地方自治法第六章第四節は「議長及び副議長」と題され、第103条から第108条までの6か条で構成される。本稿はそのうち前半の第103条・第104条・第105条・第105条の2を扱う。議長の代理と仮議長(第106条)、臨時議長(第107条)、辞職(第108条)は別稿に譲る。

この4か条は分量こそ短いが、地方議会の運営実務のほぼ全域に効いてくる。議会事務局の職員にとっては自分の任命権者の地位を定めた規定であり、執行機関の職員にとっては議場に出席を求める相手方(第121条)を特定する規定であり、訴訟担当の職員にとっては誰が自治体を代表するかを定めた規定である。昇任試験でも、議長の権限を四つ挙げさせる設問、二元代表制における議長の地位を論じさせる設問が繰り返し出題されている。


1 条文原文

条文は令和8年9月3日施行の現行法による。

第103条(議長及び副議長)

第百三条 普通地方公共団体の議会は、議員の中から議長及び副議長一人を選挙しなければならない。

② 議長及び副議長の任期は、議員の任期による。

第104条(議長の権限)

第百四条 普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。

第105条(委員会への出席)

第百五条 普通地方公共団体の議会の議長は、委員会に出席し、発言することができる。

第105条の2(訴訟における代表)

第百五条の二 普通地方公共団体の議会又は議長(第百三十八条の二第一項及び第二項において「議会等」という。)の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟については、議長が当該普通地方公共団体を代表する。

第103条には見出しが付されていない。地方自治法は昭和22年制定時の体裁を残しており、この節には条文見出しがない。各自治体の例規集や解説書が便宜上付している見出し(「議長及び副議長の選挙」「議長の議事整理権・議会代表権」など)は法令上のものではないため、条文の引用時に見出しを根拠として用いることはできない。


2 趣旨・立法背景

2-1 なぜ議長を置かなければならないのか

議会は合議制の機関である。複数の議員が対等の資格で集まり、討論を経て多数決で団体意思を決定する。この過程を秩序立てて進行させる者がいなければ、会議は成立しない。誰が発言するのか、いつ表決に入るのか、動議をどう処理するのかを決める主宰者が不可欠となる。

同時に、議会は外部との関係で一個の機関として振る舞う必要がある。長に対する意見の伝達、他の機関からの文書の受領、対外的な意思表示の名義人が定まっていなければ、議会は法的な主体として動けない。第103条と第104条は、この二つの必要(内部の主宰者と対外的な代表者)を一人の議長に集約する立法政策を採用したものである。

憲法第93条第1項は「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する」と定めるにとどまり、議長については何も規定しない。国会については憲法第58条第1項が「両議院は、各々その議長その他の役員を選任する」と明記し、議長の選任を議院自律権の内容として憲法上保障している。地方議会の議長の選挙が憲法ではなく法律(第103条)を根拠とする点は、国会と地方議会の憲法上の位置づけの差に由来する。もっとも、議員の中から議会自身が選ぶという仕組みは共通しており、長や国の関与を排する自律的選任という性格は両者に通じる。

副議長を必置としたのは、議長が病気・出張・除斥等で職務を執れない場合や、辞職・失職で欠けた場合に、議会の活動が停止することを避けるためである。第106条第1項が副議長に議長職務の代行を委ねる前提として、第103条第1項が副議長を必置機関としている。

2-2 任期を議員の任期に連動させた理由(第103条第2項)

第103条第2項は、議長・副議長の任期を議員の任期による、すなわち原則4年(第93条第1項)とする。

制度設計としては、議長の任期を1年ないし2年と法定し、定期的に信任を問う方式もありえた。現行法がこれを採らず議員任期と一致させたのは、議長を議会の構成員たる地位に密着した内部役職と位置づけ、その在任期間についても議会の自律に委ねる趣旨と解される。任期途中で議長を交代させたい場合には、第108条の辞職許可という手続が用意されている。

この立法選択が実務に生んだのが、法定任期と運用の乖離である。全国市議会議長会の調査(令和7年12月31日現在、815市)によれば、議長の任期について申合せや慣例を持つ市が650市(79.8%)に達し、その内訳は任期2年が459市(70.6%)、任期1年が178市(27.4%)、任期4年はわずか13市(2.0%)にとどまる。法が4年と定めたにもかかわらず、実際には8割近い市が申合せで短期交代を制度化し、そのうち98%が1年または2年で交代させている計算になる。

申合せ・慣例による議長任期(令和7年12月31日現在・650市)市数割合
任期1年17827.4%
任期2年45970.6%
任期4年132.0%

人口規模別に見ると傾向が分かれる。人口5万人未満の市では任期2年が81.8%を占めるのに対し、30万人以上40万人未満の市では任期1年が66.7%と逆転する。議員数が多く会派が多い都市部ほど、ポストの配分機会を増やす方向に運用が傾いている。

申合せに法的拘束力はない。申合せで定めた期間が経過しても議長が辞職願を出さなければ、議会が辞職を強制する法的手段はなく、解職制度も存在しない。この点は後述する不信任決議の限界とあわせて押さえておきたい。

