地方自治法第六章第八節は「議員の辞職及び資格の決定」と題され、第126条から第128条までの三か条で構成される。議員が任期の途中でその身分を失う場面を扱う節である。

住民の選挙で選ばれた者が任期の途中で議席を離れるには、本人の意思によるもの(辞職)と、法律上の要件に当てはまったことによるもの(失職)という二つの経路がある。第126条が前者を、第127条と第128条が後者を扱う。

どの条文も短い。しかし実務では取扱いを誤りやすい。辞職の許可を議会が行うのか議長が行うのかは会期の状況で変わる。兼業禁止に触れた議員の職はいつ失われるのか、議会の決定はそれを確認するものなのか、それによって初めて失われるのか。選挙争訟が係属している間の議員の身分はどうなるのか。令和7年には、滋賀県守山市議会で辞職の取扱いに手続上の誤りがあったとして改めて本会議で許可する事態が報じられており、短い条文であることは扱いが易しいことを意味しない。


1 条文原文

条文は令和8年9月3日施行の現行法による。

第126条(議員の辞職)

第百二十六条 普通地方公共団体の議会の議員は、議会の許可を得て辞職することができる。但し、閉会中においては、議長の許可を得て辞職することができる。

第127条(失職と資格の決定)

第百二十七条 普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき、又は第九十二条の二(第二百八十七条の二第七項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に該当するときは、その職を失う。その被選挙権の有無又は第九十二条の二の規定に該当するかどうかは、議員が公職選挙法第十一条、第十一条の二若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法第二十八条の規定に該当するため被選挙権を有しない場合を除くほか、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定しなければならない。

② 前項の場合においては、議員は、第百十七条の規定にかかわらず、その会議に出席して自己の資格に関し弁明することはできるが決定に加わることができない。

③ 第百十八条第五項及び第六項の規定は、第一項の場合について準用する。

第128条(選挙争訟中の身分)

第百二十八条 普通地方公共団体の議会の議員は、公職選挙法第二百二条第一項若しくは第二百六条第一項の規定による異議の申出、同法第二百二条第二項若しくは第二百六条第二項の規定による審査の申立て、同法第二百三条第一項、第二百七条第一項、第二百十条若しくは第二百十一条の訴訟の提起に対する決定、裁決又は判決が確定するまでの間(同法第二百十条第一項の規定による訴訟を提起することができる場合において、当該訴訟が提起されなかつたとき、当該訴訟についての訴えを却下し若しくは訴状を却下する裁判が確定したとき、又は当該訴訟が取り下げられたときは、それぞれ同項に規定する出訴期間が経過するまで、当該裁判が確定するまで又は当該取下げが行われるまでの間)は、その職を失わない。

関連条文

本節の解釈に直接かかわる規定を併せて掲げる。

第九十二条の二 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負(業として行う工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入その他の取引で当該普通地方公共団体が対価の支払をすべきものをいう。以下この条、第百四十二条、第百八十条の五第六項及び第二百五十二条の二十八第三項第十二号において同じ。)をする者(各会計年度において支払を受ける当該請負の対価の総額が普通地方公共団体の議会の適正な運営の確保のための環境の整備を図る観点から政令で定める額を超えない者を除く。)及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

第百十七条 普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができない。但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。

第百十八条

⑤ 第一項の規定による決定に不服がある者は、決定があつた日から二十一日以内に、都道府県にあつては総務大臣、市町村にあつては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服がある者は、裁決のあつた日から二十一日以内に裁判所に出訴することができる。

⑥ 第一項の規定による決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。

地方自治法施行令第百二十一条の二 地方自治法第九十二条の二に規定する政令で定める額は、三百万円とする。

第126条から第128条までには法令上の見出しは付されていない。


2 趣旨・立法背景

2-1 議員の身分を失う事由の全体像

本節を読む前に、議員がどのような場合に身分を失うのかを整理しておくと、三か条の位置が見えやすい。

事由根拠性質
任期満了第93条第1項(任期4年)期間の経過
辞職第126条本人の意思と許可
被選挙権の喪失による失職第127条第1項前段法律上の効果
兼業禁止該当による失職第92条の2・第127条第1項前段法律上の効果
当選無効・選挙無効の確定公職選挙法各条・第128条争訟の結果
除名第135条第1項第4号懲罰
解職請求による失職第80条・第83条住民の直接請求
議会の解散第78条、地方公共団体の議会の解散に関する特例法議会の消滅
死亡—事実

このうち辞職と、被選挙権喪失・兼業禁止による失職、そして選挙争訟中の身分を本節が扱う。除名は第十節(懲罰)、解職請求は第五章(直接請求)が扱う。

2-2 第126条の趣旨

議員の職は本人が自由に投げ出せるものではない。選挙で選ばれた住民代表としての地位であり、議員が自己の意思だけで身分を失えるとすれば、議会の構成が議員個人の都合で左右され、審議に支障が生じるおそれがある。定数を欠けば定足数(第113条)に影響し、会議そのものが開けなくなる場合もある。

第126条が許可を要件としたのは、この点を踏まえたものである。議員が辞職を申し出ても、議会が許可しなければ身分は失われない。許可の判断において議会が考慮するのは、辞職を認めることが議会の運営に支障を生じないか、辞職の申出が真意に基づくものかといった点である。

もっとも、許可を拒めば議員を職に縛りつけることになる。健康上の理由や他の公職への就任など、辞職を認めないことが相当でない場合も現実には多い。実務では、本人の意思が確認できれば許可する運用が通例である。

2-3 閉会中の議長の許可

但し書は、閉会中については議長の許可で足りるとする。閉会中に辞職の申出があった場合、議会を招集して議決を得るまで辞職を認められないとすれば、本人にも議会にも不都合が生じる。臨時会の招集には手続と費用を要する。

同じ構造は第108条(議長及び副議長の辞職)にも置かれている。ただし第108条では、閉会中に議長の許可で辞職できるのは副議長に限られる。議長自身が閉会中に辞職するには議会の許可を要し、閉会中の辞職はできない。議長の許可を議長自身が行うことはできないという理由による。議員の辞職には、この制約がない。

2-4 第127条の趣旨

議員となるには被選挙権を有しなければならない(公職選挙法第10条第1項第3号・第5号、地方自治法第19条第1項)。被選挙権は立候補の要件であると同時に、議員の職にとどまるための要件でもある。就任後に被選挙権を失えば、議員であり続ける基礎を失う。

