条文原文
第五条
普通地方公共団体の区域は、従来の区域による。 ② 都道府県は、市町村を包括する。
第六条
都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。 ② 都道府県の境界にわたつて市町村の設置又は境界の変更があつたときは、都道府県の境界も、また、自ら変更する。従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を市町村の区域に編入したときも、また、同様とする。 ③ 前二項の場合において財産処分を必要とするときは、関係地方公共団体が協議してこれを定める。但し、法律に特別の定があるときは、この限りでない。 ④ 前項の協議については、関係地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
第六条の二
前条第一項の規定によるほか、二以上の都道府県の廃止及びそれらの区域の全部による一の都道府県の設置又は都道府県の廃止及びその区域の全部の他の一の都道府県の区域への編入は、関係都道府県の申請に基づき、内閣が国会の承認を経てこれを定めることができる。 ② 前項の申請については、関係都道府県の議会の議決を経なければならない。 ③ 第一項の申請は、総務大臣を経由して行うものとする。 ④ 第一項の規定による処分があつたときは、総務大臣は、直ちにその旨を告示しなければならない。 ⑤ 第一項の規定による処分は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。
第七条
市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。 ② 前項の規定により市の廃置分合をしようとするときは、都道府県知事は、あらかじめ総務大臣に協議し、その同意を得なければならない。 ③ 都道府県の境界にわたる市町村の設置を伴う市町村の廃置分合又は市町村の境界の変更は、関係のある普通地方公共団体の申請に基づき、総務大臣がこれを定める。 ④ 前項の規定により都道府県の境界にわたる市町村の設置の処分を行う場合においては、当該市町村の属すべき都道府県について、関係のある普通地方公共団体の申請に基づき、総務大臣が当該処分と併せてこれを定める。 ⑤ 第一項及び第三項の場合において財産処分を必要とするときは、関係市町村が協議してこれを定める。 ⑥ 第一項及び前三項の申請又は協議については、関係のある普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。 ⑦ 第一項の規定による届出を受理したとき、又は第三項若しくは第四項の規定による処分をしたときは、総務大臣は、直ちにその旨を告示するとともに、これを国の関係行政機関の長に通知しなければならない。 ⑧ 第一項、第三項又は第四項の規定による処分は、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。
第七条の二
法律で別に定めるものを除く外、従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を都道府県又は市町村の区域に編入する必要があると認めるときは、内閣がこれを定める。この場合において、利害関係があると認められる都道府県又は市町村があるときは、予めその意見を聴かなければならない。 ② 前項の意見については、関係のある普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。 ③ 第一項の規定による処分があつたときは、総務大臣は、直ちにその旨を告示しなければならない。前条第八項の規定は、この場合にこれを準用する。
条文の位置づけと全体構造
地方自治法第二編「普通地方公共団体」第一章「通則」は、第5条から始まる。地方公共団体が存立するためには区域(領域)、住民、自治権の三要素が必要であり、第5条はそのうちの区域を確定する根拠条文である。続く第6条から第7条の2は、その区域がいかなる手続によって変動するかを定める。
