1 条文原文
(この法律の適用を受ける地方公務員)
第四条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。
2 この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。
2 趣旨・立法背景
(1) 本条の位置づけ
地方公務員法(以下「地公法」)は、前条(第3条)で全地方公務員を「一般職」と「特別職」に区分した。本条はその区分を受けて、地公法が適用される範囲を確定する規定である。1項が積極的に適用対象を宣言し、2項が適用除外の原則を定めるという構造をとる。
地公法第4条1項は、第3条の職種区分の実務上の帰結を示す。一般職は「特別職に属する職以外の一切の職」(第3条2項)であり、残余カテゴリとして包括的に定義されるため、本条1項の「すべての地方公務員」もまた包括的に適用対象に取り込まれる。
(2) 一般職への全面適用を定めた理由
地公法が定める根本基準——成績主義に基づく任用(第15条)、政治的中立性の保持(第36条)、身分保障(第27条・第28条)、服務(第30条以下)——は、職業公務員制度の中核をなす。これらは、住民全体への奉仕者として継続的・安定的に行政を担う公務員に対して課される規律であり、当然に一般職に属するすべての職員に及ぶ。
(3) 特別職を原則不適用とした理由
特別職は、公選や議会の議決・同意、特別の任用(委嘱)等によって就任する職であり、成績主義・身分保障・服務規律等を一律に適用することが制度上そぐわないか、実際上不可能な場合が多い。たとえば、選挙で選ばれた首長に対して成績主義による昇任制度を適用することや、一定任期の審議会委員に身分保障を付与することは、制度の趣旨と相容れない。このため、地公法は特別職を原則として適用外とし、各特別職に固有の法令——公職選挙法、地方公営企業法等——による規律に委ねた。
(4) 「職員」という略称の確定
本条1項後段の括弧書きにより、「一般職に属する地方公務員」が「職員」と略称されることが確定する。以後、地公法の条文で登場する「職員」は、すべて一般職の地方公務員を指す。法律用語としての「職員」の意味が確定的に定まる点で、本条は定義規定としての機能も有する。
3 対応する国家公務員法の規定
国家公務員法 第2条(職員の範囲)
(職員の範囲)
第二条 (略)
2 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。
3 特別職は、左の各号に掲げる職とする。
(第1号〜第17号 略)
4 この法律の規定は、一般職に属するすべての職(以下その職を官職といい、その職を占める者を職員という。)に、これを適用する。人事院は、ある職が、国家公務員の職に属するかどうか及び本条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有する。
5 この法律の規定は、この法の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には、これを適用しない。
(国家公務員法 昭和22年法律第120号)
地公法との対照
| 比較点 | 地方公務員法 第4条 | 国家公務員法 第2条4項・5項 |
|---|---|---|
| 適用対象の確定 | 一般職のすべての地方公務員 | 一般職のすべての官職(職員) |
| 特別職の扱い | 「法律に特別の定がある場合を除く外」不適用 | 「改正法律により別段の定がなされない限り」不適用 |
| 職種区分の権限 | 明文規定なし(法律解釈・行政解釈による) | 人事院が決定権限を有する旨明記 |
| 「職員」の定義 | 本条1項括弧書きで確定 | 2条4項括弧書きで「官職を占める者を職員という」と確定 |
地公法と国公法の最大の差異は、職種の帰属を決定する機関の有無である。国家公務員については、人事院が「ある職が国家公務員の職に属するかどうか、及び一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有する」と明文で定める(国公法2条4項後段)。地方公務員については同種の明文規定がなく、各地方公共団体が法令の解釈・行政実例・通知等に基づいて判断する構造をとっている。
国家公務員の特別職は第2条3項に第1号から第17号まで列挙されており、内閣総理大臣、国務大臣、裁判官、国会議員、自衛官(防衛省職員)、宮内庁職員の一部等、約30万人が含まれる。このうち自衛官を含む防衛省職員が約26.8万人を占め、次いで裁判所職員が約2.6万人である(人事院「国家公務員の数と種類」)。
4 対応する国家公務員倫理法・同規程の規定
国家公務員倫理法 第1条・第2条
(目的)
第一条 この法律は、国家公務員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務であることにかんがみ、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律(第二十一条第二項及び第四十二条第一項を除く。)において、「職員」とは、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第二項に規定する一般職に属する国家公務員(委員、顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しないものを除く。)をいう。
(国家公務員倫理法 平成11年法律第129号)
倫理法における「職員」概念と地公法「職員」の相違
