1 本稿の位置づけ(企業コンプライアンスの方法)

本稿までに、公益通報者保護法(平成16年法律第122号。令和7年法律第62号による改正後のもの。以下「法」という。)の第1条から第24条まで、附則、別表、および別表第八号の法律を定める政令について、条文ごとの解説を終えた。応用編では、解説した規範を組織の内部文書と業務プロセスに変換する作業を扱う。

対象は4類型である。企業のうち常時使用する労働者300人超の組織、同300人以下の組織、地方公共団体のうち職員300人超の団体、同300人以下の団体。第1回は、法的義務がもっとも重く、行政措置と刑事罰の名宛人にもなり得る「企業・300人超」を取り上げる。

参照した一次資料は、法の条文(2026年12月1日施行)、公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年8月20日内閣府告示第118号。令和8年3月31日一部改正内閣府告示第15号。以下「指針」という。)、および指針の解説(令和8年3月31日一部改正、令和8年12月1日施行。以下「指針の解説」という。)である。指針の解説は、指針本文・指針の趣旨・指針を遵守するための考え方や具体例・その他に推奨される考え方や具体例という4つの層で構成されており、本稿では「遵守」に属する事項と「推奨」に属する事項を区別して示す。両者を混同すると、義務でないものを義務と誤認して過剰な体制を組むか、逆に推奨事項を軽視して実効性を落とすかのいずれかに陥る。これを中川総合法務オフィスではyoutubeでいつも言っているように「過剰コンプライアンス」問題という。


2 300人超の企業に何が課されるか

2.1 条文の確認

第11条第1項は、次のとおり定める。

事業者は、第三条第一項第一号及び第六条第一項第一号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(第十二条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者(第十二条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。

同条第2項は、次のとおり定める。

事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第三条第一項第一号及び第六条第一項第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者等に対するその周知その他の必要な措置をとらなければならない。

第2項の「労働者等に対するその周知」は令和7年改正で条文上明示された部分である。従前は指針レベルで求められていた周知が、法律の文言に格上げされた。

義務と努力義務の分水嶺は同条第3項が定める。

常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。

したがって301人以上の企業は、従事者指定義務と体制整備・周知義務の双方を法的義務として負う。

2.2 「常時使用する労働者の数」の数え方

自社が300人超に該当するかの判定は、体制設計の前提であるにもかかわらず誤解が多い。消費者庁のQ&Aは、常時使用する労働者とは常態として使用する労働者を指し、繁忙期のみ一時的に雇い入れる場合は含まれないとしたうえで、「使用する」とは各事業者と指揮命令関係がある場合を、「労働者」とは労働基準法第9条に規定する労働者を指すと説明する。

パート、アルバイト、契約社員、非正規社員、出向者については、常態として使用する労基法上の労働者に当たるかで個別に判断される。派遣労働者については、派遣先と派遣元の双方において常時使用する労働者に含まれる。

実務上の帰結は3点ある。第一に、正社員数だけを見て300人以下と判断する運用は誤りを生みやすい。第二に、派遣労働者を多く受け入れる派遣先は、自社正社員が300人を下回っていても義務対象となり得る。第三に、企業グループでは法人単位で判定するため、親会社が義務対象で子会社が努力義務という状態が生じる。この場合、子会社が親会社の共通窓口を自社の内部公益通報受付窓口とするには、その旨を子会社自身の内部規程等であらかじめ定める必要がある(法第2条第1項柱書の「あらかじめ定めた者」に当たらせるため)。

2.3 義務違反に対する行政措置と罰則

令和7年改正の実務上の最大の変化は、従事者指定義務違反に対する執行手段が強化された点にある。法第15条の2第1項は、内閣総理大臣が第11条第1項違反を認めるときに勧告できると定め、同条第2項は次のとおり定める。

内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

同条第3項により、命令をした場合はその旨を公表できる。命令に違反した者は法第21条第2項第1号により30万円以下の罰金、法第23条第1項第2号により法人にも同額の罰金が科され得る。

さらに法第16条第1項は立入検査権限を新設した。

内閣総理大臣は、第十一条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を除く。)の規定の施行に必要な限度において、事業者に対し、報告をさせ、又はその職員に、事業者の事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

報告拒否・虚偽報告・検査忌避も法第21条第2項第2号の罰金対象である。体制整備義務(第11条第2項)については立入検査ではなく報告徴収(法第16条第2項)にとどまり、勧告に従わない場合の公表(法第15条の2第5項)が制裁の中心となる。第16条第2項の報告懈怠・虚偽報告は法第24条により20万円以下の過料である。

従事者の守秘義務違反そのものについては、法第12条が禁止規範を、法第22条が罰則を定める。

第十二条の規定に違反して同条に規定する事項を漏らした者は、三十万円以下の罰金に処する。

以上を整理すると、300人超企業が抱える法的リスクは次の表のとおりである。

違反類型根拠条文行政措置刑事罰・過料
従事者を指定しない法11条1項助言・指導(15条)→勧告(15条の2第1項)→命令(同条2項)→命令の公表(同条3項)命令違反につき30万円以下の罰金(21条2項1号)、法人にも30万円以下(23条1項2号)
体制整備・周知が不十分法11条2項助言・指導(15条)→勧告(15条の2第4項)→公表(同条5項)なし
報告拒否・虚偽報告・検査忌避(11条1項関係)法16条1項30万円以下の罰金(21条2項2号)、両罰
報告懈怠・虚偽報告(11条2項関係)法16条2項20万円以下の過料(24条)
従事者による通報者特定事項の漏えい法12条30万円以下の罰金(22条)
通報を理由とする解雇・懲戒法3条1項6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(21条1項)、法人に3000万円以下の罰金(23条1項1号)

法第23条第1項第1号の法人に対する3000万円以下の罰金は、同項第2号の30万円と比べて100倍の開きがある。通報者に対する報復的な解雇・懲戒が、体制整備の不備とは次元の異なる非難に値すると評価された結果である。

2.4 通報妨害と通報者探索の新設

令和7年改正で新設された法第11条の2第1項は次のとおりである。

第二条第一項各号に定める事業者は、当該各号に掲げる者に対して、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること、公益通報をした場合に不利益な取扱いをすることを告げることその他の行為によって、公益通報を妨げてはならない。

同条第2項は「前項の規定に違反してされた合意その他の法律行為は、無効とする。」と定める。

第11条の3は次のとおりである。

第二条第一項各号に定める事業者は、正当な理由がなく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をしてはならない。

この2か条は、退職合意書・和解契約書・秘密保持誓約書といった既存の書式群に直接影響する。退職時の合意書に包括的な「一切の申告・告発を行わない」条項を置く実務は広く見られるが、公益通報に及ぶ限度で無効となる。改正法施行前に締結済みの合意についても、公序良俗(民法第90条)による無効の主張を受ける余地は残る。施行日までに定型書式を洗い直す作業は、体制整備そのものと同等の優先度を持つ。


3 内部公益通報対応規程のモデル

指針第4の3(6)は「この指針において求められる事項について、内部規程において定め、また、当該規程の定めに従って運用する。」と定める。規程の名称に決まりはないが、指針が求める全事項が規程上の根拠を持つ状態にすることが求められる。以下に、300人超企業を想定したモデル条文を示す。実際の導入に当たっては、就業規則・懲戒規程・情報セキュリティ規程・監査規程との整合を取る必要がある。