本稿は、第5条(区域の原則と包括関係)、第6条(都道府県の法律的廃置分合)、第6条の2(都道府県の自主的合併手続)、第7条(市町村の廃置分合・境界変更)、第7条の2(無主地の編入)を一括して解説する。これら4か条(5条文)は、「区域は固定されているが、例外的に変動する」という法構造を段階的に具体化している。
第5条 区域の原則的確定と都道府県・市町村の包括関係
趣旨・立法背景
第5条第1項は、普通地方公共団体の区域が「従来の区域による」と定める。これは区域を新たに立法によって画定するのではなく、地方自治法の施行時点(昭和22年5月3日)における既存の区域をそのまま承継するという継承原則を宣言したものである。
この規定の連続性は明治期まで遡る。明治11年(1878年)の太政官布告第17号・郡区町村編制法第2条が「郡町村ノ区域名称ハ総テ旧ニ依ル」と規定し、明治21年(1888年)の町村制第3条が「凡町村ハ従来ノ区域ヲ存シテ之ヲ変更セス」と続き、明治44年(1911年)の改正町村制第1条が「町村ハ従来ノ区域ニ依ル」と引き継いだ。地方自治法第5条第1項は、この140年以上の立法系譜を現行法に接続したものである。「従来の区域」とは、近代以前の村落共同体の実態的範囲をそのまま区域として承継し続けてきた歴史的堆積の産物であり、行政便宜から一方的に画定された区域ではない。
第5条第2項は、都道府県と市町村の包括関係を明示する。都道府県は市町村を包括するという二重構造は、地方公共団体の普遍的な組織原理であり、後の第10条(住民の定義)・第252条の17の2(条例による事務処理の特例)など多数の規定の前提をなす。
用語解説
普通地方公共団体とは、地方自治法第1条の3第2項が定める都道府県と市町村の総称である。特別地方公共団体(特別区、地方公共団体の組合、財産区)とは対比される概念であり、普遍的・一般的に存在する地方公共団体を指す。
廃置分合(はいちぶんごう)とは、地方公共団体の法人格の変動を伴う区域変更をいう。新設合併・編入合併・分割・分立がこれに含まれる。これに対し、境界変更は法人格を存続させたまま境界線のみを変動させる処分である。
「包括」とは、都道府県の区域内に市町村の区域が地理的に含まれるという関係を示す。財政的補完・広域行政・統轄の意味ではなく、あくまでも区域の包含関係である。
関連判例
最高裁昭和61年5月29日第一小法廷判決(昭和60年(行ツ)第135号)は、筑波山山頂部分の所属市町村をめぐる境界確定訴訟において、「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による」(第5条第1項)の「従来の区域」とは、地方自治法施行当時の区域をそのまま基準とするものであると確認し、その歴史的沿革をさかのぼって解析した。同判決は、山頂部分の所属が歴史的証拠上どの自治体に帰属するかを綿密に認定しており、第5条第1項の継承原則が裁判上どのように機能するかを示す代表的事例である。
第6条 都道府県の廃置分合・境界変更
趣旨・立法背景
第6条第1項は、都道府県の廃置分合または境界変更を行うには「法律」で定めることを要するとする。これは、都道府県が国の政治・行政・経済の広域的秩序に直結する存在であり、その区域変動は国民代表機関たる国会の意思決定によるべきという考え方から導かれる。
ここでいう「法律」は、憲法第95条が定める「特別法」(一の地方公共団体のみに適用される法律)に該当するか否かが従来から論点とされてきた。昭和43年5月10日の衆議院地方行政委員会で当時の長野自治省行政局長が、「廃置分合を定める法律は憲法95条の特別法に当たり、住民投票が必要」という趣旨の答弁を行ったことが記録されており、個別法による廃置分合が住民投票(憲法第95条)を要する可能性を示すものとして参照されてきた。
第6条第2項は、都道府県の境界をまたいで市町村の設置または境界変更が生じた場合、都道府県の境界もその結果として自動的に変更されることを定める。この「自ら変更する」(当然変更)という規定は、行政機関の別途の意思決定なしに法律上の効果として区域変動が生ずることを意味し、行政効率上の要請から設けられたものである。
第6条第3・4項は、廃置分合・境界変更に伴い財産処分が必要な場合、関係地方公共団体が議会の議決を経た上で協議して定めることを要求する。地方公共団体の財産は住民の共有財産であり、その帰属変動には民主的統制が求められるという原則の具体化である。
