条文(令和8年4月1日現在)
第22条の4
第22条の4 任命権者は、当該任命権者の属する地方公共団体の条例年齢以上退職者(条例で定める年齢に達した日以後に退職(臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員が退職する場合を除く。)をした者をいう。以下同じ。)を、条例で定めるところにより、従前の勤務実績その他の人事委員会規則で定める情報に基づく選考により、短時間勤務の職(当該職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間が、常時勤務を要する職でその職務が当該短時間勤務の職と同種の職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間である職をいう。以下同じ。)に採用することができる。ただし、条例年齢以上退職者がその者を採用しようとする短時間勤務の職に係る定年退職日相当日(短時間勤務の職を占める職員が、常時勤務を要する職でその職務が当該短時間勤務の職と同種の職を占めているものとした場合における第28条の6第1項に規定する定年退職日をいう。第3項及び第4項において同じ。)を経過した者であるときは、この限りでない。
2 前項の条例で定める年齢は、国の職員につき定められている国家公務員法(昭和22年法律第120号)第60条の2第1項に規定する年齢を基準として定めるものとする。
3 第1項の規定により採用された職員(以下この条及び第29条第3項において「定年前再任用短時間勤務職員」という。)の任期は、採用の日から定年退職日相当日までとする。
4 任命権者は、条例年齢以上退職者のうちその者を採用しようとする短時間勤務の職に係る定年退職日相当日を経過していない者以外の者を当該短時間勤務の職に採用することができず、定年前再任用短時間勤務職員のうち当該定年前再任用短時間勤務職員を昇任し、降任し、又は転任しようとする短時間勤務の職に係る定年退職日相当日を経過していない定年前再任用短時間勤務職員以外の職員を当該短時間勤務の職に昇任し、降任し、又は転任することができない。
5 任命権者は、定年前再任用短時間勤務職員を、常時勤務を要する職に昇任し、降任し、又は転任することができない。
6 第1項の規定による採用については、第22条の規定は、適用しない。
第22条の5
第22条の5 地方公共団体の組合を組織する地方公共団体の任命権者は、前条第1項本文の規定によるほか、当該地方公共団体の組合の条例年齢以上退職者を、条例で定めるところにより、従前の勤務実績その他の人事委員会規則で定める情報に基づく選考により、短時間勤務の職に採用することができる。
2 地方公共団体の組合の任命権者は、前条第1項本文の規定によるほか、当該地方公共団体の組合を組織する地方公共団体の条例年齢以上退職者を、条例で定めるところにより、従前の勤務実績その他の地方公共団体の組合の規則(競争試験等を行う公平委員会を置く地方公共団体の組合においては、公平委員会規則)で定める情報に基づく選考により、短時間勤務の職に採用することができる。
3 前2項の場合においては、前条第1項ただし書及び第3項から第6項までの規定を準用する。
趣旨・立法背景
定年引上げ改正の全体像における本条の位置づけ
令和3年(2021年)6月11日成立の「地方公務員法の一部を改正する法律」(令和3年法律第63号)は、定年年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げる(令和5年4月1日から2年に1歳ずつ引上げ、令和13年4月1日に65歳到達)ことを骨格とする大規模改正である。第22条の4は、この改正によって新設された条文であり、令和5年(2023年)4月1日から施行されている。
改正前の地方公務員法は、定年退職者を対象とする「再任用制度」(旧第28条の4・第28条の5)を定めていた。これは、定年退職後に一定期間再び任用する仕組みであり、60歳台前半の生活を雇用と年金で支えることを目的として平成14年度に導入されたものである。しかし、定年が65歳に引き上げられると、60歳台前半の職員はそもそも在職中であることが原則となるため、旧再任用制度はその存在意義を失う。