2-3 議長の権限を一括列挙した第104条

第104条は議長の権限を四つ並べる。秩序保持、議事整理、事務統理、議会代表である。これらは並列的に列挙されているが、性格は異なる。

秩序保持と議事整理は、会議体の主宰者としての権限である。この二つは第129条から第131条までの具体的規定によって肉付けされている。第129条第1項は議場の秩序を乱す議員に対する制止・発言取消し・発言禁止・退去命令の権限を、同条第2項は議場が騒然として整理困難な場合の散会・中止の権限を議長に与える。第130条は傍聴人に対する制止・退場命令・警察官への引渡しを認め、同条第3項は議長に傍聴規則の制定を義務づける。第131条は議員による議長への注意喚起を定める。

事務統理は、議会という組織の管理者としての権限である。第138条第5項が事務局長・書記長・書記その他の職員の任免権を議長に与え、同条第7項が事務局長・書記長は議長の命を受けて職務に従事すると定めるのは、第104条の事務統理権を具体化したものにほかならない。議会事務局の職員の人事権が長ではなく議長にあるという構造は、執行機関からの独立を担保する仕組みとして機能している。

議会代表は、対外関係における名義人としての地位を指す。第99条の意見書の提出、第101条第2項の臨時会招集請求、第178条第1項の長に対する不信任議決の通知、第121条第1項の説明員に対する出席要求は、いずれも議長の名で行われる。

2-4 委員会出席権を明記した第105条

第105条は、議長が委員会に出席し発言できることを定める。

委員会は議会の内部組織であり、その構成員は議会が選任した委員に限られる(第109条第9項により条例で定める)。議長が当該委員会の委員でない場合、本来ならば会議体の構成員でない者として出席・発言の資格を持たないはずである。第105条は、議長の議事整理権・事務統理権が本会議にとどまらず委員会にも及ぶことを前提に、議長が委員会の審査状況を把握し必要な意見を述べる機会を制度として保障した規定である。

注意すべきは、出席権と発言権は与えられているが表決権は与えられていない点である。条文は「出席し、発言することができる」としか書いていない。議長が当該委員会の委員でもある場合は委員として表決に加わるが、それは第105条の効果ではなく委員たる地位に基づく。

なお、平成18年改正前の旧第109条第2項は議員が少なくとも一の常任委員となる旨を定めており、議長を常任委員に選任するかどうかをめぐる議論があった。現行法は委員の選任その他委員会に関し必要な事項を条例に委ねているため(第109条第9項)、議長を常任委員とするかどうかは各議会の条例と申合せの問題となる。実務では、議事整理の中立性を保つ観点から議長を常任委員に選任しない取扱いが広く行われている。

2-5 第105条の2は平成16年の行政事件訴訟法改正と一体である

第105条の2は、平成16年法律第84号による行政事件訴訟法の改正に伴い、同年の地方自治法改正で新設された。

改正前の行政事件訴訟法は、取消訴訟の被告適格を処分をした行政庁に置いていた。議会が議員を除名すれば被告は「○○市議会」であり、議長が情報公開請求を拒否すれば被告は「○○市議会議長」であった。改正後の行政事件訴訟法第11条第1項は、被告適格を原則として処分庁の所属する国または公共団体に改めた。除名処分を争う訴訟の被告は「○○市」となり、議会や議長は被告ではなくなった。

ここで問題が生じる。自治体を被告とする訴訟では、原則として長が自治体を代表する(第147条)。しかし議会の除名処分を争う訴訟で長に応訴させれば、執行機関が議会の内部的自律作用の当否を裁判所で弁論することになり、二元代表制の下での機関相互の独立を損なう。第105条の2は、議会または議長の処分・裁決に起因する訴訟については代表権を議長に移し、議会自身の判断で訴訟追行できるようにした。

同時に第96条第1項第12号が改正され、この類型の訴訟に係る訴えの提起と和解は議会の議決事項から除外された。被告である自治体を議長が代表する以上、応訴や上訴のたびに議会の議決を要求するのは迂遠だからである。同様の代表規定は、選挙管理委員会の処分等について第192条に、監査委員の処分等について第199条の3第3項に置かれている。

2-6 令和5年改正による「議会等」の定義挿入

第105条の2の括弧書き「(第百三十八条の二第一項及び第二項において「議会等」という。)」は、令和5年法律第19号(令和5年5月8日公布、令和6年4月1日施行)によって追加された。

同改正は、議会に関連する手続のうち地方自治法が書面で行うこととしている通知について、オンラインで行うことを可能とする第138条の2を新設した。同条は通知の名宛人・発信者を「議会等」と表現する必要があり、その定義を第105条の2の本文中に置いたのである。

条文技術としては珍しい構造である。訴訟代表を定めた実体規定の中に、遠く離れた雑則規定で用いる略称の定義が同居している。条文を読むうえでは、この括弧書きが第105条の2の訴訟代表のルールには何の影響も与えていないこと、しかしオンライン化の実務では第105条の2が定義規定として参照されることの両方を理解しておく必要がある。

2-7 令和7年・令和8年改正における扱い

令和7年から令和8年にかけて地方自治法は複数回改正されている。令和8年法律第27号(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律、令和8年9月3日施行)は財産区に関する第295条・第296条等を改正し、令和8年法律第62号(防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、令和8年7月17日施行)は防災関係の規定を整備した。