用語解説
廃置とは、既存の地方公共団体を廃止することをいい、分合(ぶんごう)とはその廃止に伴う区域の分割・合算処理をいう。「廃置分合」全体で、合併・分割・分立等の法人格変動を伴う区域変更の総称として用いられる。
境界変更とは、法人格を維持したまま境界線のみを変動させる処分をいい、廃置分合とは明確に区別される。
「財産処分」とは、廃置分合・境界変更の結果として変動する公有財産(不動産、動産、債権、基金等)の帰属を協議によって決定することをいう。
関連判例
都道府県の廃置分合に関する直接の司法判断は現時点までに存在しないが、廃置分合処分の法的性質(行政処分か立法行為か)は学説上争いがある。第6条第1項に基づく法律による廃置分合の場合、当該法律が行政訴訟の対象となる「処分」には当たらないと解されるのが通説であり、関係住民は条例の合憲性審査を通じた間接的手段に限られることになる。
第6条の2 都道府県の自主的合併手続
趣旨・立法背景
第6条の2は、平成16年(2004年)の地方自治法改正により新設された条文である。背景には道州制論議の高まりと、第27次地方制度調査会の答申がある。
従来の第6条第1項だけでは、都道府県の廃置分合ごとに個別の特別法(たとえば「A県とB県の合併に関する法律」)を制定する必要があった。この個別法は憲法第95条の「一の地方公共団体のみに適用される特別法」に該当すると解されており、住民投票の実施が憲法上必要となる可能性があった。道州制の実現を視野に置き、都道府県が自主的に合併を求める際の手続を合理化するため、第6条の2が設けられた。
この条文が適用されるのは、①二以上の都道府県の廃止とその全区域による一の都道府県の新設、または②一の都道府県の廃止とその全区域の他の都道府県への編入という、いずれも全区域を対象とする完全統合型のケースに限られる。境界の一部変更には適用がなく、その場合は第6条第1項の法律による処分が必要である。
手続は、関係都道府県がそれぞれの議会の議決を経た上で総務大臣を経由して申請し、内閣が国会の承認を経て処分を定める(第1〜3項)。処分の効力は総務大臣の告示によって発生する(第4・5項)。個別の法律制定を要しないため、憲法第95条の住民投票は憲法上は要求されない。
用語解説
廃止とは、法人格の消滅をいう。区域内の市町村は、都道府県の廃止によってその所属都道府県が変更されるだけであり、市町村の法人格は影響を受けない。
国会の承認とは、衆参両議院の議決による承認をいう。内閣の処分の前提として国会の承認を要するという構造は、行政行為の民主的統制という観点から設けられている。
告示とは、行政機関が一般に向けて内容を周知させるための公示手段であり、総務大臣が官報に掲載することで行われる。告示によって処分の効力が発生するという規定(第5項)は、法的安定性と対外的明確性の確保を目的とする。
第7条 市町村の廃置分合・境界変更
趣旨・立法背景
第7条は、市町村の廃置分合および境界変更について、都道府県内に収まる場合(第1・2項)と都道府県境界をまたぐ場合(第3・4項)とに分けて、決定権者・手続・効力発生時期を詳細に定める。
市町村の廃置分合は、地方自治の本旨(憲法第92条)の観点から、市町村自身の申請を出発点として都道府県知事が決定するという「申請主義」を採用する(第1項)。都道府県の廃置分合が法律によって定められる(第6条第1項)のとは対照的に、市町村では都道府県知事の決定処分によって廃置分合が実現する。この非対称性は、都道府県が国の政治秩序と不可分な広域団体であるのに対し、市町村が住民生活に直結する基礎的自治体であることの違いを反映している。
平成の大合併(平成11年〔1999年〕〜平成17年〔2005年〕頃が最盛期)においては、この第7条が実際の手続根拠として機能した。市町村合併特例法(合特法)と連動しながら、この期間に約3,200あった市町村数が約1,800まで減少した。
市の廃置分合については第2項が特則を設け、知事は事前に総務大臣に協議してその同意を得ることを要求する。「市」は一定の都市的要件を具備した上位の自治体類型であり(第8条参照)、その廃置分合は広域行政上の影響が大きいため、国の関与(総務大臣の事前同意)を要件化した。