3.1 指針項目と規程条文の対応

指針の項目本モデル規程の条文
第3の1 従事者の範囲第7条第1項・第2項
第3の2 従事者を定める方法第7条第3項・第4項、様式1・様式2
第4の1(1) 受付窓口の設置等第4条、第5条
第4の1(2) 幹部からの独立性第6条
第4の1(3) 公益通報対応業務の実施第11条から第15条まで
第4の1(4) 利益相反の排除第8条
第4の2(1) 不利益取扱いの防止第17条、第18条、第22条
第4の2(2) 範囲外共有・通報妨害・通報者探索の防止第19条から第22条まで
第4の3(1) 是正措置等の通知第16条
第4の3(2) 記録保管・評価点検・運用実績開示第24条から第26条まで
第4の3(3) 労働者等に対する周知第27条
第4の3(4) 質問・相談への対応第28条
第4の3(5) 従事者に対する教育第29条第2項
第4の3(6) 内部規程の策定及び運用規程全体、第31条

3.2 モデル条文

第1章 総則

第1条(目的) 本規程は、公益通報者保護法(平成16年法律第122号。以下「法」という。)第11条第1項及び第2項の規定並びに同条第4項に基づく指針を踏まえ、当社における内部公益通報対応体制の整備及び運用に関する事項を定め、法令違反行為の早期発見及び是正を図るとともに、通報を行った者の保護を確保することを目的とする。

第2条(定義) 本規程における用語の意義は、次の各号に定めるところによる。 一 通報 当社の役員、労働者等その他本規程の適用を受ける者による、通報対象行為に関する情報の提供をいう。 二 通報対象行為 法第2条第3項に定める通報対象事実のほか、当社の社内規程その他当社が遵守すべき規範に違反し、又は違反するおそれのある行為をいう。 三 内部公益通報 通報のうち、法第3条第1項第1号及び第6条第1項第1号に定める公益通報に該当するものをいう。 四 公益通報対応業務 内部公益通報を受け、当該内部公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務をいう。 五 従事者 法第11条第1項に定める公益通報対応業務従事者として、第7条により指定された者をいう。 六 公益通報者を特定させる事項 通報をした者が誰であるかを認識することができる事項をいい、氏名、社員番号その他当該人物に固有の事項のほか、一般的な属性であっても他の事項と照合することにより排他的に特定の人物であると判断できるものを含む。 七 範囲外共有 公益通報者を特定させる事項を、必要最小限の範囲を超えて共有する行為をいう。 八 通報妨害行為 正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること、公益通報をした場合に不利益な取扱いをすることを告げることその他の行為によって公益通報を妨げることをいう。 九 通報者探索 正当な理由なく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をいう。

第2号は、法の通報対象事実に限定せず社内規範違反を含める設計である。指針の解説も、公益通報に該当しない内部規程に基づく通報等について指針に準じた対応に努めることが望ましいとしている。窓口の入口で法適用の有無を判定させる運用は、通報者に難解な法解釈を要求することになり、機能しない。

第6号の定義は、指針の解説が挙げる例をそのまま条文化したものである。総務部に男性が1名しかいない企業で「総務部の男性が通報した」という情報を共有すれば、それだけで排他的な特定が可能となる。属性情報が特定事項に転化する場面を規程上明記しておくことで、従事者の判断基準が明確になる。

第3条(適用範囲) 本規程は、当社の役員、労働者、派遣労働者、退職後1年以内の元労働者及び元派遣労働者、当社が業務委託をする特定受託事業者に係る特定受託業務従事者並びに当該地位にあった者(業務委託の終了後1年以内の者に限る。)並びに当社が請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合における当該事業に従事する他の事業者の労働者等に適用する。

令和7年改正により特定受託業務従事者が公益通報者の範囲に加わったため、適用範囲条項の書換えが必要となる。フリーランスとの業務委託契約書の中に、当社の通報窓口を利用できる旨を記載する運用と組み合わせるとよい。

第2章 窓口及び体制

第4条(内部公益通報受付窓口) 1 当社は、部門横断的に通報を受け付ける窓口として、次の各号の窓口(以下「窓口」と総称する。)を設置する。 一 社内窓口 コンプライアンス部 二 社外窓口 当社が委託する法律事務所又は専門機関 三 監査役窓口 監査役会 2 窓口は、電話、電子メール、専用ウェブフォーム、書面及び面談の方法により通報を受け付ける。 3 窓口は、匿名による通報を受け付ける。この場合において、当社は、通報者と窓口担当者とが相互に連絡を取ることができる仕組みを設けるものとする。 4 窓口への通報は、上司その他職制上の報告系統への報告を経ることを要しない。

第1項の3線構成は、独立性確保(第6条)と利用しやすさの双方を満たすための設計である。指針の解説は、窓口を事業者内部に置くことも外部(外部委託先、親会社等)に置くことも、内部と外部の双方に置くことも可能であるとしている。監査役窓口を設ける趣旨は、社長を含む経営幹部が被通報者となる事案の受け皿を確保することにある。

第4項は、指針の解説が明示的に注意喚起している点を条文化したものである。上司への報告を経なければ窓口に相談できないという誤解が生じると通報が躊躇されるため、規程レベルで否定しておく。

第5条(所管部署及び責任者) 1 窓口に寄せられた通報に関する公益通報対応業務を管理・統括する部署はコンプライアンス部とし、責任者はコンプライアンス担当執行役員とする。 2 責任者は、公益通報対応業務の実施に必要な調査権限を有し、当社の役員及び労働者等に対し、資料の提出、事情の説明その他必要な協力を求めることができる。 3 当社は、公益通報対応業務の遂行に必要な人員及び予算を割り当てる。

第2項の調査権限を明記しない規程は少なくないが、指針の解説は、調査の権限が定められていなければ調査対象者において調査に従うべきか疑義が生じ、実効的な調査が実施できない場合もあると指摘する。

第6条(組織の長その他幹部からの独立性の確保) 1 通報の内容が代表取締役その他の取締役、執行役員又は本部長職以上の者(以下「経営幹部」という。)に関係する事案である場合、当該事案に係る公益通報対応業務は、監査役会及び社外取締役に報告した上、その監督の下に行う。 2 前項の場合において、責任者は、当該事案の処理状況を監査役会に対し、少なくとも月1回報告する。 3 窓口を経由しない通報又は行政機関若しくはその他の外部への公益通報について調査及び是正等の対応が必要な場合においても、前2項と同様の措置をとる。

第3項は、令和8年3月31日改正後の指針が、窓口経由の内部公益通報以外の公益通報についても同様の措置を求めている点に対応する。外部通報を端緒に社内調査を始める場面で、幹部の影響力を排除する仕組みが働かないと、体制の意味が失われる。

第7条(従事者の指定) 1 当社は、窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として指定する。 2 前項の指定は、所属部署の名称にかかわらず、当該者が同項に定める事項に該当するか否かを実質的に判断して行う。窓口の運営を主たる職務とする部門の担当者は、常時従事者として指定する。それ以外の部門の担当者であっても、事案により第1項に該当する場合には、必要が生じた都度指定する。 3 従事者の指定は、様式1による書面の交付により行う。当該書面には、従事者の地位に就くこと、これに伴い法第12条に定める守秘義務が課されること及び法第22条に定める罰則の適用対象となり得ることを記載する。 4 従事者に指定された者は、様式2により指定を受けた旨及び守秘義務の内容を了知した旨を確認する。 5 コンプライアンス部は、従事者の氏名、所属部署、指定日及び指定解除日を記載した従事者名簿(様式3)を作成し、管理する。 6 窓口の業務を外部に委託する場合、当該委託先において公益通報対応業務を行い、かつ公益通報者を特定させる事項を伝達される者についても、第1項から第4項までに準じて指定する。