これらの改正により第103条から第105条の2までの規定が変更された事実はない。同節の条文は令和5年改正による「議会等」の定義挿入以降、実質的な改正を受けていない。改正が続く時期には条文の異動を疑いたくなるが、この4か条については現行条文が令和6年4月1日以降変わっていないことを確認しておけばよい。


3 文理解釈

条文の文言を一つずつ検討する。

3-1 「議員の中から」(第103条第1項)

被選挙資格を議員に限定する文言である。議員でない者を議長に選出することはできず、仮に選出しても当選は無効となる。議長に選ばれた者は議員たる地位を失わないため、議長は議員としての権利義務(歳費、除斥、懲罰の対象となる地位など)を保持し続ける。

議長の議決権については第116条第2項が「議長は、議員として議決に加わる権利を有しない」と定め、同条第1項が可否同数のときに議長が決すると定める。議長は表決に参加しない代わりに、可否同数の局面で裁決権を行使する。議長を務める間、その議員を選出した選挙区の民意は表決の場面では反映されない構造になっており、議長ポストの会派間配分が政治的に重い意味を持つ理由の一つである。

3-2 「議長及び副議長一人」(第103条第1項)

「一人」がどこにかかるかは、条文を初めて読む者がつまずきやすい箇所である。副議長は1人という趣旨であり、議長も当然に1人である。議長を複数置くことも、副議長を2人以上置くことも認められない。条例で副議長を複数置く定めを設ければ違法となる。

3-3 「選挙しなければならない」(第103条第1項)

議会の義務を定める文言である。選挙の方法は第118条が規律する。

第118条第1項前段は、公職選挙法第46条第1項・第4項(投票用紙への候補者1人の氏名の自書、他事記載の禁止)、第47条(点字投票)、第48条(代理投票)、第68条第1項(無効投票)、および地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第95条(法定得票数と得票同数の場合のくじ)を準用する。

準用の帰結として、議長選挙は単記無記名投票で行われ、議員全員が被選挙人となる。当選には有効投票の総数の4分の1以上の得票が必要であり(公職選挙法第95条第1項第4号の準用。議長選挙では選挙すべき数が1人であるため、有効投票総数を1で除した数の4分の1となる)、これに達する者がいなければ再選挙となる。得票が同数の場合は、くじで当選人を定める(同条第2項の準用)。白票は無効投票となるため有効投票総数から除かれる。

同項後段は、投票の効力に関する異議は議会が決定すると定める。この決定に不服がある者は、決定の日から21日以内に、都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服があれば裁決の日から21日以内に出訴できる(第118条第5項)。決定は文書で理由を付して本人に交付しなければならない(同条第6項)。議会内部の選挙であっても、投票の効力については行政不服申立てと司法審査の道が法定されている点は押さえておきたい。

第118条第2項から第4項までは指名推選を定める。議員中に異議がないときは指名推選の方法を用いることができ、被指名人を当選人と定めるべきかどうかを会議に諮り、議員全員の同意があった者を当選人とする。一人でも異議を述べれば投票による選挙に戻る。無投票で正副議長を決める議会が多いのは、この指名推選によっている。

なお、公職選挙法第86条の4(立候補の届出)は準用されていない。ここから、議会の議長選挙に立候補制を採用することは法律上できないという学説が主張されてきた。この点について政府は、平成30年4月13日の答弁書(内閣衆質196第214号)で、第86条の4等の規定が第118条第1項において準用されていないからといって、立候補する意思のある者にその旨を議会において表明させることが否定されるものではないと解される、との見解を示した。立候補制と所信表明会は、投票の対象を法的に限定するものではなく、あくまで議事運営上の手続として実施される限り適法である。実際、立候補制を導入する市議会の要領は、立候補者以外の議員への投票も有効とする旨を明記するのが通例である。

3-4 「任期は、議員の任期による」(第103条第2項)

議長・副議長の任期が議員任期に従属することを示す。補欠選挙で議員となった者が議長に選出された場合、その議員の在任期間が前任者の残任期間であれば、議長の任期もそれに従う。議員の任期が満了すれば議長の職も当然に終了し、改めて選挙を行う必要がある。一般選挙後の最初の議会で臨時議長(第107条)が議長選挙を主宰するのは、この帰結である。

議会が解散された場合も同様に議長の職は終了する。通年会期制(第102条の2)を採用している議会では、任期満了・解散・議員が全てなくなったことにより会期が終了する(同条第3項)ため、会期と議長の任期がともに切れる。

3-5 「議場の秩序を保持し」(第104条)

秩序保持の対象は「議場」である。議場とは本会議が開かれる場所であり、議員席のほか傍聴席を含む。議場外の議員の行動は原則としてこの権限の対象外となるが、会議の運営に直結する限度で議会の建物内の秩序に及ぶと解されている。

「保持し」という文言は、秩序が乱れた場合の回復措置だけでなく、乱れないよう予防的に運営する作用も含む。第129条以下が具体的な処分権限を定めているのに対し、第104条は包括的な権限規定として機能する。

3-6 「議事を整理し」(第104条)

会議の進行に関する一切の采配を指す。発言の許可、発言順序の決定、議題の宣告、討論の終結、表決の宣告、動議の処理、日程の変更などがこれに含まれる。

議事整理権は議長の裁量に委ねられるが、無制約ではない。法令・会議規則・委員会条例の定めに反する運営はできず、議員の発言権や表決権を実質的に奪う運営も許されない。第114条第1項は議員定数の半数以上の請求があれば議長はその日の会議を開かなければならないと定め、同条第2項は会議を開いた後に議員中に異議があるときは議会の議決によらなければ会議を閉じ中止できないと定めて、議事整理権に外側から枠をはめている。

