条文(令和8年4月1日現在)

(臨時的任用) 第二十二条の三 

 人事委員会を置く地方公共団体においては、任命権者は、人事委員会規則で定めるところにより、常時勤務を要する職に欠員を生じた場合において、緊急のとき、臨時の職に関するとき、又は採用候補者名簿(第二十一条の四第四項において読み替えて準用する第二十一条第一項に規定する昇任候補者名簿を含む。)がないときは、人事委員会の承認を得て、六月を超えない期間で臨時的任用を行うことができる。この場合において、任命権者は、人事委員会の承認を得て、当該臨時的任用を六月を超えない期間で更新することができるが、再度更新することはできない。

2 前項の場合において、人事委員会は、臨時的に任用される者の資格要件を定めることができる。

3 人事委員会は、前二項の規定に違反する臨時的任用を取り消すことができる。

4 人事委員会を置かない地方公共団体においては、任命権者は、地方公共団体の規則で定めるところにより、常時勤務を要する職に欠員を生じた場合において、緊急のとき、又は臨時の職に関するときは、六月を超えない期間で臨時的任用を行うことができる。この場合において、任命権者は、当該臨時的任用を六月を超えない期間で更新することができるが、再度更新することはできない。

5 臨時的任用は、正式任用に際して、いかなる優先権をも与えるものではない。

6 前各項に定めるもののほか、臨時的に任用された職員に対しては、この法律を適用する。


一 趣旨・立法背景

1 臨時的任用制度の位置づけ

地方公務員法は、職員の採用を原則として競争試験または選考による能力実証(第17条の2、第21条)に基づかせ、条件付採用(第22条)を経て正式任用に至る仕組みを採る。これは、情実任用の排除と公正な人事行政の実現を保障するための基本構造である。

臨時的任用は、この原則に対する例外として設けられた制度である。自然災害や急病等によって正規の採用手続を経る時間的余裕がない場合、あるいは短期間のうちに廃止される見込みの臨時の職について競争試験を実施することが現実的でない場合、職場の人員空白を放置すれば公務の遂行に支障が生ずるという実務的必要性に応えるものである。

2 平成29年改正前の問題状況

改正前の地方公務員法第22条は、臨時的任用の要件として「緊急の場合、臨時の職に関する場合又は任用候補者名簿がない場合」を定めていたが、「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」という前提要件が明文化されておらず、また更新規制の不徹底もあって、本来は会計年度任用職員や任期付職員として任用されるべき者を臨時的任用の形式で繰り返し任用する実態が各地で常態化していた。臨時的任用職員には守秘義務・政治的行為制限といった地方公務員法上の服務規律は適用されつつ(第6項参照)、条件付採用の保護や不利益処分審査請求の権利(地公法第49条の2)は与えられないという不均衡な身分状態が放置されていた。

3 平成29年改正(令和2年4月施行)による厳格化

こうした実態を是正するため、「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」(平成29年法律第29号)は、臨時的任用の任用根拠を現行第22条の3として独立条文化し、次の二点を明文で厳格化した。

第一に、任用の前提として「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」を明記した。これにより、欠員を生じていない状態での臨時的任用や、常時勤務を要しない職への臨時的任用が制度上排除された。

第二に、人事委員会を置く団体における更新について、人事委員会の承認を改めて取得することを要件とした上で、「再度更新することはできない」と法定し、最長任用期間が通算12か月を超えないことを明確にした。

同改正により、従来の臨時的任用の受け皿となっていた常勤・非常勤の臨時職員については、新設された会計年度任用職員制度(第22条の2)への移行が図られた。


二 条文解説

第1項 人事委員会設置団体の臨時的任用

(1) 「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」(前提要件)

「常時勤務を要する職」とは、フルタイムで勤務することが職務上求められる職をいう。週4日程度の短時間勤務の職は該当しない。その職に「欠員を生じた場合」とは、定員または事実上の必要員数に対して人員が不足している状態を指し、出産・病気・研修等による長期休職者が生じた場合のほか、退職・死亡により空位となった場合も含まれる。

平成29年改正によって前提要件として明文化された点が、改正前との最大の相違である。「常時勤務を要する職」以外への臨時的任用は、本条の適用対象外となる。非常勤の職や会計年度任用職員として充てるべき職に対して本条を用いることは許されない。

(2) 三事由のいずれか(本体要件)

前提要件を満たした上で、次の三事由のうち少なくとも一つを具備する必要がある。

「緊急のとき」とは、正規の採用手続(試験・選考・候補者名簿への搭載)を経る時間的余裕がないほどの緊迫した状況をいう。自然災害、感染症の急拡大、担当職員の突発的な事故・疾病等が典型例である。

「臨時の職に関するとき」とは、当該職が一時的・臨時的な性格を持ち、通常であれば短期間のうちに廃止される見込みの職に関する場合をいう。総務省の解説では、1年未満の期間内に廃止されることが予想されるものを念頭に置く。ただし、名目上「臨時」と称しても実質的に恒常的な業務を担う職については、この事由には当たらない。