第2項後段の「必要が生じた都度」の指定については、指針の解説が推奨事項として慎重な検討を促している。都度指定を行うこと自体が、社内調査の端緒が公益通報であることを当該指定対象者に事実上知らせてしまう可能性があるためである。指定をしなくても通報者を特定させる事項を知られてしまう場合を除き、指定の是非を慎重に検討する余地がある。裏返せば、通報者特定事項を伝達しないで済む調査設計をとれるのであれば、都度指定の必要自体が生じない。

なお、社内調査におけるヒアリング対象者、職場環境改善措置に参加する労働者、品質不正事案で再検査を行う者など、通報内容を伝えられたにとどまる者は、公益通報対応業務を主体的に行っておらず重要部分に関与してもいないため、従事者として定めるべき対象には当たらない。ただしこれらの者も、内部規程に基づく範囲外共有禁止義務は負う。

第8条(利益相反の排除) 1 当社は、事案に関係する者を当該事案に係る公益通報対応業務に関与させない。 2 前項の「事案に関係する者」とは、公正な公益通報対応業務の実施を阻害する者をいい、法令違反行為の発覚又は調査の結果により実質的に不利益を受ける者、通報者又は被通報者と一定の親族関係がある者その他これらに準ずる者をいう。 3 従事者及び調査担当者は、担当する事案について第1項に該当するおそれがある場合、直ちに責任者に申し出なければならない。 4 外部委託を行う場合、中立性・公正性に疑義が生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所その他の専門機関を起用しない。

第3項の自己申告義務は指針の要求事項そのものではないが、これがないと利益相反の発見が遅れる。実務上は、案件受付時に担当者が利益相反チェックシートに記入する運用を組み合わせる。

第3章 受付から是正まで

第9条(通報の方法及び通報者の責務) 1 通報は、可能な限り、通報対象行為の内容、時期、関係者その他調査に必要な事項を具体的に示して行うものとする。 2 通報者は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的で通報を行ってはならない。 3 前項に違反する通報を行った者に対しては、就業規則の定めるところにより懲戒処分を行うことがある。

第3項は必要な規定であるが、書き方を誤ると通報妨害と評価されかねない。「事実と異なる通報をした場合は処分する」という書きぶりは、真実相当性の判断を通報者に負わせる圧力として作用する。不正の目的という主観的要件に限定することで、法第2条第1項の枠組みと整合させる。

第10条(受付及び受領の通知) 1 窓口は、通報を受け付けたときは、受付簿に記録し、遅滞なく責任者に報告する。 2 窓口は、通報者が通報の到達を確認できない方法により通報がなされた場合、速やかに通報者に対し通報を受領した旨を通知する。ただし、通報者が通知を望まない場合、匿名による通報であって通知が困難である場合その他やむを得ない理由がある場合はこの限りでない。

受領通知は指針上の遵守事項ではなく推奨事項に属するが、これを省略すると、通報者は自社が動いているか否かを知る手段を失う。法第3条第1項第3号ホは、報道機関等への通報が保護される場合の一つとして、次の場合を挙げている。

書面により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

書面による内部公益通報を受けてから20日以内に調査開始の通知を出さないと、通報者は保護を受けたまま報道機関に通報できる状態になる。20日は法が引いた実務上の期限であり、受領通知と調査着手判断の設計はこの日数から逆算するのが合理的である。

第11条(調査の要否の判断) 1 責任者は、通報を受け付けた日から起算して10日以内に、調査の要否を判断する。 2 正当な理由がある場合を除き、必要な調査を実施する。調査を実施しない正当な理由がある場合とは、解決済みの案件に関する情報が寄せられた場合、通報者と連絡が取れず事実確認が困難である場合その他これらに準ずる場合をいう。 3 通報が匿名であることのみを理由として調査を実施しないことはできない。 4 調査を実施しないと判断したときは、その理由を記録し、通報者に通知する。

第2項及び第3項は消費者庁のQ&Aの示す解釈を条文化したものである。解決済みか否かの判断は、通報者の認識と会社の認識が食い違うことがあるため、可能な限り客観的に行う必要がある。

第12条(調査の実施) 1 調査は、責任者が指名する調査担当者が行う。 2 調査担当者は、通報者を特定させる事項を必要最小限の範囲を超えて共有してはならない。 3 調査に当たっては、調査の端緒が通報であることを関係者に認識させないよう配慮する。 4 通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査を実施できない場合、責任者は、通報者から書面その他記録に残る方法により同意を得る。 5 通報者の意向に反して調査を行う場合、調査の前後において通報者と十分に連絡を取り、その利益が害されないよう配慮する。

第3項について、指針の解説は推奨事項として、抜き打ちの監査を装う、該当部署以外の部署にもダミーの調査を行う、定期的な監査や職場環境調査、上司等による人事面談といった機会と合わせて調査を行う、核心部分ではなく周辺部分から調査を開始する、全ての労働者等を対象とする匿名のコンプライアンスアンケートを定期的に行うといった手法を挙げる。これらは通報者特定を回避するための技術であり、調査計画書の様式にあらかじめ「特定回避策」欄を設けておくと運用に落ちる。

第4項は、ハラスメント事案で被害者と通報者が同一である場合に特に問題となる。被害者の心情に配慮しつつ、同意の有無について誤解が生じないよう書面による同意取得を行うのが望ましいと指針の解説は述べる。

第13条(調査協力義務) 1 当社の役員及び労働者等は、調査に誠実に協力しなければならない。 2 調査を妨害し、証拠を隠滅し、又は虚偽の説明を行ってはならない。 3 前項に違反した者に対しては、就業規則の定めるところにより懲戒処分を行う。

指針の解説は、調査への協力義務及び調査妨害の禁止を内部規程に明記することが望ましいとしている。また指針第4の3(3)リは、周知事項の一つとして「公益通報に係る通報対象事実についての調査への協力に関する事項」を挙げる。規程に置くだけでなく周知対象に含める点に注意を要する。

第14条(是正措置及び再発防止措置) 1 調査の結果、通報対象行為に係る法令違反行為が明らかになった場合、責任者は、速やかに是正に必要な措置をとる。 2 責任者は、前項の措置と併せて、原因分析に基づく再発防止措置を策定し、実施する。 3 法令違反行為に関与した者に対しては、就業規則の定めるところにより懲戒処分を行うほか、必要に応じ関係行政機関への報告を行う。

第15条(是正措置の機能確認) 1 責任者は、是正措置をとった後、当該措置が適切に機能しているかを確認する。 2 前項の確認は、是正措置から3か月を経過した時点及び1年を経過した時点において、能動的な改善状況調査により行う。 3 適切に機能していないと認められる場合、改めて是正に必要な措置をとる。

指針第4の1(3)は、是正措置後の機能確認と、機能していない場合の再度の是正措置を明示的に求めている。この「事後確認」の欠落は、指針適合性評価で最も頻繁に発見される不備の一つである。確認の時期を規程上固定しておくと、担当者の交代による運用の断絶を防げる。

第16条(是正措置等の通知) 1 書面により通報を受けた場合において、通報対象事実の中止その他是正に必要な措置をとったときはその旨を、通報対象事実がないときはその旨を、通報者に対し速やかに通知する。 2 前項の通知は、適正な業務の遂行並びに利害関係人の秘密、信用、名誉及びプライバシー等の保護に支障がない範囲において行う。 3 当社は、受付から20日以内に調査の開始の有無を通報者に通知するよう努める。 4 窓口の担当者以外の者が通報を受けた場合においても、通報者の意向を踏まえ、当該者が窓口に連絡することにより、何らかの通知がなされるようにする。