実務上は、議会運営委員会(第109条第3項)での協議を経て日程を組み、議長はその協議結果に沿って議事を進める。国会において議長が議院運営委員会理事会の協議に従って議事を運営する慣行と、構造は共通する。国会法第55条の2は、議長が議事協議員と協議し意見が一致しないときに議長が裁定できると定めるが、地方自治法にはこれに相当する規定がなく、協議が調わない場合の処理は議長の議事整理権の解釈に委ねられている。

3-7 「議会の事務を統理し」(第104条)

議会の内部事務を統轄管理する権限である。事務局の組織運営、職員の指揮監督、文書の収受と発送、会議録の作成(第123条)、議会図書室の管理(第100条第19項)、議会予算の要求などが対象となる。

第138条第5項により事務局長・書記長・書記その他の職員の任免権は議長に属し、同条第8項によりこれらの職員の身分取扱いは地方公務員法による。議長は、地方公務員法上の任命権者として、議会事務局職員の人事評価、分限、懲戒を行う立場にある。地方公務員法第6条第1項が任命権者として「議会の議長」を明示しているのは、この関係を受けたものである。

3-8 「議会を代表する」(第104条)

対外的な意思表示の名義人となる地位を指す。ここでいう代表は、議会の意思を議長が形成する権限ではない。議会が議決によって形成した意思を、議長が対外的に表示するという役割分担である。議会の議決を経ずに議長が独自に議会の意思を表明すれば、議会代表権の逸脱となる。

議会には法人格がないため、議会自体が権利義務の主体となることはない。議会が原告として訴えを提起することも、機関訴訟を認める法律の定め(行政事件訴訟法第42条)がない限りできない。第104条の議会代表権も第105条の2の訴訟代表権も、議会に出訴資格を与えるものではない。

3-9 「委員会に出席し、発言することができる」(第105条)

「できる」という文言のとおり、権利であって義務ではない。議長が委員会に出席しないことは違法ではない。委員会の側が議長の出席を拒むことはできず、議長の出席を認めない運営は第105条に反する。

発言の内容に制限はないが、議事整理の中立性を保つ観点から、議案の賛否に踏み込む発言は控えるのが実務の通例である。

3-10 「処分又は裁決」(第105条の2)

第96条第1項第12号の括弧書きが、行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分および同条第3項に規定する裁決をいうと定義しており、第105条の2の「処分又は裁決」も同じ意味である。

議会の処分の典型は、議員に対する懲罰(第134条、第135条)と議員の資格決定(第127条)である。議長の処分としては、情報公開条例に基づく議会保有文書の非公開決定、個人情報保護制度における開示決定、傍聴人に対する退場命令(第130条第1項)などが挙げられる。

3-11 「普通地方公共団体を被告とする訴訟」(第105条の2)

第96条第1項第12号の括弧書きにより、行政事件訴訟法第11条第1項(同法第38条第1項、第43条各項で準用される場合を含む)の規定による訴訟を指す。取消訴訟のほか、無効等確認訴訟、当事者訴訟のうち第11条が準用される類型が含まれる。

国家賠償請求訴訟はこの定義に含まれない。議会の懲罰によって損害を受けたとして国家賠償を求める訴訟では、被告は自治体だが第105条の2は適用されず、第147条により長が代表する。取消訴訟と国家賠償請求訴訟が併合提起された場合、一つの事件の中で代表者が分かれることになる。訴訟委任状の作成や答弁書の名義で混乱が生じやすい場面であり、訴状を受領した段階で請求の趣旨ごとに代表者を確認する作業が欠かせない。

3-12 「議長が当該普通地方公共団体を代表する」(第105条の2)

代表されるのは自治体であって議会ではない。判決の効力は自治体に帰属し、訴訟費用も賠償金も自治体の会計から支出される。議長は自治体の訴訟上の代表者として、訴訟代理人の選任、答弁書の提出、上訴の提起、和解を行う。前述のとおり、これらについて議会の議決は要しない(第96条第1項第12号)。


4 用語解説

新任職員が引っかかりやすい語を中心に整理する。

議事整理権とは、会議の進行に関する議長の権限の総称である。個別の処分権限を定めた第129条以下と区別して、包括的権限を指す語として用いられる。

秩序維持権(秩序保持権)とは、議場の秩序を維持するための権限である。第104条を根拠とし、第129条から第131条までが具体的な手段を定める。

事務統理権とは、議会の内部事務を統轄管理する権限である。議会事務局の人事権(第138条第5項)がその中核をなす。

議会代表権とは、議会の意思を対外的に表示する権限である。議会の意思を形成する権限ではない。

臨時議長とは、第103条第1項の選挙(一般選挙後の議長選挙など)や第106条第2項の仮議長選挙を行う場合に議長の職務を行う者がいないとき、臨時に議長の職務を行う年長の議員をいう(第107条)。議会が自ら選ぶのではなく、年齢によって自動的に定まる。