兼業禁止(第92条の2)は、議員が当該団体と請負関係に立つことを禁じる。議会は執行機関の契約を監視する立場にあり、その議員が契約の相手方となれば、監視が働かなくなる。議会の運営の公正と、行政事務執行の適正の確保を図る規定である。昭和31年の改正で新設された。

第127条第1項前段は、これらに該当するときは「その職を失う」と定める。後段は、該当するかどうかを議会が決定するとし、その議決には出席議員の3分の2以上の多数を要するとする。議員の身分を失わせる判断を議会自身に委ね、同時に特別多数の要件を課して軽々に行われないようにした構造である。

2-5 第128条の趣旨

選挙の効力や当選の効力が争われている間、当該議員の身分はどうなるのか。争訟が確定するまで身分がないものとすれば、後に争訟が退けられた場合に議員であった期間が空白になる。逆に、争訟が係属していることをもって直ちに失職するとすれば、争訟を提起するだけで議席を失わせられることになる。

第128条は、争訟が確定するまでは職を失わないとした。議会の構成を安定させ、同時に議員の地位も保全する規定である。確定した時点で、その内容に従って身分が決まる。当選無効または選挙無効が確定すれば、その時に職を失う。

2-6 改正の経過

第126条は昭和22年の制定時から文言が変わっていない。「但し」「得て」という表記が残るのはそのためである。

第127条は、昭和31年の第92条の2新設に伴って兼業禁止該当が失職事由に加えられ、平成23年の改正で特例一部事務組合が設けられたことに伴い、第287条の2第7項において準用する場合を含む旨の括弧書が加えられた。

第128条の括弧書は、平成6年の公職選挙法改正(連座制の強化)に伴う技術的な整備によるものである。同改正の附則により、第128条中「同法第二百十条」が「同法第二百十条第一項」に、「同条」が「同項」に改められた。連座による当選無効の訴訟について、検察官が訴訟を提起しなければならないとされる規定が第210条第1項に整理されたことに対応している。

第92条の2については、令和4年法律第101号(令和4年12月16日公布、令和5年3月1日施行)が「請負」の定義を条文上明らかにし、各会計年度において支払を受ける請負の対価の総額が政令で定める額を超えない者を規制の対象から除いた。この政令で定める額が、地方自治法施行令第121条の2の300万円である。個人による小規模な請負が兼業禁止に触れることをおそれて立候補をためらう事態への対応であり、議員のなり手不足をめぐる議論を背景とする。法人の役員等についてはこの金額基準が適用されない点に注意を要する。

令和7年から令和8年にかけての改正では、第126条から第128条までの条文は変更されていない。


3 文理解釈

3-1 「議会の許可を得て辞職することができる」(第126条本文)

辞職は、議員の申出と議会の許可という二つの行為が組み合わさって効力を生じる。どちらか一方では足りない。

申出の方式は条文に定めがなく、会議規則が定める。標準的な市議会会議規則は、議員が辞職しようとするときは議長に辞表を提出しなければならないとし、その辞表は議会に報告し、討論を用いないで会議に諮ってその許否を決めると定める。辞職の許否は議員個人の身上に関する事柄であり、議場で辞職の理由を論じることが適切でないため、討論を省く扱いになっている。

許可の議決は、第116条第1項の一般原則により出席議員の過半数で決する。第127条の資格決定のような特別多数の要件はない。

3-2 辞職の効力が生じる時期

辞職の効力は、許可があったときに生じる。辞職願を提出した時点でも、辞職の意向を表明した時点でもない。

辞職の日を将来の日と指定して申し出ることは可能であり、議会がこれを許可することもできる。ただしその場合、許可しただけで直ちに欠員が生じるわけではない。指定された日が到来して辞職の効力が生じ、欠員となる。議長や副議長の辞職について、期限を付けた辞職を許可しても直ちに次の選挙を行うことは認められず、辞職の効果として欠員が生じて初めて選挙の事由が発生すると解されているのと同じ理である。

欠員が生じたときは、選挙管理委員会への通知を経て補欠選挙の手続に入る。辞職の日が補欠選挙の期日に影響するため、辞職の効力発生日の管理は事務局の実務として軽くない。

3-3 辞職願の撤回

許可があるまでは辞職の効力が生じていないのであるから、それまでの間は撤回できるのが原則である。公務員の退職願について、最高裁判所第二小法廷判決昭和34年6月26日は、免職辞令が交付されるまでは原則として撤回でき、ただし撤回が信義に反すると認められる特段の事情がある場合には撤回は許されないと判断した。同判決は、退職願の提出が任免権者の勇退の要請に応じたものであったこと、撤回の動機が非難されるべき性質のものでなかったこと、撤回が遅滞なく行われ提出から一週間足らずであったこと、任免権者が本人の意思を尊重して対応すれば手続上の不都合は避けられた状況にあったことを挙げて、撤回を有効とした。

議員の辞職は任命権者による免職とは構造が異なるが、意思表示が相手方の行為によって効力を生じる点は共通する。議会または議長の許可があるまでは撤回でき、許可があった後は撤回できないと解するのが素直である。撤回の時期や理由によっては、信義に反する特段の事情が問題となる余地がある。

実務では、議会の日程が組まれ、議案として辞職の許可が上程される段階に至ってからの撤回は、議会の運営に支障を生じる。辞職願を受理した段階で本人の意思を確認し、撤回の可能性について確認しておくことが安全である。

令和8年9月、東京都議会議員の佐藤沙織里議員が議員辞職の意向を表明した後にこれを撤回し、その後に辞職願を提出して議長の許可を得たことが報じられた。意向の表明にとどまる段階では辞職願が提出されておらず、撤回の余地があった。辞職願の提出と許可という手続上の区切りが、報道された事例の中で機能したことになる。同議員の辞職に伴う千代田区選挙区の都議会議員補欠選挙は、同年10月23日告示、11月1日投開票で執行された。

3-4 「閉会中においては、議長の許可を得て」(第126条但し書)

但し書が適用されるのは閉会中である。会期中であれば、議長の許可では辞職の効力は生じない。

実務上の判断が難しいのは、定例会の閉会直前や直後に辞職の申出があった場合である。会期中に辞職願が提出され、その会期中に議決しなかった場合、閉会後に議長が許可することができるか。第119条により会期中に議決に至らなかった事件は後会に継続しないが、辞職の申出そのものは議案ではないため、閉会後は但し書により議長が許可できると解される。もっとも、会期中に申出があったのであれば、その会期中に議会に報告して許否を決するのが筋である。

