条文原文

第二十六条の二(修学部分休業)

任命権者は、職員(臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員を除く。以下この条及び次条において同じ。)が申請した場合において、公務の運営に支障がなく、かつ、当該職員の公務に関する能力の向上に資すると認めるときは、条例で定めるところにより、当該職員が、大学その他の条例で定める教育施設における修学のため、当該修学に必要と認められる期間として条例で定める期間中、一週間の勤務時間の一部について勤務しないこと(以下この条において「修学部分休業」という。)を承認することができる。

2 前項の規定による承認は、修学部分休業をしている職員が休職又は停職の処分を受けた場合には、その効力を失う。

3 職員が第一項の規定による承認を受けて勤務しない場合には、条例で定めるところにより、減額して給与を支給するものとする。

4 前三項に定めるもののほか、修学部分休業に関し必要な事項は、条例で定める。

第二十六条の三(高齢者部分休業)

任命権者は、高年齢として条例で定める年齢に達した職員が申請した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、条例で定めるところにより、当該職員が当該条例で定める年齢に達した日以後の日で当該申請において示した日から当該職員に係る定年退職日(第二十八条の六第一項に規定する定年退職日をいう。)までの期間中、一週間の勤務時間の一部について勤務しないこと(次項において「高齢者部分休業」という。)を承認することができる。

2 前条第二項から第四項までの規定は、高齢者部分休業について準用する。


趣旨・立法背景

修学部分休業(第26条の2)の立法経緯

修学部分休業制度は、平成12年(2000年)の地方公務員法改正(平成12年法律第25号)により新設された。地方分権推進の観点から、職員の自己啓発・能力開発を促進するとともに、職員が大学院等で専門知識を修得することを公務の効率化に結びつける目的で設けられた制度である。

背景には、1990年代後半から顕在化した行政課題の複雑化がある。地方自治体が担う福祉、環境、情報政策などの領域で高度な専門知識を持つ職員の育成が急務となり、在職中に大学院等で学び直す機会を制度的に担保する必要性が認識された。

国家公務員では、自己啓発等休業(国家公務員法第26条の5)として類似の制度が存在するが、修学部分休業のような「週の一部のみ休業」という設計は地方公務員制度に固有の仕組みとして整備された。

高齢者部分休業(第26条の3)の立法経緯

高齢者部分休業制度は、令和3年(2021年)の地方公務員法改正(令和3年法律第63号)により新設された。同改正は定年を段階的に65歳へ引き上げる措置(第28条の2以下)を中心とするが、定年延長に伴い高齢職員が段階的に勤務を縮小しながら退職に向けて移行できる仕組みとして位置づけられた。

定年引上げ後の職員は、60歳到達後に給与が原則7割水準に低減される(第25条第3項の規定に基づく給料表適用の特例)。この給与水準の変化に加え、体力・生活設計の個人差に配慮し、本人の申請により勤務時間の一部について勤務しない選択肢を与えたものである。

同改正は段階的に施行され、令和5年(2023年)4月1日から定年が順次引き上げられており、令和13年(2031年)4月1日に65歳定年が完成する。高齢者部分休業の制度は、この定年引上げスケジュールと連動して実効的に機能する設計となっている。


用語解説

「任命権者」

職員を任命する権限を持つ機関。地方公務員法第6条第1項は、普通地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会等が各所掌職員についての任命権を持つと規定する。修学部分休業・高齢者部分休業の承認権限もこれら任命権者にある。実務上は人事担当部局が補助執行するが、処分の名義は任命権者となる。

「臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員を除く」

両制度の対象外となる職員類型を列挙した括弧書きである。除外される理由は、これらの職員が継続的・安定的な勤務関係にないことにある。

臨時的任用は地方公務員法第22条の3に規定される。任期付職員は地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律(平成14年法律第48号)等による。非常勤職員は同法第22条の2に定める会計年度任用職員等が含まれる。

正規職員(正式任用を受けた職員)のみを対象とすることで、制度の安定的な運用を図っている。

「公務の運営に支障がない」

承認要件の一つ。当該職員が週の一部の時間を勤務しないことが、担当業務・所属組織の業務継続に実質的な障害をもたらさないことを意味する。「支障」の認定は任命権者の裁量に委ねられており、定型的な基準は法定されていない。各自治体の条例・規則または運用指針が判断基準を示す場合がある。