指名推選とは、投票によらず、指名された者を会議に諮って全員の同意により当選人と定める方法である(第118条第2項から第4項まで)。議員中に一人でも異議があれば用いることができない。

法定得票数とは、当選するために必要な最低限の得票数をいう。議長選挙では有効投票総数の4分の1である(公職選挙法第95条第1項第4号の準用)。

所信表明会とは、議長・副議長に就任を希望する議員が議会運営に関する所信を述べる場をいう。法令上の制度ではなく、各議会が要領等を定めて運用する。本会議の休憩中や協議の場(第100条第12項)で行われることが多い。

議会等とは、議会または議長をいう(第105条の2)。第138条の2の電子的通知の規定で用いられる略称である。

処分庁主義と被告適格の団体主義という対比も押さえておきたい。平成16年改正前は処分をした行政庁が被告となり(処分庁主義)、改正後は行政庁の所属する団体が被告となる(行政事件訴訟法第11条第1項)。第105条の2は後者への移行に伴う調整規定である。


5 判例・裁判例

5-1 議長選挙をめぐる投票と収賄罪

最高裁決定昭和60年6月11日は、市議会議員が、現職議員によって構成される会派内において、市議会議長選挙に関し所属議員の投票を拘束する趣旨で投票すべき候補者を選出する行為は、市議会議員の職務に密接な関係のある行為として収賄罪にいう職務行為に当たると判示した。

この判断は実務上の含意が大きい。議会の議長選挙は公職選挙法の適用を受ける選挙ではないから、公職選挙法の買収罪(第221条)は成立しない。しかし議長選挙における議員の投票は議員の職務行為そのものであり、その投票に関して金品を収受すれば収賄罪(刑法第197条)が、供与し、または申し込めば贈賄罪(同法第198条)が成立する。さらに昭和60年決定は、投票そのものだけでなく、会派内での候補者一本化という前段階の行為までを職務密接関連行為として捉えた。会派の意思決定の場も刑事法の視野に入るということである。

5-2 議会の内部行為と司法審査の範囲

最高裁大法廷判決令和2年11月25日(岩沼市議会議員出席停止事件)は、普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は司法審査の対象となると判示し、これと抵触する最高裁大法廷判決昭和35年10月19日(山北村議会事件)を変更した。

事案は、岩沼市議会の議員であった者が、議会から科された23日間の出席停止の懲罰が違憲・違法であるとして、その取消しと議員報酬の減額分の支払を求めたものである。第一審は昭和35年判決に従い司法審査の対象外として訴えを却下し、控訴審は出席停止の判断自体は司法審査の対象外としつつ報酬減額部分については審査が及ぶとした。大法廷はこれを受けて、出席停止の懲罰を科された議員がその取消しを求める訴えは法令の規定に基づく処分の取消しを求めるものであり、その性質上、法令の適用によって終局的に解決しうるとして法律上の争訟に当たるとし、出席停止の懲罰は議会の自律的な権能に基づくものとして議会に一定の裁量が認められるとしても、裁判所は常にその適否を判断することができるとした。

昭和35年判決は、除名のように議員の身分を失わせる致命的な処分は司法審査に服するが、それ以外の内部規律の問題は自律的措置に委ねられるとして、いわゆる部分社会の法理を地方議会に適用していた。令和2年判決はこの線引きを撤廃し、出席停止については常に審査が及ぶとした。

第105条の2との関係でいえば、令和2年判決は同条が現実に機能する場面を大きく広げた。出席停止の取消訴訟が適法となる以上、被告となる自治体を議長が代表して応訴する事案が確実に増える。議会事務局は、懲罰議決に至る手続(第135条第2項の発議要件、弁明の機会、会議録への記載)の適正さが後日裁判所の審理対象となることを前提に、記録を整備しておく必要がある。

5-3 議長選挙の効力を争う訴訟の枠組み

議長選挙そのものの効力を争う手続について、地方自治法は第118条に限定的な仕組みを置いている。投票の効力に関する異議は議会が決定し、その決定に不服があれば総務大臣または都道府県知事への審査申立てを経て出訴する(同条第5項)。

これは投票の効力、すなわち個々の票が有効か無効かをめぐる争いを対象とする規定である。選挙手続全体の瑕疵(定足数を欠く会議で行われた選挙、臨時議長の選定の誤りなど)を直接争う訴訟類型について、最高裁が正面から判断した裁判例は見当たらない。この点は解釈に委ねられた領域であり、断定的に説明できる状態にないことを前提に扱うべきである。

5-4 議長不信任決議の法的効果

議長に対する不信任決議は、地方自治法に根拠を持たない。長に対する不信任議決(第178条)のような法定の効果を伴わず、議長の失職を導くこともない。議会が議決できるのは政治的な意思表示としての不信任にとどまり、議長が第108条の辞職願を提出しない限り、その地位は動かない。この点を明示的に判断した最高裁判例はないが、行政実例と実務上の取扱いは一貫している。

昇任試験では、長に対する不信任議決と議長に対する不信任決議を対比させる出題が見られる。前者は第178条に基づき法的効果(10日以内に解散しなければ失職)を伴い、後者は法的効果を伴わないという差を正確に書き分けられるかが分かれ目になる。


6 マスコミが報じた事例

6-1 奈良市議会議長選挙をめぐる贈賄申込事件(平成23年〜24年)

