条第2項)、非常勤消防団員の身分取扱い(第23条第1項)、公務災害補償(第24条第1項)、退職報償金(第25条)は、いずれも条例事項である。市町村長の管理権は、これらの条例が定める枠内で行使される。

管理権の帰属先は、消防を共同処理する場合には組合の管理者等に移る。特別区の存する区域では、第27条により都知事が消防を管理し、特別区の消防長を任命する。

用語解説

運営管理及び行政管理という語は第36条に現れる。市町村の消防は消防庁長官又は都道府県知事のこれらの管理に服することはない。運営管理は活動の運用に関する指揮を、行政管理は組織や人事に関する統制を指すものと理解されている。第7条の「管理」がこれらを含む包括的な権限であることと、その権限が市町村長に独占的に帰属することとは、表裏の関係にある。

消防に関する事務は、地方自治法上の自治事務として処理される。国の関与は助言、勧告、指導、資料の提出要求などにとどまり、非常事態における都道府県知事の指示(第43条)と消防庁長官の措置要求及び指示(第44条)が例外的な関与の類型として置かれている。

改正の内容と沿革

制定時の第7条と同一の文言が維持されている。平成18年法律第64号による見出しの付与のみが形式上の変更である。なお、消防長及び消防職員の任命に関する規定は数度の改正を経ており、制定時に「条例に従い、市町村長がこれを任命し」とされていた消防長の任命は、昭和26年法律第18号により地方公務員法に基づく形へと改められ、現在は第15条が任命権の配分を定めている。第7条の管理権と第15条の任命権を混同しないことが、実務上の起点となる。

4 第8条(市町村の消防に要する費用)

条文

(市町村の消防に要する費用)

第8条 市町村の消防に要する費用は、当該市町村がこれを負担しなければならない。

趣旨・立法背景

責任と管理の帰属に費用負担を一致させる規定である。地方財政法第9条は、地方公共団体の事務を行うために要する経費はその地方公共団体が全額負担すると定めており、本条はこの原則を消防について確認したものといえる。

制定時、消防を市町村の事務としたことは、同時にその財政的負担を市町村に移すことを意味した。国が指揮監督権を持たない以上、国が経費を負担する理由もない。第49条第3項が、市町村の消防に要する費用に対する補助金に関しては法律で定めると規定し、国庫補助を法律の根拠に基づくものに限定しているのは、本条の原則を財政面から守る仕組みである。これを受けて消防施設強化促進法(昭和28年法律第87号)が制定されている。

文理解釈

「消防に要する費用」には、消防職員及び消防団員の人件費、消防本部・消防署・車両・資機材の整備費、消防水利の整備費、教育訓練費、消防団員の報酬及び費用弁償、公務災害補償と退職報償金が含まれる。第1条の任務に対応する費用の全体が対象となる。

「負担しなければならない」は義務規定であり、他の団体や住民に転嫁できないことを含意する。消防活動の対価を住民から徴収しないという原則は、この規定から導かれる。一部事務組合の分賦金や事務委託の負担金は、共同処理の仕組みの中で構成市町村又は委託市町村が支出するものであり、負担主体が変わるものではない。

例外は法律に根拠を持つ。第49条第1項は、消防庁長官の指示を受けて出動した緊急消防援助隊の活動により増加し又は新たに必要となる費用のうち、隊員の特殊勤務手当及び時間外勤務手当その他政令で定める経費を国が負担すると定める。同条第2項は緊急消防援助隊に係る施設の整備に対する国庫補助を定める。高速自動車国道等における救急業務に要する経費について道路管理者からの支弁金が設けられているのも、費用の原因者との調整を図る個別の制度である。

財政の実態

令和5年度の消防費決算額は、東京消防庁を含めて2兆1,038億円であり、消防施設の整備や消防自動車の購入に要する普通建設事業費の増加により前年度比5.9%増となっている。1世帯当たりでは3万4,614円、住民1人当たりでは1万6,846円である。市町村の普通会計歳出決算額66兆8,552億円に占める消防費の割合は、東京消防庁を除いて2.9%である。

