条文原文
第十七条
普通地方公共団体の議会の議員及び長は、別に法律の定めるところにより、選挙人が投票によりこれを選挙する。
第十八条
日本国民たる年齢満十八年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有するものは、別に法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
第十九条
普通地方公共団体の議会の議員の選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のものは、別に法律の定めるところにより、普通地方公共団体の議会の議員の被選挙権を有する。
② 日本国民で年齢満三十年以上のものは、別に法律の定めるところにより、都道府県知事の被選挙権を有する。
③ 日本国民で年齢満二十五年以上のものは、別に法律の定めるところにより、市町村長の被選挙権を有する。
一 趣旨・立法背景
第17条——直接選挙制の明示
第17条は、普通地方公共団体の議会の議員と長の選出方式を「選挙人による投票」と定める。この規定は日本国憲法第93条第2項の「住民が直接これを選挙する」という要請を受けて地方自治法に落とし込んだものである。
議会制民主主義の一般原則として、立法機関の構成員を国民や住民が直接選ぶ制度は18世紀以降に近代国家で確立されてきた。日本の地方自治においては戦前から府県会・市会議員の選挙が存在したが、知事や市長は原則として官選(国が任命)であった。1947年(昭和22年)に地方自治法と日本国憲法が同時施行され、知事・市町村長も住民の直接選挙で選ぶ制度へと転換した。この転換が第17条の歴史的背景にある。
「別に法律の定めるところにより」という文言は、選挙の具体的な手続き・方法・管理に関する細則を公職選挙法(昭和25年法律第100号)に委ねることを示す。地方自治法は選挙制度の骨格を定め、公職選挙法が投票の手続、選挙運動、選挙管理委員会の権限等を規律する構造である。
第18条——選挙権の普通選挙原則
第18条は選挙権の要件として①日本国民であること、②年齢満18年以上であること、③引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有すること、の三つを定める。
選挙権年齢は当初20歳以上とされていたが、2015年(平成27年)6月に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、2016年(平成28年)6月19日以後初めて公示・告示される選挙から18歳以上に引き下げられた。この引き下げは民法上の成年年齢の動向(2022年(令和4年)4月1日から18歳へ引き下げ)や、世界の191か国・地域のうち9割近くが18歳以上を選挙権年齢とする国際的な趨勢を踏まえたものである。
3か月の居住要件(住所継続要件)は、地域の実情に一定の関与を持つ者のみに選挙権を認めるという趣旨で設けられている。国政選挙(衆参両院)にはこの居住要件が課されないため、地方選挙のみの特別要件である。この要件は公職選挙法第9条第2項においても同旨が定められており、地方自治法と公職選挙法が相互に補完する関係にある。
第19条——被選挙権の年齢要件
第19条は被選挙権(立候補する権利)の年齢要件を職種ごとに定める。議会の議員と市町村長は満25歳以上、都道府県知事は満30歳以上とする。
この年齢設定の来歴は明治期にさかのぼる。明治時代に普通選挙制度の基礎が形成される際、当時の欧米主要国では選挙権が21歳から25歳以上、被選挙権が25歳から30歳以上に設定されていたため、日本もこれに倣った。すなわち、現行の年齢要件は「相当の知識や豊富な経験を必要とする」という政策的判断を主な根拠としながらも、その数値自体は欧米の主流に合わせたものであり、科学的根拠に基づき精緻に算出されたものではない。
都道府県知事に限り30歳以上とされているのは、広域自治体の長として高度の政策判断・行政経験が求められるとの立法判断による。市町村長については25歳以上とし、都道府県知事との間に5歳の差を設けることで、職責の重さと広域性の違いを反映している。
なお、2016年の選挙権年齢引き下げ後、被選挙権年齢のさらなる引き下げ論議が高まり、第192回国会では衆参議員を20歳・25歳へ、都道府県議員・市町村議員・市町村長を20歳へ、都道府県知事を25歳へとそれぞれ引き下げる法律案が提出された経緯がある。被選挙権年齢の問題は現在も立法政策上の課題として残っている。
二 用語解説
普通地方公共団体
都道府県と市町村の総称(地方自治法第1条の3第2項)。特別地方公共団体(特別区・地方公共団体の組合・財産区)は第17条以下の直接選挙制度の適用を受けない場合がある。
選挙人
選挙権を有し、かつ選挙人名簿に登録されている者。単に選挙権の要件を満たすだけでなく、公職選挙法第22条以下の手続きに従い市町村の選挙管理委員会が管理する選挙人名簿に登録されていなければ、実際に投票することはできない(同法第42条)。
日本国民
