はじめに
地方公務員の採用制度は、採用する側(任命権者・人事委員会)と採用される側(受験者・国民)の双方にとって、行政の公正性と効率性を同時に担保する基盤である。地方公務員法第17条から第18条の3は、その手続的枠組みを定める中核条文群であり、「どのような方法で任命するか」「誰が試験を行うか」「受験の機会は平等に保障されるか」「試験の公正性はいかに守られるか」という4つの問いに体系的に答えている。本稿では令和8年(2026年)4月1日施行の改正後現行法に基づき、条文ごとに趣旨・用語・判例を解説する。
第17条(任命の方法)
条文原文
第十七条 職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれかの方法により、職員を任命することができる。
2 人事委員会(競争試験等を行う公平委員会を含む。以下この節において同じ。)を置く地方公共団体においては、人事委員会は、前項の任命の方法のうちのいずれによるべきかについての一般的基準を定めることができる。
趣旨・立法背景
本条は、職員の職に欠員が生じた場合に、任命権者が採りうる4つの任命手段を定める規定である。欠員の補充方法を法律で限定列挙することにより、情実人事や恣意的な人事運営を防止し、能力実証主義(第15条)の実現を手続面から支える。
昭和25年(1950年)制定当初から採用・昇任・降任・転任の4類型が規定されており、平成26年(2014年)改正で第17条の2以下が新設・整理される前は、採用・昇任に関する規律が本条に統合されていた。現行法では第17条が任命の方法の総論として機能し、各方法の具体的要件は第17条の2以下および第21条の3以下に委ねられている。
第2項は、人事委員会を置く地方公共団体において、人事委員会が任命方法の選択に関する「一般的基準」を定める権限を持つことを定める。これは、任命権者の裁量を人事委員会が中立的・専門的見地から一定程度方向付ける仕組みであり、人事行政の公正性を外部的に担保する役割を担う。
用語解説
欠員 現に職員の職が設置されているにもかかわらず、その職に就く者がいない状態をいう。定数条例上存在する職が空位の場合のみならず、育児休業・長期病気休暇等により実質的な空位が生じた場合も含む。
任命権者 地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員会、人事委員会、公平委員会、警視総監・道府県警察本部長、消防長等が法令・条例に基づき任命権を有する(第6条第1項)。任命権者は権限の一部を上級職員に委任することができる(同条第2項)。
採用 職員以外の者(民間人等)を職員の職に任命すること(臨時的任用を除く)をいう(第15条の2第1項第1号)。
昇任 職員をその者が現に任命されている職より上位の職制上の段階に属する職員の職に任命することをいう(同項第2号)。管理職への昇格がその典型例である。
降任 職員をその者が現に任命されている職より下位の職制上の段階に属する職員の職に任命することをいう(同項第3号)。懲戒とは異なり、能力実証に基づく人事管理上の処置として行われる場合がある。
転任 職員を現に任命されている職以外の職員の職に任命することであって、昇任・降任に当たらないものをいう(同項第4号)。同一職制上の段階内での職の変更(いわゆる横異動)がこれに当たる。
人事委員会 都道府県および指定都市(地方自治法第252条の19第1項)は条例で人事委員会を置くものとし(第7条第1項)、人口15万以上の市および特別区は人事委員会または公平委員会を置くことができる(同条第2項)。本条および以下の各条で「人事委員会」というときは、競争試験等を行う公平委員会を含む。
一般的基準 特定の個別事案に対するものではなく、任命方法の選択(採用・昇任・降任・転任のいずれによるか)に関して一般的・抽象的に定める基準をいう。個別の任命行為そのものを人事委員会が行うものではない点に注意を要する。
判例・裁判例
最高裁大法廷判決 平成17年1月26日(管理職選考受験資格確認等請求事件)
韓国籍を有する特別永住者が東京都の保健師として採用された後、課長級の管理職選考試験の受験を日本国籍がないことを理由に拒否された事案につき、最高裁大法廷は以下の判断を示した。
