地方自治法第六章第六節「会議」の末尾三か条は、議会の審議を外側から支える仕組みを定める。執行機関の側が議場に出て説明すること(第121条)、長が説明書を提出すること(第122条)、そして会議の経過を記録に残すこと(第123条)である。

この三か条は、議会の章の中で執行機関と最も近い距離にある。第121条は執行機関の職員を議場に拘束し、第122条は長に書類の作成を義務づける。議会の内部規律を定めた前節までの条文とは性格が異なり、二元代表制の下で議会と執行機関が接触する面を規律している。

第123条はさらに別の方向を向く。会議録は議会の内部文書でありながら、住民が議会を検証する基礎資料となる。令和5年の改正で電磁的記録による作成と報告の道が整い、AI音声認識の導入が半数近くの市に広がった今、この条文の読み方は実務の作業手順に直結する。


1 条文原文

条文は令和8年9月3日施行の現行法による。

第121条(出席説明の義務)

第百二十一条 普通地方公共団体の長、教育委員会の教育長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会の委員長又は公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農業委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない。ただし、出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由がある場合において、その旨を議長に届け出たときは、この限りでない。

② 第百二条の二第一項の議会の議長は、前項本文の規定により議場への出席を求めるに当たつては、普通地方公共団体の執行機関の事務に支障を及ぼすことのないよう配慮しなければならない。

第122条(説明書の提出)

第百二十二条 普通地方公共団体の長は、議会に、第二百十一条第二項に規定する予算に関する説明書その他当該普通地方公共団体の事務に関する説明書を提出しなければならない。

第123条(会議録)

第百二十三条 議長は、事務局長又は書記長(書記長を置かない町村においては書記)に書面又は電磁的記録により会議録を作成させ、並びに会議の次第及び出席議員の氏名を記載させ、又は記録させなければならない。

② 会議録が書面をもつて作成されているときは、議長及び議会において定めた二人以上の議員がこれに署名しなければならない。

③ 会議録が電磁的記録をもつて作成されているときは、議長及び議会において定めた二人以上の議員が当該電磁的記録に総務省令で定める署名に代わる措置をとらなければならない。

④ 議長は、会議録が書面をもつて作成されているときはその写しを、会議録が電磁的記録をもつて作成されているときは当該電磁的記録を添えて会議の結果を普通地方公共団体の長に報告しなければならない。

いずれの条文にも法令上の見出しは付されていない。


2 趣旨・立法背景

2-1 第121条:議会が判断材料を得るための仕組み

議会は条例や予算を議決するが、その内容を作ったのは執行機関である。議案の根拠となる事実、数字の積算、運用の見通しを知るのは執行機関の側であり、議会がこれを知らないまま議決すれば、審議は形式に終わる。

第121条は、議会が判断材料を得る手段として、執行機関の側を議場に出させて説明させる仕組みを置いた。第98条の検査権や第100条の調査権が議会の能動的な情報収集権であるのに対し、第121条は審議の場そのものに説明者を配置する規定である。

二元代表制の下では、議会と長はそれぞれ住民が直接選んだ機関として対等に向き合う。長が議会の下僚であるなら出席は当然の職務だが、対等な機関であればそうはいかない。第121条が出席義務を法律で定めているのは、対等な機関の間に説明の責務を設定する必要があったからである。

2-2 出席義務者の範囲が広がってきた経緯

第121条の対象者は、制定以来ほぼ一貫して拡大してきた。全国都道府県議会議長会が整理する改正経過をたどると次のようになる。

改正年内容
昭和22年出席範囲に市町村公安委員会委員を追加
昭和23年出席範囲に教育委員会委員、都道府県の公安委員会を追加
昭和25年出席範囲に法令または条例に基づく委員会の代表者または委員を追加。公安委員会は従来市町村のみとされていたが都道府県にも適用することとし、「公安委員会」と規定
昭和27年出席範囲に人事委員会委員長等を追加
平成24年ただし書を追加し、第2項を新設
平成26年「教育委員会の委員長」を「教育委員会の教育長」に改正

執行機関が多元化するたびに、その代表者を出席義務者に加えてきた歴史である。委員会制度の整備と第121条の改正は連動している。

平成26年の改正は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により教育委員会に教育長が置かれ、教育委員長の職が廃止されたことに伴うものである。執行機関側の組織改編が、第121条の文言に直接反映された例である。