「当該職員の公務に関する能力の向上に資する」(修学部分休業のみ)

修学部分休業固有の要件。「公務の運営に支障がない」に加えてこの要件を満たす必要がある。高齢者部分休業にはこの要件は課されていない。修学内容が現在または将来の職務に関連する能力の向上につながるか否かの判断も任命権者の裁量による。なお、純粋に個人的な趣味・資格取得でも当該職員の職務関連性が認められれば足りると解されるが、全く業務と無関係な修学については承認が困難な場合がある。

「大学その他の条例で定める教育施設」

修学部分休業の対象となる教育施設は法律上「大学」を例示し、それ以外を条例に委任している。学校教育法上の大学(学部・大学院を含む)のほか、専修学校の専門課程、各種学校等を条例で加えることができる。

例えば、東京都の条例では専修学校の専門課程も対象としている(東京都職員の修学部分休業に関する条例)。

「一週間の勤務時間の一部」

週の所定勤務時間のうち一部のみを休業とする趣旨であり、全日の休業は対象外である。休業できる時間数の上限は条例で定められる。「一部」という設計により、職員は同一週内に勤務と修学を並行させることが前提となっている。

「高年齢として条例で定める年齢」(高齢者部分休業)

法律上は具体的な年齢を明示せず、条例に委任している。多くの自治体では60歳を条例で定めている。これは定年延長の段階的実施と連動しており、現職員の60歳到達後の給与水準低減(いわゆる「7割措置」)の適用時期と対応関係にある。

「定年退職日」

第28条の6第1項に規定される定年退職日。段階的定年引上げに伴い、職員ごとの定年退職日は生年月日により異なる。高齢者部分休業の承認期間の上限はこの定年退職日までとなる。

「承認の失効」(第26条の2第2項・第26条の3第2項による準用)

休職または停職の処分を受けた場合に修学部分休業・高齢者部分休業の承認が当然に失効する旨の規定。「その効力を失う」という文言は自動失効を意味し、任命権者による取消処分を要しない。停職は懲戒処分(第29条)の一種であり、休職は分限処分(第28条)による。いずれの場合も、当然に全日勤務義務がある状態に戻るわけでなく、休職・停職の効力が優先される。

「減額して給与を支給」(第26条の2第3項・第26条の3第2項による準用)

勤務しない時間に対応する給与を減額する趣旨。無給ではなく、あくまで勤務時間に応じた減額であり、勤務した時間に対応する給与は全額支給される。減額の具体的な計算方式は各自治体の条例で定められる。


制度の構造

修学部分休業の要件と手続

修学部分休業が承認されるためには、以下の要件を同時に満たす必要がある。

第一に、対象職員であること(正式任用を受けた常勤職員)。第二に、職員本人からの申請があること(職権による発動は認められない)。第三に、公務の運営に支障がないこと。第四に、当該修学が公務に関する能力の向上に資すること。第五に、修学先が「大学その他の条例で定める教育施設」であること。

承認は条例で定めるところによる。条例には、承認の手続、承認できる期間の上限、申請時期等を定めることが想定されている。

高齢者部分休業の要件と手続

高齢者部分休業では修学部分休業の「能力向上要件」が課されない。高齢職員の生活設計・健康管理上の必要性に応じた仕組みであることが反映されている。要件は、条例で定める高年齢に達した職員からの申請と、公務の運営に支障がないことの二点である。

承認可能な開始日は「条例で定める年齢に達した日以後の日で申請において示した日」であり、任命権者が独自に開始日を設定することはできない。申請に示した日以降の開始となる。


給与の取扱い

修学部分休業・高齢者部分休業の期間中は、「条例で定めるところにより、減額して給与を支給する」(第26条の2第3項、第26条の3第2項による準用)。

国家公務員の自己啓発等休業(国家公務員法第26条の5)と異なり、勤務しない時間に対応する給与は不支給ではなく「減額支給」である。これは部分休業という制度設計(全勤務日のうち一部の時間のみを対象とする)と整合的である。