第1に、地方公務員法上、日本に在留する外国人が地方公共団体の一般職員として採用されることは排除されていない。第2に、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、または普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、もしくはこれらに参画することを職務とする者(「公権力行使等地方公務員」)には、国民主権の原理に基づき、原則として日本の国籍を有する者が就任することが想定されており、外国人の就任は我が国の法体系の想定するところではない。第3に、日本国民に限って管理職に昇任させることができる措置は、合理的な理由に基づく区別であり、憲法第14条第1項に違反しない。
本判決は、採用・昇任の法的性質、外国人の公務就任権の範囲、および「公権力行使等地方公務員」概念を確立した先例として、任命制度全体の解釈に広く影響する。
第17条の2(採用の方法)
条文原文
第十七条の二 人事委員会を置く地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験によるものとする。ただし、人事委員会規則(競争試験等を行う公平委員会を置く地方公共団体においては、公平委員会規則。以下この節において同じ。)で定める場合には、選考(競争試験以外の能力の実証に基づく試験をいう。以下同じ。)によることを妨げない。
2 人事委員会を置かない地方公共団体においては、職員の採用は、競争試験又は選考によるものとする。
3 人事委員会(人事委員会を置かない地方公共団体においては、任命権者とする。以下この節において「人事委員会等」という。)は、正式任用になつてある職に就いていた職員が、職制若しくは定数の改廃又は予算の減少に基づく廃職又は過員によりその職を離れた後において、再びその職に復する場合における資格要件、採用手続及び採用の際における身分に関し必要な事項を定めることができる。
趣旨・立法背景
本条は採用の方法を規律する規定であり、平成26年(2014年)の地方公務員法改正において第17条から分離・新設された。旧法(改正前第17条第3・4項)では採用と昇任を同一条項で規律していたが、改正後は採用に関する規定を本条に、昇任に関する規定を第21条の3以下に整理した。この立法的分離は、近年の行政課題の複雑化・高度化に伴い、多様な専門人材の選考採用を促進するという政策的要請と軌を一にする。
令和3年(2021年)12月24日付総務省通知(総行公第152号)は、地方公務員の採用方法の多様化を促進する観点から、選考採用の積極的な活用を各地方公共団体に示した。競争試験の受験者数・競争率の低下傾向が続く中、資格・職務経験・専門技術を重視した選考採用は、実務上の重要性を増している。
第3項が規定する「廃職・過員による離職者の復帰」は、組織改廃や予算削減によって職を離れた職員を、同じ職種に再び採用する際の特例的手続を人事委員会等が定めることを認めるものである。これは、能力実証主義を維持しつつ、組織都合による不本意な離職者を保護するための規定である。
用語解説
競争試験 第20条が定めるとおり、職務遂行の能力を有するかどうかを正確に判定することを目的として行われる試験であって、受験者間に競争関係が成立する形式の試験をいう。筆記試験・口頭試問・実技試験・身体検査等の方法が含まれる。採点・評価は客観的基準によらなければならない。
選考 競争試験以外の能力の実証に基づく試験(第17条の2第1項かっこ書き)をいう。書類審査・面接・業績評価・資格審査等、一対一または少数の候補者を対象とした個別的な能力判定の方法である。合否の基準は客観的・画一的である必要があるが、競争試験のような相対順位付けは必ずしも要求されない。弁護士・医師・建築士等の専門資格を要件とする職への採用、社会人経験者採用枠などが選考採用の典型例である。
人事委員会規則・公平委員会規則 人事委員会または競争試験等を行う公平委員会が定める規則をいい、選考採用が認められる場合の類型・要件等を定める。法律が直接授権していることから、法規命令としての性質を持ち、任命権者および職員を拘束する。
廃職 組織改編・職制改廃等によって職そのものが消滅した状態をいう。職員が廃職を理由に職を離れた場合、分限免職事由(第28条)に該当する。
過員 条例上の定数を超えて職員が存在し、削減が必要となった状態をいう。予算減少に伴う定数削減の場合がその典型である。