2-3 平成24年改正:通年会期制と出席義務の調整

ただし書と第2項は平成24年の改正(平成24年法律第72号)で設けられた。同じ改正で通年の会期の制度(第102条の2)が導入されている。

通年の会期を採用すると、議会は年間を通じて閉会しない。長や委員会の代表者がいつ出席を求められるか予測しにくくなり、執行機関の事務に支障が生じるという懸念が示された。参議院事務局の立法調査資料も、通年会期の導入に伴う長などの負担増への対応として、この改正を位置づけている。

ただし書は、出席義務そのものを免除する規定である。正当な理由があり、その旨を議長に届け出た場合には出席を要しない。第2項は、通年の会期を採用した議会の議長に対し、出席を求めるにあたって執行機関の事務に支障を及ぼさないよう配慮する義務を課した。

この二つは働き方が異なる。ただし書は出席を求められた側の免除要件であり、第2項は求める側の行動規範である。第2項は通年の会期を採用した議会の議長にのみ適用され、定例会・臨時会の区分を維持している議会の議長には及ばない。

2-4 第122条:昭和31年に義務化された説明書の提出

第122条は、長に説明書の提出を義務づける。

もともとこの規定は「提出することができる」という任意の形をとっていた。昭和31年の改正で、予算に関する説明書の提出が義務づけられた。予算の議決という議会の中核的な権限を行使するにあたり、予算書本体だけでは内容を把握できないという実情を踏まえた改正である。

提出すべき説明書の中身は第122条自体には書かれていない。第211条第2項が政令に委任し、施行令第144条が五種類の書類を列挙する構造になっている。法律が提出義務を課し、政令が中身を定め、省令が様式を定めるという三層の委任関係が成立している。

2-5 第123条:会議録の意義と電子化の経緯

会議録は、会議の経過を公の記録として残す文書である。議会が何をどう決めたかを後から検証できなければ、議決の内容は確定せず、住民による監視も成り立たない。第123条は会議録の作成を議長の義務とし、署名による真正性の確保と長への報告を定める。

この条文にも改正の跡がある。

改正年内容
昭和44年議長が会議の結果を会議録の写しを添えて自治大臣に報告する義務を廃止
平成18年電磁的記録により会議録を作成することができることとした
令和5年議会に係る手続のオンライン化に伴い第4項を整備(令和6年4月1日施行)

昭和44年の改正は、国への報告義務を外して報告先を長に限定した。国の関与を縮減する方向の改正であり、地方議会の記録が国の監督の資料ではなくなったことを意味する。

平成18年の改正で電磁的記録による作成が可能となり、令和5年の改正で第4項が整備されて、電磁的記録を添えて長に報告できるようになった。作成の電子化が先に認められ、報告の電子化が後から追いついたという順序である。

2-6 令和7年・令和8年改正における扱い

令和8年法律第27号(令和8年9月3日施行)および令和8年法律第62号(令和8年7月17日施行)を含め、令和7年から令和8年にかけての改正で第121条から第123条までの条文は変更されていない。


3 文理解釈

3-1 「議会の審議に必要な説明のため」(第121条第1項)

出席要求ができるのは、議会の審議に必要な説明のためである。この文言が出席要求の目的と範囲を限定している。

令和4年5月25日に提出された質問主意書は、答弁の予定がない部長等にも本会議への全員出席を求める議会が少なくなく、本会議の開催日に部長等が一日中議場に拘束されて行政事務の効率を損なうおそれがあると指摘し、答弁の予定がない部長等に出席を求めることが第121条に違反しないかを問うた。

政府は令和4年6月3日の答弁書で、第121条第1項により、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められた者は議場に出席しなければならないとした上で、説明のための出席を求めることが必要かどうかは各議会の議長が適切に判断すべきものであるとの見解を示した。

出席を求める必要性の判断を議長の裁量に委ねたものであり、答弁予定のない職員の出席を一律に違法とも適法とも述べていない。もっとも、条文が「審議に必要な説明のため」と限定していることからすれば、必要性の判断は無制約ではない。審議の内容と出席者の職務との関連を欠く出席要求は、この要件を満たさないと解する余地がある。

3-2 列挙された出席義務者

第1項が名指しするのは次の者である。

列挙されている者備考
普通地方公共団体の長
教育委員会の教育長平成26年改正前は教育委員会の委員長
選挙管理委員会の委員長
人事委員会の委員長または公平委員会の委員長
公安委員会の委員長
労働委員会の委員委員長ではなく委員
農業委員会の会長
監査委員代表監査委員に限られない
その他法律に基づく委員会の代表者または委員収用委員会、内水面漁場管理委員会など