閉会中に議長が許可した場合、標準的な会議規則は、議長はその旨を次の議会に報告しなければならないとする。議長が単独で行った判断を議会に明らかにする手続であり、怠ってはならない。

令和7年11月、滋賀県守山市議会では、議員から11月6日付で議長あてに辞職願が提出された後、辞職の取扱いに手続上の誤りがあったことが報じられ、同月28日の本会議で地方自治法第126条に基づき辞職が許可された。議会が開会中か閉会中かの判断、本会議の議決を要するか議長の許可で足りるかの判断は、誤れば辞職の効力そのものが争われる。短い条文であるが、適用の場面を正確に押さえる必要がある。

3-5 辞職勧告決議との区別

議会が議員に対して辞職を勧告する決議を可決することがある。不祥事が報じられた議員に対して行われる例が多い。

この決議に法的な効力はない。議員の身分を失わせるには、本人の辞職願と許可(第126条)、懲罰としての除名(第135条第1項第4号、議員の3分の2以上の出席とその4分の3以上の同意)、資格決定(第127条)、解職請求による住民投票(第80条・第83条)のいずれかを要する。辞職勧告決議はこれらのどれにも当たらない。議会の意思の表明にとどまり、議員がこれに従わなくても法的な不利益は生じない。

ただし政治的な影響は小さくない。北海道函館市議会では、令和元年に議員の兼業禁止該当が問題となった際、辞職勧告決議案が可決されたが、改選期であったため失職には至らなかったと記録されている。決議が可決されても身分に変動がない場合があることを示す例である。

3-6 「被選挙権を有しない者であるとき」「その職を失う」(第127条第1項前段)

被選挙権を有しない場合には、三つの態様がある。行政実例(昭和23年6月16日自発第397号)は、当初から被選挙権がない場合、当初だけ被選挙権がなかった場合、当初は被選挙権があったが後になくなった場合を挙げる。

当初から被選挙権がない場合とは、年齢要件や住所要件を欠いていた場合などである。この場合、そもそも当選が無効となるべき事由であり、選挙争訟の対象にもなる。当初だけ被選挙権がなかった場合とは、選挙の時点では要件を欠いていたが、その後に要件を満たすに至った場合である。後に失った場合とは、住所を区域外に移した場合、選挙犯罪により選挙権・被選挙権が停止された場合などである。

前段は「その職を失う」と定める。該当する事実があれば法律上当然に職を失うという書き方であり、議会の決定によって初めて失うという書き方ではない。したがって議会の決定は、該当するかどうかを確認し公に確定させる行為であると解される。もっとも、決定がなされるまで事実上議員として扱われ、決定の日をもって失職の取扱いがされるのが実務である。

国会法第113条が「議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない」と定めるのと、条文の組み立てが異なる。国会法は資格のないことが証明されるまで地位を失わないとし、地方自治法は該当するときは職を失うとする。この差は、後述する資格決定の処分性や、決定が取り消された場合の効果の理解に影響する。

3-7 議会が決定する場合と決定を要しない場合(第127条第1項後段)

後段は、被選挙権の有無および第92条の2の該当性を議会が決定するとしつつ、議員が公職選挙法第11条、第11条の2もしくは第252条または政治資金規正法第28条の規定に該当するため被選挙権を有しない場合を除くとする。

除外される場合は、いずれも選挙権・被選挙権の停止が法律上明確に定まる場合である。公職選挙法第11条は選挙権及び被選挙権を有しない者(禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者など)、第11条の2は公職にある間に犯した収賄罪等により刑に処せられた者の被選挙権の停止、第252条は選挙犯罪による選挙権及び被選挙権の停止、政治資金規正法第28条は同法違反による選挙権及び被選挙権の停止を定める。これらは刑の確定という客観的な事実によって効果が生じ、議会が判断する余地がない。

したがって議会が決定するのは、住所要件を満たすかどうか、年齢要件を満たしていたかどうか、そして兼業禁止に該当するかどうかである。実務で争われるのは、ほとんどが兼業禁止の該当性である。

兼業禁止の該当性の判断基準、特に「主として同一の行為をする法人」の意義については、第92条・第92条の2の解説で扱った。請負量が当該法人の業務量の半分を超える場合に該当し、半分以下でも業務の主要部分を占める場合を含むという最高裁判所判決昭和62年10月20日の考え方が、実務の基準として用いられている。

3-8 「出席議員の三分の二以上の多数」(第127条第1項後段)

資格決定は特別多数議決である。第116条第1項の過半数の原則によらない。

ここで問題となるのが議長の扱いである。第116条第2項は、議長は議員として議決に加わる権利を有しないと定めるが、これは同条第1項の場合、すなわち過半数で決する場合についての定めである。法律が特別多数を要求する場合には、議長も出席議員の一人として数えられ、表決に加わると解されている。遠賀町議会が平成28年に行った資格決定の広報においても、資格を失わせるには議長を含む出席議員の3分の2以上の賛成が必要である旨が説明されている。

特別多数議決を要する事項を整理すると、出席議員の3分の2以上の同意を要するものとして、事務所の位置を定める条例(第4条第3項)、秘密会(第115条第1項但し書)、議員の資格決定(第127条第1項)、一般的拒否権による再議(第176条第3項)があり、議員の3分の2以上の出席とその4分の3以上の同意を要するものとして、直接請求による副知事等の解職(第87条第1項)、除名(第135条第3項)、長の不信任議決(第178条第3項)がある。資格決定が前者に属し、除名が後者に属するという差は、昇任試験で問われやすい。

3-9 除斥の例外(第127条第2項)

第117条は、自己または一定の親族の一身上に関する事件については議事に参与することができないとし、議会の同意があったときに限り会議に出席し発言できるとする。自己の資格に関する決定は、まさに自己の一身上に関する事件である。

第127条第2項は、この場合について第117条にかかわらず、会議に出席して自己の資格に関し弁明することはできるが決定に加わることができないとする。議会の同意を要することなく弁明の機会が保障される点が、第117条但し書との違いである。自己の身分を失わせる決定について当事者に弁明させるのは、手続的な公正の基本であり、議会の同意にかからせるべきものではない。

弁明は権利として保障されるが、決定への参加は認められない。遠賀町議会の事例では、臨時会で資格決定要求書が提出された際に本人が弁明を行い、資格審査特別委員会に付託され、委員会でも質疑と弁明が行われ、本会議でも弁明、質疑、委員長報告を経て採決に至っている。弁明の機会を複数の段階で確保した運用である。