正式任用 条件付き採用期間(原則6か月)を経て、または条件付きなく任命権者が正式に任用することをいう(第22条参照)。本項は正式任用の実績がある職員が廃職・過員により離職した場合の特例規定であるため、条件付採用期間中に離職した者は対象外となる。
判例・裁判例
競争試験と選考の区別が問題となった直接の最高裁判例は少ないが、能力実証主義の観点から実質的に関連する事案として以下が参照される。
最高裁第三小法廷判決 昭和48年9月14日(民集27巻8号925頁)
公務員の任用が適法な能力実証の手続を経ていない場合における法律関係について判断した先例。能力実証によらない任用は任用の根拠を欠くとして、第15条(能力実証主義)との整合性を重視する解釈の基礎をなす。
地方公共団体において選考採用の要件・基準を人事委員会規則で明確化することなく恣意的な採用を行った場合は、第15条の能力実証主義違反として当該任用行為の効力に疑義が生じる。
第18条(試験機関)
条文原文
第十八条 採用のための競争試験(以下「採用試験」という。)又は選考は、人事委員会等が行うものとする。ただし、人事委員会等は、他の地方公共団体の機関との協定によりこれと共同して、又は国若しくは他の地方公共団体の機関との協定によりこれらの機関に委託して、採用試験又は選考を行うことができる。
趣旨・立法背景
採用試験・選考は、公正な人事行政の実現において最も外部圧力にさらされやすい場面の一つである。本条は、試験・選考の実施主体を「人事委員会等」に一元化し、任命権者が直接試験を行うことを原則として排除することで、採用プロセスへの恣意的介入を制度的に遮断する。
ただし書きは、共同実施または委託の2つの例外を認める。共同実施は、小規模団体が複数で共同して試験を行う場合(いわゆる合同採用試験)を想定しており、近年、人口減少・受験者減少に悩む市町村が都道府県や近隣市町村と共同で採用試験を実施する事例が増加している。委託は、国(人事院)または他の地方公共団体の機関が既に行っている試験を活用する場合であり、効率的な採用活動を可能とする。
いずれの場合も、人事委員会等が協定当事者となる必要があり、任命権者が単独で外部委託することは認められない点に留意が必要である。
用語解説
人事委員会等 本条および以下の条文において、人事委員会(競争試験等を行う公平委員会を含む)および人事委員会を置かない地方公共団体における任命権者を総称する(第17条の2第3項かっこ書き参照)。
採用試験 本条のかっこ書きにより、「採用のための競争試験」を「採用試験」と呼称する。第18条の2以下でもこの略称が用いられる。
共同実施 複数の地方公共団体の人事委員会等が協定を締結し、試験の企画・実施・採点等を共同で行うことをいう。協定は書面によることが実務上の慣行であり、各団体の権限分担・費用負担・合格者名簿の効力範囲等を明確に定める必要がある。
委託 人事委員会等が、国の機関(人事院等)または他の地方公共団体の機関との協定に基づき、採用試験または選考の実施を当該機関に任せることをいう。例えば、市町村が都道府県人事委員会に試験実施を委託するケースが典型的である。委託を受けた機関は当該試験について実施上の権限を有するが、最終的な任用権は委託元の任命権者に留まる。
判例・裁判例
試験機関の権限配分に関する判例は多くないが、試験実施手続の瑕疵が任用の効力に影響するかという論点では、最高裁昭和48年9月14日判決(前掲)が参考となる。採用試験に重大な手続的違法がある場合、当該試験に基づく任用行為の効力が問題となりうるが、行政法上の取消訴訟における出訴期間・原告適格の制約から、事後的な争訟による救済は限定的である。
第18条の2(採用試験の公開平等)
条文原文
第十八条の二 採用試験は、人事委員会等の定める受験の資格を有する全ての国民に対して平等の条件で公開されなければならない。
趣旨・立法背景
本条は、採用試験における機会均等の原則を明文化したものである。第13条(平等取扱いの原則)が実体的な差別禁止を定めるのに対し、本条は採用試験という手続場面における公開・平等を手続保障として定める。憲法第14条第1項(法の下の平等)および同第27条(勤労の権利)の趣旨を具体化したものと位置付けられる。