労働委員会については委員長ではなく委員が、監査委員については代表監査委員に限らず監査委員が義務者とされている。委員会ごとに義務者の指定が一様でない点は、条文を読むときに見落としやすい。

「法律に基づく」委員会に限られるため、条例に基づく附属機関の委員は第121条の出席義務者ではない。附属機関の委員に議場で説明させたい場合は、第115条の2第2項の参考人として招致することになる。

3-3 「その委任又は嘱託を受けた者」

実務上、議場に並ぶ説明員の大半はこの部分に根拠を持つ。

埼玉県議会が公表する12月定例会の第121条第1項の規定に基づく説明者一覧を見ると、知事1名、副知事3名のほか、企画財政、総務、県民生活、危機管理・防災、環境、福祉、保健医療、産業労働、農林、県土整備、都市整備の各部長11名、会計管理者、公営企業管理者、下水道事業管理者、教育長、選挙管理委員会委員長、人事委員会委員長および同事務局長、公安委員会委員長、警察本部長および警察本部総務部長、労働委員会会長および同事務局長、監査委員2名および監査委員事務局長、収用委員会会長、内水面漁場管理委員会会長が名を連ねている。

このうち条文に列挙されているのは知事、教育長、各委員会の代表者等である。副知事、部長、会計管理者、事務局長、警察本部長などは、長または各委員会から委任または嘱託を受けた者として出席する。説明者一覧は会期ごとに作成され、議会運営委員会で確認するのが一般的な運用である。

大津市議会の例では、議会運営委員会で説明員を決定した後に質疑の関係等で追加が必要となった場合は議長判断により要請する旨の申合せ(平成29年8月9日議会運営委員会決定)が置かれ、執行機関の求めにより政策調整部長を常任の出席者に加えた経緯も記録されている。委任・嘱託の範囲は、議会と執行機関の協議によって運用上形成されている。

3-4 「議長から出席を求められたとき」

出席義務が生じるのは議長から出席を求められたときである。委員会における出席要求は第121条の対象ではない。委員会に説明員の出席を求める根拠は委員会条例に置かれるのが通例であり、第121条を直接の根拠とはしない。

議長以外の者が出席を求めることはできない。個々の議員が特定の職員の出席を望む場合も、議長を通じて要求することになる。

3-5 「議場に出席しなければならない」

出席は義務であるが、第121条には義務違反に対する罰則がない。長が出席を拒んでも、刑罰や過料が科されることはない。

この点は第100条の調査における証人の出頭義務と対照的である。第100条第3項は、正当の理由がなくて証言を拒んだ者等に対する罰則を定め、同条第9項は議会に告発の義務を課している。令和7年に静岡県伊東市議会が設置した百条委員会をめぐって市長の出頭が問題となり、議会が再度の拒否があれば刑事告発する方針を示したと報じられたのは、第100条の仕組みが働く場面である。第121条の出席義務にはこうした強制手段がない。

出席義務違反に対して法律が用意する対応は、政治的な手段にとどまる。長が説明を拒み続ければ、議会は不信任の議決(第178条)という手段を持つ。もっとも第178条は議員数の3分の2以上の出席とその4分の3以上の同意を要する重い手続であり、出席拒否への直接の制裁として設計されたものではない。

3-6 ただし書の「正当な理由」と「届け出たとき」

ただし書が義務を免除する要件は二つある。出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由があること、そしてその旨を議長に届け出たことである。

正当な理由の内容は条文に書かれていない。疾病や負傷、他の公務との重複、災害対応といった事情が想定されるが、判断基準は示されていない。届出を要件としていることから、議長が理由の存否を確認する機会を持つ構造になっている。

届出をしないまま欠席した場合、ただし書の適用はない。正当な理由があっても、届出を欠けば義務違反となる。もっとも前述のとおり違反に罰則はないため、実際の効果は議会との関係における政治的なものにとどまる。

3-7 第2項の配慮義務

第2項の主体は、第102条の2第1項の議会の議長である。通年の会期を採用した議会の議長に限られる。

配慮の内容は、執行機関の事務に支障を及ぼすことのないようにすることである。定例日以外の日に出席を求める場合(第102条の2第7項は長が定例日以外の日に会議を開くことを請求できると定める)や、長期にわたって出席を求める場合に意味を持つ。

配慮義務に違反した場合の効果は定められていない。訓示的な規定と解されるが、議長が出席要求の必要性と執行機関の事務への影響を比較衡量すべきことを法律が明示した点に意味がある。