第3・4項は都道府県境界をまたぐ廃置分合・境界変更を規律する。この場合は都道府県知事が処分権を持てないため、総務大臣が決定権者となる。都道府県の境界変更を伴う市町村の設置においては、市町村が属すべき都道府県の決定も併せて行われる(第4項)。
第7項・第8項は、届出受理または処分に続く総務大臣の告示義務と、告示による効力発生を定める。廃置分合の効力発生時点が告示の日であることは、後続する行政事務(住民票、税、議員身分等)の切替基準として実務上の意義が大きい。
用語解説
申請とは、行政庁に対して特定の処分を求める行為をいう。廃置分合の申請を行うのは関係市町村であり、知事が職権で発動することはできない。ただし、都道府県知事は第8条の2の規定に基づいて廃置分合の計画を策定し関係市町村に勧告することができる(知事主導型の合併推進の根拠)。
議決とは、議会の意思決定をいう。廃置分合・境界変更の申請に際しては、関係する普通地方公共団体の議会の議決を経ることが必要であり(第6項)、首長の専権事項ではない。
財産処分は第7条第5項に規定されており、関係市町村の協議によって決定される(第6条第3項の都道府県版に対応)。不動産の帰属のみならず、長期債務の承継、基金の帰属、財産区の設置等が実際の協議事項となる。
告示による効力発生(第8項)は、第6条の2第5項と同構造であり、官報告示の日をもって廃置分合・境界変更の法的効果が確定することを意味する。
関連判例
市町村の廃置分合処分の法的性質については、最高裁昭和49年11月6日大法廷判決(昭和44年(行ツ)第79号)が参考になる。この事件は、公有水面埋立地(いわゆる東京都と神奈川県の境界上の埋立地)の所属市町村をめぐる境界確定訴訟であり、最高裁は境界確定訴訟が「当事者訴訟」ではなく「形式的当事者訴訟」の一種であることを確認した。廃置分合・境界変更の処分そのものは、都道府県知事の行政処分であり、行政不服申立て(審査請求)の対象となりうる。ただし、確定した廃置分合処分の瑕疵を事後的に争う手段については学説上の議論がある。
公有水面の境界については、最高裁平成3年4月18日第一小法廷判決(平成元年(行ツ)第4号)が、市町村の公有水面上の境界を確定する基準として、歴史的経緯と従来の行政権行使の実情を考慮した上で、当該水面が接続する陸地の区域にできるだけ含ませるべきとする等距離線主義(中間線原則)による考え方を示した。この判決は、第5条の「従来の区域」の解釈が水上にも及ぶことを示す実例である。
第7条の2 無主地の編入
趣旨・立法背景
第7条の2は、「従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域」(以下、無主地)を都道府県または市町村の区域に編入する必要が生じた場合、内閣がこれを定めるという権限を付与する。
「無主地」の典型例は、公有水面埋立完了後に区域未帰属状態となった土地、国内未編入の離島、人工島等である。地方自治法施行時点で地方公共団体の区域に属していなかった地域は第5条第1項の「従来の区域」に含まれず、第7条の廃置分合・境界変更の手続によって処理することもできないため、この条文が補充的に機能する。
法律で別に定めがある場合(たとえば、公有水面埋立法に基づく特別規定)はそちらが優先し(第1項但書構造)、第7条の2は補充的・一般的規定として位置づけられる。
利害関係のある都道府県または市町村がある場合は事前にその意見を聴取することを要し(第1項後段)、その意見表明は議会の議決を経ることが求められる(第2項)。意見聴取は「予め」(事前)に行うことが条件であり、処分後の通知では条文の要件を満たさない。
処分の効力は第7条第8項の規定が準用され、総務大臣の告示によって発生する(第3項)。
用語解説
無主地(むしゅち)とは、いずれの地方公共団体の区域にも属しない土地・海域をいう。国有地であっても、地方自治法の観点では無主地となりうる。この概念は行政法上は「国土のうち、地方公共団体の区域に属しない部分」と定義されるが、現実には海洋の公有水面埋立地が主たる問題場面である。