「採用候補者名簿がないとき」とは、競争試験による採用を実施しようとしても、有効な採用候補者名簿が存在しない状態をいう。カッコ書きにより、昇任候補者名簿(第21条の4第4項において読み替えて準用する第21条第1項)が存在しない場合も同一に扱われ、昇任による補充もできない状況が含まれる。

(3) 「人事委員会規則で定めるところにより」

任用の具体的な手続・様式・報告事項等については、人事委員会規則(当該団体が制定する規則)に委ねられる。各団体の人事委員会規則が任用の事前手続・承認申請・書類要件を規定しており、実務上はこれを遵守する必要がある。

(4) 「人事委員会の承認を得て」

任命権者は、単独で臨時的任用を決定することはできない。人事委員会の事前承認が任用の有効要件である。承認を欠いたままの任用は第3項の取消対象となる。

承認の時点は任用前であることが原則であり、事後承認を認める規定は置かれていない。実務上、緊急の場合には手続の迅速化が図られるが、事前に一定の確認を経ることが要請される。

(5) 「六月を超えない期間」と更新規制

初回の任用期間は6か月以内である。更新する場合も、改めて人事委員会の承認を得た上で、6か月以内の期間で1回に限り更新できる。「再度更新することはできない」との明文規定により、通算の最長任用期間は12か月未満となる。この上限は、臨時的任用が恒常化することを防ぐための絶対的な制限であり、別段の合意や条例によっても排除できない。

第2項 人事委員会による資格要件の設定

人事委員会は、臨時的に任用される者について一定の資格要件を設けることができる。「資格要件」とは、特定の免許・資格の保有や一定の経験年数の充足等を指す。能力実証を経ない任用である以上、最低限の職務遂行能力を確保するための補完的装置として機能する。この権限は人事委員会の裁量に委ねられており、設定しないことも適法である。

第3項 人事委員会の取消権

人事委員会は、第1項・第2項に違反する臨時的任用を取り消すことができる。取消しは将来に向かって効力を失わせる行政処分であり、既往の勤務の効力には直接影響しないと解される。

「違反する臨時的任用」として取消しの対象となる典型例は、三事由のいずれにも該当しない場合の任用、人事委員会の承認を経ない任用、第2項の資格要件を充足しない者の任用、禁止される再度更新(3回目以降)がある。

取消しは人事委員会の裁量であり、「できる」規定であるから、取消しをしないことが直ちに違法となるわけではない。しかし、違法状態が継続することに対して人事委員会がいかなる措置をとるかは、人事行政の信頼確保の観点から重大な問題を含む。

第4項 人事委員会非設置団体の臨時的任用

市町村(人口規模等の要件により人事委員会を設置しない地方公共団体)においては、任用根拠が異なる。

前提要件は第1項と同様に「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」であるが、本体要件は「緊急のとき、又は臨時の職に関するとき」の2事由に限られる。採用候補者名簿を義務的に作成する制度を有しない団体である以上、「名簿がないとき」という事由は性質上適用されない。

人事委員会に代わる承認機関は存在せず、任命権者が地方公共団体の規則(首長規則等)に基づいて任用を行う。更新も任命権者の判断で可能であるが、再度更新は禁止される。

第5項 正式任用への優先権の否定

臨時的任用の経験は、その後の競争試験・選考において優先権を生じさせない。臨時的任用期間中に職務遂行能力を発揮したとしても、正式採用・昇任の選考において法的に有利な地位に置かれることはない。

この規定は、任命権者が「臨時任用→情実的正式採用」という迂回路を利用することを制度的に遮断するものである。能力実証主義の徹底という観点から、第22条が規定する条件付採用(正式任用への道筋)とは明確に区分される。

第6項 地方公務員法の適用

臨時的に任用された職員は、前各項の特則のほか、地方公務員法の適用を受ける。したがって、服務義務(守秘義務・政治的行為制限・職務専念義務等)が課され、懲戒処分の対象ともなる。

ただし、臨時的任用職員は以下の制度から除外される点に注意を要する。

  • 条件付採用(第22条)の対象外(臨時的任用自体が例外的任用であるため)
  • 不利益処分に対する審査請求(第49条の2)の対象外(兵庫県等の運用例でも確認される)
  • 営利企業への再就職規制(第38条の2)の適用対象外

三 用語解説

任命権者:地方公共団体の長、議会の議長、各種委員会等、職員の任命・分限・懲戒等の人事行政を行う権限を持つ機関。地方公務員法第6条参照。

人事委員会:都道府県および政令指定都市等に設置される機関で、採用試験の実施、給与の勧告、不利益処分の審査等を所掌する。地方公務員法第7条第1項の団体に設置義務がある。

