費用の相場――月額3万3,000円から6万6,000円が中心帯である

内部通報の外部窓口を法律事務所や専門事業者に委託する場合、公開されている料金を見ると月額3万3,000円(税込)からとする事務所があり、通報対象をセクハラ・パワハラ・社内規程違反まで広げる場合は従業員数に応じて月額4万4,000円から6万6,000円(税込)とする例がある。この帯が一つの目安になる。

ただし月額だけを比較しても実際の負担は見えない。費用は通常、次の三層に分かれる。

第一層が初期構築費である。内部通報規程の新設・改定、通報フローの設計、従業員への周知文書の作成が含まれる。既存の規程がある場合と白紙から作る場合とで数十万円の差が生じる。

第二層が月額の窓口維持費である。電話・メールの受付、一次記録の作成、事業者への報告がここに入る。相場帯として示した金額はこの部分を指していることが多い。

第三層が事案発生時の対応費用である。事実関係の調査、関係者ヒアリング、報告書作成、是正措置の提言は月額に含まれず、別途の実費・時間制で請求されるのが通例である。年間を通じて通報がゼロの組織と、年に数件が持ち込まれる組織とでは、総額が桁で変わる。

見積りを比較する際は、月額の数字ではなく「通報が1件発生したとき、報告書が出るまでにいくらかかるか」を必ず確認する必要がある。

安い窓口の正体――受付だけで終わる契約に注意する

月額が著しく低い契約には理由がある。多くは受付と転送のみを行い、内容の評価も是正の提言も行わない設計になっている。通報が来たときに事業者側の担当者が結局すべてを抱えることになり、外部委託の目的が果たされない。

法定指針は、受付・調査・是正措置という一連の対応を求めている。窓口を置いたこと自体が義務の履行ではない。契約前に確認すべきは次の点である。

受付の範囲(匿名通報を受けるか、通報者との継続的なやりとりを仲介するか)。記録の様式と保管方法。事業者への報告の期限と形式。通報者を特定させる情報の管理方法。調査に移行する場合の役割分担。利益相反が生じた場合の処理。

2026年12月1日の改正で、委託先選定の基準そのものが変わる

改正公益通報者保護法(令和7年法律第62号、2025年6月11日公布)が2026年12月1日に施行される。法定指針の改正版は2026年3月31日に公表されている。

費用の議論に直結する変更点は、刑事罰の新設である。公益通報を理由とする解雇・懲戒には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科され、法人には3,000万円以下の罰金が科される。通報対応業務従事者が正当な理由なく通報者を特定させる情報を漏らした場合は30万円以下の罰金の対象となる。行政機関の報告徴収に対して報告をしない、または虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料の対象である。

加えて、正当な理由のない通報妨害と通報者探索に対する規制が強化され、フリーランスが通報者として保護対象に加わり、通報を理由とする解雇・懲戒については推定規定が新設される。消費者庁には事業者への立入検査の権限が付与され(改正法16条1項)、立入検査を拒否した事業者には30万円以下の罰金が科される(両罰規定)。体制整備義務については、労働者等への周知が条文上明示され、組織の長その他幹部からの独立性確保措置等の対象が、内部通報受付窓口を経由しない通報にまで拡張される。

なお、一般職の国家公務員および一般職の地方公務員に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については、法第9条により、第3条から第5条までの規定にかかわらず国家公務員法および地方公務員法の定めるところによるとされている。官公庁を委託先または委託元として検討する場合は、この適用関係を前提に制度を設計する必要がある。

ここから導かれる実務上の帰結は明快である。従事者が守秘義務違反で刑事罰の対象となる以上、委託先の情報管理体制が事業者自身のリスクに直結する。安価であっても、通報者を特定させる情報の取扱いルールが曖昧な委託先を選ぶことは、費用の節約ではなく刑事リスクの購入になる。

顧問弁護士に委託してはならない理由

外部窓口を顧問弁護士に委託する例が今なお見られるが、この設計は避けるべきである。

顧問弁護士は日頃から経営陣の相談を受け、組織とその経営陣の利益を守る立場にある。通報の対象が経営陣であった場合、通報者側と経営陣側で利害が対立するが、窓口が顧問弁護士であればこの場面で適切な対応ができない。さらに、組織が通報者との紛争に至った場合、窓口を務めた顧問弁護士は組織側の代理人として動けなくなる。

兵庫県の公益通報対応をめぐる問題が広く報じられて以降、顧問弁護士以外への外部窓口委託を検討する事業者と自治体が増えている。委託先を顧問先と分離することは、費用の問題ではなく制度設計の問題である。

費用対効果をどう説明するか――稟議を通すための整理

外部委託の予算化で最も難航するのが、経営層や財政部門への説明である。「通報が来ないかもしれないものに年間数十万円を払う理由」を問われる。

説得力を持つのは、発生した場合の損失との比較である。不正が内部で処理されず外部通報・報道に至った場合、調査委員会の設置費用、代理人費用、行政対応、取引停止、指名停止、採用への影響が生じる。第三者委員会を設置した場合の費用は、外部窓口の年間委託料の数十倍から数百倍に達する。窓口の費用は、事案を早期に組織内部で把握するための保険料として位置づけるのが実態に即している。

2026年12月1日以降は、これに刑事罰と行政措置のリスクが加わる。説明の材料は改正前より揃っている。

【外部窓口の実務経験から】

中川総合法務オフィスは、民間企業の内部通報の外部窓口を正式に受任している。もう3年になる。その内容については、残念ながら秘義務があって読者には一切言えない。しかし、コンプライアンス委員長の次の言葉は言ってもいいであろう「中川さんに依頼してから、格段にハラスメントは減っています」。

これは、コンプライアンスに詳しいものが、通報窓口にいる事の効果そのものであろう。

また、組織側に立って、内部通報を扱ってきたばかりでなく、顧問契約をしていた組織の問題解決の第三者委員会を立ち上げた経験もある。一番苦しんだのは、弁護士費用である。相場が弁護士が1時間3万円という相場である。副として弁護士が事情聴取等に参加すれば、その人数分そのまま掛け算になっていくのだ。私は勿論関西人だから値切った。

さらに3番目に、内部告発を代理人として行ったこともある。コンプライアンスに詳しい弁護士もよくやっている。これは、このサイトの別稿に詳しいから参照されたい。


参考資料

  • 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号、2025年6月11日公布、2026年12月1日施行)
  • 消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」「法定指針及び指針の解説」(改正版2026年3月31日公表)
  • 消費者庁参事官(公益通報・協働担当)「公益通報者保護制度Q&A」(令和8年5月29日)
  • 公益通報者保護法11条1項・2項(従業員数301人以上の事業者の体制整備義務)
  • 消費者庁「民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(2016年)
  • 中川総合法務オフィス「公益通報者保護法 逐条解説」各条(令和8年12月1日施行版)

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