内閣とは、内閣総理大臣および国務大臣で構成される合議体である(憲法第66条)。国の行政権の主体として(憲法第65条)、市町村・都道府県の区域に属さない地域の編入を決定する権限が付与されている。これは市町村合併とは異なり、民主的自治の文脈が成立しない地域について例外的に国(内閣)が判断主体となるものである。
準用とは、他の条文を内容の変更(読み替え)を伴いつつ適用することをいう。第7条の2第3項は、第7条第8項(告示による効力発生)を準用するため、無主地の編入もまた告示の日に法的効力が生ずる。
区域変動手続の比較整理
地方公務員が実務上混同しやすい点を整理する。
都道府県の廃置分合(第6条第1項)は法律によって定める。都道府県の自主的合併(第6条の2)は議会議決を経た申請→内閣→国会承認→総務大臣告示という手続による。市町村の廃置分合(第7条第1項)は、関係市町村の申請→都道府県議会議決→知事決定→総務大臣届出→告示という手続による。市の廃置分合(第7条第2項)は、上記に加え知事が事前に総務大臣の同意を要する。都道府県境界をまたぐ廃置分合(第7条第3項)は、総務大臣が決定権者となる。無主地の編入(第7条の2)は、内閣が決定し告示で効力発生する。
いずれの手続にも共通するのは、①関係地方公共団体の議会の議決、②財産処分の協議、③告示による効力発生という三つの要素である。
令和7年・令和8年(2026年)改正との関係
令和7年(2025年)・令和8年(2026年)の地方自治法改正において、第5条から第7条の2の区域規定そのものについて直接の改正は行われていない。ただし、令和6年(2024年)改正で導入された国の指示権規定(第252条の26の9等)との関係では、廃置分合・境界変更の手続においても「国と地方の関係の法的秩序」という観点から第2条の趣旨を踏まえた解釈が求められる。
道州制論議に関しては、第6条の2が現時点でも未使用の規定として存在し続けており、道州制の実現は立法政策上の選択の問題として残されたままである。
地方公務員法との比較
地方公務員法は、職員の任用・勤務条件・分限・懲戒等を定める職員法であって、地方公共団体の「区域」概念を直接規律する条文は置いていない。ただし、廃置分合が行われた場合の職員の身分・任用関係については、地方公務員法第7条の2(特例的に置かれる人事委員会・公平委員会の承継)等に関連する問題が生じ、廃置分合処分告示後の対応が実務上課題となる。
平成の大合併の過程では、合併前の各市町村で異なっていた給与条例・規則の統合、人事委員会または公平委員会の設置義務の有無、部長・課長等の職制整理が大きな実務的論点となった。合併後の職員身分は地方公務員法第28条(分限処分の制限)の趣旨に照らして保護されるべきであり、合併協議会における分限回避の協議が実質的に重要となる。
実務上の注意点
市町村合併の手続を進める担当者が実務で確認すべき事項として次の点が挙げられる。
廃置分合申請書の議決には、関係する「普通地方公共団体の議会」の全議決が必要であり(第7条第6項)、一方の市町村議会が否決した場合は手続が進まない。知事への申請書には当該議決書の写しを添付することが求められる。
市の廃置分合においては、知事が申請を受理する前(事前)に総務大臣の同意を得ておく必要があり(第7条第2項)、この同意が下りない限り手続は先に進めない。
財産処分の協議(第7条第5項)は、廃置分合の効力発生後に残課題として残ることが多く、第7条第5項に基づく協議が整わない場合、訴訟による解決に至ることもある(民法の共有物分割の類推が議論される)。
まとめ
第5条から第7条の2は、地方公共団体の区域の安定性と変動可能性という相反する要請を調整する法的秩序を構成する。区域の継承原則(第5条)を基点として、都道府県の変動には法律または国会承認を要するという国政関与の原則(第6条・第6条の2)、市町村の変動には知事処分という自治的手続(第7条)、そして既存区域の外側にある無主地の編入という例外処理(第7条の2)が体系的に並べられている。
地方公務員にとってこれら規定の実践的意義は、合併・分割・境界変更に携わる機会があった際に手続の全体像を把握していることと、廃置分合告示後の身分・財産・条例の承継問題に適切に対応できることにある。
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