3-8 第121条は答弁義務を定めているか

第121条は出席義務を定める。議場に出席した者が議員の質疑に答えなければならないという答弁義務を直接定めた規定ではない。

もっとも、出席の目的が「議会の審議に必要な説明のため」と明示されているから、出席した者は説明を求められれば説明すべき立場に立つと解される。説明を拒む自由があるとすれば、出席義務を課した意味が失われる。

逆の方向、すなわち説明員の側から議員に質問することについては、第121条に根拠がない。いわゆる反問権は、法律上の権限ではなく、議会基本条例や会議規則、申合せによって議会側が認める運用である。全国市議会議長会の調査では、反問権を規定している市は596市(73.1パーセント)であり、根拠は議会基本条例が443市(74.3パーセント)で最も多く、要綱や申合せが62市(10.4パーセント)、会議規則が26市(4.4パーセント)となっている。範囲を質問趣旨の確認等に限定して規定している市は270市(33.1パーセント)である。令和7年中に実際に反問権を行使した市は149市(18.3パーセント)で、そのうち本会議で行使した市が127市(85.2パーセント)である。

規定を置いている市が7割を超える一方、実際に行使した市は2割に満たない。制度として用意しておくことと、議場で使うこととの間に距離がある。

3-9 「第二百十一条第二項に規定する予算に関する説明書その他当該普通地方公共団体の事務に関する説明書」(第122条)

第122条が提出を義務づける文書は二つの部分からなる。

前半は第211条第2項に規定する予算に関する説明書である。第211条第2項は、長が予算を議会に提出するにあたり政令で定める予算に関する説明書を併せて提出しなければならないと定めており、その中身は施行令第144条が列挙している(後述7-1)。

後半は「その他当該普通地方公共団体の事務に関する説明書」である。何を提出するかは条文からは特定できない。議案の内容を理解するために必要な資料が広く含まれると解され、実務では議案の参考資料、事業の概要説明、条例改正の新旧対照表などがこれにあたる。何をどこまで出すかは、議会の求めと長の判断によって運用上定まっている。

3-10 第123条第1項:作成の主体と記載事項

会議録を作成させる義務を負うのは議長である。実際に作成するのは事務局長または書記長であり、書記長を置かない町村では書記が作成する。議長は作成の主体ではなく、作成させる義務を負う者として位置づけられている。

作成の方法は書面または電磁的記録である。どちらを選ぶかは議会の判断に委ねられている。

記載・記録すべき事項として条文が挙げるのは、会議の次第と出席議員の氏名の二つだけである。これ以上の記載事項は法律に定めがなく、会議規則が定める。都道府県議会議長会が昭和31年に示した標準会議規則が記載事項の範囲を整理しており、各議会の会議規則はこれを下敷きにしている。

実務では会議録を原本と配布用に分けて管理する運用が広く行われている。原本は取り消された発言や秘密会の記録も含めてそのまま残し、配布用では取り消された発言を伏せて表示する。この区別は法律ではなく会議規則と運用に根拠を持つ。

3-11 第2項・第3項:署名と署名に代わる措置

書面の会議録には、議長および議会において定めた二人以上の議員が署名する(第2項)。署名によって会議録の真正性を担保する仕組みである。

署名議員は議会が定める。会議規則が指名の手続を定めるのが通例であり、会議の冒頭で議長が指名する運用が広く行われている。署名を拒否された場合の取扱いについて法律に定めはなく、拒否の理由を原本に記録する実務が示されている。

電磁的記録の会議録については、署名に代わる措置をとる(第3項)。その措置の内容は総務省令に委任されており、施行規則第12条の2の2が電子署名と定める(後述7-3)。

3-12 第4項:長への報告

議長は、会議の結果を長に報告しなければならない。書面の会議録であればその写しを、電磁的記録であれば当該電磁的記録を添える。

報告の相手方は長に限られる。昭和44年の改正で自治大臣への報告義務が廃止されたため、国に送る義務はない。

「会議の結果」の報告であり、会議録そのものの送付ではない。会議録は添付書類であって、報告の本体は会議の結果である。議決の内容を長が確実に知り、執行に移せるようにするための規定である。


4 用語解説

出席説明員とは、第121条第1項により議長から出席を求められて議場に出席し、審議に必要な説明を行う者をいう。法律上の用語ではなく実務上の呼称である。

委任または嘱託を受けた者とは、第121条第1項に列挙された機関から委任または嘱託を受けて出席する者をいう。副知事、副市町村長、部長、会計管理者、事務局長などがこれにあたる。