なお、第113条但し書は、第117条による除斥のため半数に達しないときは定足数の制限を受けないとする。資格決定における本人の不参加は第127条第2項によるものであって第117条による除斥ではないが、本人を除いた員数で会議が成立するかどうかは、定数の少ない町村議会では現実の問題となりうる。

3-10 第118条第5項及び第6項の準用(第127条第3項)

準用の内容は二つある。

第一に、決定に不服がある者は、決定があった日から21日以内に、都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服がある者は、裁決のあった日から21日以内に裁判所に出訴できる。議会の決定に対する不服の経路が法律で用意されている。期間はいずれも21日であり、短い。決定書の交付の日を起算日として管理する必要がある。

第二に、決定は文書によってし、理由を付けて本人に交付しなければならない。口頭で告げるだけでは足りない。理由の記載を欠いた決定書は、それ自体が違法となりうる。遠賀町議会の事例でも、本会議の採決後に資格決定書が交付されている。

資格決定は、議員の身分を失わせる行為であり、取消訴訟の対象となる処分として扱われている。地方議会の内部的な行為について司法審査が及ぶ範囲は限定されてきたが、身分の喪失に至るものは別である。最高裁判所大法廷判決昭和35年10月19日は除名処分を司法審査の対象としつつ出席停止を対象外とし、最高裁判所大法廷判決令和2年11月25日が後者を変更して出席停止の懲罰決議の適否も常に司法審査の対象になるとした。資格決定は身分の喪失をもたらすものであり、第127条第3項が出訴の経路を明示していることからも、司法審査が及ぶことに疑いはない。

3-11 第128条の射程と括弧書

第128条が身分を保全するのは、公職選挙法上の選挙争訟および当選争訟が係属している間である。条文が挙げる手続は次のとおりである。

公職選挙法の規定内容
第202条第1項市町村の選挙の効力に関する異議の申出(選挙管理委員会へ)
第202条第2項同じ件についての審査の申立て(都道府県選挙管理委員会へ)
第203条第1項選挙の効力に関する訴訟
第206条第1項市町村の当選の効力に関する異議の申出
第206条第2項同じ件についての審査の申立て
第207条第1項当選の効力に関する訴訟
第210条連座に基づく当選無効等の訴訟(検察官が提起)
第211条選挙運動の総括主宰者等の選挙犯罪に基づく当選無効等の訴訟

このうち第210条と第211条は、公職選挙法第251条の2および第251条の3の連座制を実現するための訴訟である。総括主宰者、出納責任者、地域主宰者、候補者の親族、秘書、組織的選挙運動管理者等が所定の選挙犯罪により刑に処せられた場合、候補者本人の当選が無効となり、同一選挙の同一選挙区における立候補が5年間禁止される。この効果を確定させるため、検察官が高等裁判所に訴訟を提起する。

括弧書は、第210条第1項の訴訟が提起されうる場合に、それが実際には提起されなかったとき、訴えまたは訴状を却下する裁判が確定したとき、訴訟が取り下げられたときの扱いを定める。この場合、身分が保全されるのは、それぞれ出訴期間が経過するまで、当該裁判が確定するまで、当該取下げが行われるまでの間である。訴訟が提起されないまま出訴期間が過ぎれば、連座による当選無効は生じないのであるから、保全の必要もなくなる。括弧書がないと、提起されなかった訴訟について「判決が確定するまで」という起点のない期間が残ってしまう。その穴を埋める規定である。

「その職を失わない」という定め方であるから、争訟が係属している間、議員は通常どおり議員としての職務を行う。議長や委員長に就くこともできる。争訟の結果として当選無効または選挙無効が確定したときに、その時点で職を失う。確定前に行った議会の議決が、後に当選無効が確定したことによって遡って無効になることはない。

なお、選挙や当選の効力は、法所定の争訟による場合を除き、原則として当然に無効となるものではない。最高裁判所第三小法廷決定平成29年12月19日が引用する判例の立場である。争訟の経路を用いなければ効力を争えないという原則が、第128条の前提にある。

3-12 特例一部事務組合における読替え

第127条第1項の括弧書は、第92条の2が第287条の2第7項において準用される場合を含むとする。

第287条の2第7項は、前編第六章第一節のうち第92条の2に限って特例一部事務組合の議会について準用し、同条中「普通地方公共団体の議会」を「特例一部事務組合の構成団体の議会」と読み替える。特例一部事務組合は、規約で定めるところによりその議会を構成団体の議会をもって組織することとした一部事務組合であり、固有の議会を持たない。

したがって、構成団体の議会の議員が当該特例一部事務組合に対して請負をする場合にも兼業禁止が及び、その該当性は構成団体の議会が第127条により決定する。組合に固有の議会がないため、兼業禁止の規律と資格決定の権限がいずれも構成団体の議会に集まる構造になる。


4 用語解説

辞職とは、議員が自己の意思に基づき、議会または議長の許可を得て身分を失うことをいう。

失職とは、法律に定める事由に該当したことにより議員が身分を失うことをいう。本人の意思にかかわらない。

被選挙権とは、公職の候補者となり、選挙により公職に就くことができる資格をいう。都道府県および市町村の議会の議員については、当該団体の議会の議員の選挙権を有する満25年以上の者が有する(地方自治法第19条第1項)。

資格決定とは、議員が被選挙権を有しない者であるかどうか、または第92条の2に該当するかどうかを議会が決定することをいう。出席議員の3分の2以上の多数を要する。

資格決定の要求とは、議会の決定を求めようとする議員が、要求の理由を記載した要求書を証拠書類とともに議長に提出することをいう。会議規則が定める。

兼業禁止とは、議員が当該団体に対し請負をする者等となることを禁じる規律をいう(第92条の2)。兼職禁止(第92条)とは別の規律である。

請負とは、業として行う工事の完成もしくは作業その他の役務の給付または物件の納入その他の取引で、当該団体が対価の支払をすべきものをいう。令和4年改正で条文上定義された。

主として同一の行為をする法人とは、当該団体に対する請負が当該法人の業務の主要部分を占め、当該請負の重要度が職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いと認められる程度に至っている場合の当該法人をいう。

辞職勧告決議とは、議会が議員に対し辞職を勧告する旨の意思を表明する決議をいう。法的な効力はない。

選挙の効力に関する争訟(選挙争訟)とは、選挙の手続に瑕疵があることを理由として選挙全部または一部の無効を求める争訟をいう。当選の効力に関する争訟(当選争訟)とは、特定の者の当選の効力を争う争訟をいう。