性質別では、人件費が1兆4,344億円で全体の68.2%を占め、普通建設事業費3,323億円が15.8%、物件費2,408億円が11.4%と続く。消防費の大半が人に対する支出であることは、消防力の整備が要員の確保と同義であることを財政面から示している。

財源構成では、地方税や地方交付税などの一般財源等が1兆8,006億円で85.6%、地方債が2,130億円で10.1%、国庫支出金は198億円で0.9%にとどまる。国庫支出金の比率の低さが、第8条の原則が現実の数字に表れた姿である。地方交付税の基準財政需要額における消防費の単位費用は、令和7年度で1万2,300円とされている。

消防庁所管の国庫補助金は、消防防災施設整備費補助金と緊急消防援助隊設備整備費補助金が中心であり、令和7年度当初予算額はそれぞれ13.7億円、49.9億円である。前者は原則として補助基準額の3分の1又は2分の1、後者は第49条第2項に基づく法律補助として2分の1の補助率が適用される。

消防団員の処遇と本条

非常勤消防団員の報酬及び費用弁償は市町村が負担する。消防庁長官は令和3年4月13日付け消防地第171号通知により「非常勤消防団員の報酬等の基準」を定め、令和4年3月23日付け消防地第222号通知でこれを改正した。基準は、報酬を年額報酬と出動報酬の2種類とし、「団員」階級の年額報酬を年額3万6,500円、災害に関する出動報酬を1日当たり8,000円を標準としている。報酬は団員個人に対して直接支給することとされ、分団の運営費等と混同した取扱いを改めることが求められた。

これに対応して、令和4年度から地方財政措置が見直された。「団員」階級の年額報酬等については、各市町村の標準額支払団員数に応じた普通交付税措置とされ、災害に係る出動報酬及び費用弁償は実績額に応じて特別交付税で措置される。市町村が費用を負担するという原則を維持しつつ、交付税の算定方法を実支給額に連動させることで処遇改善を促す構造である。市町村としては、条例改正と支給方法の見直しが第8条の履行として求められる。

救急業務の費用をめぐる議論

救急出動件数の増加を背景に、救急搬送に係る費用負担のあり方が議論されている。三重県松阪市では、令和6年6月1日から市内の三基幹病院において、救急車で搬送されたものの入院に至らなかった患者から選定療養費7,700円を徴収する取扱いが始まった。これは健康保険法上の保険外併用療養費制度に基づき医療機関が徴収するものであり、市町村が救急業務の対価を徴収する制度ではない。第8条が定める費用負担の原則と救急業務の無償性は、この取組みによって変更されていない。制度上の位置付けを取り違えた広報は住民の不信を招くため、説明の際には区別が要る。

5 3か条の法的性格をめぐる論点

第6条の責任は、市町村が組織として負う体制整備上の責任である。これを個々の住民との関係で具体的な作為義務に直結させる読み方は採られていない。特定の火災について消防隊が出動しなかった、あるいは消火が奏功しなかったという場合に、市町村が賠償責任を負うかどうかは、国家賠償法第1条第1項の要件、すなわち公権力の行使に当たる公務員の職務行為における故意又は過失と違法性の有無によって判断される。第6条は、その判断において消防機関に課された職責の水準を示す背景規範として機能する。

第7条の管理権と、消防長及び消防署長の権限との関係も論点となる。消防法上、立入検査、措置命令、消防同意といった権限は消防長又は消防署長に固有のものとして配分されている。市町村長がこれらの個別の権限行使に介入することは、第7条の管理権の範囲を超える。管理権は組織と資源の配分に及び、個別処分の内容には及ばないという線引きが、行政組織法の一般理論とも整合する。

第8条は、財政的な自律を消防制度の前提として位置付ける。市町村の財政力によって消防力に差が生じることは、この制度設計が当初から抱える課題であり、地方交付税による財源保障と広域化の推進が、その緩和策として組み合わされている。市町村の消防の広域化に関する基本指針(平成18年消防庁告示第33号)は令和6年3月29日に改正され、広域化の推進期限が令和11年4月1日まで延長された。