国家公務員倫理法(以下「倫理法」)が適用される「職員」は、国公法2条2項に規定する「一般職に属する国家公務員」であって、さらに「委員、顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しないもの」を除外したものである(倫理法2条1項)。すなわち、倫理法の「職員」は国公法上の一般職の中でも諮問的な非常勤職員等を除外した限定概念である。
これに対して地公法第4条の「職員」は、一般職に属するすべての地方公務員であり、フルタイム職員のみならず会計年度任用職員(パートタイム含む)も含む。地公法は倫理法のような追加的な除外規定を持たない点で適用範囲が広い。
倫理法制定の背景
倫理法は平成11年(1999年)8月に制定され、平成12年(2000年)4月1日から施行された。制定の直接的な契機は、平成10年(1998年)に発覚した大蔵省(現・財務省)の接待汚職事件(いわゆる「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」こと大蔵省接待汚職事件)をはじめとする官僚の不祥事であった。国家公務員については倫理法・国家公務員倫理規程(政令)という体系的な規律が整備されたが、地方公務員については地公法の服務規定(第30条以下)を根拠に、各地方公共団体が条例・規則で職員倫理条例等を制定する構造となっている。
国家公務員倫理規程(政令)の位置づけ
倫理法第5条に基づいて制定された国家公務員倫理規程(平成12年政令第101号)は、職員の職務に利害関係を有する者(利害関係者)からの贈与等の禁止・制限、供応接待の禁止等を具体的に規定する。本省課長補佐級以上の職員について1件5,000円超の贈与等の受領時には報告書の提出義務が課され(倫理法第6条)、本省審議官級以上の職員には所得等報告書の提出義務がある(同法第8条)。
地方公務員の倫理規制は各自治体が定める職員倫理条例等に委ねられており、国と同一の体系には統一されていない。
5 用語解説
(1) 一般職
地公法第3条2項は「一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする」と定める。「特別職でない職はすべて一般職」という消去法による残余概念であり、一般職の内容を積極的に列挙するのではなく、特別職の反対概念として定義する。都道府県・市区町村の通常の事務職員、土木・建設職員、保健師・社会福祉士等の専門職職員、教職員(学校教育法上の職を含む)、警察官・消防官(消防吏員)などが一般職に属する。
令和2年(2020年)4月1日施行の地公法改正により設けられた会計年度任用職員(第22条の2)も一般職に属する。従前、非常勤・臨時の職員が特別職(第3条3項3号等)として安易に位置づけられてきた実態が問題視され、平成29年改正(令和2年施行)によって同号の特別職要件が「専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であって、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うものに限る」と厳格化された。これにより、実質的に一般事務補助等を担っていた非常勤職員が一般職の会計年度任用職員に移行されることとなった。
(2) 特別職
地公法第3条3項に限定列挙される。主なものは以下のとおりである。
- 第1号:就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職(首長、議員、副知事・副市町村長、教育委員会委員等)
- 第1号の2:地方公営企業の管理者及び企業団の企業長の職
- 第2号:法令等により設けられた委員及び委員会の構成員の職で臨時又は非常勤のもの
- 第3号:専門的な知識経験等を有する者が就く職で、助言・調査・診断等の事務を行うもの(令和2年改正後の要件)
- 第3号の2:地方公共団体の長等の秘書の職で条例で指定するもの
- 第5号:非常勤の消防団員及び水防団員の職
学説・行政実例上、第3条3項は「限定列挙」(例示列挙ではない)であると解されており、条例によって法律が定める以外の職を特別職とすることはできない。これは憲法第94条「法律の範囲内で条例を制定することができる」の趣旨からの帰結でもある。
(3) 「法律に特別の定がある場合」
本条2項の但書部分に相当する表現である。特別職であっても、個別の法律が地公法の一部規定を適用し、または準用する旨を定めている場合は、その限りにおいて地公法が及ぶ。たとえば、地公法第29条の懲戒規定は、第3条3項の一部特別職(人事委員会委員等)に準用されている。また人事委員会の常勤の委員、公安委員会の委員等には地公法の一部が準用されている。
国家公務員の場合も同様であり、国公法第2条5項は「この法の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には適用しない」と規定し、個別法による適用を認めている。裁判所職員については裁判所職員臨時措置法(昭和26年法律第299号)第10号により倫理法の一部が準用されるのはその例である。
(4) 官職
国公法に固有の用語であり、同法2条4項括弧書きで「一般職に属するすべての職」を「官職」という、と定義される。地公法にはこれに対応する「官職」の用語はなく、「職」または「職員」が使われる。
6 判例・裁判例
(1) 長野県農事試験場事件(最高裁判所第一小法廷 昭和62年6月18日)
