条文原文

第八条 レコードは、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護を受ける。
一 日本国民をレコード製作者とするレコード
二 レコードでこれに固定されている音が最初に国内において固定されたもの
三 前二号に掲げるもののほか、次のいずれかに掲げるレコード イ 実演家等保護条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)をレコード製作者とするレコード ロ レコードでこれに固定されている音が最初に実演家等保護条約の締約国において固定されたもの
四 前三号に掲げるもののほか、次のいずれかに掲げるレコード イ 実演・レコード条約の締約国の国民(当該締約国の法令に基づいて設立された法人及び当該締約国に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)をレコード製作者とするレコード ロ レコードでこれに固定されている音が最初に実演・レコード条約の締約国において固定されたもの
五 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに掲げるレコード
イ 世界貿易機関の加盟国の国民(当該加盟国の法令に基づいて設立された法人及び当該加盟国に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)をレコード製作者とするレコード
ロ レコードでこれに固定されている音が最初に世界貿易機関の加盟国において固定されたもの 六 前各号に掲げるもののほか、許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約(第百二十一条の二第二号において「レコード保護条約」という。)により我が国が保護の義務を負うレコード

趣旨・立法背景

著作権法第8条は、著作隣接権の一つであるレコード製作者の権利について、日本国が法律上保護を与える対象の範囲を定めた規定である。法律の適用範囲を画定するにあたり、自国民の保護を原則としつつ、国際社会における知的財産権の保護体制との調和を図る目的とする。 レコードは国境を越えて流通する性質を持つため、外国で製作されたレコードを国内で無断利用される事態を防ぐ必要がある。日本は複数の国際条約に加盟しており、内国民待遇の原則や相互主義に基づき、条約締約国の国民が製作したレコードや締約国で最初に音が固定されたレコードに対しても保護を付与する義務を負っている。これに応じるため、条約ごとに細分化して保護要件を列挙している。

用語解説

レコード 著作権法において、蓄音機用音盤、録音テープ、デジタルデータなど、物に音が固定されたものを指す。映像とともに再生することを目的とするものは除外される。

レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者を指す。アーティストの演奏などを最初に録音した主体であり、通常はレコード会社や原盤権者が該当する。

実演家等保護条約 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(ローマ条約)のこと。著作隣接権の国際的保護を定めた基本条約である。

実演・レコード条約 世界知的所有権機関(WIPO)が採択したWIPO実演・レコード条約(WPPT)のこと。デジタル化やインターネットの普及に対応し、レコード製作者の権利を強化する内容を含む。

世界貿易機関の加盟国 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に基づき、WTO加盟国間で著作隣接権の保護義務が生じる。

レコード保護条約 海賊版レコードの蔓延を防止するため、許諾を得ない複製からレコード製作者を保護することを目的としたジュネーブ・レコード条約を指す。

改正法の内容や変化や最新の裁判例

本条は、日本が新たな国際条約を締結し、または既存の条約を批准するたびに、保護対象を拡大する形で改正が重ねられてきた。

直近の変化として、令和8年(2026年)の著作権法改正(令和8年法律第48号)が挙げられる。同改正により、音楽CDや配信音源などの商業用レコードが店舗などの公の場で利用された際に、実演家やレコード製作者が二次使用料を受け取ることができる「レコード演奏・伝達権」が創設された。第8条によって日本の著作権法による保護対象と認められた外国レコードの製作者も、この新たな権利に基づく保護を享受し得る枠組みとなっている。詳しく言うと、
令和8年法律第48号による著作権法改正により、音楽CDや配信音源などの商業用レコードが店舗などの公の場で再生・伝達された際に、実演家やレコード製作者が二次使用料を受け取ることができる「レコード演奏・伝達権」が新たに創設された。この改正は本条の保護対象であるレコードの取り扱いに大きな影響を及ぼす。
これまで日本には同種の権利が存在しなかったため、実演家等保護条約等に定められる相互主義の原則により、日本のレコード製作者や実演家が海外で音楽を利用されても、当該海外の徴収団体から二次使用料を受け取ることができなかった。すでに多くの国で導入済みであったこの制度を日本も整備したことで、相互主義に基づく海外からの使用料還流が可能となった。同時に、第8条によって日本の著作権法による保護対象と認められた外国レコードの製作者に対しても、日本国内での商業利用時に二次使用料が支払われる枠組みが整った。その結果、本条で規定される各種条約締約国の国民が製作したレコードについて、国内利用時の対価支払いの実務運用が変わることとなる。

実務において本条が単独で争点となる裁判例は多くないが、著作権侵害訴訟では、原告が主張するレコードが本条の要件を満たすかどうかが前提として確認される。外国の楽曲や音源をサンプリングする際や、生成AIの学習データとして用いる場面において、その音源の最初の固定国や製作者の国籍を特定し、日本が加盟する条約に基づく保護の対象となるかを確認するプロセスが求められる。グローバルに展開する企業や、海外の音源を扱うプラットフォーマー、AIガバナンスに取り組む自治体などの組織は、利用予定の音源の権利関係を調査する際、本条に照らして法的保護の有無を判断する体制の構築が不可欠となる。

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