反問権とは、説明員が議員の質問に対して質問し返す権限をいう。地方自治法に根拠はなく、議会基本条例、会議規則、申合せによって認められる。

予算に関する説明書とは、第211条第2項により長が予算に併せて議会に提出する書類をいい、その種類は施行令第144条が定める。

会議録とは、議会の会議の次第と出席議員の氏名を記載または記録した文書または電磁的記録をいう(第123条第1項)。

署名に代わる措置とは、電磁的記録の会議録について議長および署名議員がとるべき措置をいい、施行規則第12条の2の2により電子署名とされている。

原本と配布用の会議録とは、会議録の管理方法の区別をいう。原本は取消発言や秘密会の記録を含めて保存し、配布用は取消発言を伏せて作成する。法律ではなく会議規則と運用に基づく。


5 判例・裁判例・政府見解

5-1 最高裁判例の状況

第121条と第122条について、条文の解釈を正面から示した最高裁判所の判例は見当たらない。出席要求の必要性の判断、ただし書の正当な理由の内容、第122条の説明書の範囲は、いずれも司法判断が示されていない領域である。

執行機関と議会の間の権限配分をめぐる紛争は、機関訴訟を認める法律の定めがなければ裁判所に持ち込めない(行政事件訴訟法第42条)。議会が長の出席拒否を争う訴訟も、長が出席要求の違法を争う訴訟も、現行法では訴訟類型を欠く。この分野の解釈が行政実例と政府答弁に依拠しているのは、その帰結である。

5-2 会議録に関する最判平成30年4月26日

第123条については、最高裁判所判決平成30年4月26日が参照される。県議会の議長が議員に発言の取消しを命じた措置の適否は司法審査の対象とならないと判示したものである。

同判決は、会議規則に置かれた規定の性格を次のように整理した。議長が取消しを命じた発言を配布用会議録に掲載しないとする規定は、第104条および第129条第1項による議長の秩序維持権限を前提とした規定である。速記録や配布用会議録の配布に関する規定は、議長による会議録の調製について具体的な規律を定めるにとどまる。したがってこれらの規定は、議員に対し発言が配布用会議録に記載される権利利益を付与したものとはいえない。

第123条が会議録の作成を議長の義務として構成している点が、この判断の前提にある。会議録は議長が調製する文書であり、議員が自己の発言の記載を求める権利の対象ではないという読み方である。会議録の記載内容をめぐって議員と議長が対立した場面では、この判断枠組みが参照される。

5-3 令和2年大法廷判決との関係

最高裁判所大法廷判決令和2年11月25日(岩沼市議会議員出席停止事件)は、議員に対する出席停止の懲罰の適否は常に司法審査の対象となるとした。

平成30年判決と令和2年判決の関係は、争われた利益の性質によって整理される。令和2年判決が対象としたのは議員としての活動を一定期間奪う懲罰であり、平成30年判決が対象としたのは会議録の記載という内部的な処理であった。会議録の調製をめぐる紛争がどちらに近いかは、個別の事案で議員の権利にどの程度の制約が及ぶかによって判断されることになる。

5-4 第121条に関する政府答弁

前述のとおり、令和4年6月3日の答弁書(第208回国会質問第七二号に対するもの)が第121条について政府の見解を示している。議会の審議に必要な説明のため出席を求められた者は議場に出席しなければならないとし、説明のための出席を求めることが必要かどうかは各議会の議長が適切に判断すべきものであるとする。

質問主意書が求めた三つの論点、すなわち答弁予定のない部長等への出席要求、審議を聴かせるための出席要求、国会の本会議のように答弁者のみが議席に座る運用の是非について、政府は議長の判断に委ねるという形で答えた。条文の文言を超える基準を示していないため、各議会が自ら必要性を吟味する責任を負う構造になっている。


6 実務データで見る第123条

全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果(令和7年中)」(815市)から、会議録の作成に関わる数値を紹介する。

6-1 会議録の作成とICT化

項目(令和7年12月31日現在・815市)市数割合
音声認識システムを導入している39648.6%
導入していない36044.2%
その他(試行等)597.2%
インターネットで検索できる会議録システムがある40149.2%
議員全員にタブレット端末を導入している71387.5%

音声認識システムを導入した396市について、どの会議で使っているかを見ると、委員会が368市(92.9パーセント)、協議等の場が268市(67.7パーセント)、本会議が136市(34.3パーセント)である。本会議での利用が3分の1にとどまるのは、本会議の会議録が署名を要する正式な記録であり、整文の精度への要求が高いことによると考えられる。