平成23年6月24日の奈良市議会(当時定数39)の議長選挙は、2人が立候補し議会を二分する争いとなった。投票の結果、両候補が19票ずつで並び、白票が1票あった。得票同数となったため、第118条第1項が準用する公職選挙法第95条第2項に従いくじで当選人が定められ、一方の候補が落選した。

その後、前議長が、自らの所属会派が支持する候補を当選させる目的で、無所属議員に対し白票を投じるよう依頼し、現金等の提供を持ちかけたことが表面化した。依頼を受けた議員がやりとりを録音しており、平成23年9月に大阪地方検察庁特別捜査部へ告発状が提出された。前議長は同月に事実を認めて議員を辞職し、平成24年1月20日、贈賄(申込み)容疑で逮捕された。

この事案は、条文の読み方がそのまま現実の場面につながることを示している。得票同数でくじに至ったのは第118条第1項による公職選挙法第95条第2項の準用の結果であり、白票が無効投票として有効投票総数から除かれる扱いも同条の準用による。そして、議長選挙が公職選挙法上の選挙でないにもかかわらず金品の授受が犯罪となるのは、議員の投票が職務行為だからである(前掲最高裁決定昭和60年6月11日)。

6-2 福岡県議会の議長ポストをめぐる金銭授受疑惑(令和8年)

令和8年7月、福岡県議会の元議長が記者会見を開き、令和2年に議長へ就任する際、当時所属していた会派の幹部から多額の金銭を要求され、支払ったと告発した。報道によれば、他の正副議長経験者からも同様の証言が相次ぎ、議長ポストをめぐる金銭のやりとりが慣例化していた疑いが指摘された。金銭授受を否定しつつ議員を辞職した副議長も出ている。県議会は全県議を対象とする聞き取り調査の実施を決めた。

事実関係は本稿執筆時点で調査・捜査の段階にあり、法的評価を確定させることはできない。ただし制度論としては、議長の任期を法が4年と定めながら実務が短期交代の申合せで運用していること、議長・副議長のポストが会派間の配分対象となっていること、そして正副議長の選挙過程が長らく会派内の調整に委ねられ外部から見えにくかったことが、この種の問題の背景にあるという指摘は繰り返されてきた。

6-3 透明化に向けた実務の動き

こうした事例を背景に、正副議長選挙の手続を公開する取組みが広がっている。全国市議会議長会の調査(令和7年12月31日現在、815市)によれば、議長選出時に就任希望者の所信表明等の機会を設けている市は419市(51.4%)で、初めて過半数に達した。

所信表明等の実施時期(令和7年12月31日現在・導入419市)市数割合
本会議中5513.1%
協議等の場(第100条第12項)13632.5%
その他(休憩中等)22854.4%
議会運営委員会00.0%

人口規模別では、5万人未満の市で59.9%、5万人以上10万人未満で55.8%が導入している一方、30万人以上40万人未満では16.7%にとどまる。小規模市のほうが導入率が高い傾向にある。

実施時期を見ると、本会議中に行う市は13.1%にとどまり、半数超は休憩中等に行っている。休憩中の所信表明は会議録に残らず、インターネット中継の対象外となる例も多い。透明化の取組みではあるが、公開の程度には幅があることを読み取っておきたい。

なお、立候補制の適法性について政府が平成30年4月13日の答弁書で問題ないとの見解を示したことは前述のとおりである(内閣衆質196第214号)。導入を検討する議会が、法令上の制約を理由にためらう必要はない。


7 施行令・施行規則の関連規定

地方自治法の解釈にあたっては、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)と地方自治法施行規則(昭和22年内務省令第29号)を必ず併せて確認する必要がある。本節の4か条について、両者の関わり方は条文ごとに異なる。

7-1 第103条から第105条までに直接の委任規定はない

第103条、第104条、第105条は、いずれも政令・総務省令への委任文言を含まない。施行令および施行規則を通覧しても、これらの条を受けて具体的手続を定めた規定は存在しない。議長選挙の投票用紙の様式、開票の手順、選挙録の作成方法などは、施行令・施行規則ではなく各議会の会議規則が定める。標準市議会会議規則・標準町村議会会議規則がこの部分を担っている。

施行規則が投票用紙や投票録の様式を定めているのは、議会の解散の投票、議員・長の解職の投票、特別法の住民投票といった住民投票に関するものであり(施行規則第1条の2、第2条から第8条まで)、議会内部の選挙には及ばない。この区別を誤ると、議長選挙の実務で施行規則の様式を探して見つからないという事態になる。存在しないものを探さずに済むよう、ここは明確にしておきたい。

7-2 第104条の事務統理権と施行令第174条の24

議会事務局を複数の自治体で共同設置する場合について、施行令第174条の24第1項が具体的な読替えを定めている。

同項は、地方自治法第252条の8、第252条の9第3項・第5項、第252条の11第2項・第4項、第252条の12の規定を、法第252条の7第1項に規定する議会事務局等の共同設置について準用するにあたり、法第252条の9第3項・第5項中の「長」を「議会の議長、長」と読み替える旨を定める。同条第3項も、議会・長・委員会等の事務を補助する職員の共同設置について同じ読替えを置く。