連座制とは、候補者と一定の関係にある者が選挙犯罪により刑に処せられた場合に、候補者本人の当選を無効とし、一定期間の立候補を禁止する制度をいう(公職選挙法第251条の2・第251条の3)。


5 判例・裁判例

5-1 退職願の撤回を認めた最判昭和34年6月26日

最高裁判所第二小法廷判決昭和34年6月26日(解職処分取消請求事件)は、公務員の退職願について、免職辞令が交付されるまでは原則として撤回でき、辞令交付前でも撤回が信義に反すると認められる特段の事情がある場合には撤回は許されないと判断した。

本件は教育公務員の事案であり、退職願の提出が本人の都合によるものではなく、任免権者が55歳以上の職員に勇退を求めたことに応じたものであった。撤回の動機も、残留者がいると聞いたことによるもので、非難されるべき性質のものではなかった。撤回は聞知後遅滞なく行われ、提出から一週間足らずであった。任免権者が本人の意思を尊重して対応すれば手続上の不都合は避けられる状況にもあった。これらを総合して、撤回を有効とした。

議員の辞職について正面から判断した最高裁判例はないが、許可があるまで効力が生じないという構造は共通する。撤回の可否を判断する際の枠組みとして参照される。

5-2 資格決定と補欠選挙をめぐる最決平成29年12月19日

最高裁判所第三小法廷決定平成29年12月19日(平成29年(行フ)第3号)は、北海道留寿都村議会議員の資格決定に関するものである。

事案は次のとおりである。当該議員は建設業を営む有限会社の唯一の株主で代表取締役であった。村議会は平成28年7月14日、第92条の2に該当するとして資格決定を行った。議員は北海道知事に不服を申し立てたが同年10月28日に棄却され、同年11月16日に失職処分の取消訴訟を提起し、平成29年3月3日に執行停止を申し立てた。一方、選挙管理委員会は平成28年12月22日に補欠選挙の実施を決定し、平成29年3月21日に告示、26日に投開票した。当該議員は立候補せず、他の者が当選し、異議申出期間内に異議はなかった。札幌地方裁判所は投票日の3日前に失職処分の効力を停止する決定をし、札幌高等裁判所は村の抗告を棄却した。

最高裁判所は原決定を破棄し、執行停止の申立てを却下すべきものとした。選挙および当選の効力は法所定の争訟による場合を除き原則として当然無効にはならず、当該議員は異議の申出ができたのにしなかったため補欠選挙と当選の効力をもはや争えない。したがって資格決定の取消判決を得ても議員の地位を回復することはできず、取消訴訟の利益は議員報酬の請求のために残るものの、執行停止を求める利益はないと判断した。岡部裁判官と木内裁判官は反対意見を述べている。

判示事項は「村議会の議員である者につき地方自治法九二条の二の規定に該当する旨の決定がされ、その補欠選挙が行われた場合において、上記の者が上記決定の取消判決を得ても上記議員の地位を回復することはできないとされた事例」である。

この決定が示すのは、資格決定に不服があっても、取消訴訟だけを進めている間に補欠選挙が執行されてしまえば議席の回復が困難になるという手続の構造である。取消訴訟の提起は処分の効力を妨げない(行政事件訴訟法第25条第1項)ため、審理と並行して補欠選挙の手続が進む。資格決定を受けた側は、取消訴訟や執行停止だけでなく、補欠選挙そのものに対する異議の申出も視野に入れる必要がある。議会事務局および選挙管理委員会の側から見れば、資格決定後に補欠選挙の手続をどう進めるかが、後の紛争の帰趨を左右する。

5-3 兼業禁止の判断基準に関する判例

「主として同一の行為をする法人」の意義について、最高裁判所判決昭和62年10月20日は、請負量が当該法人の業務量の半分を超えるかを基準とし、半分以下でも業務の主要部分を占める場合を含めるとした。長の兼業禁止(第142条)に関する事案であるが、同一の文言を用いる第92条の2の解釈にも用いられている。

実務で用いられている割合の目安は、この判例に由来する。北海道函館市議会の議会運営委員会が令和元年に行った調査報告は、最高裁判例として50パーセントを超える場合は該当するという考え方を示し、東京高等裁判所の判例では45.61パーセントでも該当するとされた例があるとしている。

5-4 司法審査が及ぶ範囲

最高裁判所大法廷判決昭和35年10月19日は、議員の除名処分は司法審査の対象となるが、それ以外の懲罰は議会の性質上対象外であるとした。最高裁判所大法廷判決令和2年11月25日(宮城県岩沼市議会の事案)はこれを変更し、出席停止の懲罰決議の適否は常に司法審査の対象になるとした。出席停止となると議員の中核的な活動ができなくなるため、議会の自主的な判断に委ねるべきものとはいえないという理由である。

資格決定は議員の身分を失わせる行為であり、昭和35年判決の枠組みのもとでも司法審査の対象とされてきた。第127条第3項が審査申立てと出訴の経路を定めていることも、これを裏づける。


6 実務事例

6-1 兼業禁止該当事例の全国調査

総務省「地方自治月報」第59号に掲載された「議員の兼業禁止規定の該当事例に関する調」(平成28年4月1日から平成30年3月31日まで)によれば、都道府県分は該当事例なし、市町村分は7団体で計8件の議会決定があり、うち5件が兼業禁止規定に該当、3件が非該当と決定されている。

該当とされた事例の概要は次のとおりである。

団体該当とされた理由その後の経過
北海道留寿都村議員が代表を務める会社の売上げのうち村からの公共事業受注分が約79パーセントを超え、「主として同一の行為をする法人」に当たるとされた審査申立て(平成28年7月29日)→棄却(同年10月28日)。札幌地裁へ出訴(同年11月16日)後、平成30年4月16日に取下げ。別途の申立ては最高裁が平成29年12月19日に却下
岩手県宮古市(2件)議員が取締役を務める会社が「主として同一の行為をする法人」に当たるとされた2件とも審査申立て後に棄却。出訴なし
高知県馬路村議員就任前から継続していた村との土地賃貸借契約が請負に当たるとされた審査申立て・出訴なし
熊本県熊本市議員が代表理事を務める漁協の市からの請負比率(再委託分を含む場合)が高く、「主として同一の行為をする法人」に当たるとされた審査申立て(平成30年4月10日)→処分取消し(同年7月11日)。出訴なし

