条文原文
第七十七条
解散の投票の結果が判明したときは、選挙管理委員会は、直ちにこれを前条第一項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知し、かつ、これを公表するとともに、都道府県にあつては都道府県知事に、市町村にあつては市町村長に報告しなければならない。その投票の結果が確定したときも、また、同様とする。
第七十八条
普通地方公共団体の議会は、第七十六条第三項の規定による解散の投票において過半数の同意があつたときは、解散するものとする。
第七十九条
第七十六条第一項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は、その議会の議員の一般選挙のあつた日から一年間及び同条第三項の規定による解散の投票のあつた日から一年間は、これをすることができない。
趣旨・立法背景
第77条から第79条までは、第76条が定める議会解散請求の手続のうち、投票実施後の結果処理と、解散制度の濫用防止のための時間的制約を定める規定である。第76条が請求の要件と投票への付託を定め、第78条がその効果を、第77条がその効果を確定させるための公示手続を、第79条が制度の濫用を防ぐ期間制限を定めるという順序で、解散請求の一連の手続が完結する構造になっている。
第77条が定める通知・公表・報告の三重構造は、解散という重大な効果を発生させる投票結果について、関係者への正確な伝達と住民全体への周知を同時に確保するための規定である。請求代表者及び議長への通知は手続上の利害関係者に対する個別の連絡であり、公表は住民全体に対する周知であり、知事又は市町村長への報告は当該地方公共団体の執行機関に解散という事実を正式に認識させる行為である。三者はいずれも同一の通知行為から生じるものであるが、機能が異なるため、条文上別々に列記されている。
「解散の投票の結果が判明したとき」と「その投票の結果が確定したとき」という二段階の表現は、開票直後の速報的な判明と、異議申出期間の経過等を経た法的な確定とを区別するものである。地方自治法第85条により解散の投票には公職選挙法の規定が準用されるため、開票結果に対する異議の申出や審査の手続を経て初めて投票結果が確定する。判明時点で住民への速報的な周知を行い、確定時点で改めて同様の手続を行うことにより、住民は手続の進行状況を継続的に把握できる。
第78条は、解散請求制度の核心である過半数要件を定める。第76条第3項の解散投票において有効投票の過半数が解散に同意したときに議会が解散するという効果は、住民の直接意思表示によって議会という機関そのものを消滅させる、地方自治法上もっとも重い直接民主制的効果の一つである。解散の効果は投票結果の確定によって発生するものであり、解散により当該地方公共団体の議会は議員の身分を失った状態となり、第78条による解散の日から40日以内に議員の一般選挙が行われることになる。
第79条は、解散請求制度の濫用を防止するための再請求禁止期間を定める。議会の一般選挙が行われた直後、又は解散投票が行われた直後に、同一の議会に対して直ちに解散請求を繰り返すことを認めれば、住民の直接請求権が政治的対立の手段として濫用され、議会の安定的な運営が損なわれるおそれがある。一般選挙後一年間及び解散投票後一年間という二つの起算点を設けることで、議会が新たに構成された後、又は解散の賛否を問う投票が行われた後の一定期間は、住民の意思確認が行われたものとして扱い、同一の手続を直ちに繰り返すことを制限している。
用語解説
解散の投票の結果が判明したとき 開票作業の結果、賛成票及び反対票の数が確定する前の段階で、投票の結果(過半数の同意の有無)が事実上明らかになった時点を指す。公職選挙法の準用により、開票後に異議申出等の手続を経るため、判明と確定は時間的に分離する。
解散の投票の結果が確定したとき 異議申出期間の経過、又は異議申出があった場合はその審査・決定を経て、投票結果が法的に争えない状態に至った時点を指す。
前条第一項の代表者 第76条第1項に定める解散請求の代表者を指す。住民の総数の3分の1以上(大規模自治体については別途算定される数)の連署を集め、選挙管理委員会に対し解散の請求をした者である。
過半数の同意 有効投票総数のうち、解散に同意する票(賛成票)が反対票を上回ることを意味する。投票率や選挙人名簿登録者数全体に対する割合ではなく、あくまで有効投票の中での多数決である。
議会の議員の一般選挙のあつた日 当該普通地方公共団体の議会議員を選出する選挙が行われた期日を指す。任期満了による通常の一般選挙のほか、解散による一般選挙も含まれる。
解散の投票のあつた日 第76条第3項に基づく解散の賛否を問う住民投票が実施された期日を指す。投票の結果が解散不成立であった場合も、第79条の起算点としては投票が行われた事実自体が基準となる。
補論 行政法上の論点
解散の効果発生時期と処分性