会議録の作成を外部委託している議会では、音声認識の導入が委託業務の内容に影響する。第123条が作成の主体を事務局長または書記長としている以上、音声認識やAIによる文字起こしは作成を補助する手段にとどまり、最終的な責任は事務局長または書記長が負う。この整理を曖昧にしたまま委託仕様を組むと、記録の正確性に対する責任の所在が不明になる。

協議等の場(第100条第12項)の記録をインターネットで検索できる市は、協議等の場を置く625市のうち91市(14.6パーセント)である。協議等の場の記録は第123条の会議録ではないため、作成も公開も法律上の義務ではない。本会議の会議録と協議等の場の記録の間に、法的な扱いの差がそのまま公開の差として現れている。

6-2 会議録と公開の関係

第123条は会議録の作成、署名、長への報告を定めるが、公表については何も定めていない。会議録を住民に公開する根拠は、第115条の会議公開の原則と、各自治体の情報公開条例に求められる。議会を実施機関に含める情報公開条例が一般的であり、会議録は開示請求の対象となる。

実務の整理としては、原本には取り消された発言と秘密会の記録を含めて保存し、閲覧の対象からは秘密会の部分を除くという扱いが示されている。配布用会議録を閲覧に供し、写しの交付は有料とする運用も行われている。これらはいずれも法律の定めではなく、会議規則と情報公開条例の運用による。


7 施行令・施行規則の関連規定

7-1 第122条を具体化する施行令第144条

第122条が提出を義務づける予算に関する説明書の中身を定めているのは、施行令第144条である。同条第1項は、第211条第2項に規定する政令で定める予算に関する説明書として次の五つを列挙する。

第一に、歳入歳出予算の各項の内容を明らかにした歳入歳出予算事項別明細書および給与費の内訳を明らかにした給与費明細書。第二に、継続費についての前前年度末までの支出額、前年度末までの支出額または支出額の見込みおよび当該年度以降の支出予定額ならびに事業の進行状況等に関する調書。第三に、債務負担行為で翌年度以降にわたるものについての前年度末までの支出額または支出額の見込みおよび当該年度以降の支出予定額等に関する調書。第四に、地方債の前前年度末における現在高ならびに前年度末および当該年度末における現在高の見込みに関する調書。第五に、その他予算の内容を明らかにするため必要な書類である。

予算書本体が款項レベルの金額を示すのに対し、これらの書類は目や節の内容、継続費と債務負担行為の進行状況、地方債の残高推移を明らかにする。議会が予算を審査するために何を見るべきかを、政令が具体化しているわけである。

第五号が「その他予算の内容を明らかにするため必要な書類」という包括的な定めになっているため、第一号から第四号までに該当しない資料も説明書として提出しうる。第122条の「その他当該普通地方公共団体の事務に関する説明書」と併せて、議会が求める資料に応じる余地が条文上確保されている。

同条第2項は、第1項第一号から第四号までに規定する書類の様式は総務省令で定める様式を基準としなければならないと定める。政令から省令へのさらなる委任である。

7-2 様式を定める施行規則第15条の2

施行令第144条第2項の委任を受けるのが施行規則第15条の2であり、予算に関する説明書の様式を別記のとおりと定める。

予算に関する書類の様式は、施行規則の中で一群をなしている。第14条が予算の調製の様式を、第15条が歳入歳出予算の款項の区分ならびに目および歳入予算に係る節の区分を定め、同条第2項は歳出予算に係る節の区分を別記のとおり定めなければならないとする。第15条の3が継続費繰越計算書および継続費精算報告書の様式、第15条の4が繰越明許費繰越計算書の様式、第15条の5が事故繰越し繰越計算書の様式を定める。決算については第16条が決算の調製の様式、第16条の2が歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書および財産に関する調書の様式を定める。

第122条を読むだけでは、議会に何がどの形で出てくるのかは分からない。第211条第2項、施行令第144条、施行規則第15条の2と別記様式まで辿って初めて、議案と一緒に机上に配られる書類の全体像が見える。予算審査を担当する議会事務局の職員にとって、この連鎖は押さえておく必要がある。

なお施行規則第15条は、令和8年度に限り、歳入歳出予算の款項の区分および目の区分について新型コロナウイルス感染症対策地方税減収補塡特別交付金に関する特例を附則第4条で定めている。様式は固定されたものではなく、税財政制度の改正に応じて改められる。

7-3 第123条第3項を受ける施行規則第12条の2の2

電磁的記録の会議録についてとるべき署名に代わる措置を定めるのが、施行規則第12条の2の2である。同条は、第123条第3項の総務省令で定める措置を、総務省関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則第2条第2項第1号イに規定する電子署名とする。

