条文原文

第二十二条の二

次に掲げる職員(以下この条において「会計年度任用職員」という。)の採用は、第十七条の二第一項及び第二項の規定にかかわらず、競争試験又は選考によるものとする。

一 一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職(第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を除く。)(次号において「会計年度任用の職」という。)を占める職員であつて、その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの

二 会計年度任用の職を占める職員であつて、その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの

2 会計年度任用職員の任期は、その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定める。

3 任命権者は、前二項の規定により会計年度任用職員を採用する場合には、当該会計年度任用職員にその任期を明示しなければならない。

4 任命権者は、会計年度任用職員の任期が第二項に規定する期間に満たない場合には、当該会計年度任用職員の勤務実績を考慮した上で、当該期間の範囲内において、その任期を更新することができる。

5 第三項の規定は、前項の規定により任期を更新する場合について準用する。

6 任命権者は、会計年度任用職員の採用又は任期の更新に当たつては、職務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとし、必要以上に短い任期を定めることにより、採用又は任期の更新を反復して行うことのないよう配慮しなければならない。

7 会計年度任用職員に対する前条の規定の適用については、同条中「六月」とあるのは、「一月」とする。


趣旨・立法背景

地方公共団体では、正規職員とは別に、臨時・非常勤職員が図書館司書、学校給食調理員、保育補助員、相談員など、行政サービスの実質的な担い手として広く活用されてきた。しかし平成29年(2017年)改正前は、臨時的任用(旧第22条)や特別職非常勤(旧第3条第3項第3号)の要件を弾力的に解釈することで、本来は正規職員が担うべき恒常的業務にも非常勤職員が充てられ、処遇の不均衡・任用根拠の不明確化という二重の問題が生じていた。

この問題は、総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」(平成28年)の報告書においても正面から取り上げられた。研究会は、一般職非常勤職員の制度的位置付けを明確化し、給付・服務規律を整備することを提言した。

これを受けて平成29年の地方公務員法改正(令和2年4月1日施行)で会計年度任用職員制度が創設された。改正の主眼は、①任用根拠の一本化による透明性確保、②競争試験・選考という公正な採用手続きの義務付け、③任期の明示と更新における配慮義務の制度化の三点にある。

令和5年(2023年)改正では、フルタイム会計年度任用職員への期末手当・勤勉手当支給が法定化されるなど処遇面の整備が進んだ。令和8年(2026年)4月1日施行の改正では、勤勉手当の支給対象がパートタイム会計年度任用職員にも拡大された点が実務上の重要変更点となる。


用語解説

会計年度任用職員

一会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)を超えない範囲で置かれる非常勤の職を占める一般職地方公務員のうち、第22条の4第1項に規定する再任用短時間勤務職員の職以外のものをいう。パートタイムとフルタイムの二類型に分かれる(後述)。

会計年度任用の職

一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職のうち、再任用短時間勤務の職(第22条の4第1項)を除いたものを指す。本条第1項の柱書括弧書きで定義される。

パートタイム会計年度任用職員(第1号)

週当たりの通常の勤務時間が、常時勤務を要する職員のそれ(多くの団体で週38時間45分が標準)より短い職員。給付は報酬・費用弁償が中心となり、条例で期末手当・勤勉手当の支給が可能である(法第22条の2第7項準用を経た第22条の給与規制との関係に注意)。

フルタイム会計年度任用職員(第2号)

週当たりの通常の勤務時間が、常時勤務を要する職員と同一の職員。給与・旅費に加え、期末手当・勤勉手当が支給される(法第22条の2第7項・第58条の2等)。

競争試験

受験者の能力を客観的・相対的に順位付けして合格者を決定する試験。第17条の2は、職員の採用原則として競争試験によることを定めており、本条第1項はこれを会計年度任用職員にも適用する。

選考

受験者を絶対評価によって能力実証する方式。筆記試験を行わず、書類審査・面接・実技等により判定する。競争試験と並んで採用の公正確保手段として機能する(人事委員会規則・公平委員会規則で規律される)。

任命権者

採用・免職・懲戒等の人事権を有する機関。市町村長、議会事務局長、教育委員会など(法第6条)。

勤務実績の考慮(第4項)

任期更新の可否を判断する際の実質的基準。勤務成績・勤怠状況・職務遂行能力等を評価した上で更新の適否を決する義務であり、実績評価なき機械的更新・機械的非更新のいずれも許されない趣旨である。


条文の構造と解説

第1項――採用方法の原則

会計年度任用職員の採用には、第17条の2第1項(競争試験原則)・第2項(人事委員会規則による採用手続)の規定が適用される。ただし、人事委員会を置かない小規模市町村では第17条の2第3項以下の規律が働き、その場合も競争試験または選考を経なければならない点は変わらない。

「採用」とは、職員でない者を職員として新たに任用することをいう(法第15条の2第1項第1号)。翌年度の再度採用(いわゆる「再度任用」または「新たな採用」)も、前年度の任期との連続性にかかわらず、本項の採用手続きを経る必要がある。

実務上は、選考による採用が広く行われている。総務省通知(令和2年3月13日付け総行公第26号)は、選考においても能力の実証が担保される手続きを確保するよう求めており、面接のみで形式的に処理することは許容されていない。

第2項――任期の上限

任期の上限は「採用の日から同日の属する会計年度の末日まで」、すなわち年度途中採用であれば採用日から当該年度の3月31日まで、年度当初(4月1日)採用であれば3月31日まで最長1年間である。1年を超える任期設定は法律上できない。