第78条が定める「解散するものとする」という効果は、議会による意思決定を介さず、住民投票の結果のみによって法律上当然に生じる効果である。この点で、長による議会解散(第178条)が長の一方的な行政処分としての性質を有するのに対し、第78条の解散は住民の直接投票という事実行為の結果として法律上自動的に生じるものであり、行政庁による処分という性格を持たない。したがって、解散の効果を争う場合、解散決定そのものに対する取消訴訟という構成は成立せず、争うべき対象は投票に至る手続(請求の受理、署名審査、投票の執行方法等)の適法性、又は開票結果の効力そのものである。
開票結果の効力を争う手続としては、公職選挙法の準用により、当該投票の効力に関する異議の申出及びその後の訴訟提起が想定される。署名審査の結果(有効・無効の決定)に対する不服についても、行政事件訴訟法上の取消訴訟及び執行停止の申立ての対象となり得る。宮城県大郷町の議会解散請求事案では、署名の効力等を争う訴訟において裁判所が投票の執行停止を命じたことにより、当初予定されていた投票期日が延期される事態が生じている。
第79条の期間制限と権利保障との調整
第79条が定める一年間の再請求禁止は、住民の直接請求権(憲法上は地方自治の本旨に基づく地方自治法第13条第1項の権利)に対する制約として位置づけられる。学説上、この制約の合憲性については、議会の安定的運営の確保という公益と、住民による民意確認の機会保障という権利との調整問題として議論されることがある。第79条は解散請求についてのみ一年間の制限を設けているが、議員の解職請求(第80条以下)についても就職の日及び解職投票の日からそれぞれ一年間の制限が別途定められており、解散請求と解職請求とで制度設計の枠組みが共通している。
期間の起算点が「一般選挙のあつた日」と「解散投票のあつた日」の二つに分かれている点について、両者は異なる事象であるため、いずれか一方が経過すれば直ちに再請求が可能になるのではなく、両方の期間がそれぞれ独立して適用される。すなわち、解散投票が不成立に終わった場合、その投票の日から一年間は再請求ができず、その後に一般選挙が行われた場合は、その選挙の日からさらに一年間の制限が新たに生じる。
判例・裁判例
議会の解散をめぐる訴訟としては、選挙の効力又は当選の効力に関する訴訟の係属中に議会が解散した場合の訴えの利益について判断した裁判例がある。町議会議員選挙につき、選挙の効力に関する県選挙管理委員会の裁決の取消及び選挙の無効、当選の効力に関する同委員会の裁決の取消及び当選人の当選の無効の判決を求める訴えの係属中、町長が地方自治法第178条の規定により町議会を解散したときは、当該訴えは法律上の利益を失うとされた事案である。この裁判例は長による解散(第178条)が問題となった事案であるが、解散により議会という機関そのものが消滅することにより、議員の身分にかかわる訴訟が訴えの利益を失うという論理は、第78条による住民投票に基づく解散の場合にも同様に当てはまる。解散の効果が確定すれば、解散前の議員の身分を前提とした訴訟は、特段の事情がない限り維持できなくなる。
実例
第78条が定める「過半数の同意」による解散の実例として、山梨県道志村及び宮崎県川南町の事例が参考になる。道志村の議会解散リコールでは、村選挙管理委員会によると反対が624票、賛成が521票となり、投票率は84.63パーセント、当日有権者数は1,366人であった。賛成が反対を下回ったため、解散は不成立に終わった。
これに対し、宮崎県川南町議会の解散の賛否を問う住民投票では、町選挙管理委員会によると投票結果は賛成4,230票、反対1,768票であり、当日有権者数は1万1,973人で、投票率は50.51パーセントであった。有効投票の過半数が賛成したため解散請求が成立し、議会は即日解散し、40日以内に町議会議員選挙が行われることになった。総務省などによると、議会のリコールの成立事例は2012年の山梨県西桂町の事例があるが、全国的に珍しく、宮崎県内で議会リコールが成立したのは23年ぶりであった。
両事例は、第77条が定める「投票の結果が判明したとき」の通知・公表・報告という手続を経て、第78条の効果(解散不成立又は解散)が確定したという点で共通する。川南町の事例では、投票結果の発表と同時に議会が解散し、解散の日から40日以内という第78条に基づく一般選挙の期限が直ちに動き出した点に、第77条の通知・公表手続が解散の効果発生と密接に連動していることが表れている。
第79条の再請求制限との関係では、いずれの自治体においても、解散投票が行われた日から一年間は同一の解散請求を行うことができず、道志村のように解散が不成立に終わった場合であっても、住民グループが直ちに同じ手続を繰り返すことは制度上認められない。この期間制限は、一度住民の意思確認が行われた以上、一定期間は議会の安定的な運営を保障する趣旨に基づくものである。