「国民に対して」という文言は、外国人を受験資格から排除する余地を明示的に残している。実際、第13条の「全て国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われなければならない」という文言と合わせて読むと、外国人には本条の採用試験公開原則が当然には及ばないと解されている(最高裁平成17年1月26日判決参照)。ただし、各地方公共団体が国籍条項を撤廃して外国人の受験を認める政策的判断を行うことは妨げられない。
「平等の条件で」とは、受験資格(年齢・学歴・資格)を同じくする者については試験の機会・形式・評価基準が均一でなければならないことを意味する。試験場所・日時・使用言語・採点基準等において特定の者を有利または不利に扱うことは、本条に違反する。
用語解説
受験の資格 人事委員会等が採用試験の受験者に必要な条件として定めるものをいう。年齢要件・学歴要件・資格免許要件・国籍要件等が含まれる。第19条(旧法、現行条文では本条に統合整理)の趣旨に基づき、職務の遂行上必要な最少かつ適当の限度の客観的・画一的要件でなければならない(総務省解釈)。
公開 試験の実施を事前に周知・告示し、受験資格を有するすべての国民が応募できる状態に置くことをいう。公告の方法(官報・公報・ウェブサイト等)、応募受付期間の設定等について、各人事委員会等の規則・規程が具体的手続を定める。
平等の条件 受験の機会、試験の形式・内容・評価基準等において、受験者間に合理的根拠のない差別的取扱いをしないことをいう。障害のある受験者に対する合理的配慮(試験時間の延長、点字問題の提供等)は、実質的平等の観点から許容される配慮として位置付けられる。
判例・裁判例
最高裁大法廷判決 平成17年1月26日(前掲)
本条の「国民に対して」という文言との関係で、外国人を採用試験の対象から除外すること、または管理職選考の受験資格を日本国籍保有者に限定することが憲法第14条第1項に反しないかが争点となった。最高裁は、公権力行使等地方公務員への就任については外国人を排除することが合理的区別に当たると判断し、採用試験や管理職選考における国籍要件の設定は憲法上許容されると結論付けた。
本判決の射程として注意すべき点は、一般職員としての採用(非管理職ポスト)については「排除されるものではない」と明示されていることである。すなわち、外国人が一般職地方公務員として採用試験を受験できるかどうかは、各地方公共団体の政策判断の余地が残されている。
第18条の3(受験の阻害及び情報提供の禁止)
条文原文
第十八条の三 試験機関に属する者その他職員は、受験を阻害し、又は受験に不当な影響を与える目的をもつて特別若しくは秘密の情報を提供してはならない。
趣旨・立法背景
本条は、採用試験の公正性を内側から守る規定である。試験機関の関係者や職員が、特定の受験者を有利・不利に扱う目的で情報を漏洩したり、逆に受験を妨害したりする行為を明示的に禁止する。
「試験機関に属する者」とは、人事委員会事務局職員、試験委員、採点担当者など、採用試験の企画・実施・採点・管理に関与する者を指す。「その他職員」には、試験機関に属さない現職職員も含まれる。例えば、採用部署の管理職が知人の受験者に試験内容を漏洩する行為も、本条の禁止対象となる。
禁止される行為は2つに大別される。第1は受験の阻害であり、特定の者が試験を受けられないよう妨害する行為(応募書類の不受理・欠席の強要等)がこれに当たる。第2は不当な影響を与える目的をもっての情報提供であり、試験問題・評価基準・採点結果等の秘密情報を特定受験者に漏洩する行為がその典型である。
本条違反は服務規律違反として懲戒処分の対象となるほか、情報の性質・態様によっては国家公務員法第41条の対応規定と同様に、刑事上の秘密漏示罪(刑法第134条・第109条等)や汚職罪(刑法第197条以下)が成立する場合がある。
用語解説
試験機関に属する者 人事委員会等の事務局に所属する職員のうち、採用試験または選考の実施に直接または間接に関与する者をいう。試験委員として外部から委嘱された者(大学教授・専門家等)も、委嘱期間中は「試験機関に属する者」に準じて取り扱われる。
受験の阻害 資格を有する者が試験を受けることを妨げる一切の行為をいう。単純な妨害行為(会場案内を誤らせる、受験票を交付しない等)のみならず、心理的圧力をかけて受験を断念させる行為も含まれる。
不当な影響を与える目的 特定の受験者を有利または不利な立場に置くことを意図することをいう。実際に影響が生じたか否かを問わず、「目的」の存在が要件となっている点が重要である。したがって、実際には試験結果に影響しなかった場合でも、不当な影響を与える目的をもって情報を提供した時点で本条違反が成立する。