採用候補者名簿:競争試験の合格者を得点順等に記載した名簿で、任命権者はこれに基づいて採用を行う。第21条参照。

臨時の職:一定期間内に廃止が予定されており、恒常的・継続的な業務を担わない性格の職を指す。業務の臨時性が客観的に判断されなければならない。

正式任用:条件付採用期間(通常6か月)を良好な成績で勤務した後に行われる確定的な任用をいう(第22条参照)。臨時的任用から直接正式任用に移行する制度的ルートは存在しない。


四 関連判例・裁判例

1 最高裁判所平成22年9月10日第二小法廷判決(民集64巻6号1515頁)

本判決は、市の臨時的任用職員(週3日勤務)に対する期末手当相当の一時金支給が地方自治法第204条第2項に基づく手当の支給として適法かどうかを判断したものである。

最高裁は、臨時的任用職員に対する手当の支給が適法であるためには、その勤務が「通常の勤務形態の正規職員に準ずるものとして常勤と評価できる程度のもの」であることを要するとした上で、週3日の勤務では当該市の正規職員の通常勤務時間の6割に満たないとして適法性を否定した。あわせて、臨時的任用職員の給与については、その職が当該団体の常設的な事務に係るものである場合には、給与の額等の基本的事項が条例に定められるべきとの規範を示した。

本判決は、臨時的任用職員の処遇と地方自治法上の手当制度との関係を整理した先例として実務上参照される。

2 実務上の問題として浮上した「脱法的反復任用」

平成29年改正の立法過程で問題となった事例として、同一の者に対し任用期間満了後に改めて臨時的任用を繰り返す運用(いわゆる「脱法的反復任用」)がある。従前の法第22条は再度更新の回数について不明確であったため、事実上の恒常的雇用として臨時的任用が機能していた実態が各地で確認された。現行法第22条の3は、「再度更新することはできない」の明文と「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」の前提要件により、この脱法的運用を明示的に遮断している。

なお、任期満了後に一定の空白期間を置いて再度別個の臨時的任用を行うことの可否については、脱法的意図の有無・職の同一性・実態としての継続性等を総合的に判断する必要があり、単に形式的に期間を分断すれば再任用できるとは解されない。

3 行政法上の補論

臨時的任用は任命権者による行政行為(任命処分)であるが、臨時的任用職員は不利益処分審査請求の対象外である(兵庫県人事委員会の運用でも明確にされている)。

人事委員会の取消権(第3項)が行使された場合の当該職員の地位については、取消しが行政処分としての無効確認訴訟の対象となりうるかどうかが問題となりうる。取消し前の職務遂行に基づく給与請求権の帰趨については、信義則・不当利得の観点から検討される余地がある。


五 国家公務員法との比較(参考)

国家公務員法第60条は、地方公務員法第22条の3第1項に対応する臨時的任用規定として、「緊急の場合、臨時の官職に関する場合又は採用候補者名簿がない場合には、人事院の承認を得て、6月を超えない任期で、臨時的任用を行うことができる」と規定し、更新も1回かつ6か月に限ることを明記している。

地方公務員法との主な相違点は次の二点である。第一に、国家公務員法は「常時勤務を要する職に欠員を生じた場合」という前提要件の明文を欠いている(ただし実務上は同様に解釈される)。第二に、国家公務員においては人事院が一元的に承認権を担うのに対し、地方公務員においては人事委員会設置・非設置の区分に応じて承認手続が分かれる。全体としての任用期間上限(最長12か月)は両者で共通する。


六 実務上の留意点

臨時的任用を行う際に実務担当者が確認すべき事項を整理する。

第一に、前提要件の充足確認である。常時勤務を要する職(フルタイム)に欠員が実際に生じているか確認する。欠員状態にない職や、短時間勤務の職を対象とする場合は本条を使用できない。

第二に、三事由(または非設置団体では2事由)のいずれかへの該当性確認である。「緊急のとき」は客観的な緊急状況の記録を残す。「臨時の職」は廃止見込みの根拠を整理する。名簿不存在は人事委員会への確認記録を保管する。

第三に、更新の限界管理である。初回6か月以内+更新1回(6か月以内)の合計12か月を超える任用は許されない。人事委員会の承認取得タイミングについては、更新の場合も新たな承認申請が必要であることを見落とさない。

第四に、会計年度任用職員制度との使い分けである。恒常的・継続的な行政需要に対応する職員については、本条ではなく第22条の2(会計年度任用職員)による任用が適切である。臨時的任用を恒常化させた場合、第3項による取消しリスクを生じるほか、労働条件の透明性・服務規律の確保にも支障が及ぶ。


【関連記事・参考リンク】

  • 地方公務員法逐条解説シリーズ(本サイト)
  • 総務省「会計年度任用職員制度等」(総務省ウェブサイト)
  • 「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」(平成29年法律第29号)附則・経過措置

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