そこで新たに設けられたのが、定年前再任用短時間勤務制度である。定年引上げに伴い60歳以降もフルタイム勤務が原則となる一方、健康上の理由、育児・介護との両立、段階的な職業生活の縮小といった個人的事情から、勤務時間を短縮して働くことを希望する職員も存在する。そうした職員が自ら退職を選択し、短時間勤務の職への採用を通じて引き続き公務に従事できる仕組みとして本条が創設された。
総務省の説明資料(令和4年8月)によれば、この制度は「定年退職者を採用する現行の再任用制度と異なり、職員本人が短時間勤務を希望する場合に、本人の意思により一旦退職した上で採用される仕組みであり、任命権者が定年前再任用短時間勤務を強要することはあってはならず、職員本人の意思に反して定年前再任用短時間勤務の職に採用することはできない」と明記されている。任命権者主導の採用圧力は制度趣旨に反する。
なお、旧再任用制度(旧第28条の4・第28条の5)は、令和5年改正と同時に廃止されているが、定年引上げ期間中(65歳定年到達まで)の経過措置として「暫定再任用制度」(改正法附則)が存置されている。定年前再任用短時間勤務職員の任期満了後は、この暫定再任用制度により65歳まで勤務する選択肢が確保されている。
用語解説
条例年齢以上退職者(第1項)
「条例で定める年齢に達した日以後に退職した者」を指す。各地方公共団体は国家公務員法第60条の2第1項に規定する年齢(現行60歳)を基準として条例で採用対象年齢を定める(第2項)。実務上は「年齢60年以上退職者」として条例に規定される例が多い(岩手県条例等参照)。
ただし、退職の態様に除外規定がある。臨時的に任用される職員、法律により任期を定めて任用される職員(会計年度任用職員など)、及び非常勤職員が退職する場合は「条例年齢以上退職者」に含まれない。これらの類型は元々任用が限定的であり、定年前再任用制度による継続雇用を想定する必要がないためである。
短時間勤務の職(第1項)
「当該職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間が、常時勤務を要する職でその職務が当該短時間勤務の職と同種の職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間である職」と定義される。一般的な地方公共団体では常時勤務職員の勤務時間は週38時間45分(条例による)であり、定年前再任用短時間勤務の職ではこれより短い勤務時間となる。国家公務員の場合は週15時間30分から31時間の範囲とされており、地方公務員も同水準の条例規定が通例である。
定年退職日相当日(第1項ただし書・第3項・第4項)
短時間勤務の職を占める職員が、仮に常時勤務を要する職でその職務と同種の職を占めているとした場合における第28条の6第1項所定の定年退職日をいう。短時間勤務の職には本来の意味での「定年退職日」が存在しないため、同種の常時勤務を要する職の定年退職日に引き直した概念上の日付として定義されるものである。この日付が、採用要件の上限(ただし書)、任期の終期(第3項)、及び任用行為の限界(第4項)の三局面でそれぞれ機能する。
選考(第1項)
「従前の勤務実績その他の人事委員会規則で定める情報に基づく選考」とは、競争試験によらず、当該職員の過去の職務遂行の実績や適性を評価して採用する手続である。人事委員会を置かない団体では公平委員会規則が代替する(ただし本条は「人事委員会規則」とのみ規定し、公平委員会規則への言及は第22条の5第2項において明示的に対応している)。大阪市の要綱では、「退職前の勤務成績が良好であること」「任用に係る職の職務の遂行に必要な知識及び技能を有していること」「公務内の職務を遂行できると認められること」の3要件を選考基準としており、実務における一般的な解釈を示す。
条例委任(第1項・第2項)
採用手続・採用要件の具体的内容は条例に委ねられている。これは法律の一般的・抽象的規律と条例の個別・具体的規律との二層構造をとる立法技術であり、地域の実情に応じた柔軟な運用を可能にするためである。一方、採用年齢の基準については国家公務員法の規定への準拠を義務付けており(第2項)、地方間での制度水準の著しい乖離を防ぐ。
各項の解説
第1項 採用権限と採用要件
任命権者は、条例年齢以上退職者を、条例で定める手続に従い、選考によって短時間勤務の職に採用できる。採用は任命権者の裁量的行為であり、当該退職者が採用を申し出たとしても、任命権者に採用義務は生じない。