非該当とされた事例は、埼玉県毛呂山町(区長の職務に営利性がなく町に対する請負にも当たらない)、新潟県見附市(議員の会社は市と直接請負契約を結んでいない)、岡山県赤磐市(指定管理者の指定は契約でなく、取引割合50パーセント未満の組合役員就任も請負に当たらない)である。

熊本市の事例で審査申立てを受けて処分が取り消されている点は見落とせない。議会が3分の2以上で決定しても、審査庁の判断で覆ることがある。請負比率の算定において再委託分を含めるかどうかの判断が結論を分けた事案であり、算定方法を議会として整理しておく必要を示している。

馬路村の事例では、失職した議員が平成30年4月8日の補欠選挙で当選したことが村の広報に記載されている。資格決定の対象となった事由が解消されていれば、再び立候補し当選することを妨げる規定はない。資格決定が議員個人に対する制裁ではなく、兼業関係の解消を促す規律であることが、この結果に表れている。

6-2 資格決定手続の実際——福岡県遠賀町の事例

遠賀町議会が平成28年に行った資格決定は、手続の流れを追えるかたちで広報に記録されている。

2月19日の臨時会で、3人の議員から当該議員に対する資格決定要求書が提出された。本人が弁明を行い、資格審査特別委員会に付託された。要求の対象となった事実は、当該議員が町内の電気工事会社の会長を務め、同社が町から請負工事を受注しており、その請負額が前年度売上高の約81パーセントに達していたという点である。本人は取締役を辞任していたが、委員会は実質的な影響力が残っていると判断した。同社が同族会社であり、議員当選後も会長の肩書を使っていたことも理由とされた。小学校の太陽光発電システム設置工事の入札に参加し契約を結んでいた事実も挙げられている。

委員会の審査は、2月26日に被要求議員への質疑と弁明、3月3日に副町長と商工会事務局長からの参考人聴取、3月9日に学校教育課長と行政経営課長からの参考人聴取を経て、3月17日に全員一致で「議員資格なし」と決定した。3月18日の本会議で、本人の弁明、質疑、委員長報告を経て採決が行われ、賛成多数で「議員資格なし」と決定され、資格決定書が交付された。

この経過から読み取れる実務上の要点は三つある。第一に、資格決定の端緒は議員からの要求書であり、議長が職権で付議するものではない。第二に、特別委員会を設けて参考人からの事情聴取を行うなど、事実認定のための手続が組まれている。第三に、委員会段階と本会議段階の双方で本人の弁明の機会が設けられている。第127条第2項が保障する弁明権を形式的なものに終わらせない運用である。

6-3 公職選挙法第104条との交錯

兼業禁止は、議員となった後の規律であると同時に、当選人の段階でも働く。公職選挙法第104条は、地方公共団体の議会の議員または長の選挙における当選人で、当該団体に対し地方自治法第92条の2または第142条に規定する関係を有する者は、当選の告知を受けた日から5日以内にその関係を有しなくなった旨を選挙管理委員会に届け出なければ当選を失うと定める。

兼業関係があるまま当選した場合、5日以内の届出がなければ当選を失う。当選を失うのであって、議員の職を失うのではない。議員となった後に兼業関係が生じた場合が第127条の資格決定の領域である。

この二つの経路の境目が、実務で混乱を生むことがある。沖縄県宮古島市議会では、平成27年に議員の兼業禁止該当が問題となった際、当該議員が公職選挙法第104条の届出をしていなかったことが争点となった。公職選挙法には5日を過ぎて事実が後日判明した場合の定めがないため、選挙管理委員会が適用の判断に苦慮したと報じられている。

届出の期限を過ぎてから兼業関係が判明した場合、当選の失効を争う経路は当選争訟(公職選挙法第206条・第207条)であり、その期間も既に過ぎていることが多い。結果として、議会による資格決定(第127条)が残された手段となる。選挙管理委員会と議会事務局のいずれが所管するのかが曖昧になりやすい領域であり、兼業関係の有無の確認は当選の告知の段階で行っておくことが望ましい。

6-4 請負割合の算定方法——北海道函館市の事例

函館市議会の議会運営委員会が令和元年に行った調査報告は、請負割合の算定方法を具体的に示している。

事案は、市が昭和53年度から市ラグビーフットボール協会に根崎公園ラグビー場の維持管理業務を委託していたところ、平成31年4月上旬に教育委員会が契約事務の過程で協会会長が議員であることに気づいたというものである。顧問弁護士への確認を経て同年度は契約しないこととし、議会事務局に報告された。議長は抵触のおそれがないとは言えないと判断し、7月10日に議会運営委員会へ調査を諮問した。7月10日から9月10日まで6回の委員会が開かれ、8月29日に対象議員からの聴取も行われた。

委員会は、委託料を「総収入から前期繰越金を除いた額」で割って請負割合を算出した。結果は平成26年度52.68パーセント、平成27年度51.70パーセント、平成28年度55.02パーセント、平成29年度49.47パーセント、平成30年度47.98パーセント、5年平均51.25パーセントであった。

委員会は、本件契約が請負に当たること、協会が権利能力なき社団としての実態を備えていること、会長・副会長が「取締役等に準ずべき者」に当たること、本件業務が協会の主要部分を占めるため協会が「主として同一の行為をする法人」に当たることを認め、前任期および前々任期の両方で兼業禁止規定に抵触していたと結論づけた。副会長を平成24年度から務めていたことから、平成27年の当選時にも公職選挙法第104条に違反していたとしている。

当該議員は、協会に多数決の規定がないため権利能力なき社団ではないこと、会長は代表的な役割にとどまること、協会はボランティア活動が多く営利団体ではないことなどを主張したが、委員会はこれらを退けた。

算定の分母を何とするか、権利能力なき社団を法人に含めるか、無報酬の役職を「取締役等に準ずべき者」に当たるとするか。いずれも条文の文言からは一義的に決まらない論点であり、委員会が顧問弁護士の助言と参考人聴取を経て判断を積み上げている。この事案では辞職勧告決議案が可決されたものの、改選期であったため失職には至っていない。