6 裁判例

消防職員の消火活動の不十分さが問題となった事案として、最高裁昭和53年7月17日第二小法廷判決がある。消防署職員が残り火の点検を怠ったために再出火した火災について、公権力の行使に当たる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任には国家賠償法第4条により失火ノ責任ニ関スル法律が適用され、当該公務員に重大な過失があることを要すると判示した。第6条が市町村に消防責任を課していることは、消防活動の結果が思わしくなかったことから直ちに賠償責任が生じることを意味しない。

消防団員の受傷に関する事案では、名古屋地裁昭和44年12月17日判決が、火災出動中に消防自動車が転落して同乗の消防団員が死亡した事故について、市が消防自動車の運行供用者であり運転していた者が市の特別職地方公務員であることを理由に、国家賠償法第1条第1項、自動車損害賠償保障法第3条等による責任を認めた。市町村が費用を負担し人員を組織する以上、その活動に伴う損害についても市町村が責任主体となることを示す例である。

訓練中の事故については、宮崎地裁昭和57年3月30日判決が参考になる。救助訓練中に訓練塔から落下して死亡した消防職員の遺族が安全配慮義務違反を主張した事案で、判決は、消防職員のように業務の性質上危難に立ち向かう義務のある職員は、消火活動や人命救助など現在の危難に直面した場面において使用者に自己の身を守る配慮を強く求めることはできないとしつつ、通常の火災予防業務や一般訓練、消防演習のように危難の現場から遠ざかるほど安全配慮義務が強く要請されるとし、危難との距離と安全配慮義務の濃淡が相関関係にあると述べた。同事故については、消防署長が業務上過失致死罪により宮崎簡裁昭和53年1月6日の略式命令で罰金に処されている。訓練の安全管理が刑事責任にまで及びうることを示す事例である。

大規模災害における現場指揮の責任が争われた例として、昭和47年7月5日に高知県土佐山田町繁藤地区で発生した山崩れの事案がある。生き埋めになった消防団員の救出作業中に大規模な崩落が起こり、消防団員を含む60人が死亡した。高知地裁昭和57年10月28日判決は、消防団副団長が集中豪雨の状況から警戒監視体制と避難措置を講ずるべき職務上の義務を怠ったとしたが、高松高裁昭和63年1月22日判決は、当時の状況下で大規模な地すべりの発生を予見することは困難であり、そのような義務はないとして判断を覆した。最高裁において平成3年9月5日に和解が成立している。現場指揮者の予見可能性をどう画するかは、災害対応の責任論に共通する問題として現在も参照される。

7 実務上の留意点

消防力の整備指針及び消防水利の基準に照らした整備状況の点検は、第6条の責任を果たしているかを検証する手続として位置付けられる。指針が示す施設及び人員は目標であって最低基準ではないが、充足率が低い項目について、地域特性による説明が成り立つのか、財政上の制約によるものかを区分して整理しておくことが、議会答弁や情報公開請求への対応で問われる。

共同処理の方式を採る場合、規約における経費の分賦方法、職員の身分取扱い、財産の帰属、脱退時の処理を明確にしておくことが求められる。組合が処理する事務と構成市町村に残る事務の境界、特に消防団に関する事務が広域化の対象外とされていることの帰結を、条例と規約の双方で整合させる必要がある。

市町村長の管理権と消防長の権限の切り分けは、人事と組織の場面で問題となりやすい。消防長及び消防署長の資格を定める条例(第15条第2項)は政令で定める基準を参酌して定めるものとされており、その内容は市町村の裁量に属する。管理権を根拠に個別の消防法上の処分に介入することは、権限配分の趣旨に反する。

消防団員の報酬については、条例上の支給根拠と実際の支給方法の一致が確認の対象となる。基準額を下回る団体、分団への一括支給を続けている団体は、交付税措置との関係でも説明を要する状況にある。

安全管理体制の整備は、訓練場面で最も強く要請される。訓練計画の立案、危険予知の記録、安全管理者の配置と、事故発生時の検証手続を文書化しておくことが、民事及び刑事の責任判断において組織の対応を裏付ける材料となる。消防職員委員会(第17条)における勤務条件や装備品に関する意見の審議も、体制整備の一環として活用しうる。

次回は第9条から第11条まで、消防機関の設置と消防本部・消防署・消防職員に関する規定を扱う。

参考資料

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