第2項の利害関係人には、被通報者のほか、調査の過程で聞き取りを受けた被通報者の上司・同僚等の調査協力者、取引先等が広く含まれる。調査過程で誰が何を証言したか、人事処分の詳細な内容といった情報は、通報者に伝えるべきでない場合がある。

第4章 通報者の保護

第17条(不利益な取扱いの禁止) 1 当社の役員及び労働者等は、通報をしたこと、調査に協力したことその他これらに関連する行為を理由として、通報者又は調査協力者に対し、解雇、退職の強要、労働契約内容の変更の強要、契約の更新拒否、本採用・再採用の拒否、懲戒解雇、休職、労働者派遣契約の解除、業務委託契約の解除、降格、不利益な配置の変更・出向・転籍・長期出張等の命令、人事考課における不利益な評価、不利益な自宅待機命令、けん責等の懲戒処分、減給、賞与・退職金等における不利益な算定、取引数量の削減、取引の停止、報酬の減額、事実上の嫌がらせその他一切の不利益な取扱いをしてはならない。 2 前項の禁止は、通報の内容が法第2条第3項に定める通報対象事実に該当しない場合においても適用する。

第1項の列挙は、指針第2の用語説明が挙げる4類型(地位の得喪、人事上の取扱い、経済待遇上の取扱い、精神上・生活上の取扱い)を展開したものである。抽象的に「不利益な取扱いをしてはならない」とのみ定める規程が多いが、列挙型にする実益は2つある。第一に、行為者となり得る管理職に対する教育教材としてそのまま使える。第二に、「隔離配置」や「専ら雑務に従事させること」といった、直感的には不利益と認識されにくい行為が禁止対象であることを可視化できる。

第18条(不利益取扱いの有無の把握及び救済) 1 責任者は、調査終了後6か月間、通報者に対し、少なくとも3か月に1回、不利益な取扱いを受けていないかを能動的に確認する。 2 当社は、通報者に対し、不利益な取扱いを受けた場合の連絡先としてコンプライアンス部を示す。 3 被通報者が通報者の存在を知り得る場合、責任者は、被通報者に対し、通報者に不利益な取扱いを行ってはならない旨を書面により注意喚起する。 4 不利益な取扱いを把握した場合、当社は、当該取扱いの撤回、原状回復、逸失利益の補填その他の救済・回復の措置をとる。

第1項の能動的確認は、指針が求める「公益通報者が不利益な取扱いを受けていないかを把握する措置」を具体化したものである。頻度と期間を規程上定める例は多くないが、定めないと実施されない。

第19条(範囲外共有の禁止) 1 当社の役員及び労働者等は、範囲外共有を行ってはならない。 2 通報事案に係る記録・資料を閲覧し、又は共有することができる者は、責任者が必要最小限の範囲で指定し、その範囲を明確に確認する。 3 通報事案に係る記録・資料は、施錠可能な場所に保管し、又はアクセス制限を付した電磁的記録として保管する。 4 電磁的に管理する情報については、閲覧可能な者を必要最小限に限定するとともに、操作及び閲覧の履歴を記録する。 5 窓口は、専用の電話番号及び専用のメールアドレスを設ける。面談は、入室者が管理された専用の室において、又は勤務時間外に事業所外において行う。 6 範囲外共有が行われた場合、当社は、情報の回収その他の救済・回復の措置をとる。

第20条(通報妨害の禁止) 1 当社並びに当社の役員及び労働者等は、正当な理由なく、通報妨害行為を行ってはならない。 2 当社が締結する退職合意書、和解契約書、秘密保持誓約書その他の文書には、公益通報を行わない旨の合意その他公益通報を妨げる内容を含めてはならない。 3 法務部は、前項の文書の定型書式について、少なくとも年1回、本条に適合しているかを点検する。

第2項及び第3項は、法第11条の2第2項が違反行為による合意を無効とする以上、書式管理を規程上の義務に組み込む必要があることによる。

第21条(通報者探索の禁止) 1 当社の役員及び労働者等は、正当な理由なく、通報者探索を行ってはならない。 2 前項の正当な理由がある場合とは、匿名の通報について、通報者が具体的にどのような局面で不正を認識したのか等を特定した上でなければ必要な調査又は是正ができない場合において、従事者が通報者の特定につながる事項を問う場合その他これに準ずる場合に限る。

第2項は、指針の解説が挙げる限定的な例をそのまま条文化した。探索が許容される場面は、従事者が、調査上不可欠な限度で、通報者本人に問う場合に事実上限られる。第三者に対して「誰が通報したか」を尋ねる行為はこれに含まれない。

第22条(懲戒) 不利益な取扱い、範囲外共有、通報妨害行為又は通報者探索を行った者に対しては、行為態様、被害の程度その他の情状を考慮の上、就業規則の定めるところにより懲戒処分その他適切な措置を行う。ただし、範囲外共有については、その事実の有無を慎重に確認し、これを行っていない者に対して誤って処分を行うことのないよう留意する。

第5章 記録、評価、周知及び教育

第23条(記録の作成及び保管) 1 コンプライアンス部は、通報の受付、調査の経過、是正措置の内容、機能確認の結果及び通報者への通知に関する記録を作成する。 2 前項の記録の保管期間は、当該案件の終結の日から5年間とする。ただし、重大な法令違反行為に係るものについては10年間とする。 3 記録の閲覧権限は責任者が指定する者に限定し、人事異動に伴い遅滞なく権限を解除する。

保管期間について指針は具体的な年数を示さず、評価点検や個別案件処理の必要性等を検討した上で適切な期間を定めることを求めるにとどまる。5年とする根拠は、評価・点検のサイクル、内部監査・外部監査・業所管省庁の検査上の要請、労働関係法令上の記録保存期間との整合である。

第24条(定期的な評価・点検及び改善) 1 当社は、内部公益通報対応体制について、少なくとも年1回、評価・点検を実施する。 2 評価・点検は、次の各号の方法により行う。 一 役員、労働者等、退職者及び特定受託業務従事者に対する体制の周知度等に関する匿名アンケート調査 二 従事者間における公益通報対応業務の改善点についての意見交換 三 内部監査部門による整備・運用状況の確認 四 中立・公正な外部の専門家による指針適合性及び運用実績の確認 3 評価・点検の対象には、外部窓口を含む。 4 責任者は、評価・点検の結果を取締役会及び監査役会に報告し、必要に応じて体制の改善を行う。

第25条(運用実績の開示) 1 当社は、窓口に寄せられた通報に関する運用実績の概要を、少なくとも年1回、役員、労働者等及び特定受託業務従事者に開示する。 2 開示する内容は、一定期間における通報件数、是正の有無、対応の概要及び通報を行いやすくするための活動状況とする。 3 開示に当たっては、通報者を特定させる事態が生じないよう留意する。

第2項の項目は指針の解説が挙げるものと同一である。なお運用実績の開示に当たっては、公益通報とそれ以外の通報とを厳密に区別する必要はない。

第26条(周知及び啓発) 1 当社は、役員、労働者等、退職者、特定受託業務従事者及び特定受託業務従事者であった者に対し、法及び次の各号の事項について周知・啓発を行う。 一 窓口の設置に関する事項並びに連絡先及び連絡方法 二 経営幹部からの独立性の確保に関する措置の内容 三 公益通報対応業務の実施に関する措置の内容 四 利益相反の排除に関する措置の内容 五 不利益な取扱いの防止に関する措置の内容 六 範囲外共有、通報妨害及び通報者探索の防止に関する措置の内容 七 是正措置等の通知に関する措置の内容 八 記録の保管、見直し・改善及び運用実績の開示に関する措置の内容 九 通報対象事実についての調査への協力に関する事項 2 退職者及び特定受託業務従事者であった者に対しては、前項第8号を除く事項について周知・啓発を行う。 3 退職者に対する周知は、在職中に退職後も公益通報ができる旨を教育することのほか、当社ウェブサイトへの掲載により行う。