日本国籍を有する者。国籍法(昭和25年法律第147号)の規定によって国籍を取得した者が対象となる。在留外国人(永住者を含む)は日本国民に含まれない。
年齢満十八年以上(満二十五年以上・満三十年以上)
年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号)および民法第143条の類推適用により、誕生日の前日をもって当該年齢に達したものとみなされる(最高裁昭和36年2月21日第三小法廷判決・民集15巻2号282頁参照)。したがって、18歳の誕生日当日ではなく、誕生日の前日から選挙権が発生する点に留意が必要である。
◆参議院法制局の考え方
昭和54年11月22日に言い渡された大阪高等裁判所の選挙権年齢に関する判決が参考になります。同判決においては、「被選挙権に関する公職選挙法10条2項において、年令は選挙の「期日」により算定すると規定されており、この被選挙権に関する規定は選挙権についても類推適用されると解すべきであり(中略)満20年に達する(中略)出生応当日の前日の午後12時を含む同日午前0時以降の全部が右選挙権取得の日に当るものと解することができる。」とされています(上告は後日棄却)。
では、選挙期日の翌日に18歳の誕生日を迎える者は、仕事や旅行などで選挙の期日に投票を行えない場合、期日前投票を行うことができるでしょうか。期日前投票を行う日を基準にすれば18歳未満ですが、選挙の期日を基準にすれば満18歳ということになります。この点、公職選挙法では、期日前投票については「選挙の当日」ではなく「投票の当日」選挙権を有することが要件とされています(第43条括弧書)。したがって、投票の当日は18歳未満であるため、残念ながら期日前投票を行うことはできないということになります。
では、不在者投票についてはどうでしょうか。公職選挙法では、不在者投票については原則どおり「選挙の当日」に選挙権を有することが要件とされており、投票用紙を提出する時点では18歳未満であっても、不在者投票を行うことはできるということになります。 https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column105.htm
引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する
住所は生活の本拠(民法第22条)を指し、住民票の記載のみによって機械的に判断されるのではなく、客観的な生活実態が考慮される。公職選挙法第9条第2項の「引き続き三箇月」の期間は、市町村の廃置分合・境界変更があっても中断されない(同法第9条第5項)。3か月に満たない場合、転出先の自治体では選挙権を取得できず、転出前の自治体の選挙人名簿にも引き続き登録されないため、当該選挙について無権利状態が生じうる。
被選挙権
公職の候補者として選挙に立候補できる権利。選挙権(選ぶ権利)と対をなす。被選挙権を有しない者は立候補の届出ができず、たとえ届出が受理されて当選したとしても、その当選は無効となる(公職選挙法第99条)。
別に法律の定めるところにより
第17条・第18条・第19条はいずれもこの文言を含む。選挙の具体的な手続き・管理・罰則については公職選挙法が一元的に定めており、地方自治法は選挙の原則的要件のみを規律する立て付けになっている。この構造は、選挙制度の統一性を確保しながら地方自治法の体系的整合性を保つための立法技術である。
三 条文の構造と要件の整理
選挙権の要件(第18条)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 国籍 | 日本国民であること |
| 年齢 | 満18年以上 |
| 居住 | 引き続き3か月以上、当該市町村区域内に住所を有すること |
都道府県議会議員・都道府県知事の選挙権については、市町村の区域内に3か月以上住所を有していれば、その市町村が属する都道府県の選挙権も当然に認められる(公職選挙法第9条第2項)。
被選挙権の要件(第19条)
| 対象 | 国籍 | 年齢 | 選挙権との関係 |
|---|---|---|---|
| 都道府県・市町村の議会議員 | 日本国民 | 満25歳以上 | 選挙権を有することが前提 |
| 都道府県知事 | 日本国民 | 満30歳以上 | 選挙権の有無は問わない(公職選挙法第10条) |
| 市町村長 | 日本国民 | 満25歳以上 | 選挙権の有無は問わない(公職選挙法第10条) |
議会議員の被選挙権は「選挙権を有する者で年齢満25年以上のもの」と定めており、居住要件を含む選挙権の全要件を満たしたうえで年齢要件を加重する構造である。一方、知事と市町村長については第19条第2項・第3項が「日本国民で年齢満○○年以上のもの」と定めており、居住要件を独立の要件として課していない。公職選挙法第10条も同旨であり、長(首長)については選挙区(当該自治体の区域)外の居住者でも立候補が可能な設計となっている。
四 関連法令
第17条から第19条は地方自治法の中では宣言的・骨格的な規定であり、以下の法令と連携して初めて選挙制度として機能する。