この読替えは、議会事務局の職員に関する規約の事務を長だけで処理させず、議長を並列の主体として扱うことを意味する。第104条の事務統理権と第138条第5項の任免権が、機関の共同設置という場面でも貫徹されるよう、政令のレベルで手当てされているわけである。小規模自治体で議会事務局の共同設置を検討する際には、この条文が出発点となる。

7-3 第105条の2の訴訟実務と施行令第162条第5号

施行令第162条は概算払をすることができる経費を列挙し、その第5号に「訴訟に要する経費」を掲げる。

第105条の2により議長が自治体を代表して応訴する場合、訴訟代理人である弁護士への着手金、印紙代、記録の謄写費用などが発生する。これらは支出の時点で確定額が定まらないことが多く、施行令第162条第5号を根拠とする概算払によって処理される。議会事務局が訴訟対応を担う場面では、代表権の所在(第105条の2)と支出方法(施行令第162条第5号)をセットで押さえておく必要がある。

なお、支出の相手方や金額の決定は会計事務の問題であり、支出負担行為の手続は各自治体の財務規則に従う。訴訟の当事者としての代表権が議長にあることと、支出命令権が長にあること(第232条の4)は別の話である。議会に係る訴訟であっても、支出そのものは長の権限の下で行われる。

7-4 第105条の2の定義規定と施行規則第12条の2の3以下

第105条の2は、前述のとおり「議会等」の定義規定を兼ねている。この定義を実際に使い倒しているのが、施行規則第12条の2の3から第12条の2の9までである。

施行規則第12条の2の3は、法第138条の2第1項の総務省令で定める電子情報処理組織について、「議会等(同法第百五条の二に規定する議会等をいう。以下同じ。)」の使用に係る電子計算機と、当該議会等に対して通知を行う者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続したものと定める。第105条の2を名指しで引用しており、両者の連結は条文上明確である。

同第12条の2の4は、議会等に対してオンラインで通知を行う者が、議会等の定めるところにより、議会等の指定する電子計算機のファイルに記録すべき事項を入力して通知を行うべきことを定め、第2項で電子署名と電子証明書の送信を求める。ただし、議会等の指定する方法により通知者を確認する措置を講ずる場合は電子署名を要しない。

同第12条の2の5は議会等が通知を行う場合の電子情報処理組織を、同第12条の2の6は議会等が通知事項をファイルに記録すべきことを定める。同第12条の2の7は、法第138条の2第2項ただし書の総務省令で定める方式として、識別番号および暗証番号の入力と、オンラインで通知を受けることを希望する旨の届出の二つを掲げる。

同第12条の2の8は、法第99条の意見書を国会に対してオンラインで提出する議会について、衆議院事務局または参議院事務局がそれぞれ指定する方法により通知を行った議会を確認するための措置を講じなければならないと定める。意見書の提出は議長名で行われるから、この確認措置の実施主体は実務上は議長および議会事務局となる。総務省の通知によれば、この確認措置としては地方公共団体組織認証基盤の職責証明書に基づく電子署名が予定されている。

同第12条の2の9は、第12条の2の3から第12条の2の8までに定めるもののほか、オンラインで通知を行う場合に必要な事項は議会等が定めるとして、残りを議会の自律に委ねる。

議会のオンライン手続を整備する際には、第105条の2の括弧書きが定義の起点であり、施行規則第12条の2の3以下が具体的な要件を定め、細目は議会が自ら定めるという三段構えを理解しておく必要がある。訴訟代表の条文がオンライン手続の出発点になっているという構造は分かりにくいが、条文を辿ればこのとおりである。

7-5 全国市議会議長会による整理

全国市議会議長会は令和6年3月に「議会に係る手続等のオンライン化・デジタル化の具体的方法について」を取りまとめ、地方自治法、会議規則、会議規則等に係るデジタル化の規程という三層で整理する考え方を示している。同資料は、議会における選挙の異議に係る決定書の交付(法第118条第6項、標準会議規則第31条第4項)、請願書の提出(法第124条、標準会議規則第139条)、議員の資格決定に係る決定書の交付(法第127条第3項、標準会議規則第150条)などを対象手続として列挙する。議長選挙に関連するものとしては、投票の効力に関する異議の決定書の交付が含まれる点に注意したい。


8 実務上の処理手順

8-1 一般選挙後の最初の会議

一般選挙により議員の任期が始まると、前議長の職はすでに終了している。長が議会を招集し(第101条第1項)、開会後、議長の職務を行う者がいないため、年長の議員が臨時に議長の職務を行う(第107条)。臨時議長は議席の指定、会議録署名議員の指名等を経て議長選挙を行う。

議長選挙は、指名推選による場合は議員中に異議がないことを確認したうえで全員の同意を得る。投票による場合は、投票用紙を配付し、単記無記名で記載させ、投票箱に投入させる。開票立会人を指名し、点検のうえ、有効投票総数と各候補の得票数を確認し、法定得票数(有効投票総数の4分の1)に達した者を当選人と宣告する。得票同数の場合はくじによる。

議長が決定した後、議長が副議長選挙を主宰する。所信表明会を実施する議会では、議長選挙に係る所信表明会は臨時議長(または副議長)が、副議長選挙に係る所信表明会は議長が進行するのが一般的な建て付けである。