第1項の9号は指針第4の3(3)のイからリまでに対応する。周知は法第11条第2項に条文上明示された義務であり、「窓口の連絡先を社内イントラに掲示している」だけでは足りない。9項目すべてについて、周知の媒体と実施記録を残す設計が求められる。

第27条(質問・相談への対応) 1 当社は、役員、労働者等、退職者、特定受託業務従事者及び特定受託業務従事者であった者から寄せられる、内部公益通報対応体制の仕組みや不利益な取扱いに関する質問・相談に対応する。 2 前項の対応は、窓口において一元的に行う。

第28条(教育及び研修) 1 当社は、役員及び労働者等に対し、少なくとも年1回、本規程及び法に関する研修を実施する。研修の内容は、対象者の立場及び経験年数等に応じて設計する。 2 従事者に対しては、公益通報対応業務の内容及び公益通報者を特定させる事項の取扱いについて、前項の研修に加え、特に十分な教育を行う。従事者に対する教育は、従事者指定の際及び年2回以上定期的に実施し、その実施状況を管理する。 3 当社は、研修の実施記録及び受講状況を保管する。

第6章 雑則

第29条(企業グループにおける取扱い) 1 当社は、子会社及び関連会社の役員、労働者等、退職者並びに特定受託業務従事者からの通報を受け付ける企業グループ共通の窓口を設置する。 2 前項の窓口を子会社又は関連会社の内部公益通報受付窓口とする場合、当該子会社又は関連会社の内部規程においてその旨をあらかじめ定めるものとする。 3 当該窓口を経由した公益通報対応業務に関する子会社又は関連会社の責任者は、当該子会社又は関連会社において明確に定める。

第30条(取引先等) 当社は、サプライチェーンにおけるコンプライアンスを推進するため、関係会社及び取引先を含めた通報の受付を行い、また、関係会社及び取引先における内部公益通報対応体制の整備・運用状況を定期的に確認し、必要に応じ助言・支援を行う。

第31条(規程の改廃) 本規程の改廃は、取締役会の決議による。

附則 本規程は、2026年12月1日から施行する。


4 従事者指定の書式

指針第3の2は、従事者を定める際には、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くこと(法第12条の守秘義務が課されること及び法第22条の罰則の適用対象となり得ることを含む。)が従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならない、と定める。刑事罰で担保された義務を課す以上、本人が自らの立場を明確に認識していることが要求される。

書面によらず内部規程で部署・役職等の属性により指定する方法も認められるが、その場合も本人への明示が必要である。また、指定の事実を記録する観点から、氏名・所属部署・指定日等を記載した書面の作成・管理が求められる。以下に必要な書式を示す。

様式1 公益通報対応業務従事者指定通知書

                                              〇〇年〇月〇日
〇〇部 〇〇 〇〇 殿

                                    株式会社〇〇
                                    コンプライアンス担当執行役員 〇〇 〇〇 印

        公益通報対応業務従事者指定通知書

 公益通報者保護法(平成16年法律第122号)第11条第1項及び当社内部公益通報
対応規程第7条に基づき、貴殿を下記のとおり公益通報対応業務従事者に指定します。

                        記

1 指定年月日  〇〇年〇月〇日
2 指定の範囲  □ 包括指定(当社内部公益通報受付窓口が受け付ける
                   内部公益通報に係る公益通報対応業務全般)
                 □ 個別指定(対象事案:受付番号〇〇-〇〇〇)
3 従事する業務 □ 受付 □ 調査 □ 是正に必要な措置 □ 上記の重要部分への関与
4 指定の期間  〇〇年〇月〇日から指定解除の通知を行う日まで

【貴殿が負う義務及び責任】
(1) 貴殿は、公益通報者保護法第12条により、正当な理由がなく、公益通報対応業務
    に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない
    守秘義務を負います。この義務は、公益通報対応業務従事者でなくなった後も、
    また、当社を退職した後も存続します。
(2) 前号の守秘義務に違反した場合、公益通報者保護法第22条により、30万円以下の
    罰金に処せられることがあります。
(3) 前号の刑事責任とは別に、当社就業規則に基づく懲戒処分の対象となります。
(4) 「公益通報者を特定させる事項」には、氏名及び社員番号のほか、性別等の一般的
    な属性であっても、他の事項と照合することにより排他的に特定の人物が公益通報
    者であると判断できる場合を含みます。

【問合せ先】コンプライアンス部 内線〇〇〇〇

包括指定と個別指定を1枚の様式で切り分ける設計としたのは、都度指定が必要となる場面(例えば製造部門の技術者が調査の重要部分に関与する場合)で、様式を別に起こす手間を省くためである。

様式2 従事者指定確認書兼誓約書

                                              〇〇年〇月〇日
株式会社〇〇
コンプライアンス担当執行役員 殿

        従事者指定確認書兼誓約書

 私は、〇〇年〇月〇日付け公益通報対応業務従事者指定通知書を受領し、
下記の事項を了知したことを確認するとともに、これを遵守することを誓約します。

1 私が公益通報者保護法第11条第1項に定める公益通報対応業務従事者の地位に
  就いたこと。
2 私が同法第12条に定める守秘義務を負い、この義務が従事者でなくなった後及び
  退職後も存続すること。
3 同義務に違反した場合、同法第22条により30万円以下の罰金に処せられることが
  あること。
4 公益通報者を特定させる事項には、他の情報と照合することにより特定が可能と
  なる属性情報を含むこと。
5 通報事案に係る記録・資料の閲覧、複製、外部持出し及び保管について、当社
  内部公益通報対応規程及び情報セキュリティ規程に従うこと。
6 担当する事案について利益相反のおそれがある場合、直ちに責任者に申し出ること。

                              所属             
                              氏名             印

様式3 従事者名簿

通番氏名所属部署役職指定区分指定日通知書交付日確認書受領日教育受講日指定解除日備考
1コンプライアンス部部長包括責任者
2コンプライアンス部課長包括窓口主担当
3監査役会事務局包括監査役窓口
4〇〇法律事務所弁護士包括外部窓口
5製造部課長個別案件26-003

名簿は、法第16条第1項の立入検査において最初に提示を求められる書類となる可能性が高い。指定日と通知書交付日、確認書受領日を分けて記録するのは、「書面により指定した」ことの立証を、日付の連続性で示せるようにするためである。

様式4 従事者指定解除通知書(要点)

指定を解除する場合であっても、法第12条の守秘義務は「公益通報対応業務従事者であった者」にも及ぶため、解除通知書には守秘義務が存続する旨を明記する。人事異動に伴う解除の際は、記録・システムへのアクセス権限の解除を同日付で行い、その実施記録を名簿の備考欄に残す。

様式5 外部委託先に関する覚書条項例

第〇条(公益通報対応業務従事者の指定)
1 乙は、本業務のうち、甲の内部公益通報受付窓口が受け付ける内部公益通報に関して
  公益通報対応業務を行い、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を
  伝達される乙の従業者を、公益通報者保護法第11条第1項に定める公益通報対応業務
  従事者として指定するものとする。
2 乙は、前項の指定を、当該従業者に対し書面を交付する方法により行い、当該書面に
  おいて、同法第12条の守秘義務及び同法第22条の罰則の適用対象となり得ることを
  明示するものとする。
3 乙は、第1項により指定した者の氏名及び指定日を記載した書面を甲に提出する。
4 乙は、公益通報者を特定させる事項を、甲に対しても開示してはならない。ただし、
  通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できない場合であって、
  通報者の書面又は電子メールによる明示的な同意を得たときはこの限りでない。
5 乙において範囲外共有が生じた場合、甲は、損害賠償の請求、再発防止策の提出要求
  又は本契約の解除をすることができる。