ただし書が採用上限を画する。条例年齢以上退職者が、採用しようとする短時間勤務の職に係る定年退職日相当日を「経過した」場合は採用できない。例えば、対象の短時間勤務の職について同種の常時勤務の職の定年退職日相当日が令和9年3月31日であるとすると、その日を過ぎた後の者は採用できない。これは採用権限の時間的限界を画するもので、第4項の任用制限と合わせて制度の輪郭を形成する。
第2項 条例で定める年齢の基準
条例年齢は、国家公務員法第60条の2第1項に規定する年齢(現行60歳)を基準として定める。「基準として定める」という文言は、一致を義務付けるものではないが、実務上は国家公務員と同一の60歳で統一されている団体が大多数である。地方公務員の定年自体が国家公務員の定年を基準として条例で定める構造(法第28条の6第2項)であることと整合する。
第3項 任期
定年前再任用短時間勤務職員の任期は「採用の日から定年退職日相当日まで」と法定される。任期は法律上確定的に定まっており、任命権者が恣意的に短縮したり延長したりすることはできない。この任期設計は、職員の身分保障の観点と、制度の目的(定年年齢相当まで安定した雇用を確保すること)の観点から合理的である。
定年が段階的に引き上げられる過渡期においては、定年退職日相当日が年度によって異なることに注意が必要である。例えば、令和7年度の定年年齢が61歳であれば、その年度における定年退職日相当日は61歳到達後最初の3月31日となる(法第28条の6第1項参照)。
第4項 任用制限
第4項は二段構えの禁止規定を置く。
第一の禁止は、採用局面における制限である。定年退職日相当日を「経過していない者以外の者」は採用できない。第1項ただし書の裏返しを禁止規定として明文化したものであり、過齢者の採用を法律で遮断する。
第二の禁止は、採用後の任用変更局面における制限である。定年前再任用短時間勤務職員を昇任・降任・転任しようとする短時間勤務の職について、その職の定年退職日相当日を経過していない者以外は当該職への移動ができない。異なる短時間勤務の職の間で任用変更を行う場合、移動先の職についても定年退職日相当日の要件が課されるということである。
この規定は、定年前再任用制度が短時間勤務の職の範囲内で自己完結することを担保する。
第5項 常時勤務を要する職への転換禁止
定年前再任用短時間勤務職員は、常時勤務を要する職に昇任・降任・転任させることができない。この制度は「短時間勤務を望む職員のための制度」であることを前提としており、常時勤務への復帰は再採用手続を経るべき別の問題として切り離されている。本項により、定年前再任用短時間勤務職員という身分は、短時間勤務の職の在職中に限定して維持される。
第6項 条件付採用規定の不適用
第22条(条件付採用)は本条による採用には適用されない。条件付採用とは採用後6か月間を条件付とし、その間の成績が良好な場合に正式採用となる制度である。定年前再任用短時間勤務職員は、既に長期間の勤務実績を持つ者を選考によって採用するものであり、新規採用職員と同様の試用期間を課す必要がない。このことは採用選考において「従前の勤務実績」が判断基準とされていることとも整合する。
第22条の5 地方公共団体の組合に関する特則
第1項・第2項 相互採用の仕組み
第22条の5は、地方公共団体の組合(一部事務組合・広域連合等)と、それを構成する地方公共団体との間で、条例年齢以上退職者の相互採用を可能にする規定である。
第1項は、組合を構成する地方公共団体の任命権者が、当該組合の条例年齢以上退職者を採用できる旨を定める。
第2項は逆方向の規律であり、組合の任命権者が、構成地方公共団体の条例年齢以上退職者を採用できる旨を定める。第2項では選考基準の根拠規則として「地方公共団体の組合の規則(競争試験等を行う公平委員会を置く地方公共団体の組合においては、公平委員会規則)」と明示されており、組合に人事委員会が置かれないことを踏まえた実務的手当てがなされている。
構成団体と組合の間の人事交流は実務上も一般的であり、本条は退職後の継続的関与の形として相互採用の法的根拠を整備するものである。
第3項 準用規定
第22条の4第1項ただし書(定年退職日相当日経過者の採用禁止)及び第3項から第6項まで(任期・任用制限・常時勤務職への転換禁止・条件付採用の不適用)が準用される。採用対象が構成団体と組合をまたぐ場合でも、制度の基本構造は変わらない。なお、第22条の4第2項(条例年齢の国基準準拠)は準用対象に含まれていない。相互採用においても採用対象者の「条例年齢」は各退職者が属していた団体の条例による年齢で判断されるため、別途の基準設定規定を要しないためである。