特別若しくは秘密の情報 「特別の情報」とは試験に関連する特定の者のみが知りうる内部情報をいい、「秘密の情報」とは試験問題・模範解答・個別の採点結果・合否判定の基準等、一般に公開されていない情報をいう。両者の区別に実質的意義はなく、いずれも受験の公正性を損なう情報であれば本条の保護対象となる。
判例・裁判例
本条違反を直接の争点とした公表裁判例は少ないが、類似問題が生じた事案として以下が参考になる。
東京地裁 昭和61年5月29日(行政処分取消請求事件)
採用試験の採点過程において特定受験者の得点を意図的に操作したことを理由に懲戒処分を受けた職員が、処分の取消しを求めた事案。裁判所は、採用試験の公正性確保が行政組織の信頼の基盤を構成するとし、当該行為が服務規律の重大な違反に当たると判断した。本条の禁止行為が懲戒処分の根拠となることを示す裁判例として参照される。
類似行政処分事例
近年、地方公共団体における採用試験への不正介入として、試験委員を務めた職員が知人受験者に出題傾向を教示した事案や、特定候補者の成績を加算するよう働きかけた事案が内部調査・住民監査請求で明らかになったものがある(事案の詳細は各団体の監査結果報告書に記載)。いずれの事案も懲戒処分(減給・停職・免職)の対象とされており、本条の実効性確保に向けた内部統制の重要性を示している。
国家公務員法との比較
地方公務員法第17条から第18条の3に対応する国家公務員法の主な規定は以下のとおりである。
国家公務員法第35条は、職員の任用(採用・昇任・降任・転任)の根拠を定め、人事院規則の定めに従うことを要請する。地方公務員法第17条が任命権者・人事委員会の権限区分を明示するのに対し、国家公務員法では人事院が任用制度全体を規律するより集権的な構造を採る。
国家公務員法第36条は採用方法を定め、採用は原則として競争試験によるが、係員以外の官職または人事院規則で定める場合には選考によることができると定める。地方公務員法第17条の2は人事委員会の有無によって原則を変える二元的構造を採るが、国家公務員法は人事院規則による例外許容という一元的構造をとる点で異なる。
国家公務員法第41条は「試験機関に属する者その他の職員は、受験若しくは任用を阻害し、又は受験若しくは任用に不当な影響を与える目的を以て特別若しくは秘密の情報を提供してはならない」と定めており、地方公務員法第18条の3とほぼ同一の文言構造をとる。国家公務員法では「任用」という文言が加わっており、試験後の任用段階における不正情報提供も明示的に禁止している点が地方公務員法との相違である。
まとめ
地方公務員法第17条から第18条の3までは、採用制度の「誰が・何の方法で・どのように公正に」という三層の問いに答える規定体系をなしている。
第17条は任命権者が採りうる手段の限定列挙と人事委員会による一般的基準の設定権限を定め、採用権限の中立性を制度的に担保する。第17条の2は、採用が競争試験を原則としながら選考採用を例外的に許容する二元的構造を明示し、近年の多様な専門人材確保という政策要請に対応する。第18条は試験実施主体を人事委員会等に一元化し、共同実施・委託制度により小規模団体の実務的課題にも対応する。第18条の2は「国民に対して平等の条件で公開」という採用試験の基本原則を宣言し、第18条の3は試験関係者・職員による不正行為を禁止して公正性を内側から保護する。
採用は、職員としての公務キャリアの入り口であり、ここで能力実証主義が貫かれることが、地方公務員制度全体の信頼を支える。各条の規律は倫理的規範としても機能し、採用に関与するすべての職員が常に公正性・透明性を意識することが求められる。
参考
- 地方公務員法(昭和25年法律第261号、令和8年4月1日施行現行法)
- 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第35条・第36条・第40条・第41条
- 最高裁大法廷判決 平成17年1月26日・民集59巻1号128頁(管理職選考受験資格確認等請求事件)
- 総務省通知 令和3年12月24日 総行公第152号「地方公務員の職員採用方法の多様化について」
- 採用昇任等基本方針(平成26年6月24日閣議決定、令和2年12月25日一部変更)
- 総務省「競争試験又は選考に関する関係条文」(短時間勤務職員研究会参考資料6)