第4項は指針の解説が推奨事項として挙げる措置である。外部窓口の実質的な価値は、通報者の氏名が会社に伝わらない状態で相談できる点にあり、この条項を欠く外部窓口は「社外に置いた社内窓口」にすぎなくなる。


5 受付から是正までの標準手順

5.1 標準タイムライン

法第3条第1項第3号ホの20日、および実効的な調査に必要な期間から逆算した標準日程を示す。日数は営業日ではなく暦日で管理する。

段階目安実施主体実施事項作成する記録
受付D+0窓口担当者(従事者)通報内容の記録、匿名連絡手段の確認、通報者の希望(調査の可否、氏名開示の可否)の確認受付票、受付簿
一次報告D+1窓口担当者責任者への報告、受付番号の付番一次報告書
受領通知D+3窓口担当者通報者への受領通知(到達確認できない方法での通報の場合)通知記録
利益相反確認D+3責任者事案関係者の洗い出し、担当者からの利益相反申告利益相反チェックシート
独立性判断D+5責任者経営幹部関係事案か否かの判定、該当時は監査役会・社外取締役への報告判定記録
調査要否判断D+10責任者調査実施の要否、正当な理由の有無判断記録
調査開始通知D+15窓口担当者通報者への調査開始(不実施の場合はその理由)の通知通知記録
調査計画策定D+15調査責任者調査範囲、手法、通報者特定回避策、従事者の都度指定の要否調査計画書
調査実施D+15〜D+60調査担当者資料収集、ヒアリング、デジタルフォレンジック調査記録、聴取録
事実認定D+70責任者認定事実の確定、法令該当性の評価調査報告書
是正措置決定D+80責任者・所管部門違反行為の中止、原状回復、再発防止策是正措置計画書
処分・報告D+90人事部門・法務部門関与者の懲戒、必要に応じ関係行政機関への報告処分記録
通報者への通知D+90窓口担当者是正措置等の通知(利害関係人への配慮を経た内容)通知記録
機能確認①D+180責任者是正措置が機能しているかの能動的調査確認記録
不利益取扱い確認①D+180責任者通報者への能動的確認確認記録
機能確認②D+365責任者同上確認記録
不利益取扱い確認②D+270責任者同上確認記録

複雑な事案では調査に60日を超えることがあるが、その場合も進捗を通報者に通知する運用が推奨される。指針の解説は、調査中も被通報者や調査協力者の信用・名誉・プライバシー等に配慮しつつ、適宜、進捗を通報者に通知するよう努めることが望ましいとしている。

5.2 受付段階で確認すべき5項目

受付票に固定欄として置くべき項目は、通報内容そのものより手続に関わるものである。第一に、通報者への連絡方法と連絡可能な時間帯。第二に、匿名希望か顕名かの別、および顕名の場合に氏名を調査担当者へ開示してよいかの意思。第三に、他の窓口・行政機関・報道機関等への通報の有無。第四に、被通報者との関係(上司か、同僚か、他部門か)と、通報者が特定されるおそれの程度に関する通報者自身の認識。第五に、既に不利益な取扱いを受けているか否か。

第四項目は特に軽視されやすい。通報内容を知る者が社内に3人しかいないという状況では、内容を伝達するだけで特定に至る。通報者自身が最もよくこれを把握しているため、受付段階で聴取し、調査計画に反映させる。

5.3 調査における通報者特定の回避

特定回避の手法は、指針の解説が推奨事項として列挙している。抜き打ち監査を装う、該当部署以外にもダミー調査を行う、定期監査や職場環境調査、人事面談といった定例の機会に合わせる、核心部分ではなく周辺から着手する、全員対象の匿名コンプライアンスアンケートを定期的に実施する、といったものである。

これらのうち最も汎用性が高いのは、全社定期アンケートである。年2回程度、全役職員・全フリーランスを対象に匿名アンケートを実施しておけば、特定の事案が発生したときに、そのアンケート結果を端緒とする調査という体裁を取れる。平時の仕組みが有事の特定回避策として機能する構造であり、実効性評価(第24条)の手段としても兼用できる。

5.4 不受理・調査不実施の判断

調査を実施しない正当な理由は限定的である。解決済み案件と、通報者と連絡が取れず事実確認が困難な場合が典型で、匿名であることのみでは理由にならない。解決済みか否かの判断は、通報者の認識と会社の認識が一致しないことがあるため、可能な限り客観的に行う。

実務上問題になるのは、「同一人物からの繰り返し通報」「調査済み事項の蒸し返し」である。前回調査で認定できなかった事実について新たな証拠の提示がない場合、追加調査を行わないという判断はあり得るが、その理由を記録し通報者に通知する手順を踏まないと、法第3条第1項第3号ホの「正当な理由がなくて調査を行わない場合」に該当し、外部通報が保護される事態を招く。


6 教育研修の設計

6.1 法令上の位置づけ

指針は、周知・啓発(第4の3(3))、質問・相談への対応(同(4))、従事者に対する教育(同(5))を、それぞれ独立した措置として求める。従事者教育については「特に十分に教育を行う」とされ、通常の役職員と比べて実効性の高い教育が要求される。指針の解説は、従事者指定の際も含めた定期的な実施と実施状況の管理を挙げ、法第12条の守秘義務の内容のほか、受付・調査・是正に必要な措置等の各局面における実践的なスキルの教育を例示する。

6.2 階層別プログラム

対象頻度時間到達目標主な内容
取締役・監査役・執行役員年1回60分自らが被通報者となる場合の独立性確保措置を理解し、報告を受ける立場としての行動を選択できる法23条1項1号の3000万円罰金、命令の公表による信用毀損、幹部関与事案の処理フロー、あおぞら銀行事件・オリンパス事件の教訓
管理職年1回90分部下からの相談を通報として扱い、通報者探索・不利益取扱いに当たる行為を避けられる職制上のレポーティングラインでの報告も内部公益通報に当たり得ること、範囲外共有の禁止、通報後の人事評価・配置における留意点、通報妨害となる発言例
一般従業員年1回30分窓口の連絡先と3つの通報ルートを知り、通報しても不利益を受けないことを理解する通報対象事実の具体例、窓口の使い方、匿名通報の可否、退職後も通報できること、調査協力義務
従事者指定時+年2回各120分守秘義務の範囲を判断でき、特定回避を組み込んだ調査計画を作成できる法12条・22条の構成要件、特定事項の判断演習、受付面談のロールプレイ、調査計画作成演習、利益相反判定演習、記録作成の実務
新入社員入社時30分制度の存在を知る一般従業員向けと同内容
特定受託業務従事者契約締結時書面窓口を利用できることを知る業務委託契約書への記載、案内文書の交付
退職予定者退職時書面退職後1年以内は通報主体となり得ることを知る退職手続書類への同封、退職合意書に通報妨害条項がないことの説明

6.3 従事者教育の中核となる演習

従事者向け教育を座学で終わらせると、実際の局面で判断できない。効果が高いのは次の3つの演習である。

第一に、特定事項の判断演習。「営業二課の女性社員」という表現が特定事項に当たるか否かを、営業二課の女性社員が1名の場合と12名の場合とで比較検討させる。指針の解説が示す照合による排他的特定という基準を、具体的な組織図の上で適用させる。