公職選挙法(昭和25年法律第100号)は第9条で選挙権の具体的要件、第10条で被選挙権の要件、第11条・第11条の2で選挙権・被選挙権の停止・喪失事由、第12条以下で選挙区、第22条以下で選挙人名簿の登録手続きをそれぞれ定める。特に禁錮以上の刑に処せられた者が刑の執行を終えるまでの期間、選挙権と被選挙権が停止される(同法第11条第1項第2号)ことは実務上も重要である。
日本国憲法第93条第2項は「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と定め、第17条の直接民主制的根拠を提供する。同第15条第1項は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と定め、第18条・第19条における「日本国民」要件の憲法的根拠となっている。
五 判例・裁判例
最高裁判所第三小法廷判決・平成7年2月28日(民集第49巻2号639頁)
事案の概要
日本で生まれ育った在日韓国人らが、定住外国人には憲法第93条第2項の「住民」として地方選挙権が保障されているとして、大阪市選挙管理委員会に選挙人名簿への登録を求める異議申出をした。却下されたため、日本国民に限り地方選挙権を認める地方自治法第11条・第18条および公職選挙法第9条第2項が憲法第15条第1項・第93条第2項等に違反すると主張して提訴した(選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消請求事件)。
判旨の骨子
最高裁は上告を棄却し、地方自治法第18条・公職選挙法第9条第2項は憲法に違反しないと判断した。その論理は次の二段構成からなる。
第一に、憲法第93条第2項にいう「住民」は日本国民を意味し、外国人に地方選挙権を憲法上保障するものではないとした。
第二に、「わが国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至った者について、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」とする傍論を示した。
この傍論は、永住外国人に対する地方選挙権付与が立法政策として憲法上許容されうることを示したものとして、後の政策論争において広く引用されることになった。
実務上の意義
第18条の「日本国民たる」という要件は憲法適合的であることが確定しているが、同時に立法政策として在留外国人への選挙権拡張が可能であるという点も確認された。地方公共団体の選挙制度が国民主権原理に基礎を置きつつも、立法府の政策的判断によって柔軟な設計が許容されることを示した先例として位置づけられる。
実務上の注意点——居住要件と選挙人名簿
居住要件(3か月継続住所)に関しては、転居のタイミングによって選挙権の行使ができない期間が生じる。転入届を提出してから3か月が経過していない者は、転入先の自治体の選挙人名簿には登録されず、転出前の自治体の名簿からも抹消されているため、一定期間選挙権を行使できない状態が発生する。この問題に対して、総務省は住所異動の際の注意喚起を行っているが、法令上の解消措置は設けられていない。
地方公務員が異動・転居等で住所を移す場合には、自らの選挙権行使の可否を念頭に置いておく必要がある。
六 まとめ——地方公務員が押さえるべきポイント
第17条は、住民自治の原則として直接選挙を宣言した規定であり、知事・市町村長・議会議員のいずれも住民による投票で選ばれることを確認する。これは戦前の官選知事制度からの根本的な転換を示す。
第18条は地方選挙権の三要件(国籍・年齢・居住)を定める。地方選挙特有の居住要件(3か月継続)は、国政選挙にはない要件であり、転居のタイミングによって無権利状態が生じうる点が実務上の盲点になりやすい。選挙管理事務に従事する職員はこの点を窓口対応で活用する場面がある。
第19条は被選挙権の年齢要件を設定する。議員・市町村長が25歳以上、都道府県知事が30歳以上という設定は明治期の欧米基準に由来するものであり、近年は引き下げ論議が継続している。また、長(知事・市町村長)の被選挙権には居住要件が設けられておらず、区域外の居住者でも立候補できる点は議員と異なる。
三か条を通じて、「別に法律の定めるところにより」という委任文言が繰り返し登場することが示すとおり、地方自治法は選挙の骨格を定め、公職選挙法がその詳細を規律するという二層構造が選挙制度の基本設計である。
参考条文・参考資料
- 日本国憲法第15条第1項、第93条第2項
- 公職選挙法(昭和25年法律第100号)第9条・第10条・第11条
- 年齢計算ニ関スル法律(明治35年法律第50号)
- 最高裁判所第三小法廷判決・平成7年2月28日(民集第49巻2号639頁、判時1523号49頁)
- 総務省「選挙権と被選挙権」https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo02.html
- 第192回国会閣法第7号「公職選挙法及び地方自治法の一部を改正する法律案」要綱(衆議院)