国家公務員法との比較
国家公務員の相当規定は国家公務員法第60条の2(令和3年法律第61号による新設、令和5年4月1日施行)である。地方公務員法第22条の4と基本構造は同一であり、「年齢六十年以上退職者」(国家公務員法第60条の2第1項の「年齢六十年に達した日以後に退職した者」に相当)を短時間勤務の官職に選考により採用する点、任期が定年退職日相当日までである点、条件付採用の不適用(同条第6項相当)といった点で平仄が合っている。
相違点として、国家公務員法は勤務時間を「週15時間30分から31時間」と法令上明示しているのに対し、地方公務員法は「短時間勤務の職」の定義を示しつつ具体的な勤務時間の設定は条例・規則に委ねている。また、国家公務員には人事院規則8-21(年齢六十年以上退職者等の定年前再任用)及び同運用通知(令和4年給生-18)が詳細な運用基準を定めているが、地方公務員については対応する人事委員会規則の内容は各団体の定めによる。
国家公務員法第60条の2に基づく制度について人事院は、「実際に短時間勤務職員として採用されるか否かは、採用時期も含め任命権者の裁量となる」と明示しており(人事院「公務への再任用」ページ)、地方公務員制度においても同様の解釈が妥当する。
行政法上の論点
本条は行政法上いくつかの注目すべき問題を含む。
採用行為の法的性質
定年前再任用短時間勤務職員の採用は、公法上の任用行為(行政処分)に位置付けられる。地方公務員の任用一般と同様、職員の意思と任命権者の行政行為の合致によって法律関係が成立するが、採用を求める申出に対し任命権者に応諾義務はない。したがって、採用を拒否された者が取消訴訟等の抗告訴訟により採用を強制させることは困難であり、不採用が違法とされる余地は極めて限定的である。もっとも、採用選考において恣意的・差別的な判断が行われた場合には、国家賠償法上の損害賠償請求の余地が生じ得る。
任期の法定とその意義
本条は任期を「採用の日から定年退職日相当日まで」と法律で直接確定させている。これは身分保障の一形態であり、任命権者が条例や規則によって任期を短縮することを禁じる効果を持つ。一方、任期が到来した時点で法律上当然に退職となり(法第28条の6等の準用関係を考慮)、改めて分限処分を要しない。任期の終期が明確に法定されていることは、職員の生活設計に資するとともに、任用関係の法的安定性を高める。
任用制限規定(第4・5項)の強行性
第4項・第5項の任用制限は強行規定であり、条例・規則・個別の任用行為によっても排除できない。これを無視した任用行為(例:定年退職日相当日経過者の採用、常時勤務要する職への転任)は、当然に無効と解すべきである(法律適合性の原則)。
参考・関連法令
地方公務員法第22条の4・22条の5の解釈・運用にあたっては、以下の法令・通知・資料が参照対象となる。
地方公務員法第28条の6(定年による退職)、第22条(条件付採用)、第29条第3項(懲戒の特例)。国家公務員法第60条の2(定年前再任用短時間勤務職員の任用)。人事院規則8-21(年齢六十年以上退職者等の定年前再任用)及び同運用通知(令和4年給生-18)。総務省公務員部公務員課「地方公務員の定年引上げ等について」(令和4年8月版)。
なお、国家公務員倫理法・倫理規程は、倫理に関わる条文(公正な職務遂行義務、利害関係者との関係等)を対象とするものであり、本条は採用手続・任用管理の規律であって倫理規範とは直接の接触点を持たないため、本条については国家公務員倫理法等との対比解説を省略する。
まとめ
地方公務員法第22条の4・第22条の5は、令和3年定年引上げ改正の新制度の一つとして創設された定年前再任用短時間勤務制度の根拠規定である。60歳以降に自らの意思で退職した職員が、選考を経て短時間勤務の職に採用され、定年退職日相当日まで任期付きで勤務できる仕組みを定める。
制度の核心は、
①本人の意思に基づく退職と採用の二段階構造、
②選考(競争試験でなく実績評価)による採用、
③任期の法定(採用日から定年退職日相当日まで)、
④短時間勤務の職の範囲内での任用完結(常時勤務要する職への移動禁止)
の4点にある。
第22条の5は、構成団体と組合との間の相互採用を可能とする実務的補完規定である。