地方公共団体の「日々雇用の非常勤職員」が解雇された事案において、最高裁は当該職員の身分を「日々雇用の非常勤職員」と認定したうえで、地公法22条の臨時的任用に該当するかどうかの判断を行った。本件は、特別職と一般職の境界ではなく一般職内の任用形態の解釈をめぐる事案であるが、非正規公務員の法的地位について実態を優先させる解釈方法を示した先例として位置づけられている。地公法が適用される「職員」の範囲を考えるうえで参照される代表的裁判例の一つである(最1小昭62.6.18『労働判例』504号16頁)。
(2) 特別職と一般職の区分をめぐる行政実例(昭和35年7月28日 自治丁公発第9号)
茨城県人事委員会事務局長あての総理府(当時)公務員課長回答。地公法施行後において、地公法第3条3項3号の特別職(当時の「顧問、参與及びこれらに準ずる者」)の該当要件について、「一般職に属する職と異なるものと解せられる」と説明し、特別職嘱託員に該当するための要件を限定的に解する立場が昭和27年の地公法改正後も維持されることを確認した。特別職非常勤の要件を厳格に解釈する行政実例として、その後の会計年度任用職員制度の整備(平成29年改正)に至る実務解釈の礎となっている。
(3) 大阪高等裁判所 平成25年(2013年)以降の非常勤職員事案
地公法3条3項3号の「顧問、参與及びこれらの者に準ずる者」(現行の専門的知識経験要件が厳格化される以前の要件)に基づいて特別職として任用されていた事務補助的な職員が、雇止めを争った複数の事案において、下級審は実質的な勤務実態から特別職性を否定し一般職非常勤として扱うべき場合がありうることを示唆する判断を相次いで示した。これらの裁判例の蓄積が、令和2年施行の平成29年改正(特別職要件の厳格化・会計年度任用職員制度の創設)への立法的対応を促す背景の一つとなった。
7 実務上の留意点
会計年度任用職員と地公法の適用
令和2年4月1日から施行された会計年度任用職員制度(地公法第22条の2)により、従前、特別職として位置づけられていた多くの非常勤職員が一般職に移行した。会計年度任用職員は一般職の地方公務員であるため、地公法が全面的に適用される。服務規律(第30条以下)、政治的行為の制限(第36条)、争議行為等の禁止(第37条)等が及ぶ一方、分限・懲戒については条件付任用中(第22条の2第6項で準用する第22条)の特例がある。
地方公営企業職員・特定地方独立行政法人職員
地方公営企業に勤務する職員(企業職員)は一般職の地方公務員であるが、地方公営企業法第39条1項の規定により、地公法のうち給与・勤務時間等の一定規定の適用が除外される。また、地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条2項に規定する特定地方独立行政法人の職員も地公法上は「地方公務員」に含まれるが(地公法3条1項括弧書き参照)、同法53条1項の規定による適用除外がある。
特別職に対する労働法の適用
特別職には地公法が原則不適用である結果、地公法58条(他の法律の適用除外等)が及ばない。このため、特別職のうち「労働者」(労働基準法9条)に該当する者には、労働組合法・労働関係調整法・最低賃金法・労働基準法が原則どおり全面的に適用される。
8 条文改正の沿革
地公法第4条は昭和25年(1950年)の制定当初から基本構造は変わっていない。ただし、第3条3項の特別職の列挙内容が改正を重ねるたびに本条の実質的な適用範囲も変動している。主要な改正は以下のとおりである。
- 昭和27年(1952年)改正:3条3項3号に「調査員ならびに嘱託員」を明記し、特別職要件を限定
- 平成29年(2017年)改正(令和2年施行):3条3項3号の専門的知識経験要件の厳格化・会計年度任用職員制度の創設(22条の2の新設)
9 まとめ
地公法第4条は、以下の2点を明確にする規定である。
第1に、地公法の全規定は一般職に属するすべての地方公務員(職員)に適用される。会計年度任用職員を含む一般職のすべてが服務規律・任用規律等の対象となる。
第2に、特別職には地公法は原則として適用されない。ただし、個別の法律が適用または準用を認める場合にはその限りで地公法が及ぶ。
国家公務員制度では国公法第2条4項・5項が対応し、倫理規律については国家公務員倫理法第2条が一般職(一部の非常勤職員を除く)を「職員」として規定する。地方公務員の倫理規律は地公法の服務規定と各自治体の条例・規則に委ねられており、全国統一の倫理法は存在しない。
本条に定める「職員」の範囲の確定は、以後の各条に定める服務義務・任用規制・分限・懲戒等の適用場面の前提となる。地公法を読む際は、「職員」という語が登場するたびに「一般職の地方公務員を指す」と確認する習慣が、条文理解の基礎となる。
参照法令・一次資料
- 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条・第4条 e-Gov法令検索
- 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条 e-Gov法令検索
- 国家公務員倫理法(平成11年法律第129号)第1条・第2条 e-Gov法令検索
- 国家公務員倫理規程(平成12年政令第101号) e-Gov法令検索
- 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律(平成29年法律第29号) e-Gov法令検索
- 総務省「会計年度任用職員制度の運用に係る事務処理マニュアル(令和8年3月)」 総務省
- 人事院「国家公務員の数と種類」 人事院
- 内閣人事局「国家公務員制度」 内閣人事局
- 最高裁判所第一小法廷判決昭和62年6月18日(長野県農事試験場事件)『労働判例』504号16頁
- 昭和35年7月28日自治丁公発第9号(茨城県人事委員会事務局長あて公務員課長回答)