第二に、受付面談のロールプレイ。通報者役が「絶対に自分の名前を出さないでほしい。でも調査はしてほしい」と述べる設定を用いる。氏名を出さずに調査可能な範囲、氏名開示が不可欠な場合の同意取得手順、同意が得られない場合に取り得る選択肢を、その場で言語化させる。

第三に、通報妨害・通報者探索の境界演習。上司が部下に「これは外に出さないでくれ」と述べた場面、人事部が「誰から聞いたのか」と尋ねた場面、法務部が退職者に守秘義務条項への署名を求めた場面をそれぞれ提示し、法第11条の2および第11条の3への該当性を検討させる。

6.4 研修の効果測定

研修実施率だけを指標にすると、eラーニングの受講完了ボタンを押した割合を測ることになる。効果測定として意味を持つのは、受講後テストの正答率と、匿名アンケートによる制度認知度の変化である。認知度調査では、窓口の連絡先を知っているかではなく、「通報しても不利益を受けないと思うか」「実際に不正を知ったら窓口に通報すると思うか」という信頼度を問う設問を置く。前者と後者の乖離が、体制の形式と実質の差を示す。


7 実効性評価の方法

7.1 外部認証は存在しない

かつて消費者庁の指定登録機関による内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)が存在したが、令和4年2月から休止された後、消費者庁は同認証を廃止した。消費者庁は、今後の事業者の体制整備の促進については、一層の周知啓発と執行体制の強化により対応するとしている。第三者による適合認証という選択肢がない以上、実効性の評価は各社が自ら設計するほかない。

7.2 3つの評価軸

評価は、整備の適合性、運用の質、利用者の信頼度という3つの軸で行う。いずれか1つを欠くと評価が歪む。整備の適合性だけを見れば、規程が完備されていれば満点になる。運用の質だけを見れば、通報件数が少ない企業ほど良好に見える。信頼度だけを見れば、実際の処理能力が測れない。

軸1 整備の適合性

指針が求める16項目(従事者の定め2項目、体制整備14項目)について、規程上の根拠条文、実施記録、責任者を対応させ、充足・部分充足・未充足で判定する。部分充足の場合は、不足内容と是正期限を記載する。この作業は年1回、内部監査部門が実施し、隔年で外部専門家の確認を受ける構成が現実的である。

軸2 運用の質

指標算式目安読み取り方
通報密度年間通報件数÷従業員数×10003〜10件/1000人極端に低い場合は制度が使われていない。極端に高い場合は他の相談窓口が機能していない可能性
受領通知率受領通知を行った件数÷到達確認不能な方法による通報件数100%20日ルールへの初動
20日以内調査開始通知率20日以内に通知した件数÷書面通報件数100%外部通報保護要件の充足回避
調査不実施率調査を実施しなかった件数÷通報件数20%未満高い場合は不受理判断の運用を点検
平均処理日数受付から通報者への結果通知までの日数の平均90日以内長期化案件の理由分析
是正措置機能確認実施率機能確認を実施した件数÷是正措置を講じた件数100%指針第4の1(3)後段の履践
匿名通報比率匿名件数÷通報件数高い場合は顕名で通報できる信頼が不足
顕名通報者への不利益取扱い確認実施率確認実施件数÷顕名通報件数100%指針第4の2(1)イの履践
従事者教育受講率受講者数÷従事者数100%指針第4の3(5)
範囲外共有発生件数実数0件発生時は原因分析と再発防止

通報密度の目安は、消費者庁の調査において内部通報制度を導入している事業者のうち窓口の年間受付件数が0件と回答した層が一定数存在し、かつ制度の効果を感じていないと回答した事業者の多くが受付件数0件であったという関係から、0件が体制の機能不全を示唆する指標であることを踏まえたものである。件数の多寡そのものではなく、0件が続く状態を異常値として扱う姿勢が要る。

軸3 利用者の信頼度

匿名アンケートで測る。設問例は次のとおりである。窓口の連絡先を知っているか。窓口に通報した場合、通報したことが上司に知られると思うか。通報したことを理由に不利益を受けると思うか。不正を知った場合、窓口に通報すると思うか。通報しない場合、その理由は何か(改善されないと思う/報復が怖い/誰が通報したか分かってしまう/窓口を知らない/その他)

「通報しない理由」の分布は、体制のどこに欠陥があるかを直接示す。報復への恐れが多ければ第17条・第18条の運用が、特定への懸念が多ければ第19条の運用が、改善されないという諦念が多ければ第14条から第16条までの運用が、それぞれ課題となる。

7.3 評価結果の取扱い

指針の解説は、記録に基づく定期的な評価・点検の結果を踏まえ、組織の長や幹部の責任の下で対応の在り方の適切さを再検討する措置を求める。評価結果を担当部門内で完結させず、取締役会と監査役会への報告を規程上の義務としておく(モデル規程第24条第4項)。有価証券報告書のコーポレート・ガバナンスに関する記載や、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況の開示と接続させることで、社外への説明資料としても機能する。


8 裁判例に学ぶ設計上の要点

8.1 あおぞら銀行事件(東京高判令和8年1月22日)

内部通報を行った行員が、約3年3か月にわたり応接室で単独就労を命じられた事案である。報道によれば、東京高裁は、長期間にわたる隔離配置に業務上の合理的理由が認められず精神的苦痛を与えるとして、パワーハラスメントに該当すると判断し、懲戒処分の一部と降格を無効と評価して、慰謝料と差額賃金を含む約840万円の支払いを命じた。第一審は請求を全面的に棄却しており、控訴審で結論が逆転した。

体制設計上の含意は3点ある。

第一に、隔離配置が不利益な取扱いの類型に含まれることが司法判断で確認された。指針第2の用語説明が挙げる「精神上・生活上の取扱いに関すること(事実上の嫌がらせ等)」の具体例として、公益通報をしたことを理由として業務に従事させないこと、専ら雑務に従事させることが挙げられている。モデル規程第17条第1項に「事実上の嫌がらせ」を明記した理由はここにある。

第二に、隔離配置は組織的決定として行われ得る。個々の上司の逸脱ではなく、人事部門と所属部門の合議で決まる場合、通常の懲戒処分ルートでは抑止が働かない。モデル規程第18条第1項の能動的確認と、第24条の評価・点検における人事データの照合が必要となる所以である。

第三に、報道によれば、高裁はパワーハラスメントを認定しつつ、当該取扱いが内部通報に対する報復であるという因果関係までは認めなかった。法第3条第3項の推定規定は、通報から1年以内にされた解雇等特定不利益取扱い(解雇および懲戒としての不利益取扱い)に適用範囲が限られ、配置転換は対象外である。改正後も、配転・隔離・業務外し型の報復については通報者側が因果関係の立証責任を負う構造が残る。この立法上の隙間を埋めるのは、各企業の自主的な体制であり、具体的には通報後一定期間の人事措置について責任者への事前照会を義務づける運用である。

8.2 オリンパス事件(東京高判平成23年8月31日)

コンプライアンス窓口に上司の行為を通報した社員が配置転換を受けた事案で、東京高裁は、通報に反感を抱いた担当部長が業務に関係なく必要のない配転を行ったと認定し、動機が不当であるとして人事権の濫用に当たると判断した。第一審の請求棄却を変更し、配転を無効として会社と上司に計220万円の支払いを命じた。2012年6月28日に上告審で確定した。

判決が「内部通報による不利益な取り扱いを禁じた社内規定に反し」と述べた点は、実務上見落とせない。社内規程が不利益取扱いを禁じていることが、人事権濫用の判断材料として用いられた。規程を整備することは、単に指針を充足するだけでなく、自社の人事措置を拘束する規範を作る行為でもある。