7 施行令・施行規則の関連規定

7-1 施行令第121条の2——兼業禁止の金額基準

本節に関して地方自治法施行令が置く唯一の規定は、第121条の2である。地方自治法第92条の2に規定する政令で定める額を300万円とする。

この規定は、令和4年法律第101号の施行に伴い、同法の施行日である令和5年3月1日に公布・施行された政令によって設けられた。総務省が公表した改正政令案の概要は、改正法により会計年度ごとの請負対価の総額が政令で定める額を超えない議員個人が請負規制の対象から外されることになったとし、本政令案はこの額を定めるものであるとしている。300万円という金額の算定根拠は示されておらず、「議会の適正な運営の確保のための環境の整備」を図る観点から定めるという趣旨が述べられるにとどまる。

この基準が適用されるのは、議員個人が請負をする場合およびその支配人である場合に限られる。「主として同一の行為をする法人」の役員等である場合には金額基準が適用されない。小規模な個人請負は許容されるが、法人を通じた関与については従前の判断基準が維持されたことになる。資格決定の要求を受けた議会は、問題となっているのが個人の請負か法人の役員等の地位かを最初に切り分ける必要がある。

なお、改正法の附則第2条により、施行前に改正前の規定による請負をしていた者やその支配人については、なお従前の例によるとされている。

7-2 辞職および資格決定の手続に関する政省令の規定はない

地方自治法施行令および地方自治法施行規則を全文検索したところ、「辞職」「被選挙権」の語はいずれも一度も現れない。「資格」は施行令に20か所あるが、いずれも競争入札の参加者の資格または包括外部監査契約の相手方の資格に関するものであり、議員の資格とは無関係である。

辞職願の様式、辞職の許可の方式、資格決定の要求書の様式、資格決定書の様式は、政令にも省令にも定めがない。直接請求の各種書類について施行規則が別記様式を定めているのと対照的である。

なお、施行令にも第126条から第128条までと同じ番号の条文が存在するが、内容は議員の解職請求に関する規定であって、本節とは無関係である。施行令第126条から第128条までを参照しても本節の手当ては見つからない。番号の一致に引きずられないよう注意を要する。

7-3 会議規則が定める手続

政省令が空白である代わりに、手続を定めるのは各議会の会議規則である。標準的な市議会会議規則は、第十一章「辞職及び資格の決定」に次の規定を置く(条番号は議会により異なる)。

会議規則の規定内容
議長及び副議長の辞職議長が辞職しようとするときは副議長に、副議長が辞職しようとするときは議長に辞表を提出する。辞表は議会に報告し、討論を用いないで会議に諮ってその許否を決める。閉会中に副議長の辞職を許可した場合は、議長はその旨を次の議会に報告する
議員の辞職議員が辞職しようとするときは議長に辞表を提出する。前条第2項および第3項の規定を準用する(討論を用いない採決、閉会中の許可の次の議会への報告)
資格決定の要求法第127条第1項の規定により議会の決定を求めようとする議員は、要求の理由を記載した要求書を、証拠書類とともに議長に提出する

辞職願の提出先が議長であること、許否の採決に討論を用いないこと、閉会中の許可を次の議会に報告すべきこと、資格決定の端緒が議員の要求書であり証拠書類の添付を要すること。これらはいずれも法律に書かれていない。会議規則を確認せずに手続を進めることはできない。


8 実務上の処理手順

8-1 辞職願を受けたとき

辞職願が議長に提出されたら、まず議会が開会中か閉会中かを確認する。この判断が許可の主体を決める。開会中であれば本会議の議決、閉会中であれば議長の許可である。

次に、本人の意思を確認する。辞職の理由、辞職を希望する日、撤回の意思がないことを確認しておく。将来の日を指定した辞職願であれば、その日に辞職の効力が生じ欠員となることを前提に、補欠選挙の見込みを選挙管理委員会と共有する。

開会中であれば、辞表を議会に報告し、討論を用いないで会議に諮って許否を決める。出席議員の過半数で決する。本人は自己の一身上に関する事件の当事者であるが、第127条第2項のような明文の規定はないため、第117条の除斥の適用が問題となる。実務では本人が議場を退席する扱いが一般的である。

許可の議決を経たら、議事日程と会議録に記録し、選挙管理委員会に欠員を通知する。

8-2 閉会中に辞職の申出があったとき

議長が許可する。許可書の交付または通知により辞職の効力発生日を明確にする。

許可した後、次の議会にその旨を報告する。報告を忘れると、議会として辞職の事実を確認する機会が失われる。

閉会中の判断は議長一人で行うため、判断の誤りが後に発覚しやすい。会期の終了日と辞職願の提出日を突き合わせ、開会中であれば本会議の議決を待つ。会期の末日に辞職願が提出された場合など、判断が微妙な場合は、その会期中に議会に報告して許否を決するのが安全である。

8-3 資格決定の要求を受けたとき

要求書に理由の記載と証拠書類の添付があるかを確認する。要求者は議員である。住民からの申出や執行機関からの報告は、要求書の形をとらない限り資格決定の端緒とはならない。もっとも、執行機関が契約事務の過程で兼業関係に気づき議会事務局に報告した函館市の事例のように、情報が執行機関から届くことはある。その場合、議長が議会運営委員会に調査を諮問するなど、要求書の提出に先立つ調査が行われることがある。

対象となっている事由が、議会が決定すべきものかを確認する。公職選挙法第11条、第11条の2、第252条または政治資金規正法第28条による被選挙権の停止であれば、議会の決定を要しない。刑の確定により当然に失職する。

兼業禁止の該当性であれば、個人の請負か法人の役員等の地位かを切り分ける。個人の請負であれば、各会計年度において支払を受ける対価の総額が300万円を超えるかを確認する。法人の役員等であれば、金額基準は適用されず、当該団体に対する請負が当該法人の業務の主要部分を占めるかを判断する。請負割合の算定における分母の取り方、再委託分の扱い、権利能力なき社団の扱いは結論を左右するため、顧問弁護士の助言を得ることが望ましい。

特別委員会を設けて審査する場合、参考人からの事情聴取、関係書類の提出要求を行う。本人の弁明の機会を委員会段階でも確保する。

8-4 決定を行うとき

本会議で本人の弁明を聴き、質疑を行い、委員長報告を経て採決する。本人は決定に加わることができない。

議決は出席議員の3分の2以上の多数による。議長も出席議員の一人として数え、表決に加わる。賛否の数と出席議員数を会議録に正確に記録する。3分の2の算定を誤れば決定そのものが無効となりうる。

決定は文書によってし、理由を付けて本人に交付する。理由は、該当すると判断した事実と適用した条文を具体的に記載する。交付の日を記録する。審査申立ての期間(21日)の起算日となる。