会議録を電磁的記録で作成する場合、議長および議会において定めた二人以上の議員が、この電子署名を行わなければならない。署名議員が電子署名を行える環境を整えないまま会議録の電子化に踏み切ると、第123条第3項の要件を満たせない。タブレット端末の導入が713市(87.5パーセント)に広がっている一方で、電子署名の運用整備は別の課題として残る。

関連して、議会に係る手続のオンライン化については施行規則第12条の2の3から第12条の2の9までが規定を置き、同第12条の2の9は、これらに定めるもののほか必要な事項は議会等が定めるとしている。会議録の電子化に伴う手続は、省令が定める電子署名の要件を満たしつつ、残りを会議規則とデジタル化に関する規程で整えることになる。

7-4 第121条に対応する政省令はない

施行令と施行規則を全文検索したところ、第121条を受けて手続を定めた規定は存在しない。「会議録」「出席」の語は施行令に一度も現れず、出席要求の手続、委任・嘱託の方法、ただし書の正当な理由の基準を定めた政省令はない。

出席要求の実務は、議会運営委員会の決定と議会・執行機関の間の申合せによって運営されている。前述の大津市議会の例のように、説明員の範囲と追加の手続を申合せで定めるのが一般的な姿である。

番号の一致には注意が必要である。施行令にも第121条の3から第121条の5までの規定があるが、これらは法第121条とは無関係で、第96条第2項の議決事件の対象外事務(施行令第121条の3)、第98条の検査・監査請求の対象外事務(同第121条の4)、第100条の調査の対象外事務(同第121条の5)を定めている。

もっとも、これらの政令と第121条の間には読み合わせておくべき関係がある。施行令第121条の4第1項は、第98条第1項に規定する労働委員会および収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものとして、労働組合法の規定による労働争議のあっせん、調停および仲裁その他労働委員会の権限に属する事務(組織に関する事務および庶務を除く)ならびに土地収用法の規定による収用に関する裁決その他収用委員会の権限に属する事務(組織に関する事務および庶務を除く)を掲げ、これらを検査の対象から除く。同条第2項は、検査に際して開示をすることにより国の安全を害するおそれがある事項に関する事務および個人の秘密を害することとなる事項に関する事務を対象外とし、同第121条の5がこれらを第100条の調査に準用する。

第121条は労働委員会の委員を出席義務者として名指しし、「その他法律に基づく委員会の代表者又は委員」として収用委員会の会長等も対象に含める。ところが両委員会の中核的な権限事務は、施行令第121条の4により議会の検査と調査の対象から外されている。出席義務の対象であることと、説明を求められる事項の範囲とは別の問題である。議場に出席した労働委員会の委員に、個別の労働争議のあっせんの内容を説明させることはできない。出席義務者の一覧だけを見て説明を求める範囲を考えると、この限界を見落とす。


8 実務上の処理手順

8-1 説明員の出席を要求するとき

会期ごとに、議案と質疑の内容に応じて説明員の範囲を検討する。議会運営委員会で協議し、説明者一覧を作成する。長および各委員会の代表者については条文の列挙に従い、副知事・副市町村長、部長、会計管理者、事務局長等については委任または嘱託を受けた者として記載する。

議長名で執行機関に出席要求を行う。会期中に質疑の関係で説明員の追加が必要になった場合の手続は、あらかじめ申合せで定めておく。議長判断により追加要請する旨を定めている議会が多い。

通年の会期を採用している議会では、定例日以外の日に出席を求める場合に第121条第2項の配慮義務が働く。出席を求める必要性と執行機関の事務への影響を検討した経過を記録に残しておくと、後の説明に役立つ。

8-2 出席できない旨の届出があったとき

ただし書による免除を主張する届出があった場合、出席すべき日時と出席できない理由を確認する。届出は書面で受けるのが確実である。

正当な理由の判断基準は法律にないため、各議会で運用の目安を整理しておくことが望ましい。他の公務との重複であれば、代替の説明者を立てられるかを執行機関と調整する。

8-3 会議録を作成するとき

議長が事務局長または書記長に作成させる。書面か電磁的記録かは議会の方針に従う。

会議の次第と出席議員の氏名は法律上の記載事項である。それ以外の記載事項は会議規則が定めるところによる。整文の基準、情景描写の扱い、取消発言の処理については、法令に定めがないため議長決裁で基準を定めておく運用が示されている。