8-2 議長の職務代行と事故

議長に事故があるとき、または議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行う(第106条第1項)。ここでいう事故には、病気、出張のほか、第117条の除斥により議事に参与できない場合が含まれる。議長自身の懲罰動議が議題となる場面などが典型である。

議長および副議長にともに事故があるときは、仮議長を選挙する(第106条第2項)。議会は仮議長の選任を議長に委任することができる(同条第3項)。

8-3 議会・議長の処分に対する訴訟の受領時

訴状が届いたら、まず請求の趣旨を確認する。取消訴訟・無効等確認訴訟であって議会または議長の処分・裁決に係るものであれば、第105条の2により議長が自治体を代表する。国家賠償請求が併合されていれば、その部分は長が代表する。

議長が代表する部分については、議会の議決を経ずに訴訟代理人を選任し、答弁書を提出できる(第96条第1項第12号)。訴訟に要する経費は施行令第162条第5号により概算払が可能である。

長が代表する部分については、訴えの提起・上訴・和解につき議会の議決が必要となる(第96条第1項第12号本文)。同一事件の中で議決の要否が分かれるため、期日管理と議会日程の調整を早期に行う必要がある。


9 昇任試験で問われる論点

係長・課長昇任試験の論文および択一では、次の切り口が繰り返し現れる。

議長の権限を四つ挙げて説明させる設問では、第104条の秩序保持・議事整理・事務統理・議会代表を柱に、それぞれの具体化規定(第129条から第131条まで、第138条第5項・第7項、第99条・第101条第2項等)を紐づけて論じる。第105条の委員会出席権を第五の権限として付け加えると厚みが出る。

議長の任期を問う設問では、法定任期が議員任期と同じ4年であること(第103条第2項)と、実際には8割の市が申合せで1年または2年としていること(全国市議会議長会・令和7年調査)の乖離を指摘し、申合せに法的拘束力がないことまで触れると評価が上がる。

議長の議決権を問う設問では、第116条第2項により議員として議決に加わる権利を有しないこと、可否同数のときに裁決権を行使すること(同条第1項)を正確に区別する。

二元代表制における議長の地位を論じる設問では、議会事務局職員の任免権が議長にあること(第138条第5項)、議会または議長の処分に係る訴訟を議長が代表すること(第105条の2)、臨時会の招集請求権が議長にあること(第101条第2項・第5項)を、執行機関からの独立を担保する仕組みとして構成すると論旨が通る。

出席停止の懲罰と司法審査を問う設問では、最高裁大法廷判決令和2年11月25日が最高裁大法廷判決昭和35年10月19日を変更したこと、出席停止の適否が常に司法審査の対象となること、被告は自治体であり議長が代表すること(第105条の2)を連結させて述べる。


10 国の制度との簡単な対比

国会については、憲法第58条第1項が議長その他の役員の選任を議院自らが行うと定め、国会法第6条が議長・副議長各1人を置くと定める。国会法第19条は議長が議院の秩序を保持し議事を整理し議院の事務を監督し議院を代表すると規定しており、地方自治法第104条と文言がよく似ている。地方自治法が「統理」、国会法が「監督」という語を用いる差はあるが、内部事務の管理権を議長に集約する構造は共通する。

異なるのは任期である。国会議員の議長・副議長の任期は議員としての任期による点で地方議会と同じだが、国会では会期不継続の原則の下で会期ごとに役員を選任し直す制度は採られていない。また、国会法第30条の2は議院の議決で常任委員長を解任できる旨を定めるが、議長を解任する制度は置かれていない。議長を辞めさせる法的手段がないという点も地方議会と共通している。

地方公務員法との関係では、同法第6条第1項が任命権者として議会の議長を明示しており、議会事務局職員の任用・分限・懲戒が議長の権限に属することが確認できる。国会の議院事務局職員が国会職員法という独自の法律の適用を受け、国家公務員法の適用を受けないのとは対照的である。地方議会の事務局職員は地方公務員法の適用を受ける一般職の地方公務員であり(第138条第8項)、任命権者が長ではなく議長である点だけが執行機関の職員と異なる。


11 参考資料

  • 地方自治法(昭和22年法律第67号)令和8年9月3日施行現行条文
  • 地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第162条第5号、第174条の24
  • 地方自治法施行規則(昭和22年内務省令第29号)第12条の2の3から第12条の2の9まで
  • 地方自治法の一部を改正する法律(令和5年法律第19号)令和5年5月8日公布・令和6年4月1日施行
  • 最高裁判所大法廷判決令和2年11月25日(岩沼市議会議員出席停止事件、民集74巻8号)
  • 最高裁判所大法廷判決昭和35年10月19日(山北村議会事件)
  • 最高裁判所決定昭和60年6月11日(会派内の議長候補者選出行為と受託収賄)
  • 衆議院議員櫻井周君提出「地方議会の正副議長選挙の立候補制に関する質問」に対する答弁書(平成30年4月13日、内閣衆質196第214号)
  • 全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果(令和7年中)」15 議長の選出方法・任期、会派
  • 全国市議会議長会「議会に係る手続等のオンライン化・デジタル化の具体的方法について」(令和6年3月)
  • 全国都道府県議会議長会「地方自治法等の改正経過(都道府県議会関係)」

◆自治体研修850回超の行政書士が、係長・課長昇任試験の論文を1本から添削します。 https://compliance21.com/promotion-examination-lg/

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