資格なしとの決定をしたときは、選挙管理委員会に欠員を通知する。資格ありとの決定をしたときは、その旨を会議録に記録する。

8-5 選挙争訟が係属しているとき

議員の当選または選挙の効力について異議の申出、審査の申立て、訴訟が係属している間は、当該議員は職を失わない。通常どおり職務を行い、議長や委員長に就くこともできる。

決定、裁決または判決が確定したら、その内容を確認する。当選無効または選挙無効が確定すれば、その時点で職を失う。確定の日を記録し、選挙管理委員会に欠員を通知する。

連座に関する公職選挙法第210条第1項の訴訟が提起されうる場合で、出訴期間内に提起されなかったときは、出訴期間の経過により身分の保全が終わる。出訴期間を把握しておく必要がある。

争訟が係属している間に当該議員が参加して行われた議決は、後に当選無効が確定しても遡って無効にはならない。確定前の議決の効力を心配して審議を止める必要はない。


9 昇任試験で問われる論点

第126条では、辞職には議会の許可を要すること、閉会中は議長の許可で足りること、許可があったときに辞職の効力が生じることを押さえる。第108条との対照、すなわち議長は閉会中に議長の許可で辞職することができず議会の許可を要する点を書き分けられると差がつく。

辞職と辞職勧告決議の違いも問われやすい。議員の身分を失わせる手段は、辞職の許可(第126条)、除名(第135条)、資格決定(第127条)、解職請求による住民投票(第80条・第83条)に限られ、辞職勧告決議には法的効力がない。

第127条では、失職事由が被選挙権の喪失と兼業禁止該当の二つであること、議会が決定するものと決定を要しないものの区別、出席議員の3分の2以上の多数という議決要件、本人が弁明できるが決定に加わることができないこと、決定に不服がある場合の経路(都道府県は総務大臣、市町村は都道府県知事に21日以内に審査申立て、裁決から21日以内に出訴)を整理する。

特別多数議決の体系を問う設問では、出席議員の3分の2以上を要するもの(事務所の位置の条例、秘密会、資格決定、一般的拒否権による再議)と、議員の3分の2以上の出席およびその4分の3以上の同意を要するもの(直接請求による副知事等の解職、除名、長の不信任議決)を区別して挙げる。議長が特別多数議決では出席議員に数えられ表決に加わる点も、第116条第2項の適用範囲の理解を示す材料になる。

第128条では、争訟が係属している間は職を失わないこと、確定した時点で身分が決まることを押さえる。公職選挙法の条文番号を網羅して覚える必要はないが、選挙争訟(選挙全部または一部の無効を求めるもの)と当選争訟(特定の者の当選を争うもの)の区別と、連座に関する訴訟が含まれていることは整理しておきたい。

論文では、議員の身分の得喪を体系的に整理させる設問が考えられる。任期満了、辞職、失職、除名、解職、解散という事由を、本人の意思によるか否か、議会の議決を要するか否か、住民の意思が介在するか否かという軸で整理すると、制度の設計が見える。第126条の辞職が本人の意思と議会の判断の組合せ、第127条の資格決定が法律上の要件と議会の確認の組合せ、第80条の解職請求が住民の意思によるもの、第135条の除名が議会の懲罰権によるものという整理である。

兼業禁止については、令和4年改正による規制の緩和を、議員のなり手不足への対応という文脈に置いて論じられると説得力が増す。個人の請負について300万円の基準が設けられた一方、法人の役員等については基準が設けられなかったことの意味も問われうる。


10 国の制度との簡単な対比

国会法第107条は「各議院は、その議員の辞職を許可することができる。但し、閉会中は、議長においてこれを許可することができる」と定める。地方自治法第126条とほぼ同一の構造である。許可を要することも、閉会中は議長が許可できることも共通する。

資格については差がある。国会法第109条は、各議院の議員が法律に定めた被選の資格を失ったときは退職者となると定めるのみで、議院の議決を要しない。これに対し地方自治法第127条第1項は、被選挙権の有無を議会が決定するとし、出席議員の3分の2以上の多数を要求する。国会では被選の資格の喪失が当然の退職事由とされ、地方議会では議会の決定を介在させる構造になっている。

資格争訟の手続についても違いがある。国会法第111条は、議員の資格につき争訟があるときは委員会の審査を経た後これを議決するとし、争訟はその院の議員から文書で議長に提起しなければならないとする。地方自治法には委員会の審査を要する旨の規定がなく、要求書の提出も会議規則が定める。国会法第112条は資格争訟を提起された議員が2人以内の弁護人を依頼でき、うち1人の費用は国費で支弁するとするが、地方自治法に対応する規定はない。

国会法第113条は「議員は、その資格のないことが証明されるまで、議院において議員としての地位及び権能を失わない。但し、自己の資格争訟に関する会議において弁明はできるが、その表決に加わることができない」と定める。但し書は地方自治法第127条第2項とほぼ同じである。本文は、資格のないことが証明されるまで地位を失わないとする点で、該当するときは職を失うとする地方自治法第127条第1項前段と組み立てが異なる。

憲法第55条は「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする」と定める。議席を失わせるのに出席議員の3分の2以上を要するという点は、地方自治法第127条第1項の議決要件と一致する。国会については議院の自律権として憲法が裁判権を与えたのに対し、地方議会の資格決定には第127条第3項により審査申立てと出訴の経路が用意されている。司法審査が及ぶかどうかが、両者の決定的な違いである。

地方公務員法との対比では、失職の仕組みが対照的である。地方公務員法第16条の欠格条項に該当するに至った職員は、同法第28条第4項により、条例に特別の定めがある場合を除き、その職を失う。任命権者の処分を要せず、議決も要しない。議員については第127条が議会の決定を介在させる。議員が選挙で選ばれた住民代表であり、その身分を失わせる判断を議会の自律に委ねるという考え方の違いが、手続の差として表れている。

職員の退職(辞職)についても、任命権者の承認を要するという構造は議員の辞職と共通する。ただし職員の場合は任命権者という単独の機関の判断であり、議員の場合は議会という合議体の議決または議長の許可である。辞職願の撤回について、最高裁判所判決昭和34年6月26日が職員の事案で示した枠組みが議員の場合にも参照されるのは、両者の構造が共通するためである。


11 参考資料


◆自治体研修850回超の行政書士が、係長・課長昇任試験の論文を1本から添削します。 https://compliance21.com/promotion-examination-lg/

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