音声認識システムを用いる場合も、作成の責任は事務局長または書記長にある。認識結果の校正と整文の手順、確認の責任者を内部手続として明確にしておく。

8-4 署名と報告

署名議員は議会が定める。会議の冒頭で議長が指名する運用が通例である。書面の会議録であれば議長および署名議員が署名する。

電磁的記録の会議録であれば、施行規則第12条の2の2が定める電子署名を行う。署名議員の電子証明書の取得と有効期限の管理を事務局で把握しておく。

会議録が完成したら、議長が会議の結果を長に報告する。書面であればその写しを、電磁的記録であれば当該電磁的記録を添える。報告の日付と添付物を記録しておく。


9 昇任試験で問われる論点

第121条では、出席義務者の範囲を正確に挙げられることが前提となる。長、教育委員会の教育長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会または公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農業委員会の会長、監査委員、その他法律に基づく委員会の代表者または委員、およびこれらの委任または嘱託を受けた者という構造を押さえる。労働委員会は委員長ではなく委員であること、附属機関の委員は含まれないことまで書ければ差がつく。

出席要求の主体が議長であること、要求の目的が議会の審議に必要な説明に限られること、義務違反に罰則がないことは択一の定番である。第100条の証人の出頭義務が罰則と告発義務を伴うこと(同条第3項、第9項)との対比で整理しておく。

平成24年改正で設けられたただし書と第2項の違いも問われやすい。ただし書は出席を求められた側の免除要件であり、第2項は通年の会期を採用した議会の議長に課された配慮義務である。適用対象が異なる点を書き分ける。

第122条では、提出義務の主体が長であること、昭和31年改正で任意から義務に改められたこと、予算に関する説明書の中身は第211条第2項の委任を受けた施行令第144条が定めることを押さえる。五種類の書類を挙げられれば厚みが出る。

第123条では、作成させる義務を負うのが議長であり作成するのが事務局長または書記長であること、法律上の記載事項が会議の次第と出席議員の氏名の二つであること、書面と電磁的記録で署名の方法が分かれること、報告の相手方が長に限られることを整理する。昭和44年改正で自治大臣への報告義務が廃止された経緯も使える。

論文では、二元代表制における議会の情報収集手段を素材とする設問が考えられる。第98条の検査権、第100条の調査権、第115条の2の公聴会・参考人、第121条の出席説明、第122条の説明書提出を並べ、強制力の有無と対象の広狭によって整理する。そのうえで、施行令第121条の4が労働委員会と収用委員会の権限事務を検査・調査の対象から除いていることを指摘し、出席義務の範囲と説明を求めうる事項の範囲が一致しないことを論じると、条文の読み込みの深さを示せる。


10 国の制度との簡単な対比

出席については、憲法第63条が「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」と定める。出席する権利と出席する義務の両方を規定した構成である。

地方自治法第121条には、長が議場に出席する権利を定めた規定がない。出席を求められたときの義務だけが定められている。実務では長が自ら出席して議案の提案理由を説明するが、これは議長の出席要求に応じる形をとる。議院内閣制の下で国務大臣が議院に議席を持ちうる国会と、長が議員を兼ねられない地方(第141条第2項)との構造の違いが、この差に表れている。

会議録については、憲法第57条第2項が、両議院は各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外はこれを公表し、かつ一般に頒布しなければならないと定める。同条第3項は、出席議員の5分の1以上の要求があれば各議員の表決を会議録に記載しなければならないとする。

地方自治法第123条は、作成、署名、長への報告を定めるにとどまり、公表と頒布を義務づける規定を置いていない。各議員の表決の記載を請求する仕組みもない。会議録の公開は第115条の会議公開の原則と情報公開条例に委ねられ、個々の議員の賛否の公表は議会の自主的な取組として行われている。会議録に関する制度保障の厚みは、国会と地方議会で大きく異なる。

地方公務員法との関係では、議会事務局の職員の任命権者は議長である(第138条第5項、地方公務員法第6条第1項)。第123条が事務局長または書記長に会議録を作成させると定めているのは、議長の指揮の下にある職員に対する職務の指定であり、第104条の事務統理権と第138条第7項の指揮関係を前提としている。他方、第121条により出席する部長等は長の補助機関であって議長の指揮を受ける立場にない。同じ議場にいながら、議会事務局の職員と執行機関の職員は指揮命令の系統を異にする。


11 参考資料


◆自治体研修850回超の行政書士が、係長・課長昇任試験の論文を1本から添削します。 https://compliance21.com/promotion-examination-lg/

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