会計年度単位という区切りは、行政の歳入歳出が会計年度(4月1日~3月31日)で完結する財政構造(地方自治法第208条)に対応したものである。

第3項・第5項――任期の明示義務

採用時および更新時の双方において、任命権者は職員に対して任期を「明示」しなければならない。明示の方法は法定されていないが、総務省通知は書面による交付を求めている。口頭のみの告知は、後の紛争時に立証困難となるため実務上も避けるべきである。

第4項――任期の更新

更新は「勤務実績を考慮した上で」行われる裁量的行為であり、権利として保障されているものではない。もっとも、勤務実績に特段の問題がないにもかかわらず恣意的に更新しないことは、裁量権の逸脱・濫用として違法となりうる(後述の判例参照)。

第6項――配慮義務

任命権者は「職務の遂行に必要かつ十分な任期」を設定しなければならず、意図的に短い任期を設定して更新を反復することで実質的に雇用を不安定化させてはならない。同項は法的義務規定(「~しなければならない」「~よう配慮しなければならない」)であり、違反は違法な裁量行使として国家賠償訴訟の対象となりうる。たとえば数週間ないし数か月単位の短期反復任用を常態化させることは、本項の趣旨に反する。

第7項――条件付採用期間の短縮

前条(第22条)は、職員の条件付採用期間を「6か月間」と定めているが、会計年度任用職員については「1か月間」に短縮される。これは、任期自体が最長1年(多くは年度途中でさらに短い)であることから、条件付採用期間を通常職員と同じ6か月とすると任期の大半が条件付期間に占められる不合理を回避するための措置である。


実務上の留意事項

再度任用と「期待権」の問題

会計年度任用制度において、一年度終了後の「再度採用」(翌年度の新たな採用)は法的には新規採用扱いである。しかし実態として複数年度にわたって継続的に採用してきた場合、職員側に採用継続への合理的期待が生じ、採用しないことが権利濫用と評価される可能性がある。この「期待権」の問題は、後述の判例においても争点となっている。

公募の要否

翌年度再度採用に際し、原則として公募を実施することが総務省通知(令和2年3月13日付け総行公第26号)の指針である。ただし、「特定の資格・技能を有する者が他に存在しない」等の合理的理由がある場合には公募を省略した選考によることも許容される。多くの団体では公募を原則としつつ、一定年数継続した者の優遇措置を条例・内規で設けている例がある。

同一労働同一賃金との接点

パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は地方公務員には直接適用されないが、同法の趣旨と均衡・均等待遇の考え方は、地方公務員法第24条(給与の均衡原則)の解釈に影響しうる。会計年度任用職員の処遇設計においてこの視点を欠くことは、行政への信頼という観点から問題がある。


判例・裁判例

1. 最高裁昭和49年7月19日判決(臨時職員の雇止め事件)

直接の対象は労働契約法適用前の私企業の臨時工であるが、本件で確立された「更新に合理的期待がある場合は雇止めが解雇権濫用法理に準じて規律される」という法理(いわゆる雇止め法理)は、会計年度任用職員の期待権論にも援用される。

2. 東京高裁平成22年9月9日判決(非常勤職員の雇止め・国家賠償請求)

都の非常勤職員が長年継続雇用された後に更新を拒絶されたことが問題となった。裁判所は、長期継続採用の実態から採用継続への合理的期待が生じていたと認め、更新拒絶の手続・理由説明の不備を指摘した。会計年度任用職員制度施行後は、同様の事案において本条第4項の「勤務実績を考慮」する義務の解釈が正面から問われることになる。

3. 大阪地裁令和4年6月24日判決(会計年度任用職員の再度任用拒絶・国家賠償請求)

会計年度任用制度施行後の事例。複数年度にわたり採用されてきた会計年度任用職員について、勤務実績に特段の問題がないにもかかわらず再度任用しなかったことが争われた。裁判所は請求を棄却したものの、判決理由中で「更新への合理的期待が法的保護に値するかは事案ごとに検討する余地がある」と述べ、論点の重要性を示した。

4. 総務省通知との関係

法的拘束力は有しないが、令和2年3月13日付け総行公第26号「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」は実務の事実上の基準として機能しており、裁判所も違法性判断に際して同通知の趣旨を参照することがある。


国家公務員法との比較(簡略)

国家公務員については、会計年度任用職員に相当する制度は設けられていない。非常勤職員は国家公務員法第81条の5以下(期間業務職員)として規律されており、その任期は1年以内、採用は選考によるとされている(同条第2項)。地方の会計年度任用職員制度が「競争試験または選考」の選択制であるのに対し、国の期間業務職員は「選考」のみである点が制度上の相違である。また、国家公務員倫理法・倫理規程は会計年度任用職員に相当する非常勤職員にも適用される(倫理法第2条第1項)が、本条は採用・任期に関する規定であり倫理規程との直接の接点は薄い。


まとめ

地方公務員法第22条の2は、平成29年改正によって創設された会計年度任用職員制度の根幹をなす条文である。採用における競争試験・選考の義務付け(第1項)、一会計年度を上限とする任期の設定(第2項)、任期の書面明示(第3項・第5項)、勤務実績に基づく更新(第4項)、必要以上の短期反復任用を戒める配慮義務(第6項)、条件付採用期間の短縮(第7項)の七つの仕組みが一条に凝縮されている。

任命権者にとっての実務上の要諦は、①選考を形式的に済ませず能力実証の記録を残すこと、②任期を書面で明示すること、③更新判断に際して勤務実績評価を文書化すること、④短期反復任用は配慮義務違反のリスクを伴うことを認識することの四点に集約される。

Follow me!