多くの自治体条例では、減額額を「給料の月額を一月の勤務時間数で除した額に、修学部分休業の時間数を乗じた額」として計算している。諸手当の扱いも条例で定める。

退職手当・共済年金の算定に関しては、部分休業期間中の勤務の実態に応じて扱われるが、詳細は退職手当条例・共済組合規則等による。


国家公務員制度との比較

国家公務員には修学部分休業に対応する制度として、自己啓発等休業(国家公務員法第26条の5)がある。同制度は大学等における修学のための休業を認めるものであるが、「週の一部」という部分休業の形ではなく、修学期間中は原則として全休業となる点が異なる。自己啓発等休業中は給与が支給されない(無給)。

高齢者部分休業については、国家公務員においても令和3年改正により高齢期における部分休業制度が整備された(国家公務員法第26条の6)。構造は地方公務員法第26条の3と同様であり、60歳到達後の職員が申請により週の勤務時間の一部について勤務しないことを承認する。

地方公務員制度における修学部分休業の特徴は、①部分休業という時間単位の柔軟性、②有給(減額給与あり)であること、③条例委任により自治体の実情に応じた設計が可能なことにある。


各自治体の条例整備状況

修学部分休業については、都道府県・指定都市を中心に条例が整備されている。

東京都の「職員の修学部分休業に関する条例」では、承認できる時間の上限を一週間につき15時間45分(週の所定勤務時間の概ね半分)とし、継続的な修学を要件としている。

大阪府条例では、大学院・大学・専修学校専門課程を対象施設とし、勤務しない時間を週の勤務時間の2分の1以内に限定している。

高齢者部分休業については、令和3年改正による定年引上げのスケジュールに合わせて令和4年(2022年)以降に条例整備が進んだ。総務省は「地方公務員の定年引上げに関する参考条例等」を示し、定年引上げに伴う関連条例の整備を促している(総務省「定年延長関係条例の制定について」令和4年3月)。


判例・裁判例

修学部分休業・高齢者部分休業の承認を直接の争点とした最高裁判例は現時点で見当たらない。ただし、承認権限の裁量性に関連して参考となる裁判例は存在する。

部分休業・特別休暇等の承認申請に対する不承認処分の適否については、任命権者に「公務の運営に支障がない」か否かの一次的判断権がある以上、裁量の逸脱・濫用がない限り司法審査において処分が取り消されることは困難であるというのが一般的な解釈である。

関連する裁量統制の枠組みとして、最高裁昭和52年12月20日判決(神戸税関事件)は、任命権者の職員管理に関する裁量につき、目的外使用・事実誤認・他事考慮がない限り違法とはならないとの考え方を示している。修学部分休業の承認拒否が問題となる場合にも、同判決の枠組みが参照されうる。

なお、承認後に休職・停職処分を受けた場合の効力失効(第26条の2第2項)は自動的に生じるため、失効の通知があったか否かにかかわらず法律上の効果として発生する。この点は従来の休職・停職処分の効力論とは異なる構造であり、注意を要する。


補論――行政法上の論点

承認行為の法的性質

修学部分休業・高齢者部分休業の承認は、職員の法律上の地位を設定・変動させる行為であり、行政処分性が肯定されると解される。したがって、承認を拒否された職員は、行政不服申立て(人事委員会・公平委員会への審査請求)または取消訴訟を提起する途が開かれている(地方公務員法第49条の2、第51条の2参照)。

裁量統制

「公務の運営に支障がないと認めるとき」という要件は、典型的な要件裁量(効果裁量ではなく要件の認定における裁量)の場面である。裁量の逸脱・濫用として違法となりうる場合として、①事実誤認(支障の存在を誤認した場合)、②他事考慮(承認拒否の真の理由が職員の職場外活動への嫌悪等にある場合)、③平等原則違反(同様の状況にある他の職員を承認しながら特定の職員のみ拒否する場合)が挙げられる。

条例委任の範囲

本条の委任は「条例で定めるところにより」という包括的委任の形式をとる。委任の範囲は承認手続・対象施設・期間上限・給与計算方式等にわたる。法律の委任を超えて条例が承認の実体的要件を加重することは、地方自治法第14条第1項の「法律の範囲内」という制約に服する。承認要件を法律が定める以上に厳格化する条例は、法律の趣旨・目的を没却しない限り許容されると解されるが、全面的な承認禁止に等しい運用は委任の趣旨に反すると考えられる。

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