さらに、この事件では、判決確定後も会社が判決内容に従わなかったとして新たな訴訟が提起され、2016年に訴訟上の和解で終結している。是正措置の機能確認(モデル規程第15条)を欠く場合、紛争が長期化する典型例といえる。

8.3 裁判例から抽出される共通構造

3つの事件に共通するのは、通報から報復までに人事措置という媒介があり、その人事措置が形式的には人事権の行使として説明可能な外形を備えていた点である。裁判所はいずれも、業務上の必要性と動機の相当性を審査して濫用を認定した。

したがって体制設計上の防御は、人事措置の意思決定過程に記録を残すことに帰着する。通報者について通報後1年以内に配置転換、降格、評価引下げ、業務内容の大幅変更を行う場合、その業務上の必要性を書面化し、コンプライアンス担当役員の確認を経る手順を人事規程側に組み込む。訴訟になった場合、この記録の有無が動機の相当性を左右する。


9 施行日までの実施計画

2026年12月1日の施行まで、本稿執筆時点で3か月余りである。300人超の企業が着手すべき順序を示す。

時期作業主担当完了の目安
第1週常時使用する労働者数の再算定(派遣労働者・出向者を含む)人事部義務対象か否かの確定
第1〜2週現行規程と改正指針16項目のギャップ分析コンプライアンス部未充足項目リスト
第2〜4週内部公益通報対応規程の改定案作成コンプライアンス部・法務部取締役会付議資料
第3〜5週退職合意書・秘密保持誓約書・和解契約書の通報妨害条項の点検と削除法務部定型書式の差替え
第4〜6週業務委託契約書へのフリーランス向け窓口案内条項の追加調達部・法務部新規契約からの適用
第5〜7週従事者の範囲の実質判断と名簿作成コンプライアンス部様式3の完成
第6〜8週従事者指定通知書の交付と確認書の受領コンプライアンス部全対象者からの回収
第7〜9週外部窓口委託契約の覚書改定(様式5)法務部締結完了
第8〜10週標準手順書・各種様式の整備コンプライアンス部運用マニュアル
第9〜11週従事者研修(指定時教育)の実施コンプライアンス部受講率100%
第10〜12週役員・管理職・一般従業員への周知9項目の実施コンプライアンス部・人事部実施記録
第11〜13週退職者・フリーランスへの周知(ウェブサイト掲載を含む)広報部・調達部掲載完了
施行後1か月匿名アンケートによるベースライン調査コンプライアンス部信頼度の基準値取得
施行後6か月第1回評価・点検内部監査部門取締役会報告

10 実務チェックリスト(企業・300人超)

区分確認事項根拠判定
適用判定派遣労働者・出向者を含めて常時使用する労働者数を算定したか法11条3項、消費者庁Q&A
従事者窓口運営を主たる職務とする部門の担当者を全員指定したか指針第3の1
従事者指定を書面で行い、守秘義務と罰則を明示したか指針第3の2
従事者氏名・所属・指定日を記載した名簿を作成・管理しているか指針の解説
従事者外部委託先の担当者についても同様の指定を行ったか指針の解説
窓口部門横断的に受け付ける実質を備えているか指針第4の1(1)
窓口受付から是正までの部署と責任者を明確に定めたか指針第4の1(1)
窓口ハラスメント窓口と兼ねる場合、対象がハラスメントに限られると誤解されない周知をしたか指針の解説
窓口上司への報告を経ずに窓口へ相談できることを周知したか指針の解説
独立性経営幹部関係事案について独立性確保措置を定めたか指針第4の1(2)
独立性窓口経由でない公益通報についても同様の措置をとる旨を定めたか指針第4の1(2)
実施調査不実施の正当な理由を規程上限定したか指針第4の1(3)
実施是正措置後の機能確認と再是正の手順を定めたか指針第4の1(3)
利益相反事案関係者を関与させない仕組みを設けたか指針第4の1(4)
保護不利益取扱いの類型を列挙して禁止したか指針第4の2(1)イ
保護通報者への能動的確認の頻度と期間を定めたか指針第4の2(1)イ
保護被通報者への注意喚起の手順を定めたか指針の解説
保護不利益取扱いの行為者への懲戒を規程上明記したか指針第4の2(1)ロ
情報管理記録の閲覧権限を限定し、異動時に解除する運用があるか指針の解説
情報管理電磁的情報の操作・閲覧履歴を記録しているか指針の解説
情報管理専用電話番号・専用メールアドレスを設けたか指針の解説
通報妨害退職合意書等の定型書式から通報を妨げる条項を削除したか法11条の2
通報妨害定型書式の定期点検を規程上の義務としたか法11条の2
通報者探索探索の禁止と正当な理由の限定を規程に定めたか法11条の3
通知書面通報について是正措置等の通知手順を定めたか指針第4の3(1)
通知20日以内の調査開始通知を運用目標としたか法3条1項3号ホ
記録保管期間を定め、その根拠を説明できるか指針第4の3(2)イ
評価年1回の評価・点検の方法を4手法以上で設計したか指針第4の3(2)ロ
評価外部窓口を評価・点検の対象に含めたか指針の解説
開示運用実績の概要を年1回開示しているか指針第4の3(2)ハ
周知指針が定める9項目すべてを周知したか指針第4の3(3)
周知退職者・特定受託業務従事者・元特定受託業務従事者を周知対象に含めたか指針第4の3(3)
相談体制の仕組みや不利益取扱いに関する質問・相談の窓口を設けたか指針第4の3(4)
教育従事者への教育を指定時および定期に実施しているか指針第4の3(5)
規程指針が求める全事項を内部規程に定め、規程どおり運用しているか指針第4の3(6)
人事通報後1年以内の人事措置について事前確認の手順を設けたか裁判例(あおぞら銀行事件等)
グループ子会社が共通窓口を利用する場合、子会社の規程に定めたか指針の解説、法2条1項
グループ子会社の責任者を子会社自身で定めたか指針の解説

11 次回予告

第2回は「企業編・常時使用する労働者300人以下の組織」を扱う。努力義務の意味、規模に応じた簡素な体制の作り方、複数社共同での外部窓口委託、事業者団体・同業者組合の共通窓口の活用、経営者自身が被通報者となる場合の設計、限られた人員での従事者指定と兼務の限界を、本稿の規程例を圧縮するかたちで示す。300人以下であっても、通報を受けた後の対応を誤れば法第3条第1項および第21条第1項の適用は同じく及ぶ点を出発点とする。


参考資料

法令・告示 ・公益通報者保護法(平成16年法律第122号。令和7年法律第62号による改正後。2026年12月1日施行) ・公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号) ・公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年8月20日内閣府告示第118号、令和8年3月31日一部改正内閣府告示第15号) ・公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令(2026年12月11日施行分)

行政資料 ・消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」(令和8年3月31日一部改正、令和8年12月1日施行) ・消費者庁「公益通報ハンドブック」(改正法準拠版、令和8年6月30日) ・消費者庁「内部公益通報対応体制の整備に関するQ&A」 ・消費者庁「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の見直しについて」(認証の廃止) ・消費者庁「令和5年度 民間事業者等における内部通報制度の実態調査報告書」(令和6年4月) ・消費者庁「民間事業者の内部通報対応――実態調査結果概要――」(令和6年4月) ・消費者庁「内部通報に関する内部規程例(遵守事項版/遵守事項+推奨事項版)」(2022年1月)

裁判例 ・東京高判令和8年1月22日(あおぞら銀行事件、報道による) ・東京高判平成23年8月31日(オリンパス事件、平成22年(ネ)第794号配転命令無効確認等請求控訴事件。最高裁2012